PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。   作:五月時雨

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 前回まででエピローグ的なモノも含めて、海皇戦が全部片付いた。
 そしたら色々とやりきっちゃった感があって、ちょっと疲れたので箸休め。

 ツキヨとミィが百合百合してる時に、例の五人は何してるかなーてお話。

 


幹部候補とその頃

 

 ツキヨとミィがクラーケンに辛くも勝利し、疲れから眠っている時。

 完全に日が落ちた頃。ミザリー、マルクス、シン、ヴィト、ウォーレンの『幹部候補』五人パーティーは、野営の準備をしていた。

 

「にしても、今日はやばかったな……」

「そうですね……」

「あぁ……」

「うん……手強かった」

「メダルはそれなりに良かったけどな……」

 

 ヴィトの言葉に、それぞれ同意する。

 この日、五人はとあるトラップに巻き込まれ、散々な目にあったのだ。

 

「僕は終わった後、本物かって疑ったよ……」

「マルクスは、ミザリーと殺ったんだったか?」

「うん。ミザリーの回復力と攻撃力には舌を巻いたよ……。そういうヴィトは僕でしょ?」

「あぁ……お前のトラップ、まじでえげつないのな……何度嵌められたことか、思い出したくもない」

「私はシンでしたけど、それほど苦戦しませんでした。相性が良かったですね」

「そう言われると凹むな……」

「ま、俺ら自身よりステータスの高い偽物だったが、全員勝てて良かったぜ」

 

 かかったトラップは、パーティーの味方の姿をした偽物と戦うと言うもの。それも、本人よりステータスが向上し、かなり強力になっているのだ。

 そんな相手をマルクスはミザリー。

 ミザリーはシン。

 シンはウォーレン。

 ウォーレンはヴィト。

 ヴィトはマルクス

 と、それぞれ相手にした。

 しかも、かなり苦戦したにも関わらずメダルも一枚ずつ。この日の戦意をすべて削がれた一件である。

 序盤は何も無かったのに、いきなり二人ずつ分断されたと思ったら、共にいた相方がいきなりフレンドリーファイアを仕掛けるのだ。しかも、かなり強力な。

 ダメージがあるのでモンスターだとすぐに分かり、何とか勝利する事ができ、合流したのだが、そこで相手が本物かと疑心暗鬼に陥ったのは言うまでもない。

 

「確認だっつって【崩剣】したのは許さねーぞ、シン」

「ウォーレン……全て余裕を持って躱されたのは、それなりにショックなんだが?」

「はっ、こちとら化物サブリーダーにしごかれてるからな。全くの同時に飛んで来ない攻撃程度、どんなに速かろうが対処できなきゃあの人にボコられんだよ」

 

 疑心暗鬼からの解決策は単純明快。パーティーメンバーは攻撃してもダメージが発生しないので、互いに軽く攻撃したまでである。

 まぁ、ウォーレンはシンの飛来する【崩剣】十本を紙一重で躱し、その身のこなしで偽物では無いと判断されたが。

 

「偽物がステータス高いだけでプレイヤースキルまでトレースできないのは助かった。お陰でヴィトの相手はやり安かったからな」

「そうですね。私が戦った偽物のシンは、本物ほど鋭く【崩剣】を操れませんでしたから、上手く隙を付けましたし」

「あぁ。本物のウォーレンなら『遅え』とか言って避けるか叩き落とす巫山戯た奴なのに、攻撃当てられたからな」

 

 良くも悪くも、強力なスキルとは別にプレイヤースキルが実力を左右するプレイヤー三人の相手は、明らかに本物よりも劣るプレイヤースキルだったため、上手く戦うことができた。

 

「さて。もう時間も遅いですし、見張り交代しつつ、今日は休みましょうか」

 

 五人なので、二時間交代でも余裕を持って一夜を明かすことができるし、睡眠も確保できる。

 ミザリー用の小さなテントとほか四人が寝る大きなテントを挟んで、五人は見張り交代の順番を決めていた。

 

「昨日もそうですが、ウォーレンは本当に良いのですか?」

「構わねえよ。というか、俺から頼んでるんだし、むしろ途中で起きる四人に申し訳ないくらいだが?」

「そうですが……」

 

 ミザリーが問いかけるのも無理はない。

 なぜなら。

 

「だとしてもよ、2日連続でウォーレンが一人は無いだろ」

 

 彼らは、見張り番を二人体制にしている。

 というのも、彼らは金のメダルを三枚保持しているので、他のプレイヤーに狙われやすい。

 故に対処のために三時間交代の二人体制を組んでいるのだが、前日に続きウォーレンは『一番最初に、一人で二時間』見ると言っているのだ。

 尤も、二人で見張る彼らより一時間短いため、その分負担は減るのだが。

 だとしても。

 

「昨日、ウォーレンの時に襲ってきたしね……まぁ、返り討ちだったらしいけど」

「襲ってきた奴らには、ご愁傷様としか言えないけどな」

 

 前回十位以内に入った三人が寝ていて、見張りはさして強くもなさそうな槍兵一人。狙われて当然だったが。しかし。

 

「文句は俺に勝ってから聞くが。()()()()()()()()ぜ?」

「はぁ……無理ですね」

「無茶すぎるよ……」

「自分のヤバさを自覚しろ、ウォーレン……」

「本当にな……」

 

 ある時を境に、()()()()()()()()()()()()()()()ウォーレンは、ミザリー達四人がかりでも有利に立ち回ることができる。

 いや、ハッキリと言えば、四人がかりにも勝利することができる。

 このパーティーにおいて、最高戦力とはウォーレンなのだ。

 だからこそ、襲ってきたプレイヤーにはご愁傷様としか言えないのである。

 一番平凡に見えて、一番厄介なプレイヤーが、ウォーレンだから。

 だからウォーレンは、細長い黄槍(おうそう)の柄で地面をコンと叩き、不敵に笑う。

 

「ま、せめて俺の間合いの内で生き残ってから、考えてくれや」

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 夜の冷たい空気を槍が貫く。

 最短距離を、最速で。

 無駄のない動きは、構えた瞬間すら悟らせずに突きを放つ。

 突き、払い、掬い上げ、叩きつける。

 槍であるが為に大振りだが、その破壊力は剣を上回る。

 『見えない誰か』と鍔迫り合うかのように、時に守り、時に苛烈に、時に後退する。

 真に迫る張り詰めた緊張感は、『見えない誰か』をはっきりと幻視できるほど。

 なるほど、戦っている相手は『彼女』かと、俺は納得した。

 そうで無ければ、アイツがいつの間にか防戦一方になるなどあり得ない。

 俺たちを圧倒するアイツと、近距離であれ程に戦えるプレイヤーは限りなく少ない。片手の指すら余るだろう。

 その中で、常にアイツを圧倒できる、アイツと身近な存在は、一人しかいない。

 

「ずりいなぁ……」

 

 最初に彼女と接触したのは、自分だったのに。

 俺は武器も同じで、彼女の素をアイツは知らないのに。いつしか自分より親しくなっていた。

 

 寝付きが悪かったから、夜の空気を吸っていたら、これだ。

 どうせ次の見張りは俺とミザリーだし、そのまま起きてようと散歩していたら、これだ。

 野営のテントからやや離れ、けれど見渡しの良い高台の上で、ウォーレンが槍を振っていた。

 

 確かにここなら、テントの周辺一体を見渡せるが。だが、見張りはそうじゃないだろうと。

 てめぇ何俺のいるテントとは真逆の方を向いて、鍛錬してんだと言いたいが。

 まぁ、口で言うよりは、『こっち』の方が伝わりそうだったから。

 

「ふっ!」

 

 腰の双剣を思いっきり投げつける。俺自身は丸腰になるが、まぁ威嚇だけだ。問題ない。

 背を向けるウォーレンは気付かない。

 このまま当たってくれねぇかなぁ……と淡い願望を抱くが。

 

「っおら!――って、なんだヴィトかよ」

「……ははっ。まぁ、無理だよな」

 

 三メートル。

 僅か三メートルが、驚くほど遠かった。

 俺の投げた双剣は、ウォーレンの周囲三メートルに入った瞬間に一つを見もせずに石突で。もう一つを振り向き様に穂先で叩き落とされた。

 

「【八方睨み】……だったか。もう結界じゃねえかそれ」

「間合いの内を完全知覚できる代わりに、【気配察知】は消えたけどな」

 

 それが俺たちが、ウォーレンの間合いを超えられない正体(スキル)

 槍の間合い周囲三メートル以内ならば、あらゆる存在を知覚、認識できるスキル。

 代わりに【気配察知】が消えたって言ったが、そんなの他のやつに任せればいい。

 攻防に優れた【八方睨み】を超えた奴を、俺は知らない。

 が、この分だとツキヨなら抜けそうだな。

 

「で?まだ交代には早いが、どうかしたか?」

「寝れなくてな。ただの散歩だ。ウォーレンこそ、見張りのくせに何してんだ」

「日課だよ日課。まぁこれ自体は、つい最近始めたんだが……」

「日課?」

「あぁ。仮想敵にツキヨを置いて模擬戦。本人が居れば、本人に頼んでたが……今はできないからな」

 

 ツキヨが少し前に【炎帝ノ国】の活動に顔を出さなかった一週間の間、ウォーレンはツキヨと会った時、何度か模擬戦をしていたらしい。その時の名残で、一日の終わりに動作確認を踏まえた鍛錬をしないと眠れなくなったのだとか。

 だから、一番最初に見張りをやってるのかと納得はするが。

 

「……お前、いつの間にか戦闘民族にでもなったのかよ?」

「仮想敵としては最上級だしなぁ……【八方睨み】だって、ツキヨと模擬戦してる時に取れたし」

「お前の進化の原因はあいつか!」

 

 自分だけじゃなく、周りまで進化させるとかやめろよと言いたい。

 

「ま、そのお陰(せい)でプレイヤースキルが格段に上がったしな」

 

 【八方睨み】は、あくまでも知覚、認識できるだけ。そこからの対応はプレイヤーの力量に依るところだ。ウォーレンがシンの飛来する剣を全て躱し、叩き落とせるのも、ヴィトの双剣を見もせずに瞬時に対応したのも、全てツキヨとの鍛錬の賜物だと言う。

 

「近距離は鬼みたいに強えし、魔法もえげつねえ。挙げ句剣が伸びて予測なんてできやしねえ。そんな相手と何度も戦ってりゃ、プレイヤースキル伸び放題だぜ?」

「勝てる気もしないがな」

「実際、まだ一撃も入れられてねぇよ。守るので精一杯だ」

 

 最初はウォーレンが攻めるが、少しずつツキヨも反撃に出て、ウォーレンが対処できなくなったら終わりのルールらしい。

 ツキヨといると、スキルに頼らない部分。プレイヤースキルが飛躍的に向上する。

 それは、ツキヨによる無限アルマジロを体験したメンバー全員が実感する所だが、ウォーレンはその先を行く。

 

「確認のためっつって無限アルマジロに連れて行かれた時は死ぬかと思ったが……【八方睨み】と模擬戦のお陰で、一時間耐久できちまったよ」

「マジか…すげえなおい」

 

 ウォーレンの目が死んでいるのは気になるが、それでも一時間、数百のアルマジロ相手に生き残れるというのはとんでもない事だ。

 だが同時に、それはツキヨは素で【八方睨み】のウォーレン並の実力があることを示す。

 

「勝てる気がしねぇ……」

「生き残れる時点で、お前も大概だよ」

 

 今日の偽物相手だって、シンが偽物のウォーレンを対処できたのは、プレイヤースキルで劣っていたかららしい。

 【八方睨み】が如何に攻防に優れていても、十の剣を捌くのは容易ではない。そんな事ができるウォーレンの頭がおかしいのだ。だから、ある程度は避けられるし叩き落とされるが、数本は確実に当てることができたという。

 

「……プレイヤースキルおばけが」

「うっせ。プレイヤースキル極振りに鍛えられりゃこのくらいできるようになるんだよ」

 

 プレイヤースキル極振りとして知られるツキヨの相手などやりたくも無い。システム的に設定されたスキルなら、対応策などいくらでもある。

 予測不能な一撃で倒すツキヨ相手になど、生き残れるだけで相当な実力がある。

 だからこそふと、気になったことがあった。

 

「なあ……ミィとツキヨって、どっちが強いんだ?」

「あ?ミィ様とツキヨ?」

 

 プレイヤースキルに極振りしているツキヨは強い近接戦闘最強と呼ばれるほどに強い。

 どんなスキルを持っているかは殆ど知らないが、最後に見た瞬間移動としか思えない高速起動は脅威だ。

 視界から消失し、いつの間にかモンスターの群れが細斬りにされていた光景は、今でも目に焼き付いている。

 だが、ミィの火力も計り知れない。【炎熱耐性】のモンスターも、耐性の上から焼き尽くすミィの攻撃力は、魔法使いでもトップだろう。

 

「どっちも強いのは分かるんだが……二人が戦ってるところは見たことねぇしな。ちょっと気になった」

「まぁ、たしかにな」

 

 前衛にいるとは言え、ミィは純魔法使い。対するツキヨは、魔法も高水準で使えるが基本は剣だ。比較できない。

 だから、戦ったことが無いらしい二人の優劣も分からなかった。

 

「魔法属性の有利はツキヨだが、それを撥ね退ける火力がミィにはあるからなぁ……しかも前衛でかなり強いと来た」

 

 どちらも足元にも及ばないほど強いため、答えが出せない。正直なところ悔しいが、事実だからしょうがない。

 だからこそ、自分よりも強く、二人に近いウォーレンに聞いてみたのだ。

 そのウォーレンも、しばし思案する。

 

 

 

 

 

 しかし、その内容は少し違った。

 

(ヴィトは分かってねぇな……ツキヨの戦闘の根幹を支えているモノが。後手から()()()()()先手を取る反則的な反射速度は、今の俺でも防御が間に合わねえし……てか本当に瞬間十六連撃とかやめろください)

 

 二刀・【八岐大蛇】が、半ばトラウマとして刻み込まれているウォーレン。だからこそここまで成長したのもある。

 

(あの時は地獄だった。【八方睨み】取ってからはそれなりに戦えるようになったが……そういや、前にポロっと言ってたか?)

 

 その成長過程を思い出し、地獄だと目が死ぬ。死んで一ヶ月だった魚みたいな目になる。

 が、そのトラウマを引っ張り出してきた甲斐があったのか、その途中で話したことの一つを思い出した。

 

「ツキヨが前に、そういうこと言ってたわ」

「あん?」

「俺がサブリーダー代理やってる間だよ」

 

 ツキヨが【最速】を修得するために、グループの活動をウォーレンに投げた時。ウォーレンは、練習で走り回るツキヨの護衛のような事をしていた。【殺刃】のことも聞いたし、鍛錬も付けてもらったし、【八方睨み】も手に入ったしと良いこと尽くめだった。その時にポロッとツキヨが溢していたのを思い出したのだ。

 

 なんでも。

 

「ミィ様と戦う時は、最初から全力じゃないと寝首をかかれるらしい」

「………へぇ。拮抗してるってことか。だが、二人は戦ったことないんだろ?」

「この世界じゃあな」

 

 この世界。NWOの中で、二人は戦ったことはない。戦う必要がなかったからなのが大きい。

 

「昔、魔法無しの剣を題材にしたゲームをやってたんだと。その時にこっちで言う【決闘】をしたとかなんとか?」

「………待て。それだとミィが、()()()()()()()()()()()()って聞こえるんだが……」

「そう言ってんだよ」

 

 “俺も聞いた時は耳を疑った……”と苦笑いのウォーレン。

 ミィと一緒に、双剣の扱い方を考察した時のゲームの話。そして、ツキヨが【旭日一心流】を見様見真似で鍛錬していた時の話である。

 

「ミィ様も最初は一緒に双剣を使ってたんだが、性に合わなかったらしくてな?途中から短剣に変えたんだと」

「そしたら、性に合った?」

「あぁ。ツキヨとは違う方向性に突き詰めて、そのゲームが終わる頃には、ほぼ互角だったらしい」

 

 ツキヨが【天津風】を練習している間、ミィは早々に諦め、別の道を探した。その果に辿り着いた、先の先(ツキヨ)に対抗する究極の後の先(流派)

 その道が、ミィには合っていた。

 

「ツキヨは先の先。反撃の手を許さず、最速で相手を叩き潰す剣技を得意としてる。

 だがミィ様は相手の攻撃を受け流し、後の先を取る剣技を身につけ……いや、極めた」

「カウンター主体か」

「あぁ。現実で今なお残る剣術の一つ。その中で、《最後の侍(ラストサムライ)》って呼ばれるすげえ剣士の流派を独学で練習して、短剣にアレンジして使ってるらしい」

 

 

 名を。

 

 

 

「綾辻一刀流。

 ミィ様は、ツキヨの瞬間八連撃を()()()()()()()()()()()らしいぜ?」




 
その1 ウォーレンさん元七星剣王化
 槍使いだったのも、こうなるの見越してた所あるよね(白目)
 【八方睨み】は武器の届く間合いを完全知覚するスキル。代わりに【気配察知】が消滅。

その2 ヴィトさんごめんなさい
 本当はヴィトさんがウォーレンの立ち位置だったんだけど、気付いたらウォーレンいた。
 まぢごめんうぉーれんさん……。

その3 ウォーレンさん強化週間
 ツキヨが【最速】を修得してる裏でこんなことがあった。他人まで進化させるとかメイプルに通づる所あるよね。しかもPSまで鍛える始末。
 PS特化プレイヤー増殖しそう。

その4 PS特化と類友
 なんか最近、別の世界線で似たようなタイトル付けた気がする。この世界線は剣術バカしか居ないのか……て思うけど、主人公が【八岐大蛇】使う以上、ミィはこうなるよねって。
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