PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
完全に人間業じゃないやこれ……
ミィが偽物のツキヨと戦闘を始めた時。
ツキヨもまた、偽物のミィと対峙していた。
「ははっ、あはははは!【炎帝】!」
「威力は、上がってるんだね」
本物のミィに比べて2倍近い魔法の効果範囲に辟易としながらも、AGIを活かして一撃も喰らわないツキヨ。
「ステータスは高いけど、それだけだよね」
攻撃は魔法一辺倒。工夫もなく、ただただ乱れ撃ってくるだけの雑な戦い方。
「本物の戦い方を、もう少し見直してきなさいっての……プレイヤースキルはコピーできないみたいだから、仕方ないけど、さ?」
本物のような状況に応じた小技も無く、駆け引きも戦略性もない魔法。範囲が広いため、いつもより大きめに回避して取り敢えず観察に徹しているが、あまりにお粗末。これではパリィの一つも必要なく、回避だけで接近できる。
「とはいえ……っと、【リフレクトパリィ】」
パチンッと偽ミィが指を鳴らすと、ツキヨの周囲に無数の【ファイアボール】が展開された。
【ファイアボール】は直進しかしないため、発射角から弾道を瞬時に判断し、最も被弾の少ない位置に移動すると、【リフレクトパリィ】で器用に被弾するモノだけ偽ミィに弾き飛ばす。
「あはっ、【爆炎】!」
「【水爆】!……私の最大火力でようやく相殺。どんだけ【INT】高いんだか……」
低威力高ノックバック攻撃すら、ツキヨの魔法最大火力と同等の威力を持っていた。最低でも森一つ蹂躙する【水爆】と同等と考えると、その理不尽さは推して知るべし。
しかも偽ミィに弾いた【ファイアボール】により、威力を減衰した【爆炎】が、である。通常時なら押し切られるかもしれない。
「まぁ、関係ないけど?」
偽ミィの魔法の威力が高いのなど、ツキヨにとって別に問題ではない。
「魔法の威力が高いのは、私が一番知ってるし」
彼女が高火力になるのを焚き付けたのは、他ならぬ自分だから。
「ミィの火力には、元から私の魔法じゃ及ばないしね……全く、焚き付けた本人として嬉しいやら誇らしいやら……っ」
結局嬉しいのである。
「【
「確か、【魔力炉】の永続的MP喪失スキル、だったね……一時間、
【魔力炉・負荷起動】よりも淡い光が、薄っすらと偽ミィを包み込む。けれどそれは、弱くなったのではない。より高密度に凝縮、圧縮された結果であり、今の偽ミィは魔法を
そして効果はもう一つ。
「【炎槍】!」
ミィのスキル発動に合わせ、炎の槍が
魔力炉の無限化に伴い、一度の魔法スキル行使で五重化するだけでなく、クラーケン戦でミィが苛立った魔法の飽和もしなくなる。
威力と弾幕。
そのどちらも究極にまで突き詰めた、ミィの切り札。しかし使用すればMPを完全に失うため、また上げ直しとなる。ミィにとっては絶対に切れない切り札。
それを、偽ミィは躊躇なく切ってきた。
「あは、あははははっ!」
パチンッパチンッパチンッパチンッと都合四回、偽ミィの指が鳴る。
その数だけ【遅延】に保存された【炎槍】は加速度的に数を増やしツキヨの視界を埋め尽くす。
「あらら。勝負を急ぐべきだったかな?」
全周を包囲され、逃げ場はなく。
【聖流絶渦】でも偽ミィの火力では容易く貫通される。むしろ視界を遮るため悪手。
けれどツキヨに、
「はぁ……」
呆れ。いや、哀れみの感情すら向けて、偽ミィへ一歩踏み出す。
偽ミィは【炎槍】を射出する。
数百に上る炎の槍が、一つ残らずツキヨを刺し穿たんと高速で飛翔する。が。
「本人なら、最初から迷わず接近戦を仕掛けるでしょうね」
当たらない。
ただの一本も、掠りもしない。
「何故なら。その方がまだ、勝算があるから」
遠距離戦とは即ち、ツキヨに
たっぷりと軌道を見る時間があり、直線的にしか動かない槍など、ツキヨからすれば『どうぞ避けてください』と言われているのと変わらない。
「たとえ幾百の槍だろうが、ミィは私に当たらないと知っている。だから、本物なら迷わず
“私にしか使わないって決めてるんだろうなぁ……”と内心で嬉しく思いながら、ツキヨは歩みを止めない。止める必要はない。
「貴女は、確かにミィより強いよ。その火力も、思い切りの良さも、ステータスも」
だけど。
「だけど、まだ足りない。全然足りない。
ミィの強さを、一ミリもコピーできてない」
本物のミィは、こんなものじゃない。派手なのは好きだが、それ以上に勝利に貪欲なミィは、小技も絡め手も奇襲も何でもする。ただ、力押しでも勝ててしまうだけだ。
けれど、偽物は力押ししかできない。
「ま、良いか。私だって、実戦の中で一度試しておきたかったし」
左の翼を鞘に収め、散歩をするようにスタスタと歩く。淀みは無く、迷いも無い足取りは恐怖すら覚える。
「【最速】の体技は、私の技量を一つ上の段階へと押し上げた。これは、その成果の一つ」
元より洞窟ダンジョン。
戦闘範囲は狭く、十数メートル歩くだけで偽ミィの真正面。剣の届く範囲にまで間合いを詰める。
「抜きなよ、短剣。本人より高いステータスのコピーなら……本人より抗ってね?」
【白翼の双刃】の右翼のみ振り翳し、僅かな興味も関心もなく、感慨も抱かず、全力を出すまでも無い。
「【炎て――っ!」
「我流《
ミィにも内緒の、【最速】をプレイヤースキルで修得してからの変化。
全ての動作から加速を廃し、初速からトップスピードになる特殊な技能は、月夜の《神速反射》を更に引き上げた。
《八岐大蛇》にも、当然だが加減速はある。初速は消せないし、八度斬るためには八度の加減速が必要で、現実では負荷に耐えきれなかった。
しかし、【最速】に加速は無い。初速から最速を出す急激な零か百かのストップ&ゴー。
それにより、瞬間八斬撃は
それが、《十束剣》。
《八岐大蛇》を超える、新たな最強。
「本物のミィなら、このくらい簡単に受け流すんだろうね……」
ツキヨは斬り刻まれ、粒子となって消えていく偽ミィを見つめて、ポツリと呟いた。
期待していた訳じゃない。しかし、この偽物がプレイヤースキルすらコピーしていたらと、淡い興味だけがあった。
結果は、言うまでもないが。
「《天衣無縫》……やっぱり、私が負けるとしたら、ミィにだけかな……」
ミィだけが、過去にツキヨの瞬間八斬撃を無傷で切り抜けた。あの肌表面をつるりと滑り、まるで剣の方がミィを避けていくかのような感覚は今でも覚えている。
だからツキヨは、自分に勝てるのはミィだけだと考えている。たとえ暴力的な防御力だろうが、正統派の騎士だろうが関係ない。
自分に並びたいと叫ぶ親友だけが、
「早く、ミィに逢いに行こう。やっぱり偽物じゃ、本物には届かない……物足りない」
地面に転がるメダルを拾い上げ、小さく身震いする。
自分のように、明確な。劇的な進化じゃない。
けれど、確かに。
隣で自分を支え続ける親友が。
自分に、嬉しそうに刃を向けるのを幻視して。
「あーぁ。怖い怖い」
敵対するつもりはない。
けれど前回イベント前に演説した通り。
親友だからこそ、戦う時は容赦なく。
全身全霊で挑む必要がある、大好きな
「やっぱり隣を、歩いていたい」
支えたい人として。
共に高め合い続ける者として。
◇◆◇◆◇◆
互いに互いの偽を倒したツキヨとミィは、それぞれ倒した後に現れた魔法陣に乗って転移した。
「「………本物?」」
転移して視界が晴れると、目の前には螺旋階段と、お互いの顔。
どうやらほぼ同時に偽物を倒し、転移して来たらしい。ツキヨは、ミィの左手に握られた物を見て何をしたか察し――
「……確認してみる?」
「……じゃあ」
――ミィの提案に、ミィが鈍ってないか含めて確認することにした。
「ふっ!」
使うのは、偽ミィを倒した《十束剣》。
ツキヨの右翼から放たれた神速で迫る斬撃を防ぐ術は通常無く、文句なく惨殺される。
勿論、パーティーメンバーだからダメージはないが。しかしミィは笑って、前へ。
短剣を無造作に構えて、守る素振りすら見せないで飛び込んでくる。
その所作に、ツキヨは笑みを深めた。
(やっぱり、ミィはこうでなきゃっ)
かつて体感した、別のゲームでの驚愕を思い出す。これは、あの時と同じ。いや、あの時以上に研ぎ澄まされた、確かな脅威。
「《十束剣》―――っ!!」
恐怖はない。ダメージは受けないし、振り下ろすことに躊躇いもない。
交錯は、一瞬。
「全く……確認でする事じゃないよ、ツキヨ?」
「ありゃ……
ただ一つの斬撃も食らうことなく、ミィはそこに立っていた。
―――ツキヨの首筋に、短剣を押し当てて。
「《天衣無縫》、また昔より進化してるね」
「そっちこそ。いつの間に最大数伸ばしたの?」
「【最速】を修得してからだね」
「あぁ、なるほど……また目標が上がっちゃったなぁ……」
体感して、十六では絶対に受け流されるだろうと直感するツキヨ。
同時に、ミィの目標も悟った。
「今のミィには二刀《八岐大蛇》も流されそう」
「お、やったね!それが目標だったけど、とっくに達成してたか。次は瞬間二十斬撃……ねぇツキヨ。本当にほんっとーに……人間?」
「失礼なっ!」
「いや……一瞬のうちに二十回攻撃する人を、同じ人間のカテゴリーに入れて良いのか迷うというか、なんというか……」
「人並み外れてるのは自覚済みだよ」
だから苦労したんだ、とツキヨは笑って言う。
ミィは苦い顔だが、立ち直れたきっかけの人なんだから自信を持ってほしいツキヨ。
「十の斬撃を本当にほとんど動かずに受け流されたのは、流石にショックなんだけど……?」
ツキヨは、さっき『このくらい簡単に受け流すんだろうね』と呟いていたが、本当に受け流されると軽くショックである。しかも笑って踏み込まれた。なんだそれ。
「私だって、足踏みしてられないだけだよ」
奇しくも偽ツキヨが放ったのも十連撃だった。こちらは瞬間ではなく、高速だったが。結果として、本物の斬撃の鋭さを再確認できた。
「で?九はないの?」
「わざわざ使う必要もないし、今まで偶数で固めてるからね」
「……六の所在よ」
「ち、直前までは倍、倍と来てたから良いのっ」
使えない訳ではないが、わざわざ使う必要もないからやらないらしい。
「それより螺旋階段を登ろう。多分出口だから」
「はーい。滝壺から入った洞窟だから、地下に変わりないもんね」
本人という確認も済ませたので、ツキヨはメダルをミィに渡して螺旋階段に向かう。
見上げれば上から光が指していて、直接地上に出れるようだったが、昼過ぎに滝壺を潜ったが、既に日が傾いているのか、空が夕焼けの赤に染まり始めていた。
「これで……残り二枚」
「もうそんなに集まったんだ。けど、急がないと不味そうだよ。日が落ちかけてる。早くしないと夜も徹夜で移動することになる」
あまり人のいないエリアばかり彷徨ったので、メダルはどんどん集まった。しかし、同時に時間もかかりすぎたので、早く移動しないと翌日の集合に間に合わないかもしれない。
二人は慌てて、螺旋階段を登るのだった。
◆◇◆◇◆◇
運営陣は【海皇】が倒されてからと言うもの、常識が通用しないツキヨたちとメイプルたちの動向を定期的に確認していた。
「【鳥】の方は正規で生まれたが、まさか【狼】が【反魂】するとはな」
「だな……。あれっていくつか条件満たした上で、低確率だろ?」
「プレイヤーとモンスターのスキル相性が
「【狼】は完全に融和してますね……これ、もしかすると聖魔ルート入りますよ」
「嫌だ……これ以上胃の痛くなる話は聞きたくない……」
そこへ。
「ツキヨとミィがドッペルゲンガーを撃破しました!」
凶報が届けられた。
「そうか……まぁ、あの程度じゃ無理だろ」
「いや言っとくがな!ドッペルゲンガーもそれなりに強いからな!」
声を上げたのは、ドッペルゲンガーを作成した男である。
「丁度映像残ってるみたいだし鑑賞しようぜー」
運良くツキヨたちの戦闘ログが残っていたので、迷わずスクリーンに映す。もうその手に淀みは無く、皆も鑑賞モードだ。
まず映ったのは、ツキヨがミィの弾幕をすいすいと避けている映像。
「おい、ドッペルゲンガーのあれ、下手すると【銀翼】の弾幕よりやべーぞ」
「なんで限定空間内であんな避けれんだよ……」
『ツキヨだから』
「あぁ……そうだな」
速射連射掃射高射乱射ァ!!
弾ある限り撃ちまくれェ!
とでも言うがごとくドッペルゲンガーが魔法を乱舞する。何処のマシ○ガンラバーズか。
と言うか【魔力炉・無限起動】にて弾切れしなくなったので永遠に撃ちまくれェェ!!
と言った体で【銀翼】よりえげつない弾幕を張り巡らせる偽ミィ。
果ては全方位に数百の【炎槍】を浮かべ、運営をして頬を引き攣らせた。
「やべえな……あれ、いつかミィもできるんだよな……」
「はい。【遅延】の三次で。要はコピペですね」
「まだ二次が開放されたところだから、時間はかかるだろうけどな」
「でも何よりヤバイのは、あれをまっすぐ歩いて躱すツキヨなんだよな……」
「何だあれ?何なんだあれ?本当に人間か?」
「【最速】をプレイヤースキルで実現した時点で、皆察してるよ」
これ以上は精神衛生上、多大なるダメージを受けそうだったし、勝ったのは明白なので次はミィの鑑賞をすることにした運営。
瞬間十連撃を見なかったのは、果たして運が良かったのだろうか。
「ミィは……良かった。普通に戦ってるぞ」
「黒騎士に何もさせなかったけどな」
「勝ち方が格好良かったな」
ツキヨという常識破壊を見た後だからが、ミィの戦いに安堵の息を吐く運営。
が。やはりこいつも、海皇との戦いで大立ち回りした存在である。
「なんで魔法じゃなく短剣使ってんの!?」
「しかもドッペルゲンガーの動きを見切ってる、だと……っ!?」
「ツキヨ以上の速さで【最速】使ってるんだぞ……!?」
「お前本当に魔法使いか?短剣の方が強いとか何なんだよ!」
後にミィの装備を見て、実は最初の頃から短剣を持っていたことに驚愕することになるのだが、今は置いておく。
場面は最後。
ドッペルゲンガーのツキヨが【クロワ・デュ・スュド】を放った時。
今度こそ、運営達のいる空間に激震が走った。
「……今、何が起こった?」
「斬った、よな……?確かに」
「耐性系のスキル持ってないだろミィ……」
「ス、スローで見てみますか……?」
「頼む!」
優秀な運営さん。即座に直前からスロー再生する。そこには、ミィが薄皮一枚の所で全ての凶刃を躱しているのが見て取れた。
『はぁぁぁぁああああ!?』
「なんなの!?何なのお前ら!」
「体捌きだけで受け流すとかもうホントなんなんだよ!武道の達人なの!?」
「二人して人間業じゃないことするんじゃない!プレイヤースキル特化にも程があるわ!」
「笑ってるってことはそういうことだよな!?【刺突剣】の高速連撃スキルを余裕で捌いたってことだよなぁ!?」
「直前には【フラッシング・ペネトレイター】を【パーフェクション・パリィ】してますしね」
なんでこう、プレイヤースキルで純粋にドッペルゲンガーを倒すのか。
スキルやステータスは、完全に本物より上。
本人の戦い方をトレースして、最大限再現できるようにプログラムされている。
尤も流石に精密にはトレースできないので、ある程度はステータスによるゴリ押しだが。
なのに、実際はプレイヤースキルという運営にもどうにもならないモノで一蹴された。
『もうこいつらやだぁぁ……っ!!』
それだけが、運営の見解である。
《十束剣》ですが、単なる技名なので伝承にある物とは一切関係ありません。もし使われている字が違っても、この技は『十の斬撃が束となって襲いかかる剣技』なので間違いじゃありません。
まぁ分かる通り、《八岐大蛇》の発展系オリジナルです。エーデルワイスの体技を修めたツキヨなら、このくらいやってくれる。
両手でやれば遂に瞬間二十斬撃。人間がやって良い範疇を超えてる気がします。
ツキヨ「燕返し?え、瞬間三斬撃しかできないの?私、現実で瞬間八斬撃できますが?ゲームなら貴方の3倍以上ですが?
剣道三倍段って知ってる?私の方が三倍強いっていう意味らしいですよ」
これにはアサシンも涙目ですわ……。
過程は何もかも違うけど、起こる事象はそっくり上位互換だもの。
ツキヨは綾辻一刀流を修めてないので《悪路王》使えそうにないし、落第騎士の世界みたいに異能が普通な世界観でも無いので、異能を前提とした剣技は使えません。となると、純粋な技術で人間を辞めてみました。
……【旭日一心流】?に、肉体限界まで極めればできるんじゃない……?多分。
速度特化に引き続き、気紛れssの題材発表〜!
さっさと行きます。
・ツキヨとミィの百合展開!
・速度特化のハクヨウと姉妹だったら!
の2つに決定しました〜ワーワー!
百合に反応した人が多かった模様。やっぱり一定数の需要あるんですね。
これには私もにっこりです。
一歩遅れていた『ペインの告白が成功したら』も書けたら良かったのですが、普通にキツイので勘弁してください。速度特化と合わせて4つ短編ss上げるのでも結構大変なので。
投稿頻度落とさないし。
『もうこれペインの入る余地無いよね……』ってくらいの百合を頑張るので堪忍堪忍。
22日に速度特化。23日に次話を投稿します!