龍はなんのために生きるのか   作:ミクス

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エルフの悩み

この村で生活を始めて早くも2ヶ月が経ちました。この2ヶ月の間で様々なことがありました。私は主に神龍様の身の回りの世話をやっていました。

 

神龍様がフェンリルという伝説の魔物を従わせたり、神龍様と神龍様が従わせたフェンリルのハクちゃんが人の姿になったりしました。因みに神龍様の人の姿はとてもかっこよかったです。

 

更に先日はレイラ様という神龍様、いえ、レーベ様とお呼びするべきですね、レーベ様の妹さんまでこの村にやってきました。

 

ハクちゃんも最近はスキンシップが激しくなり少し羨ましいです…。ってそんな恐れ多いことを私は何を考えているのですか!少し落ち着かねば…。

 

まあ、このような感じで日々充実しておりました。

 

ですがここ最近では1つ悩みがあります。それは、レーベ様が私の事をいつもアーデルハイトと呼んでおり、愛称で呼ばない事です!

 

既にレイラ様からはアーデと呼ばれているのに2ヶ月も共に過ごしたレーベ様からはアーデと呼んでもらえていません。はぁ…。私には魅力がないのでしょうか…。

 

明日はレーベ様の家の改築作業を行うことになっています。……そういえばレーベ様から自分の望む部屋を作って欲しいと言われていましたね…。完璧に仕上げて今度こそ愛称で呼んでもらえるように頑張りましょう!それでは、おやすみなさい。

 

翌日、朝からレーベ様の家の前に村の男性が集まっていました。これから家の改築作業を行います。今回はいくつかの部屋を増やすだけなので建築作業に慣れている彼らなら1日で終わるでしょう。

 

早速みんなには作業を開始してもらいます。その間に私はレーベ様に作って欲しいという部屋のことを聞きます。なんでもお風呂を作りたいそうです。お風呂は普通貴族が使う物であまり馴染みがありません。ですが私は知識として知っていますし、レーベ様に設計図もいただきました。これを使って完璧に仕上げて見せましょう。

 

手の空いている男性に手伝ってもらって、脱衣所から作っていきます。もちろん木材が濡れて腐ってしまわないように、精霊魔法で木材が濡れないように薄い魔力の膜を張ります。精霊魔法は大気に満ちている魔力を使って使用するので私が魔力を消費することはありません。それに大気中の魔力が無くなるのは余程のことがない限り、心配しなくても大丈夫です。

 

脱衣所を作っているとレーベ様がやってきました。レーベ様には朝から木を切ってもらっていました。備蓄していた木材が足りなくなりそうだったからです。このような雑用もレーベ様は嫌な顔1つせずやってくれます。本当にお優しいです…。

 

レーベ様は十分な量の木材を持ってきてくれました。本当に感謝感激ですね!

 

「そうだ、1つ聞きたいんだがお湯を沸かすいい方法はないか?」

「お湯を沸かすいい方法ですか…。」

 

本来お湯を沸かすには木炭か石炭を燃やすか、火魔法で沸かすかの二択です。どちらもかなり労力が必要なのでそれを解消するために聞いてきたのでしょう。私もレーベ様と生活して2ヶ月、大体はレーベ様のことがわかってきたつもりです。

 

さて、お湯を沸かす方法で1つだけ私に心当たりがあります。

 

「それでしたら確か熱を持つ石というのを聞いたことがありますよ。1度ガンテツさんに聞いてみてはどうでしょうか?」

「熱を持つ石か…。わかった、ありがとうアーデルハイト。」

 

レーベ様は切った木を資材置き場に置いていかれると、そのままガンテツさんの元へ向かいました。そして私はというと…。

 

(レーベ様にありがとうと言われました!もう今日は最高の日です!)

 

とても浮かれていました。ですが未だに私の事を愛称で呼んでくれません。

 

「どうすれば愛称で呼んでもらえるのでしょうか…?」

 

はぁ…。とため息をつきレーベ様にお願いされたお風呂作りを再開します。そして脱衣所が完成する頃にお昼となりました。もうそろそろ周辺の探索に出ていたレイラ様とハクちゃんが帰ってくるでしょう。なのでお昼の準備をしなくてはいけませんね。

 

お昼休憩のために作業をしていたみなさんを休ませます。その間に私はみなさんの分の昼食も作ってしまいましょう。今日のお昼はワイバーンのステーキとスープにしましょう。味付けはレーベ様からいただいた『焼肉のたれ』という調味料です。この『焼肉のたれ』は病みつきになる美味しさで、みんな大好きなのです。

 

料理を開始して1時間程で全員分の食事ができました。

 

「アーデ!いい匂いがする!」

「美味しそうですわ!」

 

いつのまにかレイラ様とハクちゃんがいました。いつきたんでしょう。

 

「レイラ様とハクちゃんは席についていてください。今よそってきますので。」

「はーい!」

「わかりましたわ。」

 

スープとステーキを盛り付けてレイラ様たちのところに持っていきました。

 

「はい、どうぞ。」

「いっただっきまーす!」

「こらハクちゃん!もうちょっと落ち着いて食べてください!」

 

ガツガツと食べ始めました。ちょっとマナーが悪いですがそれもハクちゃんの個性なのでしょう。そして反対にレイラ様はまるで貴族のように優雅に食べています。レイラ様はレーベ様と同じで龍と聞いていますのでなんだか不思議です。

 

ふと視線を感じたのでそちらを見てみるとレイラ様が私の事をじっと見ていました。

 

「どうかしましたかレイラ様?」

「…アーデ、あなた今何か悩み事がありますわね?」

「え?」

 

どうしてわかったのでしょう?もしかしてレイラ様はエスパーなのでしょうか?

 

「どうしてわかったのか…とか思っているのでしょう?貴女顔に出ていますわよ?ほら、話してみて。」

「はあ…。凄いですねレイラ様は。……実はもう2ヶ月もレーベ様と一緒にいるのになかなか愛称で呼んでもらえないんです…。」

「なんだ、そんなことでしたの。」

「そんなことって……私にとっては大問題ですよ…。」

「ふふっ。いいですかアーデ?貴女は優しすぎますの。一度ガツンと言ってやればいいんですわ!」

「ですが……。」

「恐れていては何も始まりませんわよ?」

「ッ!?」

「大方、お兄様のことが好きだけれどももし、お兄様のご機嫌を損ねてお兄様の強力な力が牙を剥いたらとか考えているのでしょう?…これは本当に好きだと言えるのでしょうか?」

「……」

 

図星でした。もし私の所為でレーベ様がここから離れてしまったらと思うととても怖かったのです。

 

「お兄様は言っていたのでしょう?『俺がお前たちを守る』と。お兄様はとても、とーっても鈍感ですが、自分が言ったことは必ず守る龍ひとです。だから遠慮せずおっしゃればいいのですわ。自分の本心を、本音を。」

「ですがもし……」

 

ペシッ!

 

「もし、じゃありませんわ!自分から行かないと何も変わりませんわ!恐れず行きなさいな。現に今もお昼だというのに戻ってこないお兄様。せっかく作った料理を食べてもらえないのですわよ?何も思わないの?」

 

確かにいつもならお昼になると直ぐにやってくるのにまだ来ていません。いらないのなら事前に言ってくれるはずなのにそれすら今日はありませんでした。

 

「いいですかアーデ?今の気持ちをお兄様が戻ってこられたら、全て吐いてくるといいですわ!その際ちょこっと罰を与えても誰も怒りませんわ。だから頑張ってきなさいな。」

 

恐れていては何も始まらないですか…。確かにそうなのかもしれません。あの日、両親を亡くしみんなを守れるように力をつけていた日々が懐かしいですね。あの頃は何も恐れず前に進んでいたような気もします。

 

「レイラ様、私頑張ってみます!」

「そのいきですわ!」

 

それからレイラ様とハクちゃんはまた周辺の探索に赴き、私達は改築作業を終わらせるべく作業を開始しました。途中少しの間作業から抜けさせてもらいガンテツさんのところに行きました。レーベ様の行方を知るためです。知るためだったのですが……。

 

「永炎石を渡して何処かに行ったぞ?」

 

とのことでした。結局レーベ様の行き先はわからないままです。

 

私は作業に戻り日が傾く頃にようやくレーベ様に頼まれていたお風呂を完成させることができました。ですがまだレーベ様は帰ってきません。

 

そして日が沈み夕食の準備が完了した頃、ようやくレーベ様は帰ってきました。一体今まで何をしていたのでしょうか。

 

「レーベ様!今までどこに行ってたんですか!?心配しておりましたよ!」

 

もうやけです。私は恐れず前に進みます!

 

「えっあっいや、すまん…。」

 

あれ?

 

「ガンテツさんのところへ行ってから戻ってこないし、お昼になっても帰ってこないし……。本当に心配したんですからね!」

 

レーベ様はポカーンと口を開けたまま私をみていました。ちょっとムカつきますねその顔…。

 

「聞いているんですかレーベ様!?」

「聞いていたぞ。」

「それでは私がさっき言ったことを繰り返してみてください。」

「………聞いていませんでした。ごめんなさい。」

 

レーベ様が頭を下げました!ここであたふたしてはダメです!落ち着きましょう。

 

確かレイラ様が少し罰を与えたほうがいいと言っていましたね。レイラ様もレーベ様と同じくお優しいです。本当にお二方が来てくれて感謝ですね。

 

「それではレーベ様には罰を与えますね。」

 

レーベ様が、え!?という顔をされています。表情がコロコロ変わって面白いです。それに今の表情も可愛い……って私は何を考えているのですか!

 

「いいですかレーベ様!今からずっと私のことを愛称で呼んでください!それが罰です!」

「え…?」

「ですから私のことを呼ぶときはアーデと呼んでください!そもそも、私のことを愛称で呼ばないのはレーベ様だけですよ?まるで私が信頼されていないみたいじゃないですか…。だからこれからは、私のことはアーデと呼んでくださいね。」

「……わかった。今まですまなかったなアーデ。」

 

顔が物凄く熱いです。恐らく今の私は顔が真っ赤なのでしょう。今が夜で助かりました。

 

「……はい。」

 

ぐぎゅるるるるる

 

「「……」」

 

……そういえばレーベ様は今日のお昼を食べていませんでしたね。仕方がないお方ですね。

 

「ご飯にしましょうか。」

「おう!」

 

今日は最高の1日でした。レーベ様には愛称で呼んでもらえますし、今日作ったお風呂も褒められました。

 

夜ご飯の後にお風呂にも入りましたが、これもまた最高でした。もう癖になっちゃいそうです。お湯に浸かったとき思わずだらしない顔になってしまいました。それをレイラ様にからかわれたりもしました。こんな日常がずっと続くことを私は願っています。お父様、お母様、私は元気に過ごしていますよ。

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