「ってことは、お祭りの日は一日通して、その武道大会とやらの審判と司会を務めるわけだ」
「そう、なります……」
「彼、ああ見えてもライバル多そうだけど、それでいいの?」
「うっ……で、でも……私が企画したことですし……それに、あの子の喜ぶ姿も見たいし……」
「見るだけなら、デートの一時に試合を観戦するだけでもいいと思うけどねぇ」
「うっ……」
「冒険者って、明日をも知れぬ身だよ? 彼だって例外じゃない。時の運が少し傾いて、ゴブリンたちに……ってこともあるかもしれないよ」
「うぅ……」
「そしたら、また来年でいいや……なんて言ってる暇ないよ? 来年どころか、永遠にチャンスが来なくなっちゃう」
「う、うぅ……」
「……私が、代わってあげようか?」
「へ?」
「テンカイチなんちゃらの審判と司会。私が代わってあげるよ」
「えっ、で、でも……」
「職務もいいけど、自分のことも優先しなくちゃ」
「……」
「気にしなくても大丈夫。どうせ私はお一人ですし」
「あっ、いや……」
「ふふっ。そんなに取り乱さなくてもいいよ。一人でいることに、なんの寂しさも無いし。それに、あの子が戦う姿って今まで見たことないからさ。私、一度間近で見てみたかったんだよね」
「……いいんですか? 本当に」
「いいとも。親友が困っている時に手を差し伸べなくて、至高神に仕えることなんてできないよ」
「……あっ、ありがとうございます!」
「そんな頭を下げてもらうほどのことでもないってば。あっ、試合スケジュールとか組み合わせの手順とかはもう決めてるわけ?」
「はい、一応。これがそうなんですけど……」
「ふむ。くじ引きで決めるわけね。んで……午前中に四試合を行って、準決勝進出者を決める、と……」
「午後は、準決勝と少しのインターバル。そして夕暮れ時に決勝をやろうと思っているんです」
「時間的に、ギリギリ奉納とは被らない感じだね」
「試合が長引けば、被ってしまいますが……」
「長引くかね?」
「こっちの冒険者さんたちだって、オールラウンダーさんに引けは取りませんよ」
「さすが。彼らを長年戦地へ送り続けた人が言うことは違うや」
「いや、そんな……えへへ……」
「まぁ、万が一にも被ったとして、巫女様による奉納の祝詞と、戦士による戦いの献上。それが同時に行われるのも、なかなか乙なものかもしれないね」
「そう、ですかね?」
「そうともさ。さ、何はともあれ話はこれでお終い。ほら、そうと決まれば早く話をつけて来なきゃ」
「えっ、い、いまからですか……」
「……そうか。彼は今、冒険に出かけてるんだっけ。だったら、帰って来るまで待てば? 仕事終わりに酒場でお酒でも飲んでさ。酔いに任せれば、上手くいくかもよ」
「そんなものでしょうか……」
「こういうことに必要なのは、とにかく勢いだよ。ほら、頑張れ」
こうして、当日の二人の役割は決まった。
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