「…俺は、お前に謝らなくてはならない」
ライとの握手の後ルルーシュはそう言った。
「それは僕も同じ気持ちだ。でも、今はここからの脱出を急がないと」
「…そうだな、だが、今は情報の確認が先だ」
そう言ってルルーシュは自身の飼育記録と呼ばれたものを読み始めた。
「C.C.皇帝のギアスについてだが」
「あいつにギアスを与えたのは私ではない」
「…ナナリーは何処にいる?」
「お前の妹を探そうにも、黒の騎士団が壊滅状態でな」
「それに関しては僕もあらゆる手段を尽くしたが、まだ見つかっていない」
そうか、とルルーシュは言葉を紡いだ。
「カレンについては?」
「…」
「…それも、同じく調査中だが、まだ見つかっていない」
「ライ、カレンがスザクに捕まったのは俺のせいだ。皇帝にギアスを与えたものを見つけ出し、ナナリーを、カレンを取り戻す」
嘘偽りない真摯な言葉だった。
「待て、俺に妹いるが、弟は居なかった。誰なんだあいつは?」
「まず間違いなく、ブリタニア皇帝が放った密偵だろうね」
それが一年間計画を練り続けたライの感想だった。
「それに、先ほど凄まじい殺気を飛ばされた。彼も並大抵の実力じゃない」
「要注意、ということか」
あらかた飼育記録に目を通しルルーシュはプランを定める。
「建物の構造図はあったが、認識メモはないな。やはりこのKMFは使えないか」
「そこで何をしている!」
ルルーシュの後方から、KMFの駆動音と共に、サザーランドが一機現れた。ルルーシュはニヤリと笑う。ライは咄嗟にC.C.を抱えて柱の影に隠れる。敵が正規軍であるにしろ、皇帝直属の部隊であるにしろ、ライとC.C.がいては警戒されるからだ。
「おい!そこの学生!生存者はお前だけか!」
ルルーシュの事を知らない辺りを考えると、どうやら正規軍のようだ。
「ああ!ちょうど良かったこの人が死にかけなんです!手を貸してください!」
騙された軍人はコックピットのハッチを開ける。
「生存者はこれだけか?」
「ええ。生存者はあなただけです」
「それはいったいどういう意味だ?」
「お前のKMFを俺に寄越せ」
赤い鳥が羽ばたいた。
「さすが。相変わらずだねルルーシュ」
「全く坊やの演技力も大した者だな」
「誉められてる気がしないんだが?」
「それはお前の性格がひねくれているからだ」
「魔女には言われたくない。さて、行くとするかライ?」
「いや、僕は少し正規軍を片付けてから行く。それまでに現状の確認をしておいてくれ」
「分かった。じゃあまた後でな」
「ああ」
その後ルルーシュは指示を出せる場所を見つけ、一時的な本部とし、ライに渡された現在の黒の騎士団の戦力を把握した。
「さて、一年ぶりにゼロの手腕を見せるとするか」
『全軍に通達する。こちら「貴族」だ。「王」は戻った。これより、指揮権を「王」、ゼロに委任する』
『聞いての通りだ諸君、私はかえって来た。その証明としていまはこの窮地を救って見せよう。全軍、私に従え!』
ライの通信にもあったように、ゼロの帰還を聞いた黒の騎士団は沸き立つ。
『ではまず、「貴族」は2階下からやってくる一個小隊を殲滅しろ。その次は21階に向かえ。「蜻蛉」は現状を維持、「梟」は左30°斉射だ』
ルルーシュの指示によって黒の騎士団は確実にブリタニア軍を減らしてゆく。
「ゼロの正体が学生とはな、しかし、矢張り物が違う!」
月下のコックピットで、「蜻蛉」こと、卜部は歓喜の笑みを浮かべた。
「ゼロがいれば勝てる!」
「奇跡は起きる!起きるんだ!」
そして、それは他の団員達も同じことであった。
「ふふ、そろそろカラレス総督の出番かな?」
確実に数を減らしてゆくモニター上の敵を眺めながら、ルルーシュは満足気に呟いた。
「順調なようだね」
「ライ、もういいのか?」
「ああ。彼らは優秀だし、今のブリタニアの投入戦力なら問題ないよ」
「そうか…黒の騎士団の現状は確認した。よくこの一年間でここまで立て直してくれた。ありがとう」
「気にしなくていいよ」
「そうか…カレンの事は本当にすまない」
ルルーシュはライに頭を下げた。
「あの時俺がスザクを殺せていたなら、こんな事にはならなかった…俺の力不足だ」
「謝らないでくれルルーシュ。元はと言えば僕がユーフェミアを止められなかったから…」
「それこそ俺の責任だ!!」
「ルルーシュ…」
「つくづく似ているなお前達は。だが今は誰に責任があるかではなく、これからどうするかを話し合うべきだろう?お互いの事を思うのはいいが程々にしておけ」
「確かにそうだな…今俺達がすべき事はこれからどうするかを決める事だ」
「…そうだね。ありがとうC.C.」
「全く手のかかる坊や達だ」
その後ライはルルーシュにバベルタワーを崩壊させ、中華連邦の領事館に逃げ込む作戦を説明した。
「成る程…それで今は井上の部隊、いや「淑女」が動いてるということだな?」
「ああ。上手くやればブリタニアにもそれなりの打撃を与えれる」
「となると後はどれだけ時間が稼げるかが問題か…」
「ああ。だから君はここで指揮を頼む。僕は前線に戻る」
「分かった。だが無理はするなよ」
「もちろん。僕だってこんな所で死ぬつもりはない」
そう言ってライは再び月下の下へと向かった。
「ルルーシュ。お前に言っておきたい事がある」
「いきなりなんだC.C.?」
ライが出ていった後でC.C.は突然そう言った。
「ライについての事だ」
「ライについての事?」
「ルルーシュ。何百年間も体の成長が止まっていた人間が再び成長し出して体に負担がないと思うか?」
「まさか…」
「ましてや、あいつはギアスの使い過ぎで命を削っている。しかもバトレーにもかなり体を弄られている」
「それは…つまり…」
「ライの…あいつの命はあまり長くないかもしれない」
C.C.は悲しげにしかし、しっかりとした口調でそう告げた。
「ライの命が…あまり長くないかもしれない?」
ルルーシュはC.C.にライの余命についての事を聞いた後、信じられないような声でそう呟いた。
「ああ。元々ボロボロだった体をこの一年間騎士団の復活の為に酷使し続けたんだ。無理もない…」
「どうしてだ…?どうしてお前はそんなライを止めようとしなかった!?」
ルルーシュにしては珍しく感情的になってC.C.を問い詰める。ルルーシュと言う人間は、他人から見ればいつも冷静沈着で怒りの沸点の高い人間に見えるだろう。
しかしそれはルルーシュにとって大切でない人間の事である。
ルルーシュの大切な人からすればルルーシュは“優しすぎる”のだ。“優しすぎる”が故にその事に関しては沸点が低く、つい感情的になってしまう。戦略的な面に言うならばライすらも上回るルルーシュであるが、これは明らかなルルーシュの弱点であった。
最も、これはルルーシュだけではなく、ライにも言える事でありライもまた“優しすぎる”のだ。だがC.C.は思う。“優しすぎる”面を捨て、自分の欲望のままに力を使えばブリタニアを倒し、世界の王になる事もそう難しくないだろうライとルルーシュだが、“優しすぎる”のからこそ良いのだろうと。
「あいつを止めれる訳が無いだろう…分かっているだろうルルーシュ?お前がナナリーを取り戻そうとするのと同じであいつは“優しすぎる”んだぞ?」
「ライは…あいつは自分の寿命が長くない事を知っているのか?」
「ああ」
「…分かっていて…」
ルルーシュは思う。ライが知っていて無茶をしているならばライはルルーシュがどれ程言おうとも、無茶をし続けるのだろうと。ならば自分がすべき事は出来るだけ早くカレンを取り戻す事なのだと。
「それよりルルーシュ。お前、カレンの事をどうするつもりだ?」
「…」
「知っての通り、あいつが戦う理由はカレンを取り戻す為だ」
「分かってる…」
「だが、これは困難を極めるだろう。ブリタニア軍人の中からカレンを見つけ出したとしても、取り戻すのは難しいだろうからな」
「…」
C.C.が淡々と呟く声を聞きながらルルーシュは考える。
「まずはナナリーだ。例えどのような理由があろうともナナリーは俺にとって最優先すべき事だ。これは揺らぐ事があってはいけない。だがカレンの事に関しても全力を尽くす」
「…そうか」
ルルーシュは一見非情に見えて友情を大切にする男なのだ。だからライの事を、カレンの事を見捨てる事が出来ない。
「バベルタワーを崩壊させ、撤退のルートとする。また随分と大胆な事を思い付いたものだな…ん?」
ルルーシュは言いかけて、モニターを見てある事に気付く。
「正規軍の増援のご到着か。この一年ろくな戦果を挙げられなかった事を巻き返すつもりか?わざわざカラレスまで来るとは愚行だな。しかもこの軍の配置…これなら」
「何かするつもりか?」
「ああ。ライには悪いが、策を少し変えさせて貰う」
ルルーシュは無線を使い、指示を出す。
「聞こえるか淑女?こちら『ゼロ』だ。いまから指示を出す。言う通りに爆弾をセットし直せ」
指示を出し、怪しく微笑むルルーシュを見ながらC.C.は相変わらずだな。と思うのだった。
月下が駆ける。敵機の弾丸を避けながらナイトメア特有の滑る動きで接近する。
「遅い!!」
廻転刃刀を胸部に突き刺し撃破。
「ふうっ…数か減らないな。敵の増援が来たか」
ライは部隊に指示を出す。
「こちら「貴族」作戦の第二段階は終了。予定通り、第三段階に移行する。各自チャフを起動させ、撤退の準備を始めろ」
『『『了解!』』』
あらかじめ持ち込んでいた大規模なチャフ装置により、ブリタニア軍のレーダーはほぼ使用不可能になる。
ルルーシュの奪還に成功し、皇帝直属部隊の始末も完了している現時点においてこれ以上戦闘を続ける意味はない。ブリタニア軍としては、物量に物を言わせて圧倒したいのだが、レーダーか使えないのでは伏兵の存在に慎重になってしまい、侵攻速度も遅くなる。
ましてや今の戦場はビルの中。視界が開けていない為いつも以上に気を遣わなくてはいけない。となれば更に侵攻速度は遅くなる。これらの事を予知していたライは、だからこそチャフを発動させたのだ。
「さて、僕も…ん?ルルーシュから無線?」
ライはルルーシュからの無線に応える。
「どうしたルルーシュ?何か不測の事態でも起こったのかい?」
『いや、少しお前の策を変えさせて貰った』
「僕の策を?」
『ああ。今、「淑女」の部隊に爆弾の位置を変えさせている。だからあと十分だけ時間をかせいでくれ』
「了解」
『たのんだ』
ルルーシュとの無線を切るのと、壁を突き破って金色のKMFが入って来るのはほぼ同時だった。
「!!」
ライは驚きも一瞬、即座にいきなりやって来た敵に向けてハンドガンをフルオートで撃つ。金色のKMF―ヴィンセントはライがここに居る事を察知しておらず、不意を付かれたものの、弾丸を滑るような動きで避けきる。
「あの動き…第七世代のKMFか?無頼では対処できそうもないな。僕が抑えるしかないか」
ライはコックピットの中で一息付き、ヴィンセントに向かい合う。ヴィンセントはランドスピナーを滑らせ、MVSを抜き、真正面から仕掛けてくる。
「真正面から?素人じゃあるまいし…っ!?消えた!?」
ライが真正面から突っ込んで来るヴィンセントを観察している間にヴィンセントはいつの間にか消えていた。
「いったい何処に―Vi!Vi!―後ろか!!」
ライは警戒音に即座に反応し、降り下ろされるMVSを廻転刃刀でなんとか受け止める。
「っ!!」
ヴィンセントのパイロットであるロロは月下の予想外の動きに驚いたものの、無理な体制でMVSを受け止めた為、隙のできた月下の脇腹に蹴りを入れ、再び距離をとる。
一方ライは頭をフルに使い、目の前の敵について分析をする。
―さっきの高速移動はいったい何だ?あれは機体の性能なんかじゃなく、正に瞬間移動だった。
―となるといったい?まさかのギアスの能力の1つか?何にせよ接近戦はマズイ。
―もう1つ。目の前の敵が何故瞬間移動できるのかは分からないが、さっき月下がMVSを受け止めた時に蹴り飛ばした事を考えると連続しての瞬間移動は無理か。
「ふぅ…なんにせよキツイ相手だな」
ライは目の前の敵を排除すべく、持てる能力をフルに使い始めた。
「さて、どうするか…」
今この場でライがすべき事は時間稼ぎ。こいつを相手にするには下がりつつハンドガンを撃つのが最適だ。しかしながらハンドガンの残弾は多くはない。かつ、このホールは広くない。
「射撃戦は駄目か。と、なると…しょうがないか…」
ライは月下の中で次の一手を決め、ヴィンセントの様子を伺う。
一方、ヴィンセントのコックピットの中でパイロットであるロロは少し困惑していた。チャフのせいでレーダーが使えず、壁を突き破って出てみると敵機がいた事には動揺したものの、それでも絶対停止のギアスを使い、背後をとり、敵機を撃破―するはずだった。
ところが敵機は信じられない事にMVS受け止めた。ただの一度でさえ防がれた事のない一撃を。ロロは自身の持つ絶対停止のギアスの能力故に、暗殺者として任務に苦戦した事などなかった。ましてや背後からの必殺の一撃を防がれた事などない。
其故ロロにとって任務とは、失敗する可能性などあり得ない、ただの作業となっていた。だからこそロロは困惑した。何十、何百と繰り返して来たパターンがずれたのだ。困惑しない方がおかしいだろう。
とはいえ、ロロはプロの暗殺者である。困惑する気持ちは切り替え、直ぐにまた敵機を撃破する。という作業に取り掛かろうとする。
その瞬間、ヴィンセントの側面から銃撃が飛んできた。
「ちっ!」
完全に不意を突いた攻撃ではあったが、第七世代の機動力を生かし、ヴィンセントは回避してみせた。
「やったと思ったんだが、早いな」
「卜部さん」
ライの救援に現れたのは卜部の駆る月下であった。
「相当の手練れのようだな」
「ええ、それに理屈の分からない神速を見せます」
「神速だと?」
「今はそうとしか言えません。警戒してください」
ライの言葉に卜部が警戒度を一段階上げた瞬間、ヴィンセントが視界から消えた。
「なー?」
「後ろです!」
ライの言葉に卜部は即座に反応し、ハンドガンをフルオートで放つ。
「っち!」
想定しているより遥かに早い対応を打たれ、ロロは思わず舌打ちをしながら弾を回避し、大きく後ろに下がった。
「卜部さん、援護を頼みます!!」
「承知!」
ライはロロが困惑している間にある一つの予想を立てた。
まずライが疑問を持ったのは、ヴィンセントが単騎で行動している事だった。単騎での行動は通常の部隊では考えられない。つまり、このヴィンセントは現在のライと同じように、通常での部隊の管轄ではないと考えられる。
次に疑問を持ったのは、先程の急襲の事。あの時ライは急襲に全く反応できていなかった。では、何故このヴィンセントはわざわざ反応できていなかったライの後ろに周り込んだのか?敵が反応できていないのなら、背後に回るよりも正面からMVSで突きを放った方が速いというのに。つまり、この行動は背後を取る利点を考えてではなく、つい癖でしてしまった動きなのだ。
通常の部隊の管轄ではない。そして相手の背後を取ろうとする癖。これらの事と、過去の王だった頃の経験からライはヴィンセントのパイロットの本質を暗殺者のような奴。と予想いうを立てた。
ならば、次の攻撃も恐らくは背後からの奇襲。この予想はライにとって一種の賭けであった。負ければ自分の命はない。だが、結果ライは見事その賭けに勝ってみせた。そして、反撃のチャンスが訪れる。
「はぁっ!」
ライは自分を鼓舞し、ヴィンセントに強烈な連撃を繰り出す。卜部の援護もあって、ロロのヴィンセントは徐々に推され始める。
「っ!」
ライの連撃を防ぐため、ロロは全力を尽くさなくてはならない。ライの連撃に加えて、卜部の的確な援護射撃。今ロロのギアスを使おうとも、弾丸を止めれないロロのギアスでは卜部の援護射撃を止められない。故にロロはギアスを使えない。ライは勿論この事実を知らないが、期せずしてロロのギアスを封じる事に成功したのだ。
「いける!」
「そのままいけっ!」
「っ!?」
─バァン!
ヴィンセントのMVSが弾き飛ばされる。そのままライはヴィンセントに止めを刺そうとする。が、
―Vi!Vi!
「っ!?上からの奇襲!?」
ライは警告音を耳にし、咄嗟に月下を下がらせる。
─ドォン!
警告音の正体である光弾がフロアに激突した後に、光弾を発射した本人であろうKMFがゆったりと舞い降りた。
「…青いランスロット?」
降り立ったKMFは青色の第七世代型KMF、ランスロットの兄弟機にあたるランスロット・クラブ。
―何故こんな所にランスロットが?
ライは一旦その思考を切り、現れたランスロットに向かい合う。と、ちょうどその時。
『待たせてすまないライ。準備が整った。作戦を発動する』
「…了解」
ルルーシュからの無線の直後、轟音と共にバベルタワーが崩壊を始める。ヴィンセントはいつの間にか撤退したようで姿が見えない。そしてランスロットも追撃する意思がなかったのか、バベルタワーの側面を破壊し、フロートユニットを使い撤退した。
「ライ、どうかしたか?」
「いや、別に何でもないよルルーシュ。それにしても爆弾の位置を変え、退路の確保とカラレスの始末を同時にこなすとは流石だね」
「俺はお前の策を少し変えただけさ。大した事はしてない」
「総督殺しが大した事ないとは、傲慢な坊やだな?」
「C.C.…お前だけには言われたくない」
ライもルルーシュ達と合流し、バベルタワーを脱出するため月下を走らせるが、何故だが不思議とライはあのランスロットが目に焼き付いて離れなかった。
「これからディートハルトの残したラインを使って全世界に演説を行う。内容は録音だが、俺は学園へと戻る。今の混乱具合ならそう難しいことじゃないだろう」
「アリバイ作りということかな?」
「ああ。そのため、ライにはゼロ役を頼む」
「わかった」
中華連邦の領事館に逃げ込んだのち、ルルーシュはそう言った。大宦官の高亥にギアスをかけ、利用したためだ。
「…ゼロ役、か」
「緊張するか?」
ルルーシュが去ったあと、ゼロのスーツに着替えつつ、ライは呟いた。
「少しね」
「大袈裟にやればいい。ゼロの役割は目立つためにある」
C.C.からのアドバイスを受けつつ、ライはゼロの仮面をかぶる。
「準備はいいか?そろそろ本番だ」
「ああ。いつでも」
中継用のカメラが整い、ライはゼロの仮面を被る。初めて被るゼロの仮面は思っているよりも重かった。
「私はゼロ。日本人よ私は帰ってきた!」
ライはゼロらしく振舞う。
「聞けブリタニアよ!刮目せよ!すべての力持つものよ!」
ゼロの帰還は様々な反応をもって受け入れられる。
「私は悲しい。戦争と差別、振りかざされる強者の悪意。間違ったまま垂れ流される悲劇と喜劇。だから、私は復活せねばならなかった。強きものが弱きものを虐げ続ける限り、私は抗い続ける。まずは、愚かなるカラレス総督に天誅を下した!」
カラレスの死、それは明確な戦線布告である。
「私は戦う。間違った力を振るう全てのものと!故に、私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!この瞬間よりこの部屋が合衆国日本の最初の領地となる。国籍も宗教も関係ない、国民の条件はただ一つ!正義を行使することだ!」
ゼロのこの宣言は、国内外で大きな衝撃を齎した。再び、エリア11に大きな戦火が訪れようとしていた。
「全く、もう…何なのよ…」
ランスロットクラブの中でクラブのパイロットは愚痴を漏らす。
「皇帝陛下に言われて、エリア11の抜き打ちで視察に来てみればテロが起きてるし、KMFで鎮圧に出たのにバベルタワーが崩壊してカラレス総督は戦死…」
はぁ―とパイロットはため息を付く。
「エリア11の治安は問題無いんじゃなかったの?…ありまくりじゃない…本当…テロリストなんてろくでもないわね」
この後の仕事はいったいどれだけ増えるのだろうか?バベルタワーの崩壊に巻き込まれたパイロットの生死の確認、瓦礫の撤去の作業指示、それにかかる予算の認証、部隊の再編成。考えるだけでも嫌になる。
「楽な仕事だと思ったのにな…」
一進一退で泥沼化しつつあるロシア戦線から、本国への帰国命令が出た時は嬉しかった。オマケについに私専用機体のランスロットクラブがロールアウトし、ロイド博士から渡されたのだから尚の事だった。そしてエリア11への抜き打ちの視察。何故彼女が視察の役に選ばれたのかは不明だが、しばらくぶりに息抜きが出来ると思っていた矢先の出来事。
『あんまり愚痴ばかり言ってるとラウンズをクビになりますよ?』
「…聞いてたの?」
『悪く思わないでください。コックピット内の音声は基本的に録音することになってますから。特にロイド博士からパイロットの本音が聞きたいとの理由で、クラブは絶対に録音する事になったます』
「はいはい…有能な部下を持つと上司は大変だわ…」
そう、クラブのパイロット。彼女はラウンズである。
「はぁ…憂鬱だわ…」
コックピットの中で彼女、ナイト・オブ・イレブン。カレンは誰に言うでもなく呟くのだった。
続く