俺は普通なので逃げたいと思います、生き残ればいいんだよ! 作:椎名叶
「いぃぃやぁぁぁ!最終選別なんて行かねぇぇ!」
そう言って屋敷の柱にしがみつく隼にカナエは呆れつつ、最終兵器を口からこぼした。
「無一郎君達も参加するらしいけど…」
「へ、へぇ、そうなんですか」
「無一郎君達が死んでしまっていいの?」
「ぐっ!‥そんなんこと言って俺が行くと思いますかぁぁぁ!?」
「思ってるわ」
「えぇ、そうですよ!俺は弟バカですからね行きますよ、行きゃいいんでしょうが!」
「そう!よかったわ!じゃあ、支度して、ほら」
「え、え、え?うわぁぁ!」
――はめられたァァァ
後悔時すでに遅し、隼は刀を持たされ、蝶屋敷の玄関に立っていた。
「いや、あの、ほんとに…」
「はい、じゃあ頑張って!藤襲山までの道はしのぶの鴉が案内してくれるから!」
「頑張ってくださいね、応援してます」
「あ、まじ?じゃあ俺頑張っちゃおうか―――あぐっぁ」
「調子には乗らないでください、早く行ってください」
「さーせんしたぁぁ!」
脳天に鉄拳を喰らい、全力で頭を下げて逃げるように少し偉そうなしのぶの鴉を追いかけ、目的地に向かって走り出した。
何とも気が抜ける、出発だったが。
――――
「…すげぇ綺麗だな」
咲き誇る藤の花に触れながらも歩を進めて広場まで行く。
広場に出るとほかの参加者と見覚えのある二人が隼を見つけたようで手を振っている。
「久しぶり、二人とも」
手を振り返しながら二人の前まで移動してにっこりと笑う。
「久しぶり兄さん!」
「久しぶり」
抱き着く無一郎と素気ない挨拶を口にして澄ました顔をする有一郎、対照的な兄弟である。
「確か二人は霞の呼吸だったか」
「うん、そうだよ!」
にかっと笑う無一郎、何故知っているのかわからず目を見開く有一郎。
「兄さんは月の呼吸だよね!すごいね、自分で創り出せるなんて!」
「ま、まぁな!」
――俺が創ったわけじゃないし、無一郎とかは自分で型つくっとったやろ…
嘘を口から吐き出しつつも話していると、凛とした声が響く。
少女ら二人が選別の内容を淡々と説明していく。
最終選別の内容としては現役の鬼殺隊士が捕まえた飢餓状態の鬼が蔓延る山中を、七日間生き残るというもの。一見、難しすぎるとは思うだろう、だが一度は隊士に斬られて死にかけて弱っている鬼を殺せない者など隊士になった瞬間死ぬのは目に見えている。生き残ったからといって死なないとは言い切れないが。
「ご武運を」
その言葉で終わり、参加者たちは続々と門を潜って鬼が蔓延る山中に足を踏み入れていく。
それを追って隼たちも入山していく。
「…無一郎、有一郎、俺とは別行動で頼む」
「「え、」」
さっきまで澄まして顔をしていた有一郎もさすがにこれは驚きで声を漏らす。
「いや、俺やっぱり月の呼吸試したいからさ。二人は強いから大丈夫さ」
「うぅ、わかった」
「ちゃんと帰ってきてね、兄さん」
勿論、そう答えて隼たちは分かれた。
――狐の仮面見つけたから咄嗟にそう言っちゃったけど、女の子だったし真菰、なのかなぁ…
――――――
「まてぇぇぁぁ!」
「こいつは俺の獲物だぁぁ!」
拝啓、無一郎、有一郎。
俺は生き残れそうにないです。
後ろから鬼が来てます、怖いです。
前までは結構な頻度で見てたんだけど数ヶ月まともに見てなかったもんだから…。
「ぅぅ待つわけねぇだろうがぁぁぁ!」
正直言って、童磨より怖いです。
あいつまだまともに喋るじゃん、こいつら―――
「ぎゅぐぁぁ!」
「マテァァァ!」
意味わからんこと叫んでるもん―――!
すばしっこさと数ヶ月でバカみたいについた体力を使い、隼は鬼からどんどん距離を離して―――
逃げ切った。
木に駆け上がって、呼吸を整えて辺りを見下ろした。
「んーー!星空が綺麗、じゃなくて手鬼探さないと、いや年号鬼…?」
首を傾げていると、山の一部がずしんと動いた。
「あれかな、‥行くかぁ、嫌だな、ほんとに」
無一郎と有一郎が来てませんように、そう願いながら木を足場にして移動を始めた。
「お前で、十三人目だァ…」
「お前は…殺して‥「お取込み中のところ失礼しまーーす!」え…?」
地面を踏み込もうとした仮面をかぶった少女――真菰は横から大声を上げながら入ってきた隼に驚いて足を滑らせた。
それを読んでいたかのように受け止めて立たせると、隼は刀を抜いた。
「こんにちは、手鬼さん!」
「誰だァ?お前はぁ?」
「隼と申します!失礼ながら、貴方様に死んでいただきたく!」
「――は?」
爽やかな笑顔でそう言われ、真菰も手鬼も口をあんぐりと開けている。
失礼にもほどがあるだろう、そう思ってしまった手鬼と真菰。
「死ぬのはァ、お前だァ!」
「お?お?殺せるならやってみろよ?ほら、こいよ」
「貴様ぁぁぁぁ!」
「えーと、そこの君!後ろ下がっててね」
真菰にそう言ってから隼は構えをとって最後にまた煽った。
「ねぇ、ねぇ、手鬼さん知ってる~?今の年号はね…大正なんだよぉ!知ってたぁぁ!?」
「ぁぁぁぁあああ!」
「プークスクス、怒ってやーんのー!」
真菰はキュンと来たようだが煽っている姿を見て即座にその感情を捨てた。
時系列?ちょっと何言ってるかわかんないですね。
この小説、書きたい設定ぶち込んでるだけだから、うん。