遊戯王-saki-   作:融合呪印生物・神

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ガイア新規が脳筋で程々に強そうだから使いたい…


第1話/不屈の戦士

やっべぇ!寝過ごしたぁ!

 

 朝。学校に在籍する学生であれば既に登校を終え、HRを待つような時間帯。学生服で町中を必死に走る1人の青年がいた。

 

 彼の名は須賀(すが)京太郎(きょうたろう)。何処にでもいる──というにはその明るい髪色は少々目立つが──平均的男子高校生である。

 その目立つ金髪は地毛であり、染めて非行に走っている訳でもない、むしろ本人は理想的な好青年といったところである。

 

 であれば何故こんな時間に彼がいるのか。本人が先程言っていた通り、寝坊であった。

 彼とて多感な男子高校生。様々な流行り廃りや遊戯に対して興味を持ってしまうこともある。今回はそれが災いを招いた形となった。

 

「くっそー!デッキ構築にかまけて寝落ちさえしなければ!」

 

 彼の嵌ってしまった新たな趣味。それは彼の右手に握ったままのデッキケースを見れば一目瞭然である。

 そのケースには『KONAMIコーポレーション』、略称を『KC』の刻印が刻まれている。つまりは『デュエルモンスターズ』であった。

 

──デュエルモンスターズ、その歴史ははるか五千年前まで遡ると言われている。エジプト発祥のそれは、術者の運命を決める魔術的な儀式であった──らしい。

 専門家でない彼に細かい事はわからないが、ひとつ分かるのはそれが世界的に有名な競技であるということ。

 

 そしてたまたま先日見た(・・・・)ネット放送されていた1つのデュエル。

 その圧倒的な映像、目まぐるしい速度の攻防。そして何より、王者が呼び出した五つ首の龍(・・・・・・・・・・・・・)

 

 それを見てしまっては多感で格好良さに憧れる、未だ少年の抜けない青年としてはある種仕方の無い事だったのかもしれない。

 

──ともかく、素人なりに最寄りのカードショップに寄り、一束いくらのカードにより構成された500枚入ほどの塊を購入した彼は、徹夜でそのデッキを組んだのである。

 

 まあ、その結果が寝坊による学校への遅刻なのだが。

 

「あと10分…!全力ならギリギリ!」

 

 一目散に未だ慣れない学校への道を爆走する京太郎。

 だからだろうか、曲がり角を曲がろうとしてその先にいる人影に気付くのが遅れてしまった。

 

え?うわっ!

 

あっ!?

 

 どん、と重いもの同士がぶつかり合う音が響く。

 思わず尻もちをつく京太郎と相手。衝撃でぱらぱらとケース内のカードが宙を舞う。

 

「いてて…」

 

「いってぇ…、あっすみません!大丈夫ですか!?」

 

 臀をさすりながら立ち上がり、ハッとして相手の無事を確認する京太郎。

 その先には京太郎より若干背の低い、穏和そうな青年が倒れ込んでいた。だが、どこか年上っぽい包容力のような物を感じさせている。

 

「うぅーん…あぁ、大丈夫、大丈夫。ちょっと衝撃が来たど、このくらいは慣れてるから」

 

「そうですか…すいません、前を見てなくて!」

 

「それは俺も同じだから気にしないで」

 

 同じように腕をさすりながら立ち上がり、青年は京太郎へ顔を向ける。

 すると京太郎の服装を見て、学生だと思い至ったのか。苦笑いを見せながら喋りかけた。

 

「もしかして、学生?それにその服の新しさ…新入生かな」

 

「あ、はい!遅刻しそうになって急いでて…」

 

「そっか、俺もこっちに戻ってくるのは久しぶりでさ。懐かしいなーなんて見回しながら歩いてたんだ。お互い様だね」

 

「そ、そうですね…?」

 

 ははは、なんて呑気そうな笑いを見せる青年に、若干の困惑を見せる京太郎。どちらかと言えば走っていたこちらの過失が大きそうだが…。

 

 本人は特に気にした様子もなく、やがて散らばってしまったそれに目を向けた。

 

「これは…デュエルモンスターズ?君もやるのかい?」

 

「は、はい。と言ってもまだ始めようと思ったばっかりで、ルールもろくに把握してないんですけど…」

 

 そこまで言ったところで、京太郎はふと気付く。

 

「えと、君もって事は貴方も?」

 

「うん、こう見えてなかなかに強いんだよ?俺のいた所じゃ1番って言われてたりもするんだ」

 

「そ、そんなに…!」

 

 思わぬ先達との遭遇に、若干の緊張を見せる京太郎。

 体育会系に育ち、過去バレーボールにおいても先輩達から多大な世話になった京太郎としては、先達というだけでイマイチ頭の上がらない存在なのである。

 

 と、青年がかがみ込んで散らばったカードを拾い始める。それを見た京太郎も、自分のばらまいたカードを先輩に拾い集めさせるのは申し訳が立たない、と慌てて拾い始めた。

 

 一通り拾い集めただろうか。ふと拾ったカードを見つめる青年。

 

「…ふぅん、初めてにしては中々よく組めてるじゃないか。細かいところを見れば色々あるけど、経験もなしに1人でこれを組んだなら上出来だと思うよ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 スっと差し出されたデッキの片割れを受け取り、望外の賛辞に思わず礼を返す京太郎。

 デッキの半分超くらいしか見ていない筈だが…やはり経験者からすると分かるものなのだろう。もはや京太郎の気分は有頂天である。

 

「…そうだね、これも何かの縁だ。これを君にあげるよ」

 

「え…?」

 

 彼が懐から取り出した2枚のカード。それは紛れもなくデュエルモンスターズ。

 しかも、そこに描かれているのは京太郎のデッキの不在の穴を埋めるようなエースモンスターの姿。

 

 呆然と見ていた京太郎だが、我に返り慌てて拒否する。

 

「そ、そんな!いただけませんよ!ご迷惑をかけたのにこんな…」

 

「お互い様って言ったでしょ?それに、このカードも俺よりは君に使われた方が嬉しいだろうし…。そうだね、強いて言うなら…」

 

なにか悪戯を思いついたかのようなニヤリとした笑顔。

 

「ラッキーカードだ。こいつらが君のところへ行きたがっている」

 

「は、はぁ…」

 

 なんてね、と半ば押し付けられたかのように手渡されたカードを前に、困惑の色を隠せない京太郎。

 受け取ったそれを見つめる京太郎を満足気に眺めながら、上機嫌に手を振って歩き出す青年。

 

「じゃあね、機会があったらまた会おう」

 

「え、あっはい!」

 

 鼻歌を歌いながら道を歩いてどこへともなく消えていく青年。

 京太郎はそれを見送り──自分が遅刻の縁にあったことを思い出した。

 

「ってやっば!もうHR始まってる!完全に遅刻だーっ!」

 

 

 


 

 

「…それで遅刻しちゃったんだ」

 

「ああ…」

 

 一緒に食堂にて昼食を食べていた少女──宮永咲に大まかな事情を説明し終え、項垂れる。

 結局、あの後HR中に教室に到着し、先生にこってり絞られる羽目になってしまった。

 

 が、宮永咲の関心はそこにはない。

 

「ふぅーん、でも京ちゃんがデュエリストかぁ…」

 

「…なんだよ」

 

「うぅん、なんでも。でも大丈夫?デュエルモンスターズって構築はもちろんだけどプレイングからタクティクスなんかの頭脳面から、場合によってはスタミナまで要求されるそこそこ大変な競技だけど」

 

「その辺は大丈夫だって!俺は自分で言うのもなんだがそこまで地頭は悪くはないし、スタミナは言わずもがなだ。バレーボールやってたしな」

 

「それは知ってるけど…」

 

 咲はなにやらモヤモヤしたものがある様で、なかなか煮え切らない様子だ。

 と、京太郎が何やら気づいたかのように話を切り出す。

 

「そういや咲。お前けっこうデュエルに詳しそうだな」

 

「え?な、なんで?」

 

「いや、ほら。プレイングがどーだのスタミナだの言ってたじゃねぇか。それって経験者だから言えることだろ」

 

「あっ…」

 

 しまった、という態度を隠しきれない咲。

 それで確信した京太郎は、良いことを思いついたとでも言うように嬉々として提案をする。

 

「よし!咲、ちょっと放課後付き合え!」

 

「えっ!?」

 

「デュエル部だよデュエル部!一緒に入ろうぜ!デュエル部にさ!」

 

 え、と固まって思考も止まった咲。

 何を隠そう、彼女はかなりの引っ込み思案である。こうして京太郎と話せているのは京太郎自身が咲へと歩み寄った結果であり、咲自身が積極的に何かに関わるというのはいままでほとんど無かった。

 

 いわば究極の事なかれ主義である。加えて最近にデュエルにおいて身内感でちょっとした問題があった事もあり、その提案に乗るには少し抵抗を感じずにはいられない。

 

「そ、それはちょっと…」

 

「ちぇー、いい考えだと思ったんだけどなぁ」

 

 不満げな顔を見せる京太郎。それを見て少しうっ、と思ってしまう咲。

 思えば、京太郎も別に悪意があって言った訳ではなく、善意からの発言だろう。

 こうして一方的にたたっ斬ってしまうというのは、少しばかり礼儀に欠けるのでは?

 

 別にそんなことは無いし、嫌なら嫌と言えば良いのだが、気が弱く心底に優しさを持った咲からすると、そのように思い込んでしまう事情となった。

 

「…デュエル」

 

「ん?」

 

「なら、デュエルで決めない?京ちゃんが勝ったらデュエル部に入る。私が勝ったらデュエル部に入らない。」

 

 いや、その理屈はおかしい。と一瞬思う京太郎であったが、口に出さずしまい込む。

 デュエルで決着、というのであればわかりやすいし可能性があるだけでも好都合である。

 

 デュエルは互いのドロー運やら戦術やら多くの要素が絡んだゲームだ。

 となれば、経験者相手だとしても勝つ可能性は十分にある…と、京太郎は考えた。

 

「よし!約束だぜ!俺が勝ったらデュエル部だ!」

 

「…うん!」

 

 


 

 

「「デュエル!」」

 

須賀京太郎 LP4000

   V S

宮永咲   LP4000

 

 

「先行は貰うぜ!俺のターン!」

 

 先行を手に入れ、自身の手札を確認する京太郎。

 対する咲も、自らの手札を確認し、とるべき戦術を練る。

 

「(…うーん、この手札なら)」

 

「いくぜ!俺は手札からフィールド魔法、『召魔装着』を発動!」

 

 テーブルの上のフィールド魔法ゾーンに魔法カードが置かれ、その効果が適用される。

 

「このカードがある限り、俺のフィールドの魔法使い族・戦士族・ドラゴン族の攻撃力と守備力は300ポイントアップするぜ!」

 

「さらに俺は『召魔装着』の効果を発動する!手札を1枚捨て、デッキから『魔装戦士』を1体、特殊召喚できる!俺は『魔装戦士アルニス』を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 手札から『ボルト・ヘッジホッグ』が捨てられ、デッキから魔装戦士アルニスが呼び出された。

 そのイラストには、赤い鎧と黄金の左腕を持った女戦士の姿。

 

「さらにフィールド魔法、『召魔装着』の効果により、アルニスの攻撃力と守備力は300アップする!」

 

1700→2000

 

「攻撃力2000…」

 

「おう!これで下級モンスター程度じゃ倒されないぜ!」

 

 得意気にする京太郎に、咲は思わず微笑ましくなる。

 確かに、攻撃力2000もあれば、極一部の下級以外では妥当は容易ではない。

 

 が、数多のカードが存在する今となっては、頼りないと言わざるをえない数値。

 

 咲としては、せっかく本人がデュエルに興味を持ったのなら、圧倒しすぎてトラウマにならない様に倒した方がいいかなという思うところではある。

 まあ、デュエリストとして手は抜かないのだが。

 

「さらに俺は永続魔法、『補給部隊』を発動!このカードがある限り、1ターンに1度だけモンスターが戦闘か効果で破壊された場合に1枚ドローできる!カードを2枚伏せて、ターンエンド!」

 

 咲の目がフィールドを確認する。相手のフィールドには2000になったアルニスが1体、補給部隊と伏せカード。フィールド魔法が1枚。手札は0。

 

「(伏せカード次第だけど…まあ、倒せるよね)」

 

「私のターン、ドロー!」

 

カードを1枚ドローして、どうするかを考え…決めた。

 

咲は手札のフィールド魔法をフィールド魔法に発動する。

 

「私は手札から、『白薔薇の回廊(ホワイト・ローズ・クロイスター)』を発動!」

 

「このカードが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない時、手札から『ローズ・ドラゴン』モンスターか植物族モンスターを特殊召喚できる!」

 

「植物族デッキか…!」

 

「ふふ、私はこの効果で手札から『光の(ジェネレイド) マルデル』を特殊召喚!」

 

 手札からフィールドにモンスターを置き、そのままデッキへと手をスライドさせる。その動きは非常に滑らかで、少なくともスポーツマンの端くれだった京太郎からすると、熟練者のものに見える。

 

「って!いきなり攻撃力2400だと!?」

 

「さらにマルデルの効果発動、デッキから植物族モンスターを手札に加えるよ。私は『魔天使ローズ・ソーサラー』を手札に!」

 

 咲はローズ・ソーサラーを手札に加えて、それとは別のモンスターへと手を伸ばす。

 

「さらに私は手札から、『ローンファイア・ブロッサム』を召喚!そのまま効果発動!自身をリリースして、デッキから植物族モンスターを特殊召喚する!『桜姫タレイア』を特殊召喚!」

 

 呼び出されたのは、先程のマルデルと同じく麗しい姿をした女性のイラストが描かれたカード。その攻撃力は2800。

 

「今度は2800かよ…!」

 

「それだけじゃないよ、タレイアは自分フィールドの植物族モンスター一体につき攻撃力を100アップする。この効果により、タレイア自身とマルデルの2体分。つまり攻撃力200アップ!」

 

2800→3000

 

「さんぜん…!」

 

「そして、タレイアがいる限りフィールドの植物族モンスターは効果では破壊されない!…その伏せカードがミラーフォースとかだと、ちょっと怖いからね」

 

 咲は京太郎の場に伏せられたカードをチラリと見て、自分の手札に視線を戻す。

 

「(…どうしようかな、多分大丈夫だとは思うけれど念の為、次のターンのことも考えとこうかな)」

 

「私は手札の『魔天使ローズ・ソーサラー』の効果を発動!フィールドの植物族モンスター、『光の王 マルデル』を手札に戻し、このカードを特殊召喚!ただしこの効果で特殊召喚されたモンスターはフィールドから離れた場合除外される」

 

 マルデルが手札に戻され、ローズ・ソーサラーが特殊召喚される。

 それが意味するのはつまり…。

 

「またマルデルの効果が使えるってことか…!」

 

「うん、そしてローズソーサラーの攻撃力は同じ2400だから攻撃力の増減は無し」

 

「なるほど、これがプレイング、タクティクスってやつか…」

 

「これはまだシンプルな方だけど…」

 

 ふーむ、と顎に手を当てて真剣にフィールドを観察する京太郎に、どこか気恥ずかしくなる咲。咲にとっては初心者の誰かと戦ったことは無いから初めての経験である。

 

「続けるよ!これで最後!私は手札から『デーモンの斧』をタレイアに装備!これで攻撃力は1000アップする!」

 

3000→4000

 

「攻撃力4000!?」

 

「そ、これで戦闘で突破するのはまず不可能だよ!ローズ・ソーサラーでアルニスに攻撃!」

 

「くっ!」

 

須賀京太郎 LP4000→3600

 

「だが補給部隊とアルニスの効果を発動!ええと…」

 

「チェーンは逆から処理、だよ」

 

「よし、じゃあまずはアルニスの効果だ!このカードが相手モンスターの攻撃で破壊された時、デッキから攻撃力1500以下の魔法使い族モンスターを攻撃表示で特殊召喚する!『アーケイン・ファイロ』を特殊召喚!アーケイン・ファイロは『召魔装着』の効果で攻撃力1300になる!」

 

 京太郎はアルニスを墓地に送り、デッキからアーケイン・ファイロを場に置く。

 

「そしてアルニスが破壊されたことにより、補給部隊の効果でデッキから1枚ドロー!」

 

 これで京太郎の手札は2枚。が、咲の猛攻は止まる気配を見せない。

 

「まだまだ!攻撃力4000のタレイアでアーケイン・ファイロに攻撃!」

 

「罠カード発動!『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを0にして、デッキから1枚ドロー!」

 

「えっ!?…だけど、アーケイン・ファイロは破壊されるよ!」

 

アーケイン・ファイロが破壊され、京太郎がデッキからカードをドローする。

 

「…あの伏せカード、ガードブロックだったんだ。確かに安価で手に入るカードだけど、優秀だもんね」

 

「まあな、このデッキはとにかく消費が激しいから少しでも手札を増やしたいんだ」

 

 咲は少し驚いた。京太郎はアドの概念を自身で意識している。

 カードは使えば減る、それは間違い無い。問題はその後だ。デュエリストには、大型モンスターを出して終わり、というデュエリストが意外と多い。

 強力な効果を持つモンスターを出すところまでは考えても、その後のことまでは考えが及ばないのだ。

 

 京太郎はそれをぼんやりとであるが、理解している。

 

「…意外と京ちゃんはデュエリストに向いてるのかもね」

 

「ん?」

 

「何でもないよ、私は1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 咲の場に伏せカードが1枚置かれ、ターンを終了される。

 この場は凌いだといえ、咲の場には効果破壊されない大型モンスターが2体。しかも一体は攻撃力4000にもなる特大のモンスターだ。

 

 しかも、それらを打ち破ってもライフを削りきらなければ相手には白薔薇の回廊とマルデルのコンボがある。

 生半可な手段では、突破は不可能。少なくとも、今の京太郎にはその手段は思い浮かばなかった。

 

 …まあ。

 

「引いてから考えるか…」

 

そう呟いてデッキトップに手を置く。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 カードをドローし、手札は3枚。ライフは3600。墓地には下級が三体。場には伏せが1枚。

 対して相手の場には伏せカードが1枚、大型モンスターが2体。加えてそのモンスターの効果により効果では破壊されず、装備魔法の効果で攻撃力が1000アップして…。

 

 そこまで思考して、京太郎の思考がピンと張り詰める。

 

「(そういえば攻撃力を1000UPさせるカード、俺もあるな。それを使えば勝てるかも…。まあそれでもあの伏せカードがあるんだが…)」

 

 京太郎の脳内であらゆるルートが構築されては消えていく。

 

「この状況で、あのカードを最も掻い潜れる可能性のある戦術は…あのカードの…」

 

 やがて、全てのルートは繋がった。

 

「これだ!俺は手札の『ミニマム・ガッツ』を墓地に送り、『召魔装着』の効果でデッキから『魔装戦士 ヴァンドラ』を特殊召喚!」

 

「ヴァンドラ…ダイレクトアタッカー?」

 

「いいや、違う!俺はさらに、手札から魔法カード『調律』を発動!このカードは、デッキから『シンクロン』チューナーを手札に加え、デッキをシャッフルしてからデッキの1番上のカードを墓地に送る!」

 

「この効果により、『ジャンク・シンクロン』を手札に加え、シャッフルしてからデッキの1番上を墓地へ!」

 

 落ちたのはモンスターカード『サイバー・ドラゴン』。しかし今の京太郎にはそれは関係なかった。

 

「手札から、チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!このカードが召喚に成功した時、墓地からレベル2以下のモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる!俺はチューナーモンスター『アーケイン・ファイロ』を特殊召喚!」

 

「チューナー…5と3と2…ちがう、今京ちゃんの墓地には!」

 

「自分のフィールドにチューナーがいる時、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』は特殊召喚できる!」

 

墓地から蘇生されるボルト・ヘッジホッグ。そのレベルは2。

 

「よし、俺はレベル3のチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』とレベル5のヴァンドラでシンクロ!」

 

 呼び出されるのは、今朝あの青年から貰った1枚。

 

「シンクロ召喚、レベル8、『ギガンテック・ファイター』!」

 

レベル8、攻撃力2800、自己強化持ちの大型シンクロモンスター。

その性能は、ハマれば十分に強力である。

 

「そして、レベル2チューナー『アーケイン・ファイロ 』とレベル2『ボルト・ヘッジホッグ』でシンクロ!レベル4、『アームズ・エイド』!」

 

 テーブルの上に置かれたのは巨大な爪のような見た目のシンクロモンスター。モンスターに装備され、その攻撃力を大きく引き上げることができるモンスターの一体である。

 

「…なるほど、墓地に戦士族はジャンク・シンクロン、アルニス、ヴァンドラの3体だから攻撃力300アップ。そしてフィールド魔法の効果でさらに攻撃力は300アップ、アームズエイドを装備すればさらに1000アップで最終的に4400。」

 

「それでローズ・ソーサラーを倒して、バーン込みで4400のダメージを与えてワンショットキルってこと?」

 

 咲が真剣な顔で京太郎を見つめる。それは当初のような初心者に対するそれではなく、紛れもなく一介のデュエリストに対する目。

 初めてその目を見た京太郎は一瞬怯むが、直ぐに不敵な笑みを浮かべた。

 

「──それはどうかな!」

 

「!?」

 

「俺は、アームズ・エイドをタレイアに装備!」

 

「何を…、…!?」

 

 咲は京太郎の狙いに気づいた。しかし、これは止められない。

 咲の場に伏せられているのは『プライドの咆哮』。その効果は『攻撃対象になった自分モンスターの攻撃力が相手モンスターより低い場合に、その攻撃力の差の分ライフを払って相手の攻撃力を300上回る』というもの。

 自分のモンスターのほうが攻撃力が上ならば、使うことはできない。

 

4000→5000

 

「行くぜ咲!俺は攻撃力3400のギガンテック・ファイターで、桜姫タレイアに攻撃!」

 

須賀京太郎 LP3600→2000

 

「そして、ギガンテック・ファイターが破壊された時、アームズ・エイドの効果を発動する。」

 

 この戦法は、必ずしも相手のモンスターに勝つことを必要としない。

 それは、条件さえ揃えば一気にゲームエンドまで持っていく火力がある!

 

「アームズ・エイドの効果!装備モンスターがモンスターを戦闘破壊した時、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!装備されてるのはタレイアだが、アームズ・エイドのコントローラーは俺だ!よって咲に2800のダメージ!」

 

「な…!」

 

宮永咲 LP4000→1200

 

 唖然とする咲、まさかこんな戦法で──。

 

「そして、罠カード発動!『奇跡の残照』!このターン戦闘によって破壊されたモンスター一体を、特殊召喚できる!俺はこの効果でギガンテック・ファイターを特殊召喚!」

 

 そして、再度特殊召喚されたということは。

 

「続けてバトルだ!俺は復活した『ギガンテック・ファイター』で、タレイアに再び攻撃!」

 

須賀京太郎 LP2000→400

 

「そしてタレイアに装備されたアームズ・エイドの効果を再び発動!戦闘で破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

宮永咲 LP1200→0

 

「…負け、た」

 

 初心者を相手だからと言って油断したつもりは無かった。少なくともあの手札では最善であったし、普通の相手であればもちろん負けるはずはなかっただろう。

 

「(…でも、負けたんだよね)」

 

 ならば、デュエリストとしてはそれを受け入れるしかない。鈍っていたデュエリストとしての感覚が研ぎ澄まされていくのを感じる。

 

「(京ちゃん、面白いなぁ)」

 

 初めて1週間と経っていないと言っていたのを咲は思い出した。それでこれほどならば、育てばどれほどのデュエリストになるのだろう。

 

「(うん、やっぱり、デュエルって楽しいなぁ)」

 

 

 そして、咲はデュエルを楽しむことを思い出した。

 

 


 

 

「あらいらっしゃい、待ってたわよ」

 

 デュエル部の部室、赤毛の髪を肩にかかるまでのばした女性──デュエル部部長らしい──がやってきた咲と京太郎を出迎えた。

 

「えと、待ってたってどういう?」

 

「あら、見てたわよー昼休みのデュエル。強力な植物族モンスター達を操る『花咲き』の宮永さんに、巧みな戦術で不死身の戦士達を操る『不屈』の須賀くん?」

 

「なんですか!?その恥ずかしいの!」

 

 思わず大声で問いただす咲に、えーという表情の京太郎。

 

「何って、掲示板よ掲示板。学校の生徒だけが使える専用の掲示板があるの。ほら」

 

 


 

25:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:17:00 ID:5P9Z619LX

おい、あの昼休みのデュエル見たかよ

 

28:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:18:39 ID:+5hFVWhAK

>>25 見た見た、すっげえレベル高かったよな

 

30:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:20:39 ID:yNK/9epMH

あれってデュエル部の人?

 

35:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:22:24 ID:Zcls9eWPF

いや、新入生っぽい。デュエル部も心強い新入部員ができて安泰だな

 

37:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:23:54 ID:Enw5lH/Io

腕は確かなのに人数足りなくて大会行けなかったもんなぁ

 

41:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:25:25 ID:YXnwepAq+

ところで2つ名どうするよ、俺は使ってるデッキに因んで女の子の方には『花咲き』でいいと思うんだが

 

43:清澄の名無しさん 20XX/XX/XX 16:27:11 ID:lAXGFM/Lb

>>41 草

じゃあ男の方はあの戦法からとって『不屈』だな

 

 

 


 

なぁにこれぇ

 

「…」

 

 京太郎はその光景に唖然とし、咲は羞恥のあまり顔真っ赤にしてプルプル震えだす。

 部長──竹井久は笑って2人に歓迎の言葉を投げかける。

 

「ようこそ、清澄高校デュエル部へ。期待のニューホープさん?」




須賀 京太郎
 デュエリスト初心者。ある日ぶつかった人から2枚の大型モンスターを貰い、それをエースとして戦い始める。
 使用デッキは大まかに【戦士族】あるいは【魔装戦士】。
 最近の悩みは新たなエースモンスターを手に入れる資金が無いこと。

宮永 咲
 デュエリスト上級者。ちょっと色々あってデュエルから離れていたが、初心者の京太郎に敗北して再覚醒。
 使用デッキは【植物族】。嶺上開花、嶺の上に咲く花をメインにしており、ほぼほぼ確実に展開用カードと打点強化が一緒に来る。
 最近の悩みは掲示板に非常に恥ずかしい2つ名が出回っていること

竹井 久
 デュエリスト中級者。めっちゃめんどくさい人と評判。
 使用デッキは【インフェルニティ】。ハンドレス状態だと非常に引きが良くなる。ループはしない。
 最近の悩みは団体戦だと誰か1名がハブられること。

坂巻 遊陣
 高校生デュエルキング。久々にこの世界の故郷に帰ってきて気分がいい。遊戯ごっこもできてさらに気分がいい。
 この後予定の期間より長く滞在して菫に連れ戻される。
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