PS極振りが友達と最強ギルドを作りたいと思います。 作:五月時雨
翌日、早速ログインしたツキヨは、狼戦でスキルを取得したことを思い出した。
「そういえば、あの狼を倒した時、なんかスキル取得したっけ」
ツキヨからしてもあまり梃子摺らなかった相手ではあるが、スキル取得通知がしたことを思い出して確認する。
―――
【
HP、MP以外のステータスのうち四つ以上が戦闘相手よりも低い値の時にHP、MP以外のステータスが二倍になる。
取得条件
HP、MP以外のステータスのうち、四つ以上が戦闘相手であるモンスターの半分以下のプレイヤーが、単独で対象のモンスターを討伐すること
―――
「あー……【AGI】が変動するのは痛いなぁ…」
相手によって【AGI】が上がったり下がったりするのはきつい。ツキヨの反射速度であれば、すぐにでもその速度差をアジャストできるかもしれないが、本気を出している時に余計な事に思考を割きたくはない。
「んー…これは【廃棄】かなぁ」
【廃棄】すると、取得し直す時に五十万G払わないといけないが、ツキヨに後悔はなかった。
「それにしても、やけに人多いけど…まぁ日曜だしログインも増えるよね」
まだ朝の九時だというのに、噴水広場には普段の倍以上の人がログインし、思い思いに話していたが、日曜日だからと割り切って素材のために意識を切り替える。
「さて。私の双剣のためにもー素材集めに行きますかー!」
イズと話しを詰めていた装備内容。
イズが百万Gで全身揃えることもできたが、それでは装備のステータスがあまり高くならないと言ったことで、ツキヨは百万G全て双剣の作成に当てることにした。
(敵の攻撃は躱せばいいんだから、防御力よりも先に攻撃性能を上げたいよねー)
イズに頼んだ武器は、刀身が青系か白銀の片刃直剣。
ヴィトの双剣に感化された訳ではなく、単純に自分の好みとミィとの対比を考えた結果である。また、水魔法を使うというのも理由だ。
そういった理由で、青系の素材をイズに聞いたところ、いくつか教えてもらった。
「ミスリル鉱石は午後にイズさんの護衛で取りに行くから…南の地底湖にいる魚の長が、青銀の鱗を落とす、と。午前のうちにこっちを集めたほうが良さそう?白い鱗でも白銀の刀身は作れるみたいだけど、どうせなら混ぜて淡青色も良いかも……後は荒野で、青い花と銀色のアルマジロ型モンスターの甲殻か」
ミスリル鉱石は青銀色で、魔法の威力上昇のスキルが付くことのある鉱石。またヴィトの双剣にも青銀の鱗が少しだが使われているらしい。が、あまりに数が少なく、本当に少量だそうだ。荒野は街から離れた場所にあるため、午後のことも考えて明日行くことにした。
「釣り竿を買って、南に行きますかねー」
街で釣り道具一式を買ったツキヨは、南に向かって走り出す。
「さてと……釣り開始!」
ぽちゃんという音が釣り開始の合図だ。釣る場所は街から南に行った広い地底湖。この湖には何か秘密があると言われているが、未だ怪しいものは見つかっていない。
それから、一分と経たず。
「かかった!」
一時間、ほぼ一分に一匹のペースで釣り上がる。
しかしインベントリには白い鱗ばかり。
「青銀の鱗は1……魚の群れの長っていうくらいだから、なかなか釣れないんだね……」
しかも長を釣り上げると、その釣りポイントは魚が釣れなくなる。恐らく長がいなくなったことで群れが解散し、その場から魚がいなくなってしまうのだろう。
「青銀は一時間に一つ。その度にポイント移動。しかもかなり離れたポイントじゃないと釣れもしない、か……なかなか面倒な仕様なことで」
イズは、白い鱗でもステータスにさほど変わりはないというが、ツキヨは拘りたいのだ。
「いっそ潜って仕留める?【釣り】スキルは取れたけど、あんまり変わんないし」
ぶつぶつと呟きながらも竿を持つ手は止まらず。スキル取得後は取得前よりも更に入れ食い状態であり、白い鱗が着々と溜まる。
「うーん……作業感!」
ツキヨは、ぶっちゃけ飽きていた。
釣りには【AGI】と【DEX】が関係しているが、どちらも高いツキヨには作業でしかない上、一時間も同じ動作を繰り返していれば流石に飽きる。
「一応入れ食いのお陰でレベル22に上がったけど。……これはレベリング兼ねて気分転換に行った方が良いなぁ…精神衛生上」
『休日のお父さんの趣味典型例』みたいな作業を、ゲーム内でどうしてやらねばならないのか。どちらかと言うと戦っていた方が楽しいツキヨとしては、作業的な今の時間が苦手だった。
「二時間やって白い鱗150の青銀色の鱗が2かぁ……これは潜って長だけ狙った方が良さそうだね」
釣り道具をインベントリに仕舞ったツキヨは、ぐっぐっとストレッチをする。
ゲーム内なので、ストレッチをすることに特別な意味はない。気分の問題である。
飛び込んだ先には、大量の白い魚の群れが泳いでいた。
「おぉー…って息はできないけど喋れはするんだ……さすがゲーム」
水中での魔法行使が問題なく可能なようで、ツキヨはほっと一息。
「…………そこ!【鉄砲水】!」
水中で青い鱗は水に交ざり、判別が付きにくい。しかしそこはツキヨの反射速度が大いに力を発揮する。一つの白い魚の群れをしばらく観察していると、何もないように見える場所が、水面の光で乱反射したのだ。間違いなく、そこに光を反射した『何か』がいたのである。
ツキヨは持ち前の反射速度を以って、認識とほぼ同時に魔法を発射。見事に青銀の鱗を持つ長の魚を仕留めた。
「よし、こっちの方が効率がいい!……んぐっ」
と、そこでタイムアップ。息が続かず、水面に浮上した。
「ふぅ……あ、【水泳Ⅰ】に【潜水Ⅰ】取れた。これでもう少し潜ってられるかな?」
それからツキヨは何度も潜り続け、昼前にスキルが【水泳Ⅲ】【潜水Ⅲ】になった頃、青銀色の鱗を20枚集めることができた。
「うーん……20枚か。もう少し集めたかったけど、お昼食べたら、イズさんと採掘だし…今日はこれで諦めかな」
長を狩ると白い魚の群れは散り散りになるため、いくつかの群れを少しずつ間を空けて狩り、長の復活を待たなければならなかった。その為、釣りよりは効率よく、されど焦れったくもあったのだった。
――――――
一旦ログアウトしてお昼を食べたツキヨは、昨日も訪れた建物に向かっていた。
「あ!あれだ」
目的の建物を見つけたツキヨは、少し速歩きでそこまで向かい、扉を開けて中に入った。
「あら、時間通りね」
「はい、本当はもう少し早く来たかったんですけど、ギリギリになっちゃいました」
中には、カウンターの向こう側で戸棚に品物を並べているイズがいた。
昨日知り合った二人は、装備に必要な素材を集める為に、約束したのである。
「それで、素材集めは順調?」
「取り敢えず、青銀色の鱗が20枚ですね」
素直に告げると、なぜかまたもやイズが頭を抱えた。
「え…?教えたの昨日なのに、随分と集めたわね」
「途中から素潜りで直接長を狙いましたから」
「……確か、青い鱗が水に紛れて、余計に見えなくなるって聞いたけど?」
「それは私、目が良いので。見つけさえすれば、魔法で仕留められますしね」
「なるほどね……それじゃあ今度来る時に、あと20枚用意できるかしら?そうすれば、素材として十分足りるわ」
「分かりました!」
今日と同じようにすれば、半日で鱗素材は集めることができると思い、少し気分が上がったツキヨは、これから行く場所について尋ねた。
「イズさん、これから行くところって、どんな感じなんですか?」
「結構モンスターが多いんだけど、その代わり採掘量も質も高いの。採掘に高レベルのスキルが必要で、時々護衛をつけて採掘に行くんだけど、今はミスリルの在庫がないの。それでね」
「なるほど。でも私のレベルで大丈夫ですか?」
「レベルは少し足りないと思うんだけど、初心者殺しの狼の方が厄介だから、問題ないと思うわ」
その一言に、ツキヨは胸を撫で下ろす。あの狼より厄介なら本気で対応しなければならなかったが、やはり別格だったらしい。
昨日提案されたのは、採掘する場所への護衛。その代わり、そこで得た鉱石の一部譲渡と双剣の制作費用の割引をするということだった。
ツキヨに、これを断る理由はない。
「それじゃあツキヨちゃん、行きましょうか」
「はい、お願いします!」
「ふふっ……こちらこそ、よろしくね」
こうして、二人は鉱石を求めて探索することになった。
ツキヨがまず店から出て、それから少しして用意を済ませたイズが出てきた。
イズは何故か双剣を抱えており、店のプレートをくるっと裏返すと、ツキヨに渡してくる。
「それじゃあツキヨちゃん、これを貸してあげるわ」
「え?これ……双剣ですか?」
「流石に、初心者装備じゃ攻撃力が足りないのよ」
「そういうことなら、ありがたくお借りします」
そう護衛対象に言われてしまえば仕方がない。
ツキヨは、渡された二振りのサーベルのステータスを確認する。
―――
【クリティカルサーベル】
【DEX+35】
―――
「一応ツキヨちゃんの要望に合わせて、DEXに補正のある装備だけど、本当に良いの?」
「はい。詳しくは言いませんが、DEXが高い方がダメージが上がるスキルがあるので」
「へぇ……そんなスキルもあるのね」
サーベルを受け取り装備したツキヨを確認し、イズは歩き出す。ツキヨもそれについていくと、【AGI】の差ですぐに追いついた。
「どんな装備がいいかしら……」
小さく、イズが呟いた。
昨日の時点で、ツキヨの希望は聞いている。【STR】ではなく【DEX】重視の片刃直剣の双剣。サーベルを貸したのは、それ以外に【DEX】を上げる双剣がなかったからだ。
だからこそ生産職プレイヤーとして、オーダーメイドで作る武器は希望に応えたい。
ゲームをより楽しんでもらうために与えられるものは何か、それはどんなものか。
イズは考えつつ、ツキヨと共に街を出ていった。
フィールドには街と違い、積極的にツキヨ達の邪魔をしてくるモンスターという存在がいる。
しかし、襲いかかる全てがツキヨによって一刀のもとに斬り伏せられ、イズにダメージが行くことはない。
「うーん…サーベルっていうのがちょっと残念だけど、使いやすいなぁ。もし素材集めが間に合わなかったら、これを買い取るのも有りかも……」
今も背後から襲いかかった狼の群れが、人並外れた反射速度の前に倒れていく。
その間、全ての攻撃を紙一重で躱し、弾き、カウンターを決めていた。
対象を守りつつ自分へのダメージも管理する。
これがイズが見てきたいつもの護衛の姿だったが、ツキヨからはその後半部分が抜け落ちていた。
実際に守られているとよく分かる。
イズの全周囲を警護しながらその実、モンスターがイズたちを標的にする前に存在に気付き、わざと攻撃を誘っているフシさえある。
それでいて移動速度は速く、これまで護衛付きで行っていた時の倍近い。何せ全てのモンスターが一撃で倒れている上、『受け止める』という工程を排除している分、一体に割く討伐時間が非常に短くて済む。
「これは……イベントで大注目ね」
残り一ヶ月を切ったイベントでの注目度を、イズはかなり上げた。
そうして、ハイペースに移動は進み、二人は無事に洞窟の入り口までやってきた。
山肌にある洞窟の道はゆったりと地中へと伸びており、昼間でも真暗である。
地面はわずかに湿り、道幅はそれなりに広い。
「気をつけてね」
「はい!」
イズがインベントリからランタンを取り出し、明かりを確保する。
周りを把握しやすくなったが未だ薄暗く、多くのプレイヤーがモンスターの奇襲に合う場所。
二人は緩やかな下り坂を進んでいく。
戦闘はツキヨが、その後ろでは鍛冶にも使うハンマーを持ち、万が一に備えるイズが続く。
「天井にも気をつけてね。そろそろモンスターが出るころよ」
「分かりまし……ホントに出ました」
ツキヨが天井を見上げた時、イズは、ツキヨの頭上に尖った何かを捉えた。が、次の瞬間にはドリル状の尻尾を片手に呟くツキヨの姿が。
「今……どうやったの?」
「どうって…見えたから斬った。それだけです」
イズからすれば、あの奇襲に特化したトカゲモンスターの攻撃に対応することは、非常に難しい。
ランタンの限られた光源の範囲外からかなりの速度で来るため、盾持ちが反射的に防ぐことは出来ても、あまつさえ見て、部位破壊できるほど正確な反撃の手を打つような人は見た事がない。
「言ったでしょ?私、目が良いんです」
小さく笑ったツキヨの顔は、おかしなものを見るようだ。そこでようやく、昨日ヴィトから聞いたことを思い出す。
「ヴィトが言っていた通り、ツキヨちゃんは反応速度が良いのね」
「んー……ちょっと違いますね」
「え?」
まさかの訂正に驚いたイズを尻目に、ツキヨの話は続く。
「イズさんが言う反応速度の速さって、ゲーム内での対応する速度。つまりVRの環境に慣れ、速い対応ができるってことですよね?」
「え、えぇ」
「だとしたら私はあまりVR慣れしてませんし、まだ
ツキヨの現実での反射速度は、ミィが知っていたものに相違ない。しかし、この世界では、ツキヨにとって
もちろん、VRのハードの処理速度も関係するため、決して反射速度そのままが反映されているわけではない。しかし、それはすべての人に共通するため、その差分がVRに慣れたか否か。現実と同等の反応速度を出すことができる人はいる。
「《
――――――
「強いはずね……」
生まれ付きの反射速度が常人を超えている。言うなれば先天的プレイヤースキルが並外れているのなら、あの程度の奇襲が効く訳がない。
それだけの反射速度を持ってすれば、さっきまでの紙一重の回避や【パリィ】、掲示板で話題になったというモンスター殲滅も初心者殺し討伐も、納得がいく。
目の前を歩くツキヨの小さな背中が、やけに頼もしい。
「これなら、本当にポーションもいらなそうね」
イズは腰につけたポーチからHP回復ポーションをインベントリに戻し、完全に観戦モードになることにした。もはや
「ツキヨちゃん、この辺りからモンスターが増えるわ。大丈夫だと思うけど、頑張ってねー」
「大丈夫ですけど、完全に戦う気無くしてますねイズさん……」
「だってツキヨちゃんの秘密が想像を絶したんだもの。これならって安心しちゃうわ」
「別に秘密にしているわけじゃないですよ。気付かれにくいだけで」
軽口を言い合いつつも、モンスターを全ての一刀の元に倒しているツキヨ。
その姿を見て、うんうんと頷くイズ。
「それだけの反射速度があるから間近に迫られても対応できるし、弱点に確実に当てられるわけね。強いはずだわー」
「今は大丈夫ですが、処理情報が常人より多くて昔はよく気絶しましたけどねっと!」
「あら、そうなの?」
「はい。今は多少コントロール効きますし、今の所VR空間なら強制的に反射速度が落ちますから」
「なるほどねぇ……」
そうして奥に向かうほど、多様なモンスターが現れる。
それはゴブリンであり、ゴーレムであり、岩壁を泳ぐ魚だったりした。
それらに対してツキヨは的確に弱点を突く。
首や関節、ヒレの付け根、目などで、ゴーレムは関節の可動部分を的確に破壊することで倒す。
「ふぅ……結構レベリングにも良いですね、ここ。もう23に上がってますし、スキルも育つ育つ」
基本的には双剣での近距離警護を行っているツキヨだが、あまりに対処しやすいため、いつしかモンスターを発見次第、魔法で先んじて倒す方法に出ていた。そのため魔法のスキルレベルは上がりレベルも上がりとウハウハである。
「奇襲のせいで神経をすり減らすからレベリングには向かないはずだけど……とにかくご苦労さま。そうね、そろそろ……」
イズは以前来た時にも使った洞窟マップを見て、目的地と現在地を確認する。
一度探索してあること、ツキヨが圧倒的な対応力を見せていること、この二つのおかげで探索は順調だった。
また、洞窟の性質上前方からモンスターが来ることが多くなり、ツキヨの発見から殲滅がスムーズだったのも要因にある。
そのため、二人はダメージを受けることもなく最奥に辿り着いた。
「見えてきたわね」
「これですか?」
ツキヨがイズのランタンに照らされた壁に触れる。そこは光沢を持つ、ごつごつとした青銀色の鉱石に覆われており、道中では見なかったものだ。
「えぇ、これよ。ちょっと待っててね」
「へぇ……これがミスリル。定番のファンタジー鉱石かぁ……」
イズはインベントリから大きなピッケルを取り出して採掘を始めた。
青銀色のミスリル鉱石はピッケルをぶつけるたびにアイテムとしてこぼれ落ちる。五回ほど繰り返し採掘したイズは、アイテムを回収して次のポイントに向かっていく。
最奥にはモンスターが出ないため、採掘ポイント全てから採掘するのが、今回の目的である。
ツキヨは、取り敢えず護衛がうまく行った事にホッとしつつ、最奥の少し手前。まだモンスターが出る所で狩りをして、レベリング兼帰りの道を作っていた。
そうしているうちにイズは問題なく採掘を終えて、ツキヨの元に歩いてきた。
「ランタンも持たず真っ暗でよく倒せるわね?」
「あはは……初護衛で緊張してたのか、感覚が鋭敏になってるんですかね?結構やれましたよ」
一切ダメージを受けていないという事は、そういうことだろう。
イズは"この子なら何でもありね…"で諦めた。
「ともかく、これで採掘は終わったわ。帰りましょう?」
「はい!帰りも頑張ります」
行きと同様に、むしろ暗闇戦闘で余計に研ぎ澄まされたツキヨの感覚は、最初に光源の外から奇襲を仕掛けたドリル尻尾トカゲすら余裕で見破り、問題なく街まで戻ることができた。
ツキヨはその後、イズに装備を返却してログアウトした。
そろそろツキヨちゃんのリアルチートさを出してかないと
《神速反射》は『落第騎士の英雄譚』倉敷蔵人の生まれ持った才能です。それと同等のものです
倉敷君って実は相当強いよね。諸星さんと協力とはいえ覚醒超過した《
あの世界の三年生の世代はバケモノか……