「う~んついに限界が来ちゃったかぁ…」
「どうなさったんですかラクシャータさん?」
中華連邦に渡った騎士団のメンバーである、ラクシャータは格納庫で頭を悩ませている所に同じく中華連邦に渡った神楽耶に話掛けられた。
「ああ、神楽耶ちゃん。あんたのお兄ちゃん、ライから通信があって、その事でね」
「ライお兄様から!?お兄様は何と!?」
ライが皇の名を継いだ事を誰よりも喜んだのは、ライの妹になった神楽耶であった。
「実はライの月下がついにライの動きについてこれなくなって、最近の戦闘で月下の反応速度の遅れをはっきり感じるようになったのよ」
「…私にも分かるように説明して下さい」
神楽耶はそう言って頬をぷうと膨らませる。
「つまり月下がもう限界だから新しい機体の完全を急いで欲しい。ってことよ」
「それで?何が問題なんですの?」
「月下がライについて行けなくなるのはある意味予想通りなのよ、でもあまりにも速すぎる。ライもかなり悩んで月下が駄目だって報告をしたようだけど…この一年間で更に操縦能力を磨いたみたいねぇ」
「でもこれはライお兄様の為の機体なんでしょう?なら問題など無いんじゃありませんの?」
そう言って神楽耶は格納庫にいる見た目としては完成しているKMFを指差した。
「確かにあの子はロールアウト直前だけど、ライから頼まれたシステムが完成して無いのよぉ」
「それはどんなシステムですの?」
「簡単に言うなら…」
ラクシャータは神楽耶の耳元で説明する。
「そんな事が可能なのですか!?」
「理論上はね。まあ、その分苦戦してるけど」
「すごいですわ!これでライお兄様には敵なしですのね」
「まあ確かにこの子を使いこなせば敵なしかもねぇ…アタシもこの子のシステムについて提案された時は驚いたわ。こんなシステムを使いこなせる人間がいるなんてねぇ」
「ライお兄様ですもの!」
「ふふっ、そうだったね、ならこの子を最高の機体に出来るようにアタシも頑張ろうかな。ああそうだ神楽耶ちゃんにも、よろしくって伝言預かってるわよぉ」
「お兄様らしいです…」
「ご不満?」
「妹に対してもう少しこう」
「なら合う時に文句を言ってやりなさいな。男に文句言うのは女の特権だから」
「はい!」
格納庫の奥に佇む完成間近のKMF、ライの新しき力が活躍するのは案外遠くない。
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「それで、こっちは何の書類だっけ?」
「そちらは今回の作戦被害に対する費用のトータルです」
「はいはい承認っと」
エリア11の政庁にてナイトオブイレブン、カレン・シュタットフェルトは自身の副官と共に膨大に積まれた書類と向き合っていた。
「なんで私がこんなこと…」
「ギルフォード卿が不在のため、判断を仰ぐ事が出来るのがカレン様しかいないのです」
「それはわかるけど、それにしたってこの量は…」
カレンの机に山積みになっているそれは高さが50cmを優に超えている。先ほどから書類に目を通すのも疎かにしながら判子を押しているが、それでも尚この厚みが残っていることはカレンを憂鬱にさせた。
「だいたいスザクはどうしたのよ?同じラウンズよね」
「枢木卿は皇帝陛下の勅命でアッシュフォード学園に向かわれました」
「何よその勅命」
「何と申されましても事実ですので」
はぁーとカレンは大きくため息をつく。
「もう誰でもいいから攻めてきたりしないかな」
「…さすがにそれは―」
言い過ぎでは?と副官が諫めようとしたその時、部屋のドアが勢いよく開いた。
「シュタットフェルト卿!敵襲です!」
「…冗談でいったわよ?」
カレンと副官は顔を見合わせた。
「すぐに私もクラブで出る!守備隊も叩き起こせ!」
「イエス・マイロード!」
カレンは自身の愛機、ランスロット・クラブに向けて走り出した。
「ハハーッ。なんだこの呆気なさは。ゆるゆるだな呆れるほどに」
エリア11政庁襲撃の犯人、ジノは自身の愛機トリスタンのコックピットの中でエリア11の防衛網に対する評価を下した。総督が不在であり、頼りの綱のギルフォードも不在であることを加味しても及第点以下であった。
「少しは楽しめるかと思ったんだが―」
―ViVi!
「―おっと!」
アラーム音に反応し、ジノは自身に向けての狙撃を可変機ならではの無茶な動きで躱してみせた。
「いまの狙撃は」
トリスタンが狙撃の飛んできた方向を向くと、そこにはランスロットクラブの姿が見えた。
「悪ふざけもそこまでにしたらどうかしらジノ」
「そう怒んなって」
通信越しに聞こえるカレンの声には明らかに怒気が含まれていた。
「そっちの悪ふざけに付き合う義理はないの。さっさと武装解除して投降しなさい」
「おいおいそれじゃあ悪者扱いじゃないか」
「政庁の襲撃は立派な犯罪よ」
「これは襲撃じゃなく、査定さ。エリア11に派遣されるに当たってそのエリアの防衛力を見極める必要がある」
ジノの声は軽かったが、ラウンズの特権を考えれれば一理ある。一理あるだけに、カレンは気に入らない。
「大人しく降参するつもりはないってことね」
「カレンもラウンズなら、私に参ったを言わせてみろ」
その一言はカレンをぷっつんさせるに十分であった。
「じゃあそうさせて貰うわ!」
「そうこなくっちゃ!」
ジノは嬉しそうな声を上げ、クラブから放たれた弾丸を躱しつつ接近する。カレンの狙撃は正確だったが、狙撃場所が見えており、かつ変形しているトリスタンの高機動力には弾が当たらない。
「この!」
カレンは狙撃を諦め、MVSを両刃モードにして空中のトリスタンに切りかかる。
「ははーっと!」
ジノも応えるようにトリスタンを変形させ、鎌状のMVSを抜いてカレンの斬撃を受け止める。
「楽しもうぜカレン!」
「その言い方がむかつく!」
両者共に両刃の変則武器の使い手でありながらも、よくリーチの長いそれを変幻自在に使いこなす。見守るしかない一般兵からすれば二機の間合いは正に暴風雨。激しい斬撃が飛び交っていた。
「埒が明かない」
打ち合いは全くの互角であることにしびれを切らしたカレンがスラッシュハーケンを飛ばし、トリスタンから間合いを取った。そのままカレンはヴァリスと肩部のハドロンブラスターを迷わず連結させた。
「避けるんじゃないわよ!」
「おいおい!?」
ジノは慌てて腕部のブレイズルミナスを展開させて防御の構えを取る。
「それが政庁に当たったらエライことになるぞ!?」
「だから避けるなって言ってるでしょうが!」
緊張の一瞬、二機を制止する存在がその場にいたことは幸運だった。
「そこまでだ二人とも!」
「スザク…」
「ふぃー助かった」
カレンは冷静に、ジノは安堵したような声を漏らした。
「ジノ、悪ふざけが過ぎるんじゃないか?」
「そうよ」
「カレンも、ハドロンブラスターを使うほどのことか?」
「うっ…ごめん」
「いや、そもそも俺が煽った事が原因だ。すまなかった」
「じゃあこの一件はこれで解決だ」
スザクの制止により、クラブとトリスタンの二機は高度を下げ、着地した。コックピットから顔を出したカレンはそれでも気まずそうに、一方ジノは反省の色もなく楽しそうにしていた。
「スザク、その制服は何だい?」
「学校帰りだからね」
「おしまい?」
「モルドレッド、アーニャも来ていたのか」
「…つまんない」
モルドレッドもスザクの傍に着地した。
「スザク、その制服―」
ジノと同じようにスザクの制服を見たカレンがそう口を開いたとき、スザクは大いに警戒した。皇帝のギアスによってアッシュフォード学園の記憶が消されているはずのカレンが制服を見てなんというのか、スザクにはそれが怖かった。
「似合ってるね」
「え?ああ、ありがとう」
だが、スザクの警戒は空回りとなった。カレンは嘘が下手な方だ。嘘であればすぐにわかる。
「これで戦力は十分過ぎる程揃った。ゼロ、その仮面の下を明らかにして見せる」
スザクは誰に言うでもなく、誓うようにそう呟いた。
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「C.C.ピザの準備が…?」
ライが先日のピザを用意する為、ピザを焼き終え、部屋に届けると意外な事にC.C.はそこにはおらず、代りに一枚の置き手紙があった。
『あの学園に忘れ物がある事を思い出したので取りに行く。ちょうど学園祭が開催されているし、変装して行くので問題ない』
驚きのあまり皿を落としそうになったライだが落とさなかったのは持ち前の身体能力のおかげである。叫びたくなる衝動を抑え、ライは即座にピザの皿を机の上に置き、ため息を一つ付くと、自身も学園に行く為に変装する準備を始めた。
「ライ君、着ぐるみなんて持ってどうしたの?」
学園へ向かおうとするライに声を掛けたのは井上だった。
「ああ、これはゼロの命令で祖界まで行く為の変装です」
ライはC.C.の置き手紙を見つけた後、変装道具を探した結果、倉庫にあったラッコの着ぐるみを見つけ、それを変装道具に使う事にしたのだ。
「そう、じゃあしょうがないわね」
「?」
「何でもないわこっちの話」
実のところ井上は藤堂や扇捕まっていたメンバーが一年間のブランクを取り戻す為に忙しいので、ライに絡んで暇潰しをしようと思っていたのだ。だが、作戦と言われれば自分の時間つぶしに突き合わせるわけには―と、その時、井上に天啓が下りた。
「あの…井上さん?」
「駄目じゃないライ君」
「へっ?」
「変装するのに着ぐるみなんて着たら目立っちゃうじゃない」
「確かにそうですが…」
「そこで私がライ君にいい変装方法を教えてあげるわ」
「…?じゃあ、お願いします」
「ええ勿論」
この時ライは気付くべきだった。否、気付いていて無視したのだろう。井上の醸し出すオーラにライも押されたのだ。だが、この時ライは気付くべきだった。井上の目が怪しく光っている事に。
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(もっとよく考えるべきだった…)
学園の校内を歩きながらライは変装に関して井上に任せた事を後悔していた。結論から言うならば変装は完璧だった。学園祭が開催されている事もあり、全く問題なく学園に溶け込んでいる。
だが、怪しまれているのとは別の理由でライは多くの人間の目をひいていた。
(結局この変装目立ってないか…?)
ライは内心本当に憂鬱な気持ちになる。
(やっぱりいくら変装してるとはいえ男の僕が女装するなんて無理があるよな…)
そう、現在ライは白のワンピースにを着ている。勿論メイクもしてあり、銀髪を隠す為に黒色のかつらをしている。その姿は端から見れば憂いを帯びたクールビューティーな美女であり、周りの人間を虜にしていた。もっとも、ライ本人は全く気付いていないが。
「俺達と一緒に回りませんかお嬢さん」
「…えっ?」
所謂ナンパである。
「いや…私は…」
「ジノ、ナンパ?」
「アーニャ、綺麗なお嬢さんが居るのに誘わないのは男として失礼な事なんだぞ?」
「っ!?」
ライはジノ、アーニャという名前に反応して伏せていた顔を上げ、顔を見る。そこにあったのは、ライがブリタニアのデータベースにハッキングして注意すべき敵として記憶していたナイト・オブ・スリーとシックスの顔があった。
(なんでこの学園に!?まさかルルーシュの事が!?…いやその可能性は低い…ならば絶好のチャンス、殺すか?いや、それではルルーシュの事が怪しまれる…少しでも怪しまれればアウトだ…チャンスだが堪えるしかない…な)
「どうかしましたか?」
「いいえ」
一緒の動揺を見せないように笑顔でジノの質問に答える。
「もう一度誘いましょう。俺達と一緒に学園を回りませんか?」
「残念ですけど連れがー」
「そうよジノ、無理に誘うものじゃないわ」
ライに賛成するように、第三者が口を開いた。それはジノの後ろから現れたライのよく知る赤髪の女性だった。
「ーっ」
「まあそう言うなってカレン。折角の学園祭なんだし楽しみが多い方がいいじゃないか」
実に時間にして一年と数日間ぶりに、こうしてライはカレンと再び出逢った。
「女性をナンパすることが楽しい事とは思えないけど?
「男性としては綺麗な女性陣に囲まれることは喜びなんだぜ」
ジノとカレンが他愛もない会話をしている間、ライの思考は最高速度で回転していた。なぜカレンがここに―?どうしてラウンズと一緒に―?これは罠か―?様々な思考が回転してゆく。だが、その中でもライの中に強く生まれた感情は喜びだった。
―カレンが生きていた。
この一年間ライが自分に信じ込ませていたそのことが真実であったことがライにはうれしくてたまらない。今すぐカレンを抱きしめてライは泣きたかった。
「カレン―」
ライの言葉にカレンがライの方を向く、ライはもう、自分の気持ちを抑えれそうにない。
「こんな所に居た。遅くなって悪かった」
その腕をルルーシュが押さえた。
「―っ!?」
ライはルルーシュに腕を掴まれ、冷や水を浴びせられた気分になり、同時に今自分がしようとしていた事に気付き、唇を噛み締めた。
「知り合い?」
「ええ、一緒に回る約束していたんですが、来なかったので…」
「それについては俺が悪かったよ。すまない」
ルルーシュがついた知り合いである嘘に、ライが即座に合わせ、さらにルルーシュがフォローする。この二人ならではの即興劇であった。
「あーもしかして俺達お邪魔虫か?」
「悪いのは俺の方ですが…連れていってもかまいませんか?」
「お邪魔虫に拒否する権利なんてないさ」
即興劇の観客であるジノは簡単に騙されてくれた。
「―!」
離れていくカレンの方にライは歩みかけるが、ルルーシュは掴んだ手を離さない。
「今動いたら全てが終わる。頼む、抑えてくれ」
ルルーシュも今のライに抑えろというのがいかに残酷な言葉であるかは理解している。ルルーシュとしても苦しい言葉であったが、それでも今カレンを取り戻そうとするライを抑えるしかなかった。
「それは、命令かい?」
ライはルルーシュと顔を合わせずにルルーシュに問いかける。
「ああ、命令だ。この場は抑えろ」
ライはまだルルーシュとは目を合わせず、だが、歩もうとする力を抑えていった。それは、ライが自分自身に言い聞かせるために必要な時間であった。
「…すまない」
「いや、俺のせいだすまない」
ルルーシュは悔しくてしょうがなかった。ライに命令しなければならなかったことも、こんな状況にライを置いてしまっていることも。
「それで?いったい何の用でここに来たんだ?」
ルルーシュは気まずくなった空気を変える為にも、そう言って切り出した。
「実は…」
ライはルルーシュの意図を酌み、C.C.がこちらに来ている事を説明する。
「あの女!くそっ!こんな馬鹿な事で全てを台無しにしてたまるか!」
本当に馬鹿らしい事ではあるが、実際は大問題なのである。
「ルルーシュ、C.C.の行く場所に心当たりは?」
「…一つだけある。多分クラブハウスだ」
「クラブハウス?僕の部屋があったあの場所?」
「ああ。俺は一応他の場所を当たってみるから、お前はクラブハウスを頼む」
「ああ、分かった」
「…それと、少しは学園の雰囲気を楽しめ。学園はお前とカレンの確かな居場所だ」
「…ああ、そうする」
ライはルルーシュの忠告に驚き、そして肩の力を抜いて久々の学園の雰囲気を味わい懐かしき学園での記憶に浸るのだった。ライは学園祭で人が居らず、すっかり静まりかえったクラブハウスをゆっくりと歩く。どこまでも懐かしそうに。
―────―────―────―────―────―────―────―─
―そう言えば僕はこの中庭でミレイさんに拾われたんだっけ。本当、こんな得体の知れない男を迎え入れるなんて…ミレイさんは凄いな。
ゆっくりと、思い出に浸りながら。
―ナナリーとピクニックもしたっけ。あの後のルルーシュといったら凄かったな…いろんな意味で。
時折笑みを浮かべ、
―リヴァルはまだバイク好きなのかな?一回しか乗れなかったけど、あれは風が心地良かった。ニーナは…まだ研究を続けてるのかな?
時折悲しげに、
―シャーリーはルルーシュに告白したのかな?…あの様子だと…きっとまだだろうな。
時折涙を浮かべ、
―「でも、僕は思う。手を取り合えるんじゃないかって」…スザク。随分と変わったな…いや、僕もか。
時折苦しげな表情を浮かべ、
―でも何より、この部屋に色んな記憶が詰まってる。悲しい記憶も、嬉しい記憶も。
彼はかつての自分の部屋の前までやってくる。
―神根島で倒れた後、僕はここで目が覚めた。そこにはカレンの顔があって、そして漸く自分の気持ちに僕は気付いたんだよな。本当…気付いてしまえば簡単な話なのに、ずっと僕はモヤモヤした気持ちを抱えていたんだな…自分の間抜けさが笑えてくる。簡単な、たった一つのシンプルな答え。僕はずっとカレンが好きだったんだ。もし、その事に速く気付けていたらあの時、僕はカレンの手を握れたのかな?…全く…いまさらだよな。でも…もう自分の気持ちに嘘はつかない。
部屋の中には人の気配がある。恐らくはライの探し人の気配。ゆっくりとドアノブを回し、ドアを開ける。
「どうだった?世界の色は確認できたか?」
「僕は君を探しに来たんだけど?」
「その顔からすると確認できたようだな」
扉を開けるとそこにはライのベッドでくつりいでいるC.C.がいた。
「C.C.…君からすればどうでもいい事かもしれないが、僕とルルーシュの精神的安心の為にこんな事はもうしないでくれ」
「何故怒る?私は感謝こそされても怒られる理由が分からんがな」
「僕には君に感謝しなきゃいけない理由が分からない」
「嘘つけ。思い出せたのだろう?自分の色とりどりの記憶も、自分の気持ちも」
「…ああ、忘れかけてた。また見失う所だった…僕には、僕の世界には色んな色があるって事を。僕は孤独じゃないって事を」
「それは良かったな。ルルーシュに後で謝っておけ。あいつはお前をかなり心配していたからな」
「そうする」
そう言って笑うライの笑顔は一年間の笑顔と同じ笑顔であった。
「じゃあ、そろそろ帰るよC.C.」
「つまらんな…もう少しゆっくりできんのか?」
「ただでさえ僕と君は此処にいると危険なのに、これ以上居る訳にはいかないだろう?それに君の緑の髪の毛は人混みの中でも目立つ。できる限り速くこの学園を出るべきだ」
「…分かった、分かった。そう急かすな」
ライはC.C.を連れ、クラブハウスを出る。だがその時、最悪のタイミングで放送が流れた。
『もう間もなく本日最大のイベント、世界一大きいピザ作りを始めます!!』
その放送を聞いた途端C.C.の体がビクッと動いた。
「C.C.」
「分かって…いる。これ以上お前にもルルーシュにも私は小言を言われたくないからな」
そういう割にはC.C.の体は不自然に震えていた。
「C.C.―」
『ピザの直径は18メートル!勿論具材もトマト、チーズを基本に様々なトッピングがしてあります』
「…リヴァル」
またもやC.C.の体が不自然に震える。ライはこの時初めてお調子者のかつての友人を呪った。
「私は自分の欲を抑える事ぐらい…できるさ。私を誰だと思っている?」
普段なら頼れる一言であるが、今はなんとも頼りない。いや、この場に居るのがライかルルーシュでなければC.C.はとっくの昔にピザに走っている。だからC.C.なりにライとルルーシュの事を考えている証拠なのたが、
『作ったピザは無料で配布します!おかわりも自由!こないと損するぜ!』
その一言が決定的だった。
「C.C.?」
「ライ、お前より長生きしている者として長生きするアドバイスがある」
「…それは?(嫌な予感しかしない…)」
「自分の欲望に忠実な事だ」
言うや否やC.C.は全力でピザ作り会場に向け、走り出す。
「なっ!」
一瞬遅れてライも走り出すが、C.C.はピザがかかっているせいか、明らかに速い。
「待て!」
「待たん!」
ライは会場にたどり着くまでにC.C.を捕まえられなかった事態を想定し、ルルーシュに電話を入れる。
『どうしたライ?C.C.と合流できたか?』
「…実は…」
ライは現在の事態をルルーシュに説明する。
『最悪の状況じゃないか!』
「すまない!だから生徒の目を逸らせるようにしてくれ!」
『っ、分かった!』
ライは携帯を閉じ、再び走り出す。そして、C.C.までの距離を縮めていく。そして、
「はあっ!」
「!」
C.C.目掛けてジャンプし、C.C.を上から取り抑える。
「離せ!私は行くんだ!」
「駄目だ!」
いつになく本気でライの拘束を解こうとし、C.C.は本気で暴れる。
「離せ!…ん?」
「どうしたC.C.?」
「何か聞こえないか?」
「これは…KMFの駆動音?」
学園で何故聞き慣れたKMFの駆動音が聞こえるのか?ライのその疑問は曲がり角を曲がってきたガニメデによってあっさりと解消された。
ライにとって問題はガニメデではなく、その後ろに着いて来たスザクを筆頭としたミレイ、アーニャ、シャーリーであった。
「っ!?」
ライは最悪を状況だと確認し、C.C.をお姫様抱っこで担ぎ上げ、即座に走り始める。
(隠れる場所、隠れる場所…あった!あの倉庫の物陰!およそ…50メートル!)
ライは隠れる為、全力で走り出す。もし、スザクにでも見られよう物なら全てがアウトである。
(あと5メートル!間に合え!)
ライが最後の力で倉庫の物陰に飛び込んだと同時に学園はシャボン玉で覆われた。
「これは…ルルーシュの目眩ましか。よし、今なら学園から脱出できる。いくよC,C,」
「ピザ…」
ピザへの無念さが残るC,C,の手を引き、ライはようやく学園から出る事に成功したのだった。
続く