ここはとある王城の一室。外は真っ暗でもういい子は眠る時間だ。
「お母様!今日はこの絵本を読んでください!」
元気な女の子が天蓋付きのベッドで横になりながらそう言った。
「はいはい。エリーは本当に本が好きね。」
「お母様、早く早く!」
「あらあら、それじゃあ読むわね。これを読んだらちゃんと寝るのよ?」
「うん!」
そう言って絵本を読み始めた。
むかしむかし、ある森の奥深くに1匹の龍が誕生しました。
かの龍は光り輝くとても美しい龍でした。
龍は自由に生きています。
龍は誰にも邪魔されることはありません。
龍の存在は誰にも知られていません。
龍は人間を見守っています。
かの龍の名はーー
「すぅ……。」
「かの龍の名はってあら?もう寝ちゃったのね。おやすみなさい、エリー。貴女に龍の加護がありますように。」
そして最後にこう呟いた。
かの龍の名は光神龍と。
これは1匹の龍の物語。
☆
この世界に希望なんてない。
それが彼が生きてい・た・時に思ったことだ。 彼は少し特殊な引きこもりであった。彼には居場所が無かった。母親は彼を産んでから直ぐに亡くなった。だから彼は父親と一緒に過ごすしかなかった。だがその父親が問題だった。
父親は酒とタバコそれから競馬が趣味だった。父親は競馬で負けるとものすごく機嫌が悪くなり、まだ幼い彼を虐待していた。彼にとってそれは当たり前のこととなっていた。競馬で勝った時はたまにだが、小遣いをくれる事もあった。
彼はちゃんと学校にも通っていた。だがそれも小学5年生までだ。なぜなら彼は地域住民からも疎まれていたからだ。彼の父親は地域住民からの評判も悪い。そのため父親の息子である彼もまた、疎まれていた。だから彼は入学した初日からいじめが始まった。
いじめは休む事なく毎日続いた。これでもかなり彼は頑張った方だ。いじめがずっと続いていたのに5年間も学校に通っていたのだから。
家にも学校にも彼の居場所はない。
話は変わるが彼が貰っていた小遣いは多い時で1万円程貰うことができていた。彼は3年生の時、クラスメイトが話していたゲームというものに興味を持った。そこで貰っていた小遣いでゲーム機を買った。ゲームはとても良かった。ゲームをしている間は周りのことを考えなくても良かったから。彼は引きこもってからもゲームを続けた。
そして彼が17歳の時、交通事故により死んでしまった…。
☆
彼は今周りが全て真っ白な空間にいた。何もない只々真っ白な空間だった。
「ここはどこだ?」
当然の疑問。
「ここは天界でございます。」
突然目の前が輝き1人の女性が現れた。金髪で長い髪、さらに背中には羽が生えており頭の上には輪っかが付いている。
「私はガブリエルと申します。あなたは今の状況が把握できておりますか?」
「俺は死んだのか?」
「その通りでございます。……驚かないのですね。今までここに来られた方はもっと慌てていましたから。」
「別に未練とかないからな。それよりも俺はどうなるんだ?」
「あなたには異世界へと行っていただきます。」
「異世界?」
「そうです。地球にあるゲームや小説のような世界に行けるのです。何か希望などがありましたら準備できますよ。」
「例えばどんなのがあるんだ?」
「そうですね…。最強の剣とか地位、職業などあらゆるものです。ちなみに転生するときに転生される人の不幸度合いによってランダムにギフトやスキルなどが与えられますよ。」
「かなり優遇してないか?」
「ここに来られる人は大体が不幸な人生を歩んできた方ばかりです。そんな人に来世では幸せに過ごせるようにという計らいですね。」
「そうなのか…。ちょっと考えさせてくれ。」
「もちろんでございます。気の済むまでお悩みください。」
それから彼は1時間程考えていた。
「お決まりになりましたか?」
「あぁ、決まったよ。人の住んでいない森の中でひっそりと暮らしたい。これが俺の願いだ。」
「そんなことでよろしいのですか?」
「これでいいんだよ。俺は人と関わりたくないんだ。」
「そう、ですか。わかりました。私からもプレゼントがありますのであちらで確認してくださいね。」
「プレゼント?貰えるものなら貰っておくよ。ありがとう。」
「それでは転生の準備を行います。と言ってもあなたがすることは特にありません。名前を決めるだけです。名前はどうしますか?地球で使われていた名前でもいいですが。」
「レーベでお願いする。」
レーベとは彼がゲームでよく使っていたアバターネームだ。
「レーベ様ですね。それでは良き人生を。」
そして彼、レーベは異世界へと旅立っていった。