R-15な異世界(仮) 作:KWNKN
1話:9件 2話:8件 3話:2件 4話:15件 5話:52件 6話:140件
※各話、誰が登場したか 注:()内属性
1話:狐耳娘(お父様ならなんとかしてくれます)
2話:犬耳娘(ロリ)
3話:娼館のオーナー(おじさん)
4話:熊耳娘(語尾:クマー)
5話:狼耳娘(強気ロリ)
6話:狐耳娘……娘?(
※属性人気順(並べ替え)
1位ー御年
2位ー強気ロリ
3位ー語尾:クマー
4位ーお父様ならなんとかしてくれます
5位ーロリ
6位ーおじさん
※雑なまとめですが、「ロリ+α」が人気で、圧倒的におじさんの需要が無いです
あと「+α」の部分にロリと圧倒的にかけ離れるものを突っ込めば突っ込むだけ良いみたいです
「+α」に突っ込むべき最高のカードとは一体……?
※一部描写の関係で、ガールズラブタグを追加させて頂きました。
Side: “バーのマスター”
拭いているグラスに視線を落としていると、カウンター席から声をかけられた。
「のぉ、マスター。前々から気になってはいるのじゃが……
わりとくだらない質問。しばらくぶりに聞いた声に、俺はグラスを拭く手を止めた。
顔を上げて、声の正体を確認する。
気がついたら目の前に座っていた人物は、頬杖をつき、ニヨニヨとした表情で俺の顔を覗き込んできた。
銀色の髪と……その間から飛び出した白い狐耳をピコピコと揺らしている姿がとても愛らしい少女。
愛らしいが……正直、かなり厄介な客だ。
現ギルドマスター。この街の冒険者の元締めがこの少女なのだから。
……いや、線引とかない……ですよ。特に閣下はセクハラ禁止です。
また出禁喰らいたいのか……っすか。
普段はあまり使わないため、敬語が少しギクシャクする。
あと、「相手の警戒の段階を一段階下げる」魔法を常時発動しているギルドマスターには、どうしたって少し馴れ馴れしい態度をとってしまうのだ。
「気にせずともよい。今は客として来ておる」
ナチュラルに俺の思考を読んでいるのだろう。「フラットに話してかまわんよ」とヒラヒラと手をふるギルドマスター。
それなら助かるけどな……だが閣下、普通にその魔法を解いてくれないか?
精神魔法掛けられているって考えると、今の自分が正気なのか疑わしくなる。
「え、嫌じゃけど? それにこれを機に少し考えておくとよいぞ。
自分で正気だと思っているものほど、正気を欠いているものじゃ。
平常の者は、まず、自分が正気かどうかなどとは考えまいて」
あー、確かに……。いや、ちょっと待て。
ギルドマスターの返しに一瞬納得しかけたが、これはからかわれているのだ。
……だから、俺が今、平常云々を脅かされているのは閣下の魔法が原因だよな?
「安心せい。ちゃんと頭は回っておるようじゃ。お主は正気じゃよ」
俺は何も面白いことを言ったつもりはないが、ギルドマスターはクツクツと笑う。
……うん、わかってはいたが、解除する気は無さそうだ。
本人は「じゃれている」程度の認識なんだろうが、こっちとしては不安が勝ることを理解してもらいたいものだ。
「理解しておるよ?」
……癖わりーな。
ギルドマスターお気に入りのジュースをグラスに注ぐ。
テーブルに置いたグラスを手に取りながら、ギルドマスターが小首をかしげた。
「うーん? じゃが儂が見通す限り……お主、
……持ってるけど。
え? ちょっと待て。そうなる可能性があるのか?
俺と、閣下が?
「え? あるわけなかろう?」
……こんな古典的な手に引っ掛かるとか、俺も盗賊の奴を馬鹿にできねーな。
「ふーむ。それにしてもお主、業が深いのう……あっ、やめい! やめんか!
ひとの
俺の頭の中を続けて覗き込もうとしてくるギルドマスターに、イメージの表層に『獅子舞い』と『なまはげ』を
読心術士が怖がるもので頭の中をいっぱいにするのは、読心魔法に対するカウンターの初歩の初歩だ。魔法の関係ない、ただのテクニック。
今の俺の頭の中では、ギルドマスターが獅子舞いとなまはげに追い立てられる絵面が展開されている。
「やめんかバカタレ!」
グルルル……と犬歯をむき出しにして威嚇してくるギルドマスター。
正直、少女の外見だから全然威嚇になっていないんだが。
ほら、今いい所ですよ? もう俺の頭の中に興味は湧かないんですか?
「興が削がれた……もうよい」
不貞腐れてグラスに口をつけるギルドマスターを見ていて少し残念な気分になる。
ちょっと脅かしすぎたか……本当にいいところなんだが。
俺の頭の中ではさっきの続きで、なまはげと獅子舞がラップバトルを繰り広げる絵面が展開されている。
でも、もういいか。頭を振って獅子舞となまはげを頭から追い出した。今日はもうお役御免だ。お疲れ様。
それにしても……ギルドマスターなら魔法で軽く吹きとばせそうな気がするが。何が怖いんだ?
「お主も本物を見たらそんなことは言えんよ……」
チビチビとジュースを舐めつつ、疲れたようにそう言うギルドマスターを見ていて、不思議に思う。
……いや、日本の伝統文化の方が「本物」のはずだよな?
この世界にも
○
「儂の入店に気が付かなかったのは減点じゃが、修行は怠っておらんようで安心したぞ」
ジュースグラスの端っこにパインを掛けてやると機嫌がなおったのだろう。
ギルドマスターが今回の
開幕印象操作あまがけとナチュラル読心はテストにしてもヒドイと思うけどな。
「甘々じゃのう……このパインより甘々じゃ」
パインを指差しながらギルドマスターが続ける。ギルドマスターがパチンと一回指を鳴らした。防音の魔法をかけるときの動作。これからする話にはあまり聞かれたくない内容が含まれている。……主に俺に関しての。
「
何かしらの
非才の事実が白日のもとにさらされたとき……自衛の術を持つのと持たぬとでは大違いじゃ。
……わかっているさ……多分。
「どうだかのう……欲を言えば、冒険に出てレベルを上げてくるんじゃな。
そうすれば少しは魔力も芽生えるかもしれんぞ?」
俺の胸ーーー正確には、胸ポケットの中の冒険者タグーーーを指差してギルドマスターは続ける。
「お主、まだレベル1なのじゃろ?」
……正確にはレベル3だ。隣国に行った際、時間を見つけて少し初心者の狩場に潜ってみた。
レベル。この世界においての、強くなるための二大基本システムの片割れ。
魔物を殺した際の経験値、それを冒険者タグに施された補助魔法が効率的にその持ち主にフィードバックし、レベルという明確な数値で示してくれる。
別にこの数字が高くなったところで、攻撃力が上がって革を紙のように引き裂いたり、防御力が上がって肌が鉄のようになったりするわけではないが……この数字の上昇による恩恵は確かに存在する。
その
「……たいして魔力の上昇は感じられんのう。お主、本当に魔術の才能が無いんじゃな」
もっと他の方法を考えたほうが良いのかのう……。ギルドマスターが小さく呟く。
「かわいい
もっと死ぬ気で店を守って貰わんと困るんじゃよ」
この店の蜂蜜葡萄の指名率2位は、そんな自分勝手な都合を隠す気もなく押し付けてくる。
……気になったんだが、その言い方だと俺はどうなっても良いのか?
「まぁ、ぶっちゃけそうじゃの」
パイン取り上げるぞ。
「冗談じゃよ。こんなからかいがいのある男もそうそうおらんじゃろうて」
ヒョイ、と俺からグラスを遠ざけてギルドマスターが笑う。
「儂のことを守備範囲に入れておる男をからかわなくてはもったいないからの」
……やめろ。
「本当にいい男になったら儂のこの数百年の生のなかで一度の戯れとして、抱いてやってもいいぞえ?
儂の
……やめろください。
ギルドマスターが甘い言葉を囁くと、あまがかりした精神魔法との相乗効果で、凄まじくドキドキするのだ。
あと単純に未経験者にはキツイ。マジでキツイ。
結局、その日は店が終わるまで、ギルドマスターにからかわれ倒された。
悟り妖怪から仕掛けられるセクハラとか拷問以外の何者でもないというに。
「これも精神修養の一環じゃ。お主のためにやっておるんじゃよ? 真じゃよ?」
……感謝してないわけじゃない。
そう思って、最後の注文の際には、もう一切れパインをグラスに引っ掛けておいた。