『かみさま』にはなれなくても   作:夢の理を盗むもの

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Twitterで私の発言を追った方は既にご存知かと思いますが、2話目にしてうっすらと思い描いていたプロットが粉微塵になりました。
犯人は相川渦波です(やっぱりカナミさんが悪いんじゃないか!)
また、崩壊したプロットに替わる新たなプロットが生まれました。
創ったのは相川渦波です(なんなんだお前)

そういうわけでオリ主君、前回君は「今日この日を上手く誘導して乗り切れば後は大体流れに沿うだろう」と言ってたがすまない。最終章まで残業です。
大変長丁場になるが、最終章分の仕事が終わる暁には長期有給休暇(成仏)を与えるから。



新暦1013年 迷宮1層 『出逢い』の時

「──っ!!」

 

()()()()()()()()()()()

 

「なにこれ……」

 

 祭壇にその身を横たえていた少年は、()()()()()()()()()()()()()()()から逃れようと跳ね起きながらその意識を覚醒させた。

 恐る恐る自分の周囲を見回しながら状況を飲み込もうと苦心している姿はまるで誘拐された子供のようで。

 全く知らない場所で目を覚まし困惑している様を見て、彼こそがこの『()()()()()()だと思う者はいないだろう。

 覚醒する前の記憶と現在の状況の違いに現実感がないのか、ぶつぶつと独り言を漏らしながら彼は蒼褪めた顔で口許を押さえ嘔吐感を堪えていた。

 このまま幾ばくかの時が過ぎれば彼は理解できないながらも恐怖に震えつつ、今の状況を説明できる「何か」を求めて行動を始めるだろうが──

 

「────、──────ッッ!!」

 

 その時間すら与えないというかのように、石造りの回廊に殺意と怒りに満ちた獣の咆哮が響き渡った。

 

「な、なに!? 今の……」

 

 身体を強張らせて不安げに呟きながらも状況理解に努めようとする少年。

 頭の中は既に混乱と恐怖で一杯である筈なのに、落ち着いて自分に出来る事をしようというのは立派な事だった。

 だが。

 

「……?」

 

 先程の獣の咆哮は何なのか? どちらから聞こえたのか? 耳を澄ませて確かめようとする少年の耳に今度は何かが這い回るような音が聞こえた。

 今度は先程の叫びよりも聞いたことのあるような音だった。だが少年の表情に安堵の色はない。むしろ次第に恐怖が染めていった。

 何もかもが未知のこの状況の中では既知の事柄は歓迎すべき事なのに? だがしかしその考えは浅はかだ。

 何もかも未知の環境だからこそ、時に既知の事象こそを恐れなければならない。

 少年は怯えに引き攣った顔を動かして視線を周囲に立っている石柱──正確にはその上部とそこから繋がる天井へと向けた。

 天井は高いのか闇に隠れて見通せない。しかしこの回廊に点在する仄暗く光る石の光が何かに反射しているのか幾つかの輝く光点があった。

 石柱の上部には彫刻(レリーフ)だろうか? まるで今にも動き出しそうなくらい精巧に彫られた節足動物の像が──

 

 

 

 

 

 ──()()()()()

 

 

 

 

 

 

「────、──────

 

 果たしてそれは()()()彫刻だったのか? 頭部と思わしき箇所にあるその複眼は、周囲の光る石の輝きを反射させてその存在を強烈なまでに主張している。

 まるでこちらをじっと見つめているようなその輝きに息を止める少年。しかし恐れるべきはそれだけに終わらない。

 その彫刻は一つではなく複数、柱に巻き付くように存在していた。今、少年が視線を集中させている柱一本だけではなく周囲の柱全てに。

 ──ああ、さっき天井に光ってたのもあの目だったのかな? などという呑気な思考は少年の脳裏には浮かばなかった。

 柱の影から彫刻が動いてきた。それも先程の這い回るような音と一緒に。

 その瞬間に、少年の脳はようやく現実を呑み込み──

 

あ、ァァ、ぅ、うわぁああああああああああああ!!!!!!!!!!!! 

 

 ──その身体で出せる全速力でその場から走って逃げた。

 

 


 

「流石先輩だなぁ。ねぇお師様、見て下さいよあの速さ。レベル1であの速さは中々出せる速度じゃないですよ。陽滝ちゃんに勝つために雨の日も風の日も雪の日も必死に走り込んだあの苦しい思い出は、全てこの日の為にあったんですね……」

ぼくはもうまともに走れないから羨ましいですよ。

()()()()……? ()()()()()()()()()()……?』

 

 緊張感を解す為に放った冗談でドン引きされてしまった。解せぬ。

 確かにバカにしたような言い方だったかもしれないが先輩の──相川渦波さんの事は本当に尊敬しているのだ。

ぼくなんかよりすごい人なんだ。

 なにせ()()()()()()()()()()()()なんて普通は出来ない。

少なくともぼくには無理だったから。

 何度負けようと、何度泣こうと、何度転けても──立ち上がってまた走れる人は……凄い。

 ぼくでさえそう思っているのだから、あの時代あの兄妹の周囲にいた人たちはもっと強くそう感じていただろう。

ぼくは負ける事すら出来なかった。ぼくも彼女に挑むべきだったのに。

 特に、相手が()()()()()()ならばこそ余計に。

ぼくは彼女の気持ちが分かっていたのに。

 ──果たして彼等の両親もそう思っていたかは分からないが。

彼女が伸ばした手を取らなかった。

 何度か近所付き合いで顔を合わせたけど、あの人たちが碌でもない人種なのはそれだけで良く理解できた。

ぼくの方が碌でもない奴だった。彼女の興味を引くだけ引いて逃げた最低野郎だった。

 お父様は分かりやすい方だったがお母様は今でも分からない。

もし、あの時に手を取っていたら? 

 まあ、もう二度と会うこともない方々だ。思い返す必要はないだろう。薄情かもしれないがぼくと彼らは殆ど接点がなかったし。

いいや、何も変わらないさ秋雨透。お前は結局逃げるんだから。

 

「──取り敢えず後を追いましょう。追い付けなくなることはないでしょうが、変なイベントをこの日に起こされると未来が大きく変動する恐れがあります」

『う、うん……』

「……そんなに引きました? 今の冗談」

『……き、君の本心がジメジメとしてしつこいのは良く分かったよ……ボクには負けるけどね』

 

 そっかぁ……そうかも……。ジメジメとしてしつこい、というのは良く分からなかったが師の言い回しは時に単純だし時に分かりにくい。まだまだ精進が足りないのかもしれない

 確かに本人が聞いていないとはいえこういう冗談はあまり宜しくない……いや、こういう冗談だからこそ、か。

 本当に凄いとは思っていても言ってはいけない言い方というものがある。久々の再会(一方的)で興奮していたとはいえ少し羽目を外し過ぎたのかもしれない。

 

「反省します。……ところでお師様?」

『……今さっきボクには負けるとは言ったけど、あまり聞いてて良い気分じゃないから手短にね』

 

 疑われてしまった。もう冗談のストックはないのに。

 いやまあうん、今思い出したことだがそもそもぼくはユーモアのセンスがないのだ。

 だから代わりにさっきから気になっていることを聞いてみた。

 

「いやぁさっきの先輩、起きた時に鼻を効かせてたら気分悪くして吐きそうになってたじゃないですか? ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

『──────』

 

 

「お師様?」

『──なんかボク、疲れちゃったみたいだ。ちょっと休むからまた後で……』

 

 そう言って師は黙ってしまった。

 ……いや、ちょっと待ってほしい。質問の答えにはなっていない。……そもそも休むって貴女の寝床は休めるような環境だっただろうか? 

 前に視界を借りて見せてもらった時はひどく殺風景(かなり善処した言い方)だった気がする。石の玉座のような椅子は論外としてまさかあの揺り椅子(ロッキングチェア)で休むのだろうか? 

 ちょっと、いやかなり羨ましい。何処で手に入れた椅子なのだろう? 売ってる場所があるなら教えて欲しい、買いに行くので。

 

「座り心地良さそうだったんだよなあの椅子……」

 

 また運よく会話ができるようなら聞いてみよう。

 どんな感触がするのだろうかと想像を膨らませながらぼくは先輩の後を追った。

 

 


 

 

 先輩を追って辿り着いたのは丁度狼型のモンスターがその命を散らして『迷宮』に還る瞬間だった。

 息を潜めて辺りの警戒を行う。

 ここから先、先輩はあの『白虹の少女』と出逢うまで誰とも会ってはいけない。

 あの運命の出逢いこそが、たった一つの未来を手繰り寄せる大前提の条件なのだ。

 先輩が使えそうなものを探している間にこちらで乱入者にはお帰りいただかなければ。

 

「……《ディメンション》」

 

 呟くように魔法名を唱えた。構築したのは次元魔法の基礎にして秘奥。

 ぼくではその真価を発揮することは永劫不可能だろうが、そもそもそこまでのものは初めから望んではいない。

 必要なのはここに向かってくる人間、或いは「会話が可能なモンスター」の情報だ。

 特に後者がいただけない。このタイミングで来るとしたら恐らくこの『迷宮』において最も悪名高いモンスターだ。

 とある事情からぼくとの相性はいいがそもそもぼくは戦うのが得意ではない。

 なのでこちらに近づくのなら()()()()離れていただく。

 逃げる、隠れる、時間を稼ぐ、そもそも戦わない。どれもぼくの得意分野だ。

 先輩にさえこの分野では暫くは負けるつもりがない。それもあと数年の問題だろうが……

 

「居た」

 

 こちらに向かってくる黒い影──恐れていた()()だった。

 まだ先輩に会わせるわけにはいかない。もし彼に出会ってしまえば……出会ってしまえばどうなるのだろうか? 

 知ってはいる。知ってはいるが……あの未来に待つ結末は果たして……何だ? 

 個人的には酔っ払った陽滝ちゃんを見てみたい気持ちがあるが……諦めるしかないだろう。

そもそもそんな資格、ぼくには無いのだから。

 

「こっちに来るなら仕方ない……悪く思わないでくれ『ティーダ』」

 

 こちらに向かってくる古い友人──向こうはぼくの事を覚えているだろうか──に謝りながら、ぼくは時間を稼ぐためにもう一つ魔法を使う。

 

「《ディフォルト・ディミヌエンド》」

 

 今使った魔法は空間に干渉して距離を操る《ディフォルト》。先程から移動に何度か使っているとても便利な次元魔法だ。

 自慢ではないがぼくはこの魔法が大の得意である。攻撃能力は皆無だが非常に応用性が高く使い勝手がいい。

 今回使ったのはその《ディフォルト》を時間稼ぎ用に改良した魔法だ。

 実はつい先ほど、先輩が目覚める前に周囲一帯に次元魔法を補助する次元魔法《フォーム》をばら撒いてきた。

 この《フォーム》、他の次元魔法と組み合わせる事で色々と悪さが出来る。

 この《ディフォルト・ディミヌエンド》は《フォーム》と《ディフォルト》を組み合わせたもの*1で、本来術者と対象の距離しか操れない《ディフォルト》の術者判定を《フォーム》に行わせることで遠隔空間干渉を可能とした魔法だ。

 そしてこの《ディフォルト・ディミヌエンド》の真価は空間伸縮速度を非常に緩やかにすることで、対象に空間操作を勘付かせない事にある。

《フォーム》があるA点から対象のいるB点の距離を一気に伸ばしてしまえば、何らかの空間操作を行われた事は誰の目にも明白。

 なのでA点からB点の距離が一歩分縮まる毎に一歩分距離を伸ばす。それも対象の移動速度に合わせて、だ。

 素晴らしいのはもし相手が空間操作に気付き攻撃を仕掛けても、攻撃を受けるのはぼくではなくA点にある《フォーム》だという事。

 つまり安心! 安全! この魔法を開発した時は、なんとあの師もかなり評価してくれていたのでその有用性は師のお墨付きである。

 この魔法でこちらに向かってくる彼には暫くの間足踏みをしてもらおう。

 

「さて、先輩の様子は……?」

 

 見ると剣を杖にしながら歩いていた。

 どうやらぼくがティーダの妨害をしている間に『持ち物』を整理して『迷宮』の外を目指し始めたらしい。

 もうここまでくれば後は先輩がこの先で受ける毒で死なないように陰で見守りつつ、()()()が訪れるのを黙って見ていればいい。

 簡単な仕事だ──簡単、そう簡単なんだ……。結局ぼくはあの頃から何も変わっていない。

『運命の女』が『迷宮』に足を踏み入れ『主人公』は目を覚ます。本気で生きようだなんてこれっぽっちも考えてない。

『運命の赤い糸』が彼等を導き、物語の第二幕が始まる。でもそれでも構わない。

 転がり落ちていく運命の車輪が行き着く先に、ハッピーエンドがある。彼女に答えが貰えるならば、例えそれがどんな答えでも構わない。ただそれだけでいい。

 そして──その時にようやく。だから、陽滝ちゃん。

 ぼくの物語も──終わるんだ。ぼくを──殺して(救って)くれ。

 

 


 

 

 

「──おい。そこで身を潜めている者、出てくるがいい」

 

 

 

そして彼等は出逢った。

 

 

 

「まっ……待って下さい」

 

 

 

千年前からずっと伸びている『運命の赤い糸』に導かれて。

 

 

 

「体調が優れなかったので……休んでいただけなんです」

「ならば『正道』で休めばいいだろう。すぐに分かる嘘を吐くんじゃない」

 

 

 

 まるで『物語』の主人公とヒロインのように。

 

 

 

「せ、『正道』で休めない理由がありました……。害意はありません。信、じてください」

「……ふむ。確かに。待ち伏せするにしても一人ではな」

 

 

 

 そう、この出逢いは千年前から決まっていた。

 

 

 

「あ、あの──」

「──あなた、面白そうですね」

 

 

 

 何故なら『彼女』はこの為に生まれてきたから。

 

 

 

「どうもこの方……毒にかかり体力も少ないようです。回復魔法を、と思いまして」

 

 

 

『ヒロイン』には多種多様な役回りがあれど、多くの場合『主人公』と恋をするものだ。

 

 

 

「──『撫でる陽光に謡え』『梳く水は幻に還らずの血』『天と地を翳せ』──」

 

 

 

『彼女』もまた、その例には漏れない。

 

 

 

「またね、『アイカワ・カナミ』。私の名前は『ラスティアラ』。覚えててね」

 

 

 

彼女(ラスティアラ・フーズヤーズ)』は『(アイカワ・カナミ)』と、虹のように鮮烈な恋物語をする為に生まれてきた。

*1
《フォーム》はその次元魔法との組み合わせで幾らでも拡張性があるので便利だ




そして彼等は出逢った。千年前からすっと伸びている『運命の赤い糸』に導かれて
(なお稀に運命の赤い糸は切れてしまう模様)

一番難産だったのがカナミさんが目を覚ましてから虫の大群見て逃げるまでだったんだけど、俺虫嫌いなんですよね……じゃあなんでお前そこに時間かけて原作に無いレベルの詳細な描写を?いや、うん……それが分かったらこんなに遅くならなかったよ

お師様の口調が中々掴めないね…頭の中じゃしっかり喋ってくれてるんだけど俺がアウトプットすると途端に「誰だお前」になってしまう……許せよお師様
お師様と言えばカナミショック(相川渦波の所為によってプロットダイーン!した件)でオリ主:トール君との出会い方が大幅に変わってしまい、それに伴いトール君も色々変わったから、初めてトール君とお師様が出会った時のお師様の反応が「なんだこの怪物!?」になってしまった事をお師様に深く謝罪しなければならない。許せよお師様
なんかずっとコイツ謝ってばかりだな、ホントゴメン

トール君、最初の構想が「いぶそう最終章まで読んだ読者がハッピーエンド目指して挫折した奴」って感じだったから割と一般メンタルで書く予定だったんだ
そう、「だった」
お師様との出会いエピソードが大幅に変わった事でコイツのメンタルなんか異次元方向に進化したから、「読者代表オリ主」みたいな看板を掲げさせるつもりが「こんな俺ら(読者)がいるか!」って感じになってしまって大変困惑している
でもこれってある意味キャラクターとして真に生を受けたって感じがするのでむしろ嬉しい気持ちが強い

これも全部アイカワカナミって奴の所為なんですよ!
おのれアイカワカナミ!
お前は、お前は何なんだー!
…………ふぅ。いぶそうってのは、なんて素晴らしいんだ!(鳴滝感)

俺が鳴滝でアイカワカナミがディケイド
またヤツにプロットが破壊されないように頑張っていきます
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