龍はなんのために生きるのか   作:ミクス

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龍と風呂

俺とレイラが村へと帰ると、ハクが焦ったような表情で狼の姿でこちらに走ってきていた。何をあんなに焦っているのだろうか?

 

「ご主人様ー!大変だよー!」

「何があったんだ?」

 

ゼェゼェと息をついている。どうやら俺たちのいない間に何かがあったのだろう。

 

「一体どうしたのでしょうか?」

「分からん。だが何か良くないことが起こったんだろう。ハク、深呼吸だ。」

 

ハクが俺の指示通りに「スーハー、スーハー」と深呼吸をしていた。そして呼吸が落ち着くと慌てたように喋り出した。

 

「魔物が狂暴化していたんだよー!見つけたのは1匹だけだったけど、それでも普通のやつより何倍も強かったんだよ!」

 

狂暴化した魔物?

 

「大丈夫だったのか?」

「うん!怪我した子はいたけど、死んだ子はいなかったよ!」

「そうか…。因みに狂暴化した魔物は何だったんだ?」

「レッサーキンググリズリーだよ!ご主人様が私たちを助けてくれた時に倒した魔物の子供みたいなやつだよ!」

「あいつか。よく倒せたな。」

「私が本気を出せばチョチョイのチョイだよ!」

 

しかし狂暴化した魔物か…。注意しておかないとな。

 

家に帰ると既にアーデルハイトが夕飯を作っており、夕飯を食べてから就寝となった。

 

翌日、今日は朝から村の男達が俺の家の前に集まっていた。うーむ。エルフって美男美女のイメージがあったんだが、全然違うな…。ここに集まっているエルフはみんな筋肉ムキムキなのだ。まぁ、今はどうでもいいことか。

なぜこの場所に村の男のエルフ達が集まったのか。それは、これから俺の家の改築を始めるのだ。ある程度は今の家を残しつつ新たに4つ部屋を増やすのだ。うち1部屋は俺の作りたかった部屋にする予定。

 

ハクは昨日、狂暴化した魔物が出たと言うことで、ダイナウルフと一緒に見回りに参加している。レイラもハクについていった。

 

アーデルハイトが指揮をとり改築をしている間に俺は木を切りに行く。俺の頼んだ場所を作るには木が足りないらしいのだ。

 

俺が欲しかったのは風呂だ。風呂。大事なことなので二回言ったぞ。やっぱり俺も日本人としてゆっくりと湯船に浸かりたいのだ。

 

アーデルハイトに浴槽は作ってもらうとして、お湯を沸かす方法を考えないといけない。水は魔法で出せるから水路を引く必要はないが、さてどうするべきだろう?……やはり無難に薪を燃やした方がはやいかな?その辺りもアーデルハイトに聞いてみるとするか。

 

一先ずはこの切り倒した木を持っていこう。

 

家の方に戻ってみるともう既に部屋が1つ分できているようだ。俺はアーデルハイトに近づいた。

 

「おーい、木をとってきたぞ。」

「あっお疲れ様ですレーベ様。木はあちらの資材置き場に置いてきてください。」

「わかった。1つ聞きたいんだが、お湯を沸かすいい方法はないか?」

「お湯を沸かす方法ですか?そうですね…。火魔法で沸かすか、薪を割って火をつけて沸かすか…。あぁ、確か熱を持つ石というのを聞いたことがありますよ。1度、ガンテツさんに聞いてみてはどうでしょうか?」

「熱を持つ石か…。わかった。ありがとうアーデルハイト。」

 

それじゃあこの木を置いた後は、ガンテツのところに行ってみるか。ガンテツと言えばミスリルはどうなったのだろう。それも確認するとしよう。

 

「どうすれば愛称で呼んでもらえるのでしょうか…?」

 

彼女のその呟きは彼に届くことはなかった…。

 

アーデルハイトと別れて俺はガンテツがいる鍛冶場に来ていた。目的の人物であるガンテツは黙々とミスリルを打っていた。

 

「おーいガンテツ。」

 

カン!カン!カン!カン!

 

「おーい、ガンテツ。」

 

カン!カン!カン!カン!

 

「ガンテツー!!」

「カン!カン!カン!……………ん?」

 

あれだけ呼びかけてもこちらに見向きもしないとは…。凄まじい集中力だな…。

 

「……レーベ殿どうかしたか?」

「ああ、1つ聞きたいこととミスリルの進捗を見に来たんだ。」

「……そうだったか。……既にミスリルの剣をいくつか打たせてもらった。……この分だと後数度打てば魔法を付与した剣、魔法剣マジックソードが作れるぞ。」

「おお!作ることができるのか!それはありがたい。安定して作れるようになったら知らせてくれ。是非作って欲しいものがあるんだ!」

「……了解した。……それで、もう1つの要件は?」

「それなんだが水を沸かすのに使える熱を持った石のことを知らないか?」

「ふむ……。恐らくレーベ殿が言っている石は永炎石えいえんせきのことだろう。」

「それはどこで手に入るんだ?」

「……主に火山地帯で入手できるが……まだ在庫があったはず…。……ちょっと待っててくれ。」

 

そう言ってガンテツは奥へと引っ込んだ。それから待つこと数分、ガンテツが手に赤い鉱石を持って戻ってきた。

 

「……これが永炎石だ。……これに少々の衝撃を与えればすぐに熱を持つ…。……これをレーベ殿に渡すが1つ条件がある。」

「対価か…。よし、どんな条件でものむぞ。」

「……また俺をダンジョンに連れていって欲しい。」

「なんだ、そんなことか。それならいつでもいってくれればいいものを…。まぁ、わかった。それでいつ行くんだ?」

「……後10本は打ちたいから……2日後でお願いする。」

 

10本の剣を2日で打つのか…。鍛治師って大変なんだな。

 

「2日後だな?わかった。永炎石のこと本当にありがとうな。」

 

ガンテツはコクリと頷くとまたミスリルを打ち始めた。

 

さてこれで水を沸かせることはできるようになったな。後はアーデルハイト達が浴槽を作るだけだがまだ時間がかかるだろうな…。

 

………そうだ。この時間を使って少し剣を振ってみるか。ダンジョンで一度だけ剣を使ったが、やはりちゃんと練習をしておくべきだろう。

 

早速移動する。場所は俺が木材を確保するために切り拓いた場所だ。

 

俺がやったことのある素振りは学校の授業でやっていた剣道ぐらいだ。俺は光剣を取り出して素振りをやってみる。

 

この光剣は俺のスキルで作り出しているので、重さや大きさも自由に変えることができる。もちろん沢山の種類の武器も作ることができる。もし俺より強い敵と戦うことになった場合を想定しておくべきだろう。そういう時のために様々な武器を扱うことができるようにこれからは毎日訓練しておこう。と言っても我流なんだけどな。

 

そして俺は日が落ちるまで素振りをしていた。

 

ぎゅるるるるる

 

盛大に俺の腹が鳴った。そう、俺は剣を振るのに夢中で飯を食うのを忘れていたのだ。まあ、もうすぐ夕飯なのでそれまでは我慢するが…。

 

ぎゅるるるるる

 

腹減った…。

 

家の方に戻ると改築が終・わ・っ・て・い・た・。建築ってこんなに早くできるものだったっけ…?俺がポカーンとしているとアーデルハイトがやってきた。

 

「レーベ様!今までどこに行ってたんですか!?心配しておりましたよ!」

「えっあっいや、すまん…。」

「ガンテツさんのところに行ってから戻ってこないし、お昼になっても帰ってこないし…。本当に心配したんですからね!」

 

アーデルハイトが本気で怒っているのは初めてみた。俺は龍なんだけどアーデルハイトが本気で怒ったら俺より怖いんじゃないか…?

 

「聞いているんですかレーベ様!?」

「聞いていたぞ。」

「それでは私がさっき言ったことを繰り返してみてください。」

「……………聞いてませんでした。ごめんなさい。」

 

ん?今アーデルハイトがニヤリと笑わなかったか?心なしかウキウキしてないか?俺の気のせいか…?

 

「それではレーベ様には罰を与えますね。」

 

罰!?なにそれ怖い!アーデルハイトはもしかしてドSだったの!?

 

「今からずっと私のことは愛称で呼んでください!」

「え…?」

「ですから私のことを呼ぶときはアーデと呼んでください!」

 

え…?それだけでいいの…?

 

「そもそも、私のことを愛称で呼ばない方はレーベ様だけなのですよ?まるで私が信頼されていないみたいじゃないですか…。」

 

うっ…。

 

「だからこれからは、私のことはアーデと呼んでくださいね。」

「……わかった。今まですまなかったなアーデ。」

「…はい。」

 

ぐぎゅるるるる

 

「「……」」

 

……なんか、ごめん。

 

「ご飯にしましょうか。」

「おう」

 

アーデはとても嬉しそうな表情をしていた。その表情はとても可愛かった。

 

今日のご飯もとても美味しかった。いつも通りなら後はもう寝るだけだが、まだ大事なことが残っている。話がそれにそれまくって忘れかけていたが、今日の本題は風呂なのだ。

 

夕飯が終わると早速アーデルハイト、もといアーデに風呂場まで案内してもらった。もちろんレイラとハクも付いてきている。アーデは俺の要望通りに脱衣所と洗い場、浴槽を完璧に作ってくれた。俺の覚えている風呂場なので配置はその辺の銭湯のような感じだ。

 

いつもは布などで体を拭くだけだった毎日が、これからはいつでも湯船に浸かることができるのだ。これが嬉しくないはずがない!…はずなのだが。

 

「風呂と言われてもどういうものなのかよくわかりません。」

「お兄様が言われるのですからきっとその通りですわ!」

「うーん、よくわかんない!」

「まぁ、入ってみればわかるよ。とても気持ちいいから。」

 

この世界には風呂というものがないのかもしれないな。

 

さぁ、まずは風呂を沸かそう。浴槽に水魔法で溢れるぐらい水を入れる。そしてガンテツにもらった永炎石を軽く叩いて布に包み、浴槽に入れた。それから30分後、程よい温度となりようやく入れるようになった。一番風呂はもちろん女性陣に譲ろう。

 

「まずはこのシャンプーで頭を洗って、次にこの石鹸で身体を洗う。そしたらお湯がたまっているところに入るんだ。すげー気持ちいいぞ。」

「なるほど…。」

 

実はこのシャンプーと石鹸、これは俺が前世で風呂に入るときに使っていたものと同じものを創造できた。2つ合わせて40万光力、日数にすれば約2日分の効力だ。

 

「アーデ達で先に入ってくれ。俺はアーデ達が上がってから入るよ。」

「わかりました。」

「む…。お兄様、覗きはいけませんよ?」

「するか!」

「私はご主人様と入りたかったなぁ…。」

「ダメだ。」

「ぶー」

「ほらハクちゃん、入りますよ。」

「はーい。」

 

アーデ達が風呂に入っている間俺は自分の部屋へと戻った。それから30分ダラダラと過ごしアーデ達があがったのを確認して俺も風呂に入った。

 

久しぶりの風呂はとても気持ちよかった。明日から毎日風呂に入れると思うととても嬉しかった。

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