PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。   作:五月時雨

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 これまでに散りばめてきた、そしてこれまで敢えて語らずにいた、数々の布石。
 その数は既に、『速度特化と決着』のあれとは比べ物にならず、全部明かす気は当に失せた。
 だけどここから始まる海皇戦は、私が本作を始めた時からやりたかった最大の山場だから。
 勝つか負けるかは決まってない。何せ両方のプロットを作ったから。

―――さぁ祈れ!!


 二人が勝つか、運営の悪意が飲み込むのか!!


 


PS特化と戦闘前

 

「準備は良いよね、ツキヨ」

 

 沖の孤島の最下層。

 階段を百段は下った先の魔法陣の前で。

 ツキヨとミィは最終確認を行っていた。

 ちゃんと森を抜ける前に【剣ノ舞】と【血塗レノ舞踏】は百パーセントにあげているので、その点は抜かりない。

 

「大丈夫だよ、ミィ」

 

 その、どこか上擦った声音を上げるツキヨに対し、面白いものを見たという顔でニヤニヤしながら、ミィがつい一時間前の事を掘り返した。

 

「求婚された心境は?」

「うっ……待って。ほんっとうに待って!お願いだからいまそれいわないで!?」

「ツキヨ、テンパってるね。あの時はすっごい冷静だったのに」

「だって……」

 

 

 思い返すのは、一時間前。

 【天津雷光】をペインに見せた後の別れ際だった。

 

 

 

 

 

 

 

「結婚するつもりはないか」

「――――――は?」

 

 突然の申し出に、空気が死んだ。

 ツキヨだけでなく、ペインといる三人も、勿論ミィも。

 

「あぁいや。突然混乱するのも分かるんだが、事情があってね」

「事情?」

「あぁ。さっきも言ったとおり、家は古い歴史のある、無駄に面倒な名家でな……相応の家格を持つ者か、流派の門下生の中で相手を選べと煩いんだ」

「それ、私はどちらでも無いのだけれど……」

 

 全く持って理解が追いつかないが、何とか演技で平静を保ち、装う。

 

「だが、旭日一心流を使うことに変わりはない」

「見様見真似なのだけど」

「それで到れる境地じゃないんだが……まぁ良いか。なら最後の一つ。継承者(おれ)が認めるほどの武芸者である事というのがあるんだ」

「はぁ……?」

 

 思わず素で答えてしまう。

 

「俺の父がそれでね。前例があるから問題ない」

「今どき信じられないしきたりを聞いている気がするわ」

「あぁ。私もだ」

「俺もだ」

「私もかなー」

「あぁ。同じく」

「全員かよ……」

 

 

 ペイン(おれ)が認めてるから大丈夫、と。

 ついでに、ペインの申し出にも若干の理解を示す。だが、納得はしない。

 

「……それで、なぜ私なのかしら?他にもいるでしょう?ゲー厶でしか会ったことのない私より相応しい人間が」

「いないな」

「なんでよっ!意味分かんないんだけどっ!?」

「……なんだ?そっちが素なのか?思いの外、可愛げがあるな」

「っっ〜〜〜〜!!!」

「ツキヨ、落ち着け」

 

 即答で否定されてしまい、思わず叫んでしまったツキヨに追撃。もうヤダこいつ……と若干ツキヨに鬱が入る。

 

「家格が相応しいと言っても、向こうの性格に難があれば嫌だろう?門下生はかなりいるが、やはり練度が低い。その点、ツキヨの性格はある程度知っているし、剣技も俺と同格以上だ。申し分ない」

「NWOの中だからよ。現実ではこうはいかないわ」

「さっき言っていただろう?ツキヨが持つ特異性によるものだと。それは、ゲーム内の物じゃない。なら、足りないのは身体能力だな」

 

(―――バレてるし)

 

「それを踏まえても、()()()()()()()()()()()()。流派の教えを歩んでいると」

「っ……」

「正直に言えば、ツキヨが一日でも家の門下生になれば、それで済む話なんだが……」

「何勝手に話を進めてるのよ!」

 

 【天津雷光】を見せた時は完全にツキヨのペースだったのに、ことこの話題に至っては、完全に逆転していた。

 

「性急だったのは謝るが、考えてみてくれ。返事はいつでもいい。行こうか、皆。見たいものは見れた」

「ちょ、待ちなさいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま見たいものを見て、言いたい事言って、嵐のように去っていったペイン。

 

 その光景を今一度思い返し。

 

 

「あれ?ツキヨ、思いの外冷静じゃなかったね」

「うるさいよ、ミィ……あんな事をいきなり言われれば、冷静さを失って当然じゃん……」

 

 『付き合ってくれ』なら、それなりに経験があるツキヨ。ツキヨ自身には自覚はあまりないが、容姿も整っていて学校では人気があるのだ。アタックする男はたまにいる。大体は尻込みしているのだが。

 

 けれど。

 

「全部すっ飛ばして結婚とかアホじゃないのあの金髪……っ!」

「まぁ、ゲームの話じゃなくて、本当に現実(リアル)な話だったもんねー。流石にびっくりしたよ」

「でしょ!?意味わかんないんだけど!こっちはまだ高校生なの!」

「ぎり結婚できるじゃん」

「ミィ!?」

 

 はっきり言えば、ペインを。と言うか、男性を『そういう目』で見たことがなく、今のところ興味も関心もないツキヨ。

 突然言われても困るだけで、恥ずかしいのではなく訳が分からずテンパっているのだ。

 

「まぁツキヨが言わんとしてることは分かるけどねー。いきなり言われても困るし。それもゲーム内で、興味も抱いてない人になんて」

「でしょ?」

「うん」

「だから、次あった時に断っちゃえばいいんだよ。そういう事には興味ありませんって」

「だね……」

 

 好きの反対は無関心とよく言うが、結構きつい断り方である。

 ちなみに、ツキヨがペインに抱く感情は好奇心だったりする。それは、自分以上に洗練された剣技を持っていて、次は何を見せてくれるのか、自分はどうやって反撃しようか。どうやったら完膚なきまでに勝てるかと考えているだけだ。

 

 こんなにテンパるツキヨを見るのは現実含めて初めてなので、ミィはここぞとばかりに脳内保存していたりするが。それはさておき。

 

「もういい……()()の事は忘れて、ダンジョン攻略で八つ当たりする。ストレス発散すれば、もうそれで良いっ」

「わー、もはや『あれ』呼ばわりだぁー」

 

 自分のことじゃないので、例え親友だとしても、いつもからかわれてる腹いせに、これ以上は不干渉を貫くミィ。思い出して顔を赤くするツキヨを見て『かわいいなー』としか思ってない。

 

 

 

 

 

 

 

 ―――今回の件で少なくとも、『意識させる』ことだけは、成功したペインだった。

 

 

 

 

 

―――

 

ツキヨ

 Lv 50 HP35/35 MP221/221〈+90〉

 

【STR 15】 【VIT 0】

【AGI 70〈+55〉】 【DEX 100〈+100〉】

【INT 60〈+30〉】

 

装備

 頭 【舞騎士のマント】体【比翼の戦乙女】

 右手【白翼の双刃】 左手【白翼の双刃】

 足 【比翼のロングブーツ】

 靴 【比翼のロングブーツ】

 装備品【赤いバンダナ】

    【毒竜の指輪】

    【空欄】

 

ステータスポイント0

スキル

 【連撃剣Ⅹ】【体術Ⅹ】【水魔法Ⅹ】

 【挑発】【連撃強化大】【器用強化大】

 【MP強化大】【MPカット中】

 【MP回復速度強化大】【採取速度強化小】

 【双剣の心得Ⅹ】【魔法の心得Ⅹ】

 【双剣の極意Ⅱ】【魔法の極意Ⅱ】

 【武器防御Ⅹ】【状態異常攻撃Ⅷ】

 【気配察知Ⅷ】【気配遮断Ⅷ】

 【気配識別】【魔法隠蔽】【遠見】

 【魔視】【耐久値上昇中】【跳躍Ⅹ】

 【料理Ⅰ】【釣り】【水泳Ⅹ】【潜水Ⅹ】

 【精密機械】【血塗レノ舞踏】【水君】

 【切断】【ウィークネス】【剣ノ舞】

 【刺突剣Ⅹ】【曲剣の心得Ⅹ】

 【曲剣の極意Ⅰ】【属魔の極者】【空蝉】

 【殺刃】【最速】【殺戮衝動】

 【精緻ノ極】【速度狂い(スピードホリック)】【首狩り】

 

―――

 

 ステータスの最終確認を終えて、ふと、あるスキルを目をやってしまったツキヨは、『ふいっ』と目をそこから逸した。

 

「ん?ツキヨ、どしたの?……へー?ほー?なるほどねぇ?」

「ミ、ミィ!」

「ごめんごめん。でも、へぇー?まさか()()()()()()()持ってるなんてねぇ?」

「だ、誰かペインとっ!」

「誰とお揃い、なんて言ってないけど?」

「っっ〜〜〜〜〜!!!」

 

 目に入ったのは、【殺戮衝動】。

 物騒な名前ではあるが、そのスキル効果は前回イベントでペインが見せたものと相違ない。

 

 

―――

【殺戮衝動】

 【VIT】が半減し、全ての攻撃の与ダメージを二倍にする。

 一時間後再使用可。

取得条件

 三時間以上、戦闘以外の行動を取らないこと。

―――

 

 

 【最速】の調整をする過程で、その日のログイン時間を全て戦闘に費やした日に取れたものだ。

 こんな事になるなら【廃棄】すれば良かったと思うが、ダメージ量が一時的に二倍になるというメリットは捨てられない。元から【VIT 0】なので、デメリット無しなのも後押ししていた。

 

「まぁまぁ。強いスキルだから良いじゃん!」

「……からかった本人が言うの?」

「それはごめん!」

「………はぁ、もう良いよ。

 代わりに魔法陣の先にモンスター居たら、しばらく私にやらせて。憂さ晴らしする」

 

 色んなことがありすぎて、ツキヨのストレスがマッハだった。

 『あ、これ爆発寸前だ』と付き合いの長いミィは敏感に感じ取り、小さく頷いた。

 

 

 

 

―――

 

 

 

 はぁ……本当に、心が掻き乱された。

 いきなりの事で驚いたし、正直考える相手でもなかった。それは、ここが仮想世界だから。

 現実なら、もしかしたら違ったかもしれない。……いや、多分、違わないかな。

 どちらにせよ、私の意志の大半はミィに集約されている。

 けど、ここはあくまで仮想世界で、現実じゃない。現実は切り離し、この世界を純粋に楽しむ。

 それが、ここならできる。だからこそ少しだけ、自分のためにやりたいことをみつけようと思っていたのに。

 

 

 ―――心がざわつく。

 

 

 第一、いきなり過ぎるでしょうが。

 唐突すぎて何言ってるか分かんなくなったし。

 こういう時、海の中にダイブすれば、一気に頭まで冴えると思うけど。

 

 ミィには最初の手出し無用の約束は取り付けたし、取り敢えず、モンスター相手に八つ当たりさせてもらおう。そうでもしないと、このざわつきは収まらない。

 

 

 

 

 

 ――今の私は、『私のために』なんて……。

 

 

 

 

「そんな余裕無いっての」

「あれ?どうかした?」

「…………はぁ。なんでもない」

 

 切り替えよう。

 何が起こるか分からないダンジョン。

 いきなりボス戦なんていう突拍子もない事だって起こるかもしれないんだから。

 

 

 だから今だけ。

 

 

「いや、これからずっと―――」

 

 左手を胸に当てて、深く息を吸う。

 肺の空気を全部吐き出し、自然と肺に新しい空気が入っていく。

 無駄な思考を廃し、ただ、勝つことを。ミィのために、最善を尽くす。

 

「今、この場において、他の全てを――」

 

 

 

 

 

 ―――忘れろ。

 

 

 

―――

 

 

 

 ツキヨが自分のことで感情をあれ程顕にしたのは、いつ以来だろうか。

 小学校からの幼馴染の私の前で、ツキヨは基本的に隠し事をしない。言わない事は多々あっても、言って問題ない事は、基本なんでも話す。

 言わないのは、ツキヨが言わないほうが良いと思ってるから。

 けど、私の他に沢山の人がいる場所では、元から真意を悟らせないのが得意だった。

 今では誰とでも仲良くなれるし、誰にでも気軽に声をかけられるし、誰とでもよく話す。

 だから人気は出るし、男の子に勘違いされる。

 けど、それは常に一歩、線引いている。

 そして、それを誰にも悟らせない。

 もしかしたら、ツキヨ自身も気付いてない。

 分け隔てない。という言葉が誰よりも似合い、だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()。私は、その内側に入れているけど。

 ツキヨの無意識の壁は厚いのだ。ATフィールドに匹敵する。それかベルリンの壁。

 ツキヨが壁を作るのは、自分が普通じゃないと理解しているから。それに気付かないのは、その『在り方』が、染み付いているから。

 《神速反射》という人間離れした反射速度は、それほどの物だから。

 

 それを、ペインは容易く壊した。

 やり方はめちゃくちゃだし、負けず嫌いの性格がただの誠実な好青年になってるし。

 その変貌は、直接相対したツキヨの方が混乱しているだろうけど。

 

 正直やってくれたな、と思う。

 ツキヨの薄く、柔軟で、だけど破れない壁を突き破った。剣士の貫通力、恐るべし。

 

 ツキヨはどんな答えを出すのだろうか。

 それは気になるし、色恋なんて全くないツキヨがどうなるか見てみたい。絶対かわいい。

 今もあわあわしててかわいいし。

 

 ただそんなツキヨが、まだ出会って二回目の人間によって引き起こされたのに少しだけ嫉妬する。いいもん。私だけが知ってるツキヨの可愛さは、私だけのものだから。

 

 負けず嫌いで諦めが悪くて。

 ボードゲームが弱いくせに挑んできて。

 紅茶が好きすぎて。

 楽しむために全力で。

 極めるか、から回るかの両極端。

 剣技は熟達してる。

 準備期間を楽しむ小学生みたいで。

 最近じゃ料理にも嵌ってて。

 

 何より。

 

 

 私のことを、支えてくれる。

 

 

 NWOを始めたのも、私が言ったから。

 双剣を手に取ったのも、私と考察したから。

 装備も私が先に揃えたら負けず嫌いが祟った。

 何も言わずに協力してくれて。

 サブリーダーになってくれて。

 一緒に演技してくれて。

 私より私のこと考えてくれて。

 いつの間にか悪代官やってて。

 ウォーレンさんと裏で牛耳ってて。

 イベント前の準備も全部調整してて。

 

 その上で私には、

 どっしり構えてれば良いなんて言って。

 

 自分だけが、頑張って。

 

 

 だから、支えたいのに。

 だから、力になりたいのに。

 

 気付いてるかな?私が、ツキヨの思ってる以上に、ツキヨの事が大好きだってこと。

 ツキヨ以上に、信頼してる相手がいないってこと。ツキヨのこと、すっごく感謝してるってこと。

 

 

 だから、さ。

 

 

「ツキヨが拒否しても、勝手に守るよ」

「え?なにか言った?ミィ」

 

 

 魔法陣の上に乗って、私が来るのを待つツキヨに向けて、小さく呟く。

 もしツキヨが大変だったら、一緒に背負う。

 色恋沙汰は横で笑ってやるけど。ツキヨの困った顔は、とっても可愛いから。

 ピンチなら問答無用で助ける。

 現実じゃ、恥ずかしくて言ったことも無いけれど。ここなら、戦闘っていう明確なピンチがある、ここでなら。

 

 

 

 

「えへへ、なんでもない!さっさと行って、フィールド探索を続けよう!」

 

 

 

 

 

 

 きっと、ツキヨの力になってみせるから。




 
 はい今回短めーっ!

 ……へ?前書きのテンションを維持しろ?作中の雰囲気ぶち壊すな?
 無理言わないでよ。シリアスは好きですが、私自身がシリアステンションなんて良くて数分しか続かないんです。

 勝敗どちらのプロットも作ったのは本当です。私の独断と偏見で、どちらか一方のみを投稿します。正直、ここは負けても良いと思ってますので。

 さて。作中の話でもしましょうか。
 今話のツキヨちゃんは、突然のペインの申し出にパニックを起こしています。最後は冷静になっていますが、それまでは頭の中が支離滅裂ですね。これについては、皆さんも理解するの大変だったかと思います。
 ですが考えても見てください。
 やりたい事、やらなきゃいけない事、自分の想い、相手が向けた自分への思い。
 何一つ揃うことは無く、それらが複雑に絡み合い押し寄せてきた時、パニックで思考があっちこっちに行ってしまうというのは、仕方のない事なのです。
 ツキヨちゃんの思考がぐっちゃぐちゃなんだから、皆さんが理解できなかったとしても仕方のないことです。唯一つ言えることは、狙って支離滅裂なこと書くのムズイっすね!

 対するミィは、しっかりと一本筋の通った思考をしています。実を言うとペインのド下手告白は、ここに繋げるためにやってもらった所があります。ペインは生贄です。


 ―――さて。前振りはこんなものでしょう。

 これから数話かけて行われる海皇戦は、私が投稿前から書きたかった、PS特化における最大の山場と言えます。力の入れようは、第一回イベントでのペイン戦の比ではありません。
 だからこそ、導入から長く(重く)ならないよう、敢えて今話は短く抑えました。
 勿論、今後も要所で山場は沢山あります。
 【対メイプル最終兵器系主人公】を語っていながら、未だ一度もメイプルと鉾を交えていないのも、ギルドイベントという山場に全てをぶつけるためです。予告しておきます。ギルド対抗戦もペイン戦を遥かに超える山場です。まぁ前哨戦みたいな感じで、軽くぶつかる事はあるかもしれませんが。

 こんなものかな。
 正直、海皇戦への思い入れは私の中で最大級です。勿論、勝利√でも敗北√でも。分岐とかはしません。片方のみ投稿し、無駄な尾を引いたりはしませんので、ご期待くださいな。
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