穂群原学園の校門前、魔術師風の男が杖を構えている。
そしてそれと対峙する元昭とそのサーヴァント。
前にはBBと楊貴妃。
そして後ろでは元昭を庇うかのように立つアビゲイル。
男は元昭をじっと見つめるとふいに笑みを浮かべる。
その笑みはまるで楽しみを前にした無邪気な子供のようであった。
「それじゃ始めようぜ、戦いって奴をよぉ!!」
男がそう言うと、彼の周囲に炎が出現、一瞬揺らめいたかと思えば矢のように元昭達に向かって飛んでいく。
「BBと楊貴妃は標的に肉迫。アビゲイルは俺を守れ。」
「命令するなんて随分偉くなったものですね・・・聞いてあげますけど、私から目を離しちゃ、ダ・メですからね?」
「仰せのままに、天子様。」
「あなたには指一本触れさせないわ。」
元昭が素早く指示を飛ばし、その指示の通りにBBと楊貴妃は火球の間を縫うように疾走し、男に接近する。
アビゲイルは元昭に当たりそうな火球を地面から輝く触手を出して、叩き消す。
「センパイが見てるんで、派手にやられてくださーい!BB~フィスト~☆」
BBは気の抜けるような珍妙な掛け声と共に炎を纏った拳や足で男を攻撃する。
しかし男は杖に炎を纏わせて、その一撃一撃をいなす。
「わりぃがそういうわけにゃ行かないんでね!!」
男はそう叫ぶとBBの拳を杖で払いあげると、男の前蹴りがBBの腹にねじ込まれる。
BBは突風に吹かれた紙のように蹴り飛ばされた。
しかし、そこまで大したダメージにはならなかったのであろう。
BBは空中で態勢を整えて、着地すると指を鳴らす。
「サマー、バケーション!」
それと同時に男の足元から火柱が三発吹き出し、男を包み込む。
煙が立ち込める。
しかしBBはまだ戦闘が終わっていないことを確信する。
もし、あの男があの英雄であるなら、この程度の攻撃で終わることは決してない。
杖の取り回しやルーンの魔術、男の真名を察する要因はいくらでもあった。
だからこそただの推測でしかないにも関わらず、確信を持つ。
あの男が、アルスターの光の御子であるならばこの程度でやられることは決してないと。
煙が晴れる。
そしてそこにはちょうど男と同じぐらいの大きさの丸太が焼け焦げて鎮座していた。
それと同時に、
「そういうのはリゾートでやるもんだぜ?化物。」
男はBBの後ろ、上空に浮かびつつ、手をBBに翳す。
そして裂帛の気合を込めてその言葉を口にした。
「アンサス!!」
するとBBの足元が赤く発光する。
「これは・・・・・」
「意趣返しだ。燃え尽きやがれ!」
男がそう得意げに言い放つと同時に、一本の火柱が巻きあがる。
「BB!!」
元昭はBBの名前を大声で呼ぶ。
煙が晴れるとBBは未だ健在であった。
しかし、体のあちらこちらは煤で汚れ、冬木の情景からは著しく浮いていたスポーティーな水着はところどころ焦げて見れたものではない。
「心配してるんですかー?センパイ。この程度、最強系後輩のBBちゃんには通用してませんからその不細工な心配顔を私に向けないでもらえます?・・・・女の子の水着を焼くなんて大英雄サマはずいぶんと特殊な性癖していらっしゃるんですね。BBちゃんドン引きです。」
BBちゃんは上空に浮いている男を見て、皮肉気に笑う。
しかし男は取り合わない。
「てめぇらは女だどうか以前に人じゃねぇだろ。」
「うえーん、聞きましたセンパイ?あんな酷い男になっちゃダメですよ?」
BBは顔を手で覆い、ウソ泣きをする。
しかし、顔を上げると、
「あ、それとそこ浮いていると危ないですよ。」
「____ッ!」
男は背後から濃密な殺気を感じて振り返る。
「はああぁぁぁぁ!!」
そこには楊貴妃が二本の棒のようなものを使い、男を討とうと今にも棒を振りおろそうとしていた。
男は杖を槍のように取り回し、楊貴妃の攻撃を防ぐ。
そして、それどころか鍔迫り合いの末、楊貴妃を逆に押し返す。
「武芸を嗜んでねぇ小娘に撃ち負けるほど俺はたるんじゃいねぇ!」
「でしょうね。ですから!」
落ちながらも楊貴妃は男を見据える。
それは標的を確認する為。
確実にこの男を焼き殺す為である。
「行きなさい。」
その言葉と共に、彼女は手元に琵琶を出して、弾くことで3つの炎をまき散らす。
いや、それは炎ではない。
青白く輝き揺らめいているが、それは確かに人の、女性の形をしていた。
彼女の侍女、炎の精霊である。
それらは男目掛けて飛んでいく。
「な、マジかよ・・・・・」
男はそう呟くと炎に再度包まれ、地面に落ちていく。
そして炎が消え、煙が晴れると確かにそこには男がいた。
体は黒い煤がところどころに付き、羽織っていたローブは焼失し、魔術師らしからぬ筋肉質な肉体を外気に晒している。
しかし、男はそれでもまだ生きていた。
「良い機転だ。死ぬかと思ったぜ。」
男は素直に楊貴妃を賞賛する。
「あなたがBBさんと打ち合っている時、あなたの動きは魔術師ではなく戦士の技量を感じさせた。ですから近接では勝つことはないと思ったのです。」
楊貴妃の言葉を聞き、男はにやりと楽し気に笑ってみせた。
「やっぱり分かる奴には分かるもんだ・・・・。俺は本来槍兵でな。この杖だって使いにくいったらありゃしねぇ。」
杖を右手から左手に投げ移しつつ、男はそうぼやく。
そして男は元昭とその前に立つアビゲイルを見た。
「化物二人に囲まれて、マスターを討とうにもあんな番人がいやがる。槍が使えるなら話は別だが、俺は生憎キャスタークラスときてやがる。まったく詰んでやがんな。こりゃ。」
「投降するのであればどうぞ?」
楊貴妃は降伏を勧告する。
しかしそれを聞くと男は鼻で笑い。
「降伏なんかしねぇよ・・・・英雄として、そんな選択するくらいなら死を選ぶぜ。」
「そうですか・・・・であれば。」
楊貴妃が琵琶の弦に手を伸ばす。
「一つだけ言っとくが、ここは元々俺の結界の中でな。それなら・・・・・」
琵琶の弦が弾かれて侍女達が男に殺到しようとした、その瞬間
「とっておきの一つや二つ、あっても当然だよなぁ!!!」
そう叫ぶと、地面に手を勢いよくついた。
それをきっかけに元昭たちを収めるほどの大きさの巨大な魔法陣が出現する。
そしてそれと同時に、侍女たちは動きを止めたと思うと消滅し、魔法陣は明度を強くし、発光する。
「まさか・・・センパイ!」
BBは男の意図を察し、元昭の名前を呼ぶ。
「俺も本気を出させてもらう・・・・焼き尽くせ木々の巨人。ウィッカーマン!!」
すると地面から藁人形のような巨人が生えるように貴方の目の前に出現する。
それは炎を伴いながらも、ゆっくりとした挙動で元昭に向かって距離を詰めていく。
「マスター!」
アビゲイルは慌てた様子で貴方を見る。
その目は貴方を守るという意思を感じさせる。
そしてあなたは確信する。
この宝具は自らの一切を滅却するに足る物であると。
そして少女と目が合う。
この事態を打開する方法はただ一つだ。
「・・・・宝具を開放して。アビー。」
その言葉を聞き、アビゲイルは物憂げな表情を浮かべる。
「・・・・マスターがそう望むのなら。私は・・・門を開くわ。」
そう言うと、彼女は目を閉じる。
彼女から後光が指して、なにもかもが彼女の額の鍵穴に吸い込まれる。
それはあなたも例外ではない。
暗黒の領域の中、彼女の背後から数多の触腕が木の巨人を薙ぎ倒し押し潰す。
それだけに飽きたらず、触腕は男の方へ伸びていく。
「______光殻湛えし虚樹」
そしてあなたが瞬きした次の瞬間、あなたはアビゲイル以外誰もいない白い虚空に立っていた。
足元には星の海。
銀河や星々といった宇宙が今、自分の眼下に広がっている。
こんなことは常識ではあり得ない。
それにあの時、触腕が巨人を破壊している中で、あなたはちらりと見えた。
よく分からないが尋常ではないなにか。
それを思い出すだけで、息が絶えず荒くなり、膝が震える。
本能的にあれを思い浮かべることを頭が、身体が拒否していた。
>あなたは禁忌に触れた。
>カルマが33減少した。
>ストレス値が大きく上昇した。
>トロフィー『禁じられた扉』を獲得。
>新しいスキルツリーが解放されました。
『禁じられた扉』・・・[編集済み]を見ることで初め てカルマが0を下回った時に獲得できるトロフィー。
人を殺してカルマが0を下回ると、『人でなし』というトロフィーを獲得できるらしい。
どちらにしても特殊なスキルツリーが解放される。
自分は本当に戦闘描写が苦手なので、臨場感のある文が書ける人は本当に尊敬します。
なんじゃこりゃ!!(西武警察)となった人もいるかと思いますが、温かい目で見ていただければ幸いです。
次回は走者の視点に戻るので失踪します。