銀色の美しい毛並みをしているハクが、仲間を引き連れてこの村にやってきて早1ヶ月。村での生活は大きく変わっていた。
ハクが連れてきた白と黒の狼達(白が雌で黒が雄だった)。種族名はダイナウルフ。ウルフ系の種族でも上位の所属らしい。
まずはダイナウルフ達のための家が出来た。かなり家を建てたので木材が不足気味だ。
次にダイナウルフとエルフがバディを組み狩りをするようになった。ダイナウルフが自慢の足で獲物を翻弄し、その隙にエルフが弓や槍で倒すという感じだ。このおかげで肉もたくさん食べられるようになった。
さらに村の防備もより強固となった。ダイナウルフ達が交代で常に村の周囲を徘徊し、敵が来れば即座に迎撃している。
村もかなり大きくなった。
そして俺にも大きな変化があった。それはハクがこの村に来た次の日の出来事だ…。
☆
朝。
「おはようございます、神龍様。」
「おはよう、ご主人様!」
家に入ってきたのはアーデルハイトのとハクだ。ハクは人の姿をしている。よほど気に入ったのだろう。2人ともとても機嫌が良さそうだ。
(おはよう、アーデルハイトとハク。)
「早速ですがちょっとお願いしたいことがあります。」
(どうした?)
ニコニコ笑いながらこう言ってきた。
「人の姿になってください。」
(……………………いや。)
「昨日、ハクさんが言っていました。人の姿でご飯を食べればいつもよりも少ない量でお腹いっぱいになったと。この村は今、食料が圧倒的に少ないんです!なので人の姿になってください。」
隣でハクがうんうんと頷いている。
俺が今まで人の姿を取らなかった理由は、どうしても過去を思い出してしまうからだ。
怒鳴り声や俺を見る目、嫌な感じだった。
もし俺がここで人の姿になった時、またそういう目で見られないかが不安なのだ。もうここには俺を嫌な目で見るやつはいないとわかっていても、不安しかない。
「神龍様は人間が嫌いなのですか…?」
「私は嫌いだぞー!」
(嫌いだな。)
「では私達エルフはどうですか?」
(………嫌いでは、ない。)
「過去に神龍様と人間達の間で何があったのかは知りません。ですが私達だけでも信じてくれませんか?」
(…………)
俺がエルフを助けた時、なぜ目の前にいるハイエルフを助けようと思ったのかわかった気がする。
きっと俺は助けてくれる人が欲しかった、仲間と言えるような人が欲しかったんだと思う。
確証はないけどきっとそうなんだろう。
(わかった。人の姿になるよ。)
部屋に光が満ちた。俺の身体が縮んでいく感覚。
そして光が収まった時、そこにいたのは黒髪、黒目の少年。黒いロングコートを着て立っていた。
その姿は『彼』が地球にいた時のまま。
『彼』は今、正真正銘生まれ変わった。
過去に囚われていた『彼』はもう、いない。
目の前を見ると、アーデルハイトは頬を染めていた。ハクは「うわぁ」とキラキラした目で見てくる。
「カッコいいです…。」
「ご主人様、ハクと一緒だね!」
「これでいいか?アーデルハイト。」
「はい!とっても満足です!」
ここでは俺は、安心して暮らせる。今日からはなるべく人の姿でいようと思う。アーデルハイトも嬉しそうだし。
「あぁ、そうだ。この姿の時はレーベと呼んでくれ。」
「わかりました、レーベ様。」
「ハクはご主人様って呼ぶー!」
「好きに呼んでくれ。」
「わーい!」
「グゥ〜」と可愛いお腹の音が鳴った。
「それではご飯にしましょうか。」
こうして俺は人の姿で過ごすことになった。
☆
???
「はっ!お兄様が近くにいる気がしますわ!今会いに行きますわよ!」
1匹の黒い龍が村に段々と近づいていた。
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