PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。   作:五月時雨

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二人だから 二人で

 

 ゆっくりと足をすべて再生させたクラーケンが、深青の海を漆黒に染め上げていく。

 どれだけ巨大であろうとも、その生態が頭足類であり、神話においてもクジラなどの大型水棲生物が天敵とされている。

 だからこそ、逃走手段は必ず持っているのだが、クラーケンはそのイカスミを逃走手段としては用いなかった。

 

 全域をスミで染め上げ、視界を遮ると、自らが誘き寄せた魚群を喰らい、HPを回復しだしたのである。攻撃を仕掛ける様子のないクラーケンに、ツキヨとミィは一旦距離を取り、体勢を立て直す。

 

「最後の最後まで、試練残すなぁ……」

「魚の泳ぐ速度も上がってる……」

「離れればスミが薄くなるのは助かるけど……」

「魚、突破してきたね」

 

 【聖流絶渦】による僅かな安全圏も、魚の突撃スピードが上がったことで突破される事が度々ある。このままではジリ貧。

 けれど、二人の中には何故か不安はない。

 

 それはようやく、二人の気持ちが噛み合ったからか。結局のところ、互いが互いを思いやり、大切にして、心配して。

 気遣って助けようとして支えようとして。

 

 そうして空回りしていただけなのだ。

 必死に繋がろうと、一緒にやろうと空転し続けた歯車(想い)が絡み合い、つい先程、繋がった。

 

 だから。

 

「クラーケン、回復したね」

「なんか怒ってない?絶対にパワーアップしてるよね」

「魚、速すぎない?【聖流絶渦】の更に周りを竜巻みたいに泳いでるんだけど」

「昔テレビで見たことあるなーこういうの」

 

 自分たちを中心に巨大な壁となり、全方位を包む逃げ場のない魚群。

 

 【聖流絶渦】が解除されれば、その瞬間に二人のHPは消し飛ぶだろう。

 

 なのに。

 

「ねぇツキヨ。今ね、大ピンチだよね」

「大大大ピンチだね。でも」

「うん、おかしいね」

「本当に。でも、感情っていうのはどうしようもないよね?」

「あははっ!なら、今思ってる事、一緒に言ってみようよ」

「いいよー?」

 

 笑っていた。

 

 どこまでも、楽しそうに。

 

 今までも楽しかったけれど。

 

 それ以上に。

 

 これまでで、間違いなく最高の笑顔で。

 

 

 

「「俄然、無敵な気分っ!!」」

 

 

 

 負ける気なんて、微塵も起きない。

 

 たとえ必死で削ったHPが、半分以上回復してるクラーケンがいたとしても。

 

 もう、ミィは空回りしないし、自分を犠牲にするつもりもない。

 

 これまで以上に、ツキヨはミィを助けるし、自分自身も負けない。

 

 お互いに助けてくれると心の底から信じているから、もう、怖くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんて思ったものの、どうしますか、ツキヨさんや?」

「実際、もう【殺刃】しかないでしょ」

「え?良いの?」

「ちょっと発案者?」

 

 なんて。やっぱり。

 ピンチには変わりないのだ。

 クラーケンは回復し、魚はもはや壁。

 突破も困難。

 ミィは【魔力炉・負荷起動】の反動によりMPが減って、もうほとんど魔法が使えない。

 戦力はツキヨだけ。

 けれど、生半可な攻撃は魚の壁に遮られ、勝率の低い賭けに出るわけにも行かない。

 

 そんな状態でも、クラーケン(モンスター)は待ってくれない。

 漆黒に染まる海の中で、魚の群れが急速にその数を減らしているのだ。

 さながら、体を風化させるかのように一瞬にして消え、粒子のエフェクトを散らし。

 そのエフェクトは、クラーケンに吸い込まれる。

 食べているものとは違って、魚の力を吸収しているように見える。

 

「……来る」

「迎え撃つ、しかないよね」

 

 クラーケンは一度身震いすると、全身から青いエフェクトを散らしながら魚群の壁を切り裂いて二人に突進。

今まで以上に早い速度での突進は、二人に考える暇を与えない。

 

「【聖浄水域】【水君】【聖なる水盾】【聖流絶渦】【聖命の水】っ!」

「【炎陣】【ファイアウォール】【炎帝】!」

 

 使える力、その全て。

 

 それぞれ魔法に【聖水】【火】属性を付加し効果を上げ、ミィは炎の壁と【炎帝】を、ツキヨは【水君】を盾のように前に突き出し、その手前に聖水の大盾を作り出し防御力(VIT)も上げ、一番外側に激流の守りを敷き、万が一に備えてHP回復も掛ける。

 

 それでも、なお。

 クラーケンは、その全てを突き破る。

 

「守れ、【飛翼刃】!」

「ツキヨ!?」

 

 【最速】クエストの時と同じように。

 攻勢を諦め、自分とミィを蛇腹剣の繭の中に取り込むことで、即席のシェルターを作る。

数々の魔法で減衰させ、ここまでして、ようやく受け止めた。

 

 

 シェルターの外は、さながら災害だった。

 

 

 クラーケンが突進し、触手を何度も叩き付け、魚たちは弾丸の如き速度で突き込む。

 

 【白翼の双刃】が何度も砕け散り、その度に即座に再生を繰り返し、層を厚くし持ち堪える。

 

 けれど突破されるのは時間の問題であり、このままでは何もできず負ける。

 そうなってしまうくらいならば。

 

「ねぇミィ。ギャンブルは好き?」

 

 笑って、ツキヨがそう持ちかけた。

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 無敵な気分ではあったけど、勝機なんてどこにもない。ミィは弱体化してるし、私の魔法攻撃力では魚の壁すら突破できない。

 クラーケンはHPを回復して、凶暴化してる。ボスに回復を持たせちゃだめって、昔のゲームからのお約束があったと思うのに。

 それでも、絶望的状況だとしても。

 

 ミィが隣にいれば安心できてしまうのだから、そろそろ本格的に病気だ。

 

 あぁ……これで2回目。クラーケンの攻撃、重いなぁ……【破壊成長】で元通りになってもぎりぎりとかあり得ないって。

 

 ここ二時間近く、ずっと本気を出し続けてる。

 【最速】の修得のために一週間毎日六時間ぶっ続けで本気を出していたのが功を奏し、この程度なら問題ない。

 だけど。今は、()()()()()()()()

 

 意識を、あの時と同じ深度へ。

 森で何百というモンスター軍を双剣で蹂躙し、殲滅したあの時と同じレベルへ。

 九頭大蛇の移動のからくりを見抜いた時と、同じ深度へ。

 

 それでも、足りない。

 

「ツキヨ……?」

 

 水の振動……感じる。

 音……流石に無理。

 視界……最悪。

 

 頼りは振動だけ。それも私が動けば、その振動で紛れてしまう。

 【水爆】……打ち漏らしがあったら詰む。

 【飛翼刃】……クラーケンには通用しない。

 

 あ、はは……うん。どうやっても、無理だ。うん、無理無理。何しても勝てないし、何をやっても無駄に終わる。

 

 あぁ、また壊れた。もうこれで3度目。

 長さを変えないから、必然的に耐久性は上がってるのにこのハイペース。規模を私とミィの周囲一メートルに縮小……これが壊れたら、再生する間もなく総攻撃を受けて終わり。

 

「うん、むり。()()()()()()()()()()辿()()()()()()や」

「は?」

 

 例えミィが万全の状態でサポートに徹してくれたとしても、どうしても()()()()()()()()()

 ()()()()()

 

 だから。

 

「一緒に来て、ミィ。二人で、あれを倒そう」

「っ―――」

 

 一人じゃ、駄目だ。

 隣にミィがいないと、どれだけ最強と呼ばれるほどに強くなっても。

 【超加速】クエストみたいに蹂躙しても。

 【最速】クエストみたいに見切っても。

 

 

 

 心から一緒に楽しめる相手が居ないんじゃ、全能感も多幸感も、達成感も感じない。

 一緒に、勝ちたい。

 

 残念なことに見た目には両翼(双剣)を持ってても。

 

 私の片翼は、ずっとミィの翼だったから。

 

 

「どうにも私は、初めから【比翼】みたい」

 

 ね、お願い。一緒に飛んで、ミィ?

 

「一人じゃ飛べない私を、隣で支えて?」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 私が、彼女から一番欲しかったことは何か。

 それは、親友と呼ばれることでも、助けてくれることでも、手伝ってくれる事でもない。

 

 ()()()()()()()()()()()んだ。

 

 ツキヨは大抵のことが自分でできちゃうから。

 本当の意味で、私の力が必要だって言ってくれるのをずっと待ってた。

 私がいた方が楽しいから。

 私とやった方が、大変じゃないから。

 だけどそれは、私が居なくてもできることで。

 

 強いツキヨと一緒にいることは、それを知らしめられているようだった。私だって、ツキヨの力になりたいのに。

 ツキヨは、私に隠れて一人でやってしまう。

 だから、その言葉を待ってたんだ。

 

「一人じゃ飛べない私を、隣で支えて?」

 

 答えなんて、最初から決まってる。

 

 いつも後ろで見ているしかできなかった。

 

 いつも、一人で前に出れるツキヨを見て、歯痒かった。

 

 でも、違ったんだね。

 

 ツキヨも、一人じゃダメだったんだ。

 

 一人じゃできない事もあって。

 

 それは、隣で支えなきゃいけなくて。

 

 それは、私にしかできないことなんだ。

 

 なら、答えよう。

 

 全霊を以って。

 

 なら、並び立とう。

 

 位置だけじゃなく、心でもツキヨの横に。

 

 なら、一緒に飛ぼう。

 

 私もツキヨに支えられてここまで来た(飛べている)から。

 

 私達は、二人だから。

 

 イベント前に、演説台の上で言ったもんね。

 

 『最強の頂きを見せてやる』って。

 

 なら、まずは私達がそこに到達しよう。

 

 遥か高みへと、二人で飛ぼう。

 

 

「―――当然っ!」

 

 

 だったらさ。

 

 今、私達を睥睨してるあれは、邪魔だよね。

 

 あんなの、二人で乗り越えよう。

 

 さっさと勝って、今よりも高みへ。

 

 それが、私達二人にはできる。

 

 

 

 支え合ってこそ、【比翼】。

 

 片方の翼しか持たない私達は、だからこそ二人で支え合い、協力することでどこよりも。

 

 誰よりも。

 

 長く高く、飛んでいられるのだからっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『スキル【比翼連理】を取得しました』』

 

 

 

「「――――――は?」」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 二人の頭に響いた、全く同じ通知音。その名前と、スキル効果を知って、二人して笑ってしまう。

 なんだ、それは。

 

 シェルターの外は大災害なのに、内側は穏やかな時間が流れる。

 これほど笑ったのは初めてかもしれない。

 そう思えるほど、自分たちにピッタリで。

 今、この状況を打破するのにピッタリで。

 運営が狙ったんじゃないかと邪推する。

 

 それでも、まぁ。

 

「使わない手は無いよね。ツキヨ?」

「当然」

 

 災害の衝撃が止んだのを確認し、シェルターを解除する。それを見て、モンスターたちはまた突っ込んでくるけれど。

 それより早く、そのスキルを発動した。

 

「「【比翼連理】!」」

 

 

 【比翼連理】

 同じスキルを持ち、互いの同意を得た上で初めて使用できるスキル。その効果は四つ。

 一つ。使用者二名のH()P()M()P()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 視界の端に見えているHPとMPのバーが共有化され、その数値を爆発的に増加させた。見えていないが、ステータスとしてはミィからは【INT】、ツキヨから【DEX】が共有化し、更に高くなっているはずだ。

 

 スキル効果。二つ目。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「私からは、【魔力炉】を」

「私からは、【水君】を」

 

 繋いだ手に光が灯り、じんわりとしたぬくもりを感じた。すると、ツキヨのステータス欄から【水君】が消え、代わりに【魔力炉】が追加される。

 

 スキル効果。三つ目。

 

(使い方は―――)

(……うん、了解)

 

 連理の枝の如く繋がる二人は、考えることをそのまま相手に伝えることができる。

 フレンドメッセージとスキルの取得通知を応用したものだと思われる、思念による直接通信。

 それにより、ツキヨは【魔力炉】の使い方をミィから一気に教わる。

 

「―――【魔力炉・負荷起動(アルキアティウス・オーバーロード)】っ!」

「【血風惨雨】【爆炎】―――!」

 

 ツキヨとミィを中心に、白銀のオーラが世界を染める。

 ツキヨとミィの合計MPは、ミィのMPが減ったとはいえ500を超え、スキルによって五倍にまで上昇したそれにより、ミィが魔法を連続使用していく。

 だが、それだけに留まらない。

 

(借りるよ、ツキヨの片翼(魔法)!)

(存分にどうぞっミィ!)

「遠慮なく!【炎帝】――【水君】!」

 

 本来ならば不可能だった、【炎帝】と【水君】の同時使用。

 【炎帝】の取得条件が魔法は【火魔法】のみ取得していることが条件であったが故に実現し得なかった奇跡。

 灼熱球と水流の刃を二つずつ作り出したミィは、それを全く別々に操って打ち漏らした魚を焼き殺し、切り裂いていく。

 

()()は任せるよ)

()()が途切れない限りね!)

 

 思念による直接通信は、言葉を交わすよりも尚早く。互いのやりたい事が手に取るように毎秒伝わるため、言葉少なでも十分すぎる作戦が立てられる。

 

「【水爆】!」

「【最速】!」

 

 ミィのツキヨとは比べ物にならないほど高い【INT】により、魚の壁に風穴を開けると、二人は繋いだ手を更に固く絡ませると、一気に加速してスミに染まる海域に飛び込んだ。

 白銀で染め上げると思われた海域は、それでもクラーケンの力が強いのか、闇を色濃く残す。

 

「【フレアアクセル】【フレアアクセル】【フレアアクセル】……っ!!」

 

 同時に、ツキヨは全てのスキルを解除して【殺刃】を起動する。

 暗い水の中で、尚も漆黒に染まり始める刀身。

 

 

 【比翼連理】は、二人共解除しない限り継続される。譲渡されたスキルもまた、【比翼連理】が継続中は発動状態で固定される。故に【魔力炉・負荷起動】は発動されたまま、ミィの【フレアアクセル】の加速力を『動力』に、クラーケンのいる暗闇を突き進む。

 

 その途中は、茨の道なんて言葉が言葉遊びに思える地獄のような攻撃の数々。

 視認した時にはすぐ目の前(絶体絶命)

 速度は亜音速。

 そんな、普通では回避不可能な攻撃が、連綿と続く間隙のない波状攻撃で襲ってくる。

 

 

 

 ―――だが、忘れてはならない。

 

 

 ここにいるツキヨは()()()()()()のだと!!

 

 

 

 

(私の見てる景色、ミィにも見せてあげる)

(うん!楽しみ!)

 

 絶死の檻を紙一重で躱し続ける。

 見えた時には手の届く距離にある触手と魚の群れは、しかしてその全てが空を切る。

 ツキヨの《神速反射》の前に、一秒後の絶望など起こりはしない。

 

(すご、一回も当たんないっていうかこんなギリッギリで通り過ぎてるんだ)

(それができるからね。さて、おまけにミィ、『これ』も貸すよ)

(うん、ツキヨの()()()()、一本借りるよ)

(比翼なら、もう一人も翼を持たないとね)

 

 そうして笑うミィの繋がれた右手に温かい何かが通り、それが左手まで移動すると、即座に形を取った。

 

「やってみたかったんだよねぇこれ

 ……【飛翼刃】!」

 

 それは、今ツキヨが右手に握る【白翼の双刃】の片割れ。

 スキル効果。四つ目。

 装備品の一時的譲渡。それも二つで一揃えの装備だとしても、単体から譲渡できる。

 大きく開かれた白銀の左翼は、思念通信からツキヨのイメージによるアシストすらも受け取り、より緻密で鋭く羽ばたく。

 

(いま!)

「【パーフェクションパリィ】!」

 

 ミィが何故か取得していた武器防御スキル。

 そしてそれを知らなかったのに、完璧なタイミングで指示を出したツキヨ。

 それを信じて疑わず、一片の迷いなく振り抜かれた左翼は、突進してきた魚の群れを一網打尽にした。

 ミィが自己判断で行えば、一匹持っていければ良かったというタイミング。

 それをツキヨが完璧にアシストすることで数十匹からなる群れを一振りで仕留めた。

 

 その後も、ミィが【フレアアクセル】の連続使用で加速を続ける。暗闇の世界を白銀の月が照らし、光が縦横無尽に駆け巡る。

 

「【遅延】解除!」

 

 ここぞとばかりに、ミィが先程用意していた百本の【炎槍】を一斉射出し、スミの世界を炎が彩る。

 苦悶の咆哮が轟き、それが標的の居場所を教えてくれる。

 

「「見つけたっっ!」」

 

 【殺刃】の準備完了まで、残り十秒。

 触手は全方位から迫り、魚は隙間を縫うように逃げ道を封じる。

 

(こじ開ける!)

(押し通る!)

「【水爆】【爆炎】【フレアアクセル】!」

 

 風穴を開き、ノックバックで僅かに硬直を誘い、爆発の加速力で一気に突破する。

 正に理想のスキル連続攻撃(コンビネーション)

 まばらな魚による突進はツキヨが紙一重の身のこなしで躱し、突破する。

 残り、五秒。

 

 一際太く力強い触手が二本、二人を挟み込むように迫り、上からも天井が降ってきたかのような勢いで無数の触手が壁となり、高速で二人を叩きつけようと迫りくる。

 

(突き進め!)

(それしかできない!)

 

 もう、勝利は目前に迫っているのだから。

 ミィを信じて、ツキヨは前に進む。

 

「【水陣】【炎陣】【水君】【炎帝】!」

 

 【水陣】【炎陣】が【水君】の威力を強化したかと思えば、水流の円刃が僅かに炎を纏い、その大きさを二周りも大きくさせる。ミィの高い【INT】によってなし得た強化幅は、二つの強化魔法を重ねることで、【聖浄水域】を上回る。

 それにより左右の太い触手を、濡れた紙を切るかのように斬り裂くと、水流を纏う【炎帝】によって爆裂し、同時に【水君】を頭上に運ぶ。

 ミィは知っている。

 二層に上がる時、それは見ているから。

 

「【水君】は、盾にもなるんだよぉ―――っ!」

 

 受け止めきれない大質量の触手の圧力。

 けれど、コンマ数秒の猶予を作り出すくらいならできる。

 その僅かな時間さえあれば、ツキヨが突破できるのだから。

 

 あと、二秒。

 限りなく漆黒に近い刃が、その時を待つ

 

 遂にクラーケンの頭の中央部を捉え、後は【殺刃】の完了と同時に突き刺すだけ。

 ここまで来たのだ。

 奇跡みたいなタイミングのスキル取得によってなし得たこのチャンスを無駄にしないためにも、1%の不安材料も挟まず、確実に即死効果をこのデカブツに叩き込むために。

 あと二秒、ここで生き残る。

 

(来るっ!!)

(ツキヨは剣を構えて!)

 

 残った魚、触手、不可視の爆発魔法陣、他にも全てが二人を捉え、絶望の未来を幻視する。

 けれど、ミィに不安はない。

 使うのは、親友が信頼を寄せる、日に三度しか使えない大規模殲滅魔法。その、最後の一回。

 

「【水爆】!!」

 

 ありったけの思いを込めて放ったそれは、目の前の一切合財を粉微塵に吹き飛ばし、クラーケンのスミすら吹き散らし、青い海が微かに見えた。

 

 

 それは二人が実現した勝利の光。

 

 

(ミィ。最後()、一緒に)

(あ……うん!)

 

 気付けば、ツキヨが右手に握っていた片翼は純黒に染まり、ツキヨの左手とミィの右手で。

 二人で、握っていた。

 

 

 

 

 

 一蓮托生となり(ステータスを分かち合い)

 心と心で繋がり(直接通信をして)

 互いに支え合う(力を貸し合う)

 

 それが、【比翼連理】。

 長い時を二人で戦い抜き、互いに対する深い理解をし、同じ日に生まれた(ログインした)片翼の雛鳥が得る、大空に羽ばたくための翼。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 残りは―――0。

 

 

 

 

 

 ――――――せーのっ

 

 

 

 

 

 

 

「「【殺刃】!」」

 

 

 

 

 

 それを最後に、暗い海を光が包み込んだ。

 

 

 




 
 投稿直前まで迷ったんですけど、やっぱり二人一緒に勝った方が良いなって思いました。駆け抜けた感が凄いですが……。
 実はまだイベント二日目なんですよねぇ……内容が濃すぎるw

 【比翼連理】ですが、これの取得条件に合わせてわざわざ拙作の開始時期を早めたり、この為の準備用のストーリーを違和感が無いように混ぜたりと、それなりに苦労しました。
 因みに【水君】が内包するスキルの中に【水爆】【血風惨雨】【渦潮】【水陣】辺りがあったりします。ので、【水君】を渡した時点で、それら全て使えるというチートさよ。

 ツキヨちゃんが装備を手に入れた時から、二人で【比翼】は絶対やりたかったです。
 『落第騎士の英雄譚』でエーデルワイスさんが初めて出た時から『なんで一人なのに【比翼】なんだろ?』って疑問だったんですよね。確かに二本の剣を広げる姿は翼に見えなくもないけど、伝説上の鳥『比翼』はそうじゃないだろ、と。
 それに対する私なりの答え(想像)が『対を成す相棒』の存在。そんな相棒が作りたくて、オリ主をエーデルワイスに寄せて、相棒枠をミィにして、お互いに支え合う様なスキルを作りました。
 実力は高いのに、弱い一面も持ったミィというキャラクターが、『オリ主と支え合う』というコンセプトに最も適していました。
 『思い入れ』って言うのは、そういう事です。この海皇戦を書くためだけにPS特化を始めたと言って過言じゃない。
 ここに初期設定を全部ぶつけたからね。

 他にも書きたいことがありすぎるけど、多分全部書いたら今話と同じくらいの文字数いくんで、必死に五指を抑えつけますね。
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