「俺は恋愛が憎い、大嫌いだ。だからお前のことを好きになれない。もう2度とこんな話をしないでくれ。」
それからアーデはレイラに村まで送ってもらった。
そしてレイラが戻ってきてからまたダバード王国に向けて出発した。
『お兄様。』
『……なんだ。』
『アーデ、泣いていましたわよ。』
『……そうか。』
それから沈黙が続いた。
自分でもわかっている。
あの言い方がとてもひどい言い方だったのは。
『帰ったらちゃんと謝らないといけませんわよ?』
『…わかっている。自分でも言いすぎたことぐらいはわかっているんだ。』
『それならもうちょっとマシな言い方はなかったのですか?』
『レイラ、俺はな前世の記憶があるんだよ。』
『はい?』
『俺は前世で学んだことを実践したにすぎない。』
『ちょっ、ちょっと待ってください!お兄様には前世の記憶があるのですか!?』
『ああ、嫌な人生だった。俺の前世について詮索するなよ?思い出したくもないからな。』
アーデは絶句してしまっていた。
まぁ、そうなるな。
突然そんなことを言われても頭が追いつかないだろう。
『お兄様は…』
『ん?』
『お兄様は今の生活は楽しいのですか?』
『ああ、今の生活は悪くない。本当は一人で生活して行く予定だったんだがな。今はアーデ達と出会えてよかったと思っているよ。まぁ、今はアーデには嫌われているだろうがな。』
帰ったらしこたま怒られるかもしれない。或いはもう口も聞いてくれないかもしれんな。
『大丈夫ですわ。アーデは強い子ですもの。私わたくしもお兄様を支えますわ。』
『そうか…ありがとう。……うん?あれは…。』
地上に目を向けるともう森を抜けており、平原が見えた。
そして1台の馬車が停まっていた。更にその周りを囲むように人間が立っている。
その囲いの内側には数人の騎士の格好をした人が倒れている。
『襲われているのでしょうか?どうしますお兄様?』
『別に助けなくていいだろ。俺達には俺たちの目的があるんだからな。』
ジトッとした目で見られてしまった。
『わかった。助ければいいんだろ?だからその目はやめてくれ…。』
『はい♪』
流石に龍の姿はまずいだろうということで、馬車からかなり離れた場所に降りて人間の姿になった。
かなりといっても10キロ程度なので、俺たちにとっては『離れた』のうちに入らないのだが。
10キロなら数十秒で移動できるので状況もそんなに変わっていないだろう。
馬車の見えるところまで来ると御者をしていた者の姿が見えなかった。
更に男が馬車の中から女性を二人外に放り出していた。
少しまずいのでさっさと片付けてしまおう。
男が片方の女性に手を出そうとした時、突如その男が知らない女と入れ替わっていた。
「え?」
周囲にいた人間はそう見えただろう。
実際にはレイラが女性に手を出そうとしていた男の顔面を鷲掴みにして、投げ飛ばしたのだ。
「なっ、なんだテメェ!?」
「やかましい蝿ですわ。」
「ふざけやがって…!やっちまえ!」
「おいおい、人の妹に手出してんじゃねえよ。」
ガンテツに貰った刀でレイラに殺到しようとした5人を即座に斬り捨てた。
「なっ…!?」
「お頭!こいつはヤベェですぜ!」
「チッ、おい、ずらかるぞ!」
そう言って残った賊は去っていった。
「ふぅ…。弱かったな。」
「当たり前ですわ。さて、もう大丈夫ですわ。賊は逃げましたわよ。」
「あっ…ありがとうございます…。」
「さて、レイラもう行こう。」
メイド服姿の女性は気絶しているようだ。
それよりも俺は一刻も早くこの場から去りたかった。
それは目の前にいる女性の持つとあるスキルが原因だった。
名前 アリス・フォン・ダバード
種族 人族
Lv 46
筋力 740
耐久 690
俊敏 730
魔力 1380
スキル 【王族の威光】【礼儀作法】【ポーカーフェイス】【水魔法】【魔力操作】
【王族の威光】……王族しか持つことができないスキル。【看破】【隠蔽】【弱体化(小)】【状態異常耐性】【マジックシールド】を内包している。
【看破】……【鑑定】と同じことができる。更に【鑑定】では破ることのできない【隠蔽】も見抜くことができる。
【弱体化】……対象を少しだけ弱体化させる。
【マジックシールド】……自身に死の危機が訪れた際に自動で発動する。
目の前にいる女性、アリスは俺たちの目的地の王族、しかも【隠蔽】を見抜くことができる【看破】まで持っている。【看破】を使われれば俺たちの存在がバレて最悪町に入ることができなくなるだろう。
だから一刻も早くここから去りたかった。
「お待ちください!」
「そうですわ、お兄様。まさかこの人たちを見捨てるのですか?」
早く去りたかったがそうは門屋が降ろさない。レイラは助ける気満々の様だった。
「レイラ、わかってて言っているのか?」
「もちろんですわ!」
「はぁ…。もう好きにしろ…。」
こうなったらレイラに任せよう…。
「あっあの!助けていただきありがとうございました!」
「いえいえ、私わたくし達もたまたま通りがかっただけですわ。私わたくしはレイラと申しますの。あちらは私わたくしのお兄様のレーベですわ。」
「私はダバード王国の第1王女のアリス・フォン・ダバードです!」
「………うぅ…。」
メイド服姿の女性が目を覚ました様だ。
「あ…れ…?アリス様…?」
「大丈夫ティア!?」
ティアという名前らしい。
名前 ティア
種族 人族
Lv 39
筋力 670
耐久 490
俊敏 780
魔力 840
スキル 【メイド術】【護身術】【忠誠】
なんというか、アリスを鑑定した時も思ったが人間のステータスが低すぎないか…?
「アリス様…?私たちは一体…。」
「大丈夫ですティア。この方達が助けてくれました。」
「そう、だったのですか…。ありがとうございます。アリス様を救ってくださり本当に感謝いたします。」
「大した手間ではなかったですわ。……それよりもどうしてアリスさんはここへ?一国の姫が来るような場所とは思えないのですが…。」
「実は…私のレベル上げに来ていたのです。この平原の先にあるキュクロ大森林の浅瀬で魔物を狩ってその帰り道で盗賊に襲われたのです。」
「そうだったのですか…。災難でしたわね。それで、これからどうするんですの?」
「ティア、馬車の方は…。」
「ダメです。馬は殺されてしまいましたし、この周辺には代わりとなる馬もいません。」
「そうですか…。あの、レイラさん。よろしければ私たちを王都まで護衛してくれませんか?王都に着いたらしっかりと報酬を支払わせていただきますので…。」
レイラがちらりとこちらを見てきた。
もうここまで来たら仕方あるまい。
「俺はいいと思うぞ。」
「ありがとうございますお兄様!」
そしてすぐに返事をしようとしたのですぐに呼び止めた。
「ちょっと待てレイラ。」
「……?どうされたのですか?」
「1つ確認をしないといけないことがあるだろう。」
そう、この依頼を受けるということは一時的とはいえ一緒に行動することになる。
だから先に俺たちの正体をばらしておこう。そうすれば面倒なことにはならないだろう。
それによく良く考えてみればこれはチャンスなのかもしれない。
王族の、しかも第1王女なのだから情報も集めやすいかもしれない。
「おい、アリスとやら。」
「なっ…!?無礼ですよ!この方はダバード王国の第1王女で…」
「ティア、助けてくれた恩人に失礼ですよ。それにこの方達は旅をしているようですし、そんなにかしこまらなくてもいいのですよ。」
「……わかりました。アリス様がそういうのなら…。」
「もういいか?」
「あっはい、話の腰を折ってすみません。」
「アリスとやら。取り敢えず俺たちを【鑑定】してみろ。話はそこからだ。」
「え?【鑑定】と言われましても私は【鑑定】のスキルを持っていませんが…。」
「ああ、すまない、言い方が悪かったな。【王族の威光】を使え。これを使えば相手のステータスは見れるのだろう?」
【王族の威光】という言葉を口にした途端、驚きと警戒の色を示した。
「なぜそれを知っているのですか!?【王族の威光】の詳細は王族しか知らないはずです!」
「俺は検索させてもらった。」
「私わたくしは詳細は分かりませんでしたが、一応【鑑定】させていただきましたわ。」
「【検索】…?いえそれよりも、【隠蔽】を破ったというのですか…!?」
「ああ、その通りだ。それよりも早く俺たちのステータスを見ろ。今なら普通に見れるはずだ。」
「わかり、ました…。【王族の威光】」
名前 レーベ(ルミエール・ラム・ドラグイユ)
種族 人族(光刃龍)
Lv 98
筋力 10,000(35,000)
耐久 10,000(45,000)
俊敏 10,000(37,000)
魔力 20,000(460,000)
光力 1,000,000
スキル 【光刃】【魔力変換(光刃)】【龍の王】【空の王】【水の導き】【光の導き】【検索】【千里眼】【火魔法】【風魔法】【土魔法】【水魔法】【光魔法】【聖魔法】【空間魔法】【結界魔法】【全魔法耐性】【状態異常耐性】【不老不死】【擬人化】【怪力】【自己再生】【暗視】【気配察知】【隠密】【魔力感知】【魔力操作】【畏怖】【隠蔽】【刀術】【徒手空拳】【格闘術】【獲得経験値上昇】【思念】【限界突破オーバーリミット】【縮地】【禁忌魔法:烈火】
俺もだいぶ成長したな。
「なっ…なんなんですかこのステータスは!?それに種族も人族じゃない…!?」
「そう、見ての通り俺たちは人間じゃない。」
「まさかレイラさんも…?」
「ええ、そうですわ。私わたくしのステータスも見るといいですわ。」
「【王族の威光】」
名前 レイラ(シャルテン・ラーマ・ドラグイユ)
種族 人族(影刃龍)
Lv 94
筋力 25,000(58,000)
耐久 10,000(37,000)
俊敏 10,000(34,000)
魔力 10,000(24,000)
影力 1,000,000
スキル 【影刃】【影の王】【夜の王】【闇の導き】【鑑定】【影魔法】【闇魔法】【空間魔法】【全魔法耐性】【状態異常耐性】【不老不死】【擬人化】【魔力操作】【魔力感知】【気配察知】【怪力】【筋力強化(極大)】【金剛力】【防御無視】【徒手空拳】【格闘術】【限界突破オーバーリミット】【思念】【縮地】
「なっ…!?」
「アリス様!?」
唐突にアリスがふらついた。
どうやら俺たちのステータスが異常すぎたらしい。
後レイラよ、その筋力値はなんなんだ?どう見てもおかしいだろう!
「貴方方は一体何をなさるおつもりなのですか…?」
「ただの情報収集だ。俺たちは強欲の魔人というやつに襲われてな。そいつが意味深なことを言っていたからお前達ならば何かわかるかもと思ってな。」
「強欲の魔人…!?それはいつ頃なのですか!?」
「えらい食いつきようだな…。大体1週間前ぐらいだな。何かあったのか?」
「……アイルラーゼン帝国のことは知っていますか?」
「…あぁ。」
「その帝国領の町や村がいくつか壊滅したとの情報が入っているのです。」
「…なるほどな。壊滅させた犯人が強欲の魔人の可能性が高いという訳か。」
コクリと頷いていた。
「まぁ、強欲の魔人についてならもう問題はないだろう。俺が殺したからな。」
「え?」
「それよりも俺たちにとっての問題は人間の街に入れるかどうかなんだ。町に入るには通行証のようなものが必要なんだろう?」
「それは私と一緒にいれば大丈夫です。それよりも強欲の魔人を殺したって本当なんですか!?」
「本当ですわよ。お兄様が倒してくださいましたわ。」
「ま、証拠はないから信じなくてもいいけどな。」
強欲の魔人の目的は俺だったようだし、少し壊滅したという村に思うことはなくもないが、帝国領ということで問題ない。
あいつらはエルフや獣人達を迫害しているようだからな。
「だいぶ話が逸れてしまったな…。何の話だったっけ?」
「アリスさん達を王都まで護衛するお話ですわ。」
「そうだった。という事でアリス、お前さえ良ければこの依頼を受けてやる。そのかわり報酬は情報を教えてもらう。まぁ、お前達から見れば、強大な力を持った魔物を王都に招くことになるがどうする?」
「……貴方方は王都を破壊するというような事はしないと信じます。」
まぁ、そもそもそんな事をする気はないしな。但し、帝国領は別だがな。
「それじゃあよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
こうして俺たちはダバード王国の王女と一緒に旅をすることになった。
ちなみに移動は徒歩だ。
なぜかって?それは龍の姿だと目立ってしまうからだ。
まずは近くの街、レートンをめざすこととなった。
☆
魔王城にて。
「ふぅむ…。」
「主よ、どうかなさいましたか?」
「うむ…。暇でな。」
「はぁ…。」
魔王軍は現在、七大魔人が再編中のため魔王は割とすることがないのである。
「だからな、少し出かけるぞ。」
「はぁ…。………は?」
魔王の護衛役である怠惰の魔人アセディアの苦労はここから始まった。