光り輝く龍によって私達は魔導航空機の脅威から逃れることができました。
龍は翼をはためかせながら高度を下げてきました。そして龍は突然その頭上に魔法陣を構築し始めました。これに驚き私を抱えてくれていたエルフが走って逃げようとしましたが、その時ある変化が起こりました。
それは雨でした。突然雨が降り始めたのです。天候操作の魔法なんて見たこともありませんでした。そしてその雨は燃え盛っていた家々が鎮火されていきました。
さらに不思議なことが続きました。
(………さて、あとはあれを回収して帰るか。)
なんと『声』が聞こえてきたのです。実際に喋っているわけではなく、頭に『声』という概念が流れ込んでくるような、そんな感じで聞こえてきました。これは私の特殊なスキル、心読が発動した証です。
昔、父が言っていました。『我々を救ってくださるお方は会話をすることができるらしい。』と。もしかしたらこの龍が救世主なのでしょうか?
私が思考を巡らせている間に、目の前の龍はどこかへ飛び立とうとしていました。もし、かの龍が私たちの待ち望んでいた救世主だった場合、このチャンスを逃す手はあり得ません。
「お待ちください!」
私は私を抱えてくれていたエルフの手を、振りほどきながら龍に呼びかけました。
「おやめくださいアーデ様!危険です!」
私を抱えてくださっていた方が何か言っていますが、今は無視です。
(なんだ…?)
龍は私の呼びかけに応えてくださいました。
(攻撃すれば 容赦なくこの辺りを焼き払うが…。)
っ!?周りを見ると弓を構えていました。恐らくこのことでしょう。
「皆さん待って!攻撃しないで!弓の構えを解いてください!」
「しかし…。」
「いいから早く!」
この辺り一帯を焼き払われては、折角逃げていたエルフまで巻き込まれてしまいます。それはなんとしてでも回避しなくてはなりません。
さて、会話の基本は挨拶から。まずはやはり私の自己紹介からです。
「神龍様!私はアーデルハっ!?」
私は自己紹介を終えることができませんでした。パンっという乾いた音とキンっという何かを弾いたような音が聞こえました。そしてよく見ると飛んでいた龍、いいえ、神龍様が私たちを包むかのようにして地面に降りていました。私は、やはり、近くで見ると大きいですねぇ、という場違いな感想を抱いてしまいました。
改めて周囲を確認してみると、恐らく帝国兵であろう人の胸に光の剣が突き刺さっていました。恐らく先程のパンっという乾いた音は、この帝国兵が魔導銃を撃った音です。そして神龍様が私たちを守ってくださった。もし守ってもらえていなかったら、私は今頃父と母の元へ旅立っていたことでしょう。
つまり、今最も重要なことは、神龍様が私達を守るために動いてくださったということです!これはもう、このお方が私たちの救世主であると言っても過言ではないでしょう。そして先程から私の心臓がバックンバックンとうるさいです。
「神龍様!助けていただきありがとうございます!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
恐らく先程の一部始終を見ていた周りのエルフたちも気づいたのでしょう。このお方が私たちの救世主であると。
(……まあ、目の前で死なれると夢見が悪くなりそうだからな。というかさっきから神龍様って呼ばれているけど、俺はいつ神になったんだろうか?)
「私達にとって貴方は神様のような存在なんです!それにその透き通るような光り輝く鱗!凄まじいオーラ!これだけでも神といっても差し支えないでしょう!」
ふんすっ!とまくしたてるように喋ってしまいました。
(え?ちょっと待って、お前はまさか俺の心を読んでいるのか?俺の問いに正確に応えているし。)
「その通りです!私のスキル、心読で喋ることができなくても会話することが可能なのです!」
心読とは、ハイエルフのみが所持している特殊なスキルです。これは相手が魔物でも高度な知能を持っていれば会話ができるというものです。
(は?)
さすがにこれは神龍様も驚きを隠せんかったようです。
「神龍様どうか我々エルフを助けてください。私達に出来ることならばなんでもいたします。どうかお助けください。」
(……わかった。俺はお前たちを信じよう。俺がお前たちを守ってやるだから絶対に裏切るな。これが条件だ。)
「ありがとうございます!」
後ろの方から歓声が聞こえてきました。やはりこのお方が私たちの救世主だったのです。
(さて、お前たちを守るのはいいが、この家はどうする?またここに建てるのか?)
「はい、また一から作らなければなりません。ですがエルフは精霊魔法を使えますし、この地で生きるのに必要な技術だったので、1週間もあればまた建てれます!」
(ふむ…。また一から作り直すのならば俺の拠点の近くに引っ越すのはどうだ?)
「大丈夫です!私たちは神龍様に守ってもらう立場なのでなんだってやります!引っ越しも大した手間ではありません!」
(わかった。ここから10キロ離れたところのある湖は知っているか?)
「知っていますが確かあそこにはスピーゴラがいるので危険ですよ?」
スピーゴラ。この魔物は水中に棲む超巨大なタコ型の魔物で、湖に近づいてきた獲物を水中に引きずり込んで捕食する危険な魔物です。以前、湖周辺に行った時に数人のエルフが捕食されてしまいました。
(スピーゴラ?………ああ、あのタコか。あいつなら食ったぞ。)
え…?食べた…?
「すごいです!あのスピーゴラを倒すなんて!」
(あいつそんなに強いのか?全然大したことなかったが…。)
「スピーゴラは大量の触手を使って、獲物を追い詰め捕食するのです。その触手も力が強すぎて、1度捕まれば逃げ出すことは不可能なのです。」
(ふぅん…。まぁ、スピーゴラは置いといて、湖の近くに村を建てるといい。あの辺はあまり魔物も出ないしな。)
「それは恐らく、神龍様を恐れているだけですよ?」
なんだか少し神龍様が落ち込んでいるような気がします。
「それでは神龍様、私達は湖に向かいますね。2時間もあれば辿り着けます。」
(わかった。俺は先に戻っているからな。)
「はい、本当に助けてくれてありがとうございます。」
こうして私達は湖の側に村を作りました。私たちの新しい生活が始まったのです。
一気に10話投稿します。