王道ファンタジーのお姫様ポジションになりたかった   作:エテ皇

1 / 14



ドラクエ久々にやったら面白かったので初投稿です。






姫だって攫われるなら抵抗はする

 

 

 

 

 

 ある日、起きたらめちゃくちゃ豪華な感じの知らない天井があった。

 

「…………なにこれぇ」

 

 思いのままに吐き出された言葉と、自分の知る自分の声とは真逆の高く澄んだ舌っ足らずな声だった。

 部屋も普通のアパートと言った感じではなく、豪華な装飾のある日本人が想像した中世の豪華なお城みたいな感じの内装になってる。

 まさか、と思って自分の体を確認するが、やはりというかなんというか色々小さい。肌の色が日光なんて浴びたことの無いくらい白くなり、ついでに指は子供っぽいフニフニとした感じながらも細くしなやか。ちょっと体のラインが見える寝巻きには、残念なことに股間の盛り上がりが存在していない。

 

 

 

 

 

 

 日本で生きているものなら知らないものは居ないと言っても過言ではない大人気王道ファンタジーゲームシリーズ『ドラゴン・オブ・ザ・ワイルド』。通称ドラワイ。

 シリーズによってシナリオは異なるが、俺の好きなドラワイⅣのシナリオは王道中の王道。魔王によってさらわれた姫を助けるために、一人の青年が勇者となり仲間を集め、魔王を倒して姫を助けるというストーリーだ。

 テンプレと言われればそうではあるが、そのテンプレはこのゲームが作り出した流れ、即ち王道なのだ。ラーマーヤナから脈々と語り継がれ、日本のゲーム界に旋風を巻き起こしたこのゲームのシナリオが面白くないわけが無い。

 主人公はとある国の騎士であり、幼い頃から親しい仲であったフロリア姫の専属騎士となることを約束していた。

 しかしこの世界で唯一魔王を封じることが出来る姫の力を知った魔王は、彼女を誘拐してその力を悪用して自身の力を強化しようと企んだのだった。

 偶然、現場に居合わせなかった主人公は姫を助ける為に旅立ち、苦しい戦いを仲間と共に乗り越え、最後は姫を救い出し協力して魔王を封印し世界は平和になり二人は結ばれハッピーエンド……単純だが分かりやすく爽快感のあるストーリーだ。

 

 俺はこのゲームが大好きだし、主人公も仲間の重戦士とかも好きだ。あとフロリア姫も単純にビジュアルが可愛くて好き。やっぱ囚われの姫様っていいよね。

 

 

 うん、姫様にそんなこと思ってたからバチでもあったのかな? いや、フロリア姫を邪な目で見なかったやつなんてこの世にいるわけがない。彼女が主人公の最大のライバルにして魔王の直属の配下の六大魔公の一人のデミルトにNTRされる展開は一大ジャンルになったレベルだ。フロリア姫は主人公と幼馴染であるという点とビジュアルが可愛いという点だけで人気になったも同然のレベルの可愛さなのだ。

 いや、俺は魔王軍の拷問にも屈さず主人公を信じ続けた姫の意志の強さとかも含めて好きなんだからね? その意志の強さがあったからこそ、主人公とぶつかったデミルトが人間の強さを知って最後に助けてくれたりしたんだからね。嘘じゃないよ。ホントだよ。

 

 

 

 

 

 とりあえずね、どうやら俺はそのフロリア姫になっちゃったみたいだ。

 

 何度も鏡の前で確認してほっぺをぶっ叩いたり、髪の毛引っ張ったり、とりあえず服を全部脱いで確認したりしたけど現実だった。

 むしろ潤いタマゴ肌とでも言うべきモチモチの肌の感覚と、枝毛ひとつないサラサラのブロンドへアーと、まだロリっ子とはいえ女の子女の子した体を思い知らされて余計現実だと思い知らされた。

 

 初めのうちは超混乱してね、そんな俺の様子を見てメイドっぽい人が「姫様がご乱心に!」とか言って僧侶っぽい人達に囲まれて色々されたりもしたけど、なんだかんだで三ヶ月もしたら慣れてしまっていた。

 

 そりゃ一国の姫様であるから躾とかは超厳しいし、女の子としての礼儀作法とかはまだまだ出来てないけど現状に対する理解はもう完全に追いついた。

 

 理由はわからないけど俺はフロリア姫になってしまったのだ。

 どうしよう、となってもどうにも出来ない。なっちまったもんは仕方ないと思うようにして生きているが、意外と不便というものはしてない。ファンタジー世界だから魔法があるからスマホとかゲームがない以外は現代より便利な感じのポイントが多いし、何より周りの人達がみんな優しい。

 これは俺が姫様だからとかじゃなくて、単純に善人ばかりが周りにいるのだ。

 

 これはゲームでも同じなのだが、フロリア姫の父のレオダス王は国民からも慕われている善き王だ。娘との描写はゲームではあまりなかったが、かなり子煩悩な父親と言った感じだった。だからと言って甘やかす訳ではなく、時には厳しい時もあるが基本的に優しいパパって感じ。

 

 メイドとか執事の人達もめっちゃ優しい。姫としての勉強とかの合間に遊んでくれたりするし、魔術の勉強がしたいとか言うとしっかり教えてくれた。

 あまりにも良い人達過ぎて、正直生きてるだけで罪悪感が湧いてきた。だってこんなにも皆に愛されているお姫様に朝起きたらなっちゃっていましたなんて、もう色々と申し訳ない。

 けれどなってしまったものはなってしまったのだ。戻る方法なんてわからないし、ならば俺は俺に出来ることをするべきだろうと考えた。

 お父さんや付き人達には出来るだけ迷惑をかけないようにしたし、勉強とかも真面目に取り組んだ。めんどくさかった身だしなみにも気を使うようにしたし、とにかくお姫様らしくを意識してめちゃくちゃに頑張った。

 

 そんなある日、最近我が国の領土でも魔王軍の被害が出始めていると耳にして俺は一つピンと来た。

 魔王退治! 

 原作では俺ことフロリア姫が攫われた後に、姫の近衛騎士であったセイト(デフォルトネーム)が姫奪還の旅に出て、その途中で聖剣を引き抜き各地で仲間を集めて成す偉業であるが、この国にその未来の勇者がいるのなら、わざわざ俺は攫われるのを待つのではなく、未来の勇者と共に力をつけて魔王退治の旅に出れば良いのでは!? 

 確かに魔王はとんでもない敵だ。しかしこの体は魔王を唯一封印できる聖なる力があるばかりか、魔法に関するスペックは天下一品。さすがはお姫様兼聖女の体といったところか。

 加えて俺にはその実力は未知数と言われている魔王直属の六大公爵の情報を始めとした原作知識を持っている。

 

 魔王を退治して平和な世界を取り戻せば、俺も攫われて酷い目にあったりしないし、少しでも世界の被害を減らせる。これこそこんな俺にも優しくしてくれるこの国のみんなに返せる最大の恩返しと言っても良いのではないだろうか? 

 

 そうと決まれば善は急げだ。

 魔王軍が俺を攫いに来るのは17歳の誕生日。今現在6歳の俺がどこまで強くなれるかはあと11年の努力にかかっている。頑張れ、俺! 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 時間というものは案外あっという間に過ぎるものだ。

 

 俺は16歳になっていた。ここまで来ると美幼女であったフロリア姫もゲーム本編の美少女っぷりを見せる見た目になってくる。

 ブロンドの髪は全て純金と言っても信じられるような輝きを持ちながら枝毛ひとつなく、純白の肌は触ると信じられないくらいモチモチしていて産毛すら見当たらない。

 顔のパーツも黄金比という言葉がぴったりで、瞳は相変わらず宝石のよう。これで自分の顔じゃなければ惚れていたのだが……

 

 

 強くなりたいから鍛えて欲しい、と口に出した時は初めは優しめに断られて、しばらくしたら割と本気目に諭された。騎士には騎士の、姫には姫の役割があると父さんにも言われてしまったがこればかりは譲れないと俺も猛抗議。

 自慢ではないがわがまま一つ言わないとてもよく出来た姫であった俺が駄々をこねるという異常事態に一同困惑。そして一週間ほど愚図った結果、父さんも渋々ではあるが承諾。だがこれは始まりでしかなかった。

 

 父さんも諦めて欲しかったのか、それともやるなら本気でという感じだったのかは知らないが、俺に言い渡されたトレーニングの内容はその方面に詳しくない俺でも10歳にも満たない女の子には厳しい内容だった。

 それでもこれで泣き言をいえば俺は守られるお姫様に甘んじることになってしまう。俺が目指すのは戦えるお姫様だ。その一念でトレーニングに望んだ。

 この肉体のスペックは高く、鍛えれば鍛えるほど強くなっていく実感もあったし、筋肉痛とかもすぐ治ればそもそも元の体力から一般的な日本人の女子とは一線を画すレベルだった。

 

 それでも、俺は毎日ひいひい言いながら、泣きごとが漏れそうになるのを我慢してひたすらに鍛え続け、その合間に王族として必要な座学と魔術の勉強にも取り組んだ。これでこちらが疎かになれば、勉強の方に専念してもらうというのも父さんとの約束だったからだ。

 そしてこの世界は基本的に魔術で出来ることが多いというか、剣と魔法の世界らしく魔法剣士が一番強い。

 お姫様で聖女だからって僧侶とか聖職系で味方を援護、だなんて生温い事はしない。やるからには己が魔王の首を叩き切ってやるくらいの気持ちでだ。

 

 

 ちなみにそんな中で実は主人公で未来の俺の近衛騎士であるセイトにも出会っていた。デフォルトネームのまんまで見た目も未来の面影があるから割とすぐにわかった。

 設定では幼い時から大人相手に十人抜きとか、デタラメ地味た強さを持っていた設定ではあったが、実際に目で見たら驚いた驚いた。

 俺がひいひい言いながらこなしたメニューを、男女の差があるとはいえ倍近く行いながら涼しい顔でいて、魔術についても物覚えがよくマジで大人の騎士十人抜きをしたのを見た時は目を疑ったよ。主人公ってやべぇ。実際にチート転生者とか見たらこんなものなのかなって気持ちになった。

 

 これはRPGの主人公の宿命なのかもだが、セイトは基本的に無表情無口でなんかちょっと怖かったりする。だが俺も強くなるためには手段を選びたくなかったので強さの秘訣とかを聞き出そうとしたらこれまた意外。喋ってみると意外と気さくな少年だったりした。

 一緒に訓練してるとはいえ、お姫様相手だから子供ながらに拙い敬語を使ってぎこちない笑みを浮かべるその姿は不覚にもちょっとときめいた。

 これが各地で仲間を作って魔王を倒す男のコミュ力……! やっぱり惚れてメンバーに加入した女の子が姫様との婚約を心から祝えるような男は幼少期からそういう魅力が一段階違うなと感じたよ。

 

 一つ誤算だったのは原作における関係性がちょっと変わっちゃった事だな。

 本当はお転婆な姫様が森でちょっとした高さの崖から落ちそうになってしまい、そこに颯爽とセイトが現れて助け、そこから親しくなるというのが原作のフロリア姫とセイトの関係なのだ。

 

 けれど俺達の場合、強くなりたいからと話しかけた俺にセイトが快く応じてくれて、二人で秘密の訓練をするような、男女関係なしの幼馴染みたいな感じになってしまった。

 二人にとって思い出の場所である森も、俺たちにとっては秘密の訓練場的な意味で思い出の場所になってしまったが、まぁこれくらいは誤差だろう。

 

 それはそれとしてセイトのおかげもあって俺はメキメキと実力を上げて、本来は俺を守る為にいる兵士達よりも強くなっていつの間にかこの国二番目の強さを持っているとまで言われるようになってしまっていた。

 もちろん一番はセイトであるが、魔術についてだけで言えば俺の方が扱いが上手い自信がある。

 なんて言ったって聖女だから? もう生まれつき光の加護があるからビーム撃てるし。やっぱビームは正義。

 

 騎士に混じって辺境の地に魔王の影響で湧き始めた魔物狩りの遠征にも参加したりしたけど、もう圧勝だ。やっぱビーム使えると強いよ。遠距離から剣振ってビームソード的に相手を切り刻んで、近づかれたら普通に切って、ちょっと違うけどやっぱ文武両道は大事だね。

 そんな俺の横で特に魔術使わずに魔物の群れを秒で全滅させるセイトはちょっと次元が違うね。化け物かな? 

 

 

 

 原作の時間軸で魔王軍が俺を攫いに来るまであと半年。そろそろ父さんにも魔王討伐についての旨も話しておくべきだろう。

 俺もセイトも十分に強くなった。切磋琢磨し合ったおかげか多分原作のスタートよりも強い。レベル1スタートのはずが30くらいでの状態でスタートになってるはずだ。旅の途中で得る秘められた聖剣の在り処もしっかり覚えている。

 セイトには既に話をしており、彼からは承認を貰っている。さすがは勇者になる男。その目には確かな正義の炎を感じられた。

 

 完全に原作の展開をぶち壊していたり、セイトと恋仲になれるような雰囲気が微塵もなかったりするがそこは仕方ないだろう。中身が男である俺じゃセイトのことを好きにはなれないし、もう俺は魔王をどんな手を使ってでも倒すと心に決めてしまっている。

 

 ありがちな原作ブレイクのごとく、徹底的にぶっ倒してやるから首を洗って待っていやがれ魔王! 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 王女様……フロリアと初めて会ったのは6歳の時、いきなり彼女が俺達騎士見習いの訓練に加わりたいと言い出した時だった。

 正直、俺はその時彼女に良い印象を持たなかった。自分くらい自分の力で守れるようにしたいだとか言っていたが、それは姫や王といった王族を守るために命をかける騎士への侮辱にも等しい言葉だと俺は感じていた。

 そもそも、その自衛の力を持つ為に魔術を学ぶというのに、わざわざ騎士達と同じように身体まで鍛える必要が感じられなかった。

 

 どうせわがままな姫様の一過性のものだろうと俺は気にしていなかったが、なんと王は姫が訓練に加わるのを許可し、あろう事か姫はその訓練の内容に付いてきていたのだ。

 俺は追加メニューをこなしているが、この訓練の内容は同世代の男達でも音を上げて諦めるようなレベルで、故にこの国の騎士達のレベルは高いというのにそれに姫が付いてきたのが驚きであり、そこまで騎士が信用ならないかと姫への不信感は更に強まった。

 

 そんなある日の事だった。

 なんと姫が直々に俺に稽古のお願いをしてきたのだ。

 

「セイトくんが一番強いってみんなから聞いたから、どうか私にも稽古を付けてください!」

 

 騎士見習いであり、この国に命を捧げた身である俺に、王族が頭を下げてまでしてきた願いを断れる理由はなかった。

 だが正直嫌だった。騎士への信頼のない姫への稽古なんてやる気が出なかったものの、ここで手を抜くのはそれこそ王に対する不忠だと思い俺は渋々、姫を秘密の訓練場へと連れていった。

 

 姫だからと言って訓練ならば俺は容赦したりはしなかった。強くなりたいと言ったのだから、強くなれるようにメニューを考えて姫に指導を行っていた。

 本当ならすぐに音を上げると思っていた。俺との自主トレを始めてから、勤勉な姫が座学の時間に居眠りをしたという話を耳にしてもうすぐ騎士ごっこも終わりになると思っていた。

 なのに、姫は俺の出すメニューをこなし、しっかりと力量をつけた上に居眠りをした分以前よりも一層真面目に座学に取り組むようになったのだ。

 

「何故、何故フロリア姫はそこまで強くなりたいのですか?」

 

 俺は遂に直接姫に問いただしていた。

 自分を守るためだけならそこまで過剰に強くなる理由もないだろう。この国には優秀な近衛騎士達が居て、将来俺もその一人になるつもりだ。

 なのになんでそんなに努力が出来るのか気になった。俺は最強の近衛騎士になるという目標があるから努力出来ているのに、一体姫は何故ここまで努力できるのか。

 

 姫はしばらく悩む様子を見せ、やがて意を決したように誰にも言わないことを約束してきた上で口を開いた。

 

 

「私は、いつか魔王を倒したいと思っています。私を育ててくれたこの国の人々を脅かす魔王を、この手で退けたいのです」

 

 

 なんの冗談を言ってるのか、その言葉が喉元まで出かかっていた。

 魔王は俺達にとって夢物語のような存在だ。諸悪の根源ではあるが、絶対に倒すことは出来ないという共通認識の恐ろしき悪夢。それを倒すだなんて、とても正気で口にできるようなことではない。

 だが姫の目は本気だった。どこまでも真っ直ぐで、どこまで本気だった。

 

「もちろん私の力だけでは無理でしょう。だからこそ私は強くなりたい。貴方となら、魔王を倒すことも夢物語ではなく、私達の手の届く未来に収められると思うのです」

 

 姫は俺の目を真っ直ぐ見てそう言いきった。

 冗談なんかじゃない。本当に魔王を倒せると思っているんだ。

 俺には自分が強いという自覚はあった。大人相手にだって負けたことは無いし、既に強さだけならこの国一番の騎士だとは思っていた。

 けれど、だからといって魔王を倒せるなんて夢にも思っていなかった。

 

 この時俺は己の矮小さを心から恥じた。

 姫は己を守る為の力を欲したんじゃない。俺のように自分の限界を決めてせめて手の届くものを守ろうとした訳でもない。

 視界の先の世界まで守ろうとして、ひたすらに自分を鍛えていたのだ。それは俺にはない強さ、絵本の中の伝説の聖女のような、慈愛の心だった。

 

「……さすがにちょっと馬鹿らしい話でしたね。今のは忘れ──」

「そんなことありません!」

 

 思わず恐れ多くも俺は姫の言葉を遮ってしまった。

 けれど叫ばずにはいられなかった。馬鹿らしい話だって? そんな訳が無い。

 

「姫の夢は、俺が聞いた言葉の中で一番綺麗だった。俺は貴方の夢を夢のままにしたくない」

 

 漠然と、騎士になってこの国を守ることしか考えていなかった俺の強さの中に一本の筋が通った瞬間だった。

 俺の強さの全てを、この尊い人に捧げる。近衛騎士として魔王を倒すこの姫を、例え魔王相手でも絶対に守り抜く。それが俺の目標になった。

 

「───ありがとうございますセイト。では、私がいつか魔王討伐の戦いに赴く時、隣で共に戦ってくださいね?」

 

「もちろんです! この身はこの国の王族を、貴方を守る剣です。命に替えても守り抜き、その悲願を成し遂げましょう」

 

 姫が華のように笑い、それを見て思わず俺も頬を綻ばせてしまった。

 騎士としてあれ、と自分に言い聞かせていつも不必要に力んでいた顔から力が抜けて、笑うのなんていつぶりだろうかと考えたら、また頬が緩んでしまった。

 

「そう言えば私達同い年ですよね?」

 

「はい。そのはずですが……それが何か?」

 

「…………同い年で騎士として先輩である貴方に、そんな改まられるとちょっとむず痒いです」

 

 そうは言われても俺は騎士であり、姫は姫だ。騎士として姫に無礼を働くなど言語道断。

 

「私のことは姫、とかじゃなくてフロリアという名前で呼んでください」

 

「そ、そんなこと出来ません! 一介の騎士にそんなことを言うなど、もっと一国の姫たる自覚を持ってください!」

 

 少し声を荒らげたが、それでも姫は不満そうに唇を尖らせていて、やがて名案が思いついたとばかりにちょっと悪戯っぽく笑った。

 

「それならこの場所だけです。このセイトと私の秘密の訓練場の中でだけでは、私のことを姫ではなくフロリアと呼んでください」

 

 それも恐れ多いのだが、意外と姫は頑固なところもあるようでこれ以上は譲歩のしようが無さそうだ。

 

「ふ、フロリア……?」

 

「はい。私はフロリアです、セイト。これからもよろしくお願いしますね、私の騎士」

 

 

 

 

 

 

 

 あの日から十年近くの月日が流れた。

 遂に姫から魔王討伐の旅に出るということを伝えられた。王から許しがそう簡単に出るとは思えない。しかし、姫ならば必ず自らの意思を押し通すだろう。と言うか、押し通せるまで諦めないのがあの人だ。

 

 しかし何も問題はない。例えどんな困難があろうとも、俺は必ず姫を守り抜き魔王を討つ。夢物語としか思えなかった話は、確かに俺達の手の届く話になっているような気がした。

 

 

 

 

 

 







お姫様なんだからさすがにそれらしく喋るよねって





 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。