……や? 行き倒れかえ?
もし。もし。しっかりしなせぇ。……ほ。どうやら息はあるようだ。
……や? こりゃ、腹の音か。あんた、腹が空いているのだねぇ。おい、親仁。確か袋に握り飯があったはずだが……。
「はい、はい」
ありがとうよ。さ、これをお食べなさい。
……はて? 握り飯を見るのは初めてかね。……まぁ、無理も無かろうかな。お前さん、見たところは
ほれ。一口齧ってみておくんなさい。これはね。焚き上げたコメを丸めて、そこへミソを塗りたくり、軽くあぶったものでしてね。へぇ。どうです? 美味い? そりゃよかった。
ところで、お前さん。どうしてこんな道の真ん中で倒れていたのかね。首に認識票をしていないところを見ると冒険者ではなさそうだし……人を見た目で判断するのは気が咎めるが……もしやお前さん、混沌に与する者かね。
……ふむ。まぁ、無理に聞こうとは思いませんや。話したくねぇのなら、お前さんの胸に秘めていなさるがいい。
ほら、この竹筒もやろう。中には酒が入っている。これから寒くなるからね。あおっておけば、体があったかくなろうというものさ。
……さて、それじゃあっしらはここいらで失礼させていただきますよ。なぁに。別段急ぐ旅でもねぇが、ゆっくりしすぎるわけにもいかないのでね。
……どうなされた? なに? あっしらについて来ようというので? 止めておきなさい。こういう時はね、互いが互いを知らないままに別れるのが一番さっぱりとしたものですよ。
……ほほう。一飯の借りがある、と? 律儀なことだ。しかしね。これはこの老いぼれの戯れでやったことさね。お前さんが、そこまで深刻になる必要は……。
ふむ。お前さん、相当義理堅いのだね。……なに? そんなものじゃない、とね。お前さんの気が済まないから、ついてくる、と。
……ようござんす。それなら、お気の済むまでついてきなせぇ。……ただし、あっしらの商売にケチをつけることはなしですぜ。
はて、なんの商売か、ですって。ふふん。人様のお蔵から、金目のものを……ちょい、とね。そうさ。盗み働きがあっしらの商売でして。
そうさなぁ。あっしらも、世間一般でいうところの
ほう。ちょいと興味のあるような目をしなすったね。
そうさ。まぁ、他人から取るだけ取って踏ん反り返っているような、あこぎな連中から頂戴することはありますがね。
なんといっても、盗みの本道は、殺さず、犯さず、無い所から盗まず。この三つを守らないことには、話になるめぇ。そこをいくと、小鬼どもはその三つの掟を見事に破っていやがる。犬畜生にも劣る所業というものさ。
だからね。あっしらはこうして、奴らに思い知らせているのさ。
……? まさか。正義だとかなんだとか、そんな下らねぇもののために働いているのではないさね。てめぇのやっていることが良いことだとは、一度たりとも思ったことはありませんよ。ただね、横道に逸れた者というのは、本道へ戻ることが……なかなかどうして難しいものだ。だから、こうして……外道は外道なりに筋の通ったことをしてぇと……そう思ったまでのことで。
ふふん。難しい顔つきとなりましたね。なぁに。そんなにややこしく捉える必要などありませんや。さっきに述べたのは、飽くまでもあっしの信条。お前さんはお前さんで、自分の道を進めばよろしかろう。
……ほう。自分の事を、話おつもりになりましたかね?
いいでしょう。この老いぼれに、話せるだけ話してみなせぇ。
……へへぇ。つい先日に勇者と相まみえた話、ねぇ。面白い。一丁、聞かせてもらいたいねぇ。
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