俺は普通なので逃げたいと思います、生き残ればいいんだよ!   作:椎名叶

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隼の弟

俺は目の前でニコニコと微笑むお館様に俺は絶句し固まる。そんな俺にお館様が言葉を続ける。

その言葉でさらに俺は動けなくなる。

 

「無一郎も有一郎も呼んでるよ、おいで。」

 

何で呼んでるんだぁぁぁ!?

 

お館様の後ろからひょっこと顔を出すと「兄さん!」って言って俺に抱き着いてくる。

それを俺は受け止めて頭を撫でてやりながら俺はお館様に疑問に思ったことを冷静に問う。

 

「何で俺のこと知ってるんですか?弟たちには口止めしたはず…。」

 

二人を見ながら言うと無一郎が目を逸らした。

 

「言った…?」

 

そう聞くと目を逸らしながらゆっくりと頷く。対照的に有一郎は無一郎が言ったと言わんばかりに俺を見る。

俺は嘆息を一つ漏らし、ポンと無一郎の頭を軽く打つ。

 

「ごめんなさい…。」

 

そう小さくなって謝る無一郎に俺は微笑み、大丈夫と声を掛けてまたお館様に問う。

 

「…聞きますけど俺をここに連れてきた理由は何ですか?」

「二人が会いたがってのも一つだけど、私が隼に興味があったからかな。」

 

俺に興味ってなんじゃそれ。

 

首を傾げているとお館様が俺に問う。

 

「二人を鬼から守ったのは、隼だよね?」

 

俺はまた弟たちの方を見る。今度は有一郎も目を逸らした。

言いたい気持ちはわからなくもないがうちの弟たち口が軽すぎるし、軽い嘘をつく。

俺は二人に呆れながら答える。

 

「…俺は助けた憶えないですけど?」

「…?」

 

首を傾げ眉を顰めるお館様に俺は言う。

 

「俺逃げただけですもん、俺が人を助けるなんてできるわけないですよ。」

 

お館様も弟たちも含めた全員が間抜けな声を漏らす。

 

「え?俺が助けたとでも思ってました?鬼から逃げた、ただの臆病者ですけど?」

 

これは嘘じゃない、本当のことだ。

 

―――――――

―――

 

俺の前世の記憶が戻ったのは鬼が家に入ってきたとき。

あの時の俺は焦って二人に布団を被せて鬼に馬鹿正直に突撃した。

まぁ完敗だった、体中鬼の爪痕だらけ。傷がじんじん痛んで立つのもやっと、対して鬼は無傷で元気いっぱい。

俺の身体は恐怖に染まって『逃げる』という行動を起こした。

鬼は俺を追いかけてきた。

弟たちのことは気になったが俺はそれを脳の隅に押し込んで鬼から逃げた。

それから俺は『逃げ』に執着した。

 

簡単に過去を言うとこんな感じだ。

 

まぁ、滑稽で馬鹿な話だとは思う。

 

―――――――

―――

 

全員が口を開けてポカンとしているだろう。実際見える範囲で無一郎、有一郎、お館様、あまね様計四人がそうなっている。

 

「二人は勘違いしたんですよ、俺が『守った』って。俺は鬼から逃げただけです。結果的に助けたとなったかもしれないけど俺は助けたつもりはないので感謝される筋合いはないんです。」

 

俺は情けない兄でごめんな、という意味を込めて二人の頭を撫でているとお館様が優しい声色で俺に言う。

 

「隼がそう思ったとしても二人は助けてくれた、そう思っているんだ。」

「まぁ、そうですね。」

「その感謝を否定してはだめだよ。」

 

正論である。俺は何度か頷き話はこれだけかと問うとお館様は首を横に振った。

 

「最後に提案をさせてもらうね、鬼殺隊に入隊しないかい?」

 

その提案に弟たちは乗る。俺は断ろうと口を開き、閉じた。

弟たちが俺をつぶらな瞳で見て、お願い兄さんも乗って?みたいな感じで見てきたから。

俺は迷いに迷った末、こう答える。

 

「申し訳ありませんが、俺は断らせていただきます。」

「えっ…。」

 

無一郎が声を出して驚く小さくごめんなと返してお館様を見る。

 

「そうか、でも呼吸の習得だけはしてもらおうかな。君は実弥と同等のかそれ以上の稀血かもしれないからね、いざとなれば自身で鬼と戦ってもらわないと。」

「は、はぁ…。ですが俺は足という武器が…」

「ね?」

 

謎の威圧感に負け俺は渋々頷く。

 

良いように言いくるめられた気がするんだが…。

てか、これ柱が必要な話だったの?

 

そう疑問をぶつけるとお館様は答えた。

 

「この九人から師範を選んでもらおうかと思ってね。」

「はい…?」

 

この九人から選ぶ?ちょっとよくわからないですね。

普通、育手のところに行くのでは…?というか柱忙しいんじゃないの?

 

「それなら私が引き受けますよ、皆さん忙しいでしょうし、私はもう引退ですし。」

「そうだね、適性があるかはわからないけどカナエのところならちょうどいいだろう。」

 

俺の意見なんて聞かずどんどん話が進んで行く。

選ぶって何だろうね、と思っていると無一郎たちも行くところが決まったようで話が終わった。

無一郎たちは柱の元ではなく育手の元に行くようだ。

 

「じゃあ、カナエと隼と無一郎と有一郎はこれで帰っていいよ。」

「じゃあ行きましょうか、隼君。」

「あっはい。」

 

カナエさんは俺の為に来たようだ、優しいなぁ。そう思いながら涙目になった弟たちと別れ、蝶屋敷へと帰った。

 

 

 

 

 

 

帰れば、何故か蝶屋敷の前で鬼の形相でしのぶさんが刀を地面に刺して仁王立ちしてました。

 

理由はわからないけど斬りかかられました。

頬に掠って死ぬかと思った。カナエさんが止めてくれなかったら腕一本飛んでた気がする。

 

俺、呼吸習得以前にしのぶさんに殺されるんじゃない?

 




過去の軽い回想ですが口に出して言ってはないです。心の中で考えていた、それだけです。

自分がしたかった設定をぶち込んだ回でした。次回は多分、蝶屋敷メインの話。
お楽しみに。

ヒロインは候補はいくつかあるんだけど…みんなは誰が良い?

  • 胡蝶しのぶ
  • 胡蝶カナエ
  • 真菰
  • 無一郎&有一郎
  • 『全員』だよなぁ!

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