遊戯王-saki-   作:融合呪印生物・神

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もっといろいろ入れたかったけどデュエル描写で長くなったのでダメでした
次回はもっと地の文ふやすのでゆるして
キングは次くらいでたぶん出る

もしかしてこれ京太郎主人公じゃない…?


第2話/燃え上がる覇者

「──私は『炎斬機(えんざんき)マグマ』でダイレクトアタック!」

 

 白銀と赤熱の鎧を身に纏った騎士が、その豪炎の剣を振り下ろす。

 

「この瞬間!俺は墓地の『クリボーン』の効果を発動!このカードを除外し、墓地の『クリボー』モンスターを任意の数だけ特殊召喚できる!」

 

 男──遊陣というデュエリストがそう叫んだ瞬間、剣を振り下ろさんとしていたマグマの前に青いシスター帽のようなものを被った白い球体…クリボーンが現れた。

 

 突然の出現に不意を突かれたか、シグマの動きが一瞬止まる。その一瞬の猶予の間にクリボーンから眩い閃光が放たれ、分裂した。

 

「この効果により、墓地から『クリボー』『ハネクリボー』『アンクリボー』『クリボール』を守備表示で特殊召喚する!」

 

 気づけば、そこにはこのデュエルにおいて様々な要因で墓地へと送られたクリボー達。

 

「くっ…しかし無駄です!どれだけモンスターを並べようとも、私のマグマには及びません!私は巻き戻しの発生でクリボールを攻撃対象にします!」

 

「クリボールを対象に速攻魔法『ドロー・マッスル』を発動!このカードは、守備力1000以下の表側守備表示モンスターに戦闘破壊耐性を付与し、さらにデッキから1枚ドローできる!」

 

 発動された速攻魔法から光が放たれ、クリボールに集まる。次の瞬間、クリボールの手足のような部分が筋骨隆々に膨れ上がり、マグマの一撃を正面から受け止めた。

 

「っ!けれど『斬機ナブラ』の効果でこのターンマグマは2回攻撃できます!私はクリボーに攻撃!」

 

 マグマの一撃目をどうにか避けたクリボーは、いつの間にか増えていた剣の存在に気付かず返す手で一刀両断され…ない。

 

「俺は罠カード『和睦の使者』を発動していた!これでお前の攻撃は終わりだ!」

 

「…私はこれでターンエンドです」

 

「そして、エンドフェイズにマグマに適用されていたナブラとマルチプライヤーの効果は終了し、2回攻撃は失われ攻撃力は2500に戻る」

 

 体から豪炎を放ち、二刀の剣を携えていたマグマの体から吹き出る炎がその勢いを減らし、剣は幻だったかのように掻き消え、クリボールは普段通りの姿に戻った。

 

炎斬機マグマ ATK5000→2500

 

 

「俺のターン!ドロー!」

 

カードを引いた遊陣は、相手の墓地を見詰め、ドローカードを叩きつける。

 

「俺は手札から、『死者蘇生』を発動!このカードは、自分か相手の墓地に眠るモンスター一体をできる!俺が選択するのは、お前の墓地の『斬機シグマ』!」

 

「えっ!?」

 

 驚く対戦相手をよそに、紅白の騎士のようなモンスター、シグマが遊陣の場に蘇った。

 

「使わせてもらうぞ、お前のカードを!俺はレベル1のクリボー、クリボール、ハネクリボー、アンクリボーの4体に、レベル4の斬機シグマをチューニング!」

 

 シグマの体が4つのリングに分裂し、4体のモンスター達を取り囲む。やがて全てが収束したそこには──。

 

「現れろ───」

 

 


 

 

 

「──夢ですか…」

 

 そう呟いて少女──原村和は体を起こす。

 前を見れば、寝落ちしてしまったようで同じ動画がリピート再生されているらしいパソコン。

 

 再生されている動画は、『決闘王 坂巻遊陣デュエル集(最新版)』。

 いつか雪辱を果たすため、遊陣のデュエルを分析していたのだが…。

 

「…ダメですね。L・G・D(リンク・ゴッド・ドラゴン)を手に入れて、それを主軸にしたデッキに調整されてからというもの、全く付け入る隙が見えなくなりました。」

 

 過去の坂巻遊陣の戦い方は、容易に蘇生できてサポートも豊富なクリボーたちを使って展開し、様々なカードを使って相手を突破。あるいは相手のカードさえ利用して使いこなす、一種のメタコントロールデッキだった。

 

 であれば対処の仕方もあるというものだが、L・G・Dを使い始めてからは話は別だ。

 

 効果で破壊されないモンスターを出しても、大抵パワーで及ばない。攻撃力で勝ろうとも、大抵の場合はあの全体破壊で殲滅されるだけ。

 そうでなくても、あのキングのEXデッキは厄介極まりないカードで埋め尽くされているのだ。L・G・Dの召喚を阻止したとして、他のカードで倒されて終わり。

 

 結論、手詰まりである。

 

 

 

「…はぁ、ダメですね。何一つ進展しません。やはりあの方法しか…」

 

 額を抑えて背もたれによりかかり、ジッと天井を見つめる。

 机で寝落ちしたせいで疲れが取れきっていないのか、若干体が重いようだ。

 

 その姿勢のままパソコンに目を戻し──

 

「…とりあえず、学校、行きましょうか」

 

 その右下に映されている時計はいつもの登校時間より少し遅い時刻を示していた。

 

 


 

 

 

「おー待たせたな、のどちゃん!」

 

「あ、優希」

 

 授業が終わり、放課後のデュエル部室。和より少し遅れて入って来た少女──片岡優希に目をやって、手元にあった資料を見せる。

 

「見てください、どうやら私たち以外にも2人の新入部員が来るそうですよ。男子女子が1人ずつです」

 

「マジか!?ってことはこれで大会の団体戦に出られるじぇ!」

 

「ええ、そうなりますね」

 

 

 これで当面の懸念事項は解消され、デュエルに集中できるわけである。

 

「ふーん…【植物族】に【魔装戦士】かー。悪くないテーマだじぇ」

 

「魔装戦士の方の男子…須賀京太郎くんはまだ初めて間もないみたいですね。けど書いてある情報を見る限りなかなかになかなかなデュエリストの素質を持っている様です」

 

「おー、そいつは楽しみだな!先達として色々教えてやるじぇ」

 

「そして植物族の方の…宮永咲さんですね。そちらは経験者だそうで、テクニカルなタイプのデュエリストだとか」

 

「テクニカルってことはのどちゃんとは正反対か」

 

「え?」

 

「なんでもないじぇ」

 

 ピュ〜と口笛を吹く優希を不思議そうに眺めた和は、書類を置いて席を立つ。

 

「さて、そうとわかれば歓迎の準備だじぇ!」

 

「そうですね」

 

 


 

「ええと、なんでこんなことになってるんです?」

 

 左腕にデッキがセットされた旧型のデュエルディスクを嵌め、原村和と相対する京太郎。

 場所は旧校舎の外、少し開けた場所である。ギャラリーには麻雀部員と、どこから聞き付けたのかパシャパシャと写真を撮りまくる新聞部らしい女子生徒数人の姿。

 

 入部後の初活動という事で、部員みんなで自己紹介をして友好を深めた──と思ったら突然外に連れ出されてあれやこれやの果てに現在である。

 正直京太郎当人からするとわけが分からない部分が大きい。なぜ部内のルールだのの説明も無くいきなりデュエルに至っているのか。

 

「デュエル部の歓迎と言ったらやっぱこれだじぇ」

 

「まあデュエルを通じて相手を理解できることもあるじゃろうし」

 

「部長としては新入部員達の正確なデュエルの腕も知っておきたい所はあるわね」

 

「京ちゃんがんばれー!」

 

 どうやら京太郎に味方はいないらしい。これは男女だから──というより、デュエリストであるかどうかであるが肝心の京太郎はデュエルに関してあまり詳しくないため男女感覚の差か何かだと考えていた。

 

「さて、それでは始めましょうか須賀くん」

 

「ああ…」

 

 京太郎は目の前でデュエルディスクを構える少女に対して思考する。第一印象は胸部が人並外れてデカい美少女、できればお近づきになりたいだのと密かに思っていた相手である。

 が、それが中学のデュエルでインターミドル優勝者であるなどということを知り、こうしてデュエルするはめになったとなると、すっかりそんな感想は頭の中から消えていた。

 

 単純に怖い。初心者である自分がインターミドル優勝者であるらしい相手に勝ちは愚か善戦すらできるとは到底思えないのである。

 必死に頭を回して、常に最良の手札を引き当てないとまともに太刀打ちすらできない相手。それが京太郎の想像上の原村和という少女だった。

 

 さらに、今回は京太郎にとって初めてである『デュエルディスク』と『ソリッドビジョン』を用いたデュアルである。噂では多少なりとも衝撃とかあるらしい。

 加えて今回のデュエルでは、あのカードの人から貰ったエースモンスター用に開封済み寄せ集めパックから入れ替えて微調整した新デッキであった。その性能は自身でも未知数である。

 

 何もかも未知、未知。となれば多少なりとも気が引けた。

 しかし、部員の様子や相手を見るに逃げ場はなさそうである。やるしかない。

 

「よし…!」

 

 半ばヤケクソでデュエルディスクを構える京太郎。その姿を見た和はほう、と言葉を漏らす。

 

「(初心者ということでしたが…デュエルディスクを構える姿は案外様になりますね。いい気迫です)」

 

 密かに和の中で京太郎の評価が上がる。

 それだけ、と思うかもしれないが、『デュエルディスクが似合うのは優れた決闘者の証』という共通認識がこの世界にはある。それは例えデジタル派決闘者の和であっても例外ではない。

 

「(なるほど、素養があると言うだけのことはありそうです)」

 

「では始めましょうか」

 

「おう!」

 

「「デュエル!!」」

 

 

須賀京太郎 LP4000

 

原村和   LP4000

 

 

「先行は私がいただきます」

 

 先行を取ったのは和、5枚の手札を確認し、一瞬で戦術を構築する。

 

「私は手札からチューナーモンスター『斬機(ざんき)シグマ』を特殊召喚します!」

 

 場に光とともに現れたのは、紅白の鎧と1本の剣で構成された体を持つレベル4モンスター。その身長からすると大剣とも思える剣を京太郎へ向けて構えている。

 

「このカードは、EXモンスターゾーンに自分モンスターが存在しない場合に手札か墓地から特殊召喚できます。ただしこのカードはフィールドから離れた場合に除外され、このターン私はEXデッキからサイバース族しか特殊召喚できません。」

 

「すげぇ…これがソリッドビジョンか…!」

 

 まるで現実にモンスターが現れたかのようなその光景に、画面越しでは得られない実感を得た京太郎は感動を覚える。

 

「(なるほど、これはみんなが熱狂的するわけだ)」

 

「サイバースか…展開力に優れた種族だね。リンクモンスターを扱うことが多い種族だよ」

 

「それは普通のやつに限って、だじぇ。のどちゃんの場合は少し違うな」

 

 咲の言葉に、訂正とばかりに返す優希。やはり親友なだけあるのか、和のデッキは知り尽くしている様子である。

 

「(のどちゃん、あまりやりすぎないと良いけど…)」

 

「さらに私は、手札から『斬機(ざんき)サブトラ』の効果を発動します!このカードはフィールドの表側表示モンスターを対象に取り、特殊召喚できます!」

 

 現れたのはマントのようなものを着けた紅白の剣士。その剣を侍のように腰に構えている。

 

「そして、対象にとったモンスターの攻撃力をターン終了時まで1000ポイントダウン。そしてこの効果で特殊召喚したこのカードはこのターン攻撃できません」

 

斬機シグマ ATK1000→0

 

 その構えた剣を地面に刺し、戦闘態勢を解いたシグマ。その攻撃力は0になってしまう。

 

「フィールドのモンスターの攻撃力を1000下げて自身の攻撃を放棄する代わりに特殊召喚可能なモンスターか…なかなか優秀なカードだね」

 

「…そうだったら良かったんだけどなぁ」

 

「?」

 

 どこか遠い目をしてデュエルを見つめる久に、怪訝な表情を浮かべる咲。

 隣では優希が苦笑いを見せる。

 

「私は、レベル4の斬機シグマと同じくレベル4の斬機サブトラの2体で、オーバーレイ!」

 

「!?」

 

 突如としてフィールドに巨大な黒い渦が現れ、そこへ黄と赤の光へ変化したシグマとサブトラが吸い込まれていく。

 その光景を初めて見た京太郎は何事かと戸惑うも、構わずに和はデュエルを続ける。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 黒い渦が収束していき、消えると思いきや突然爆発するように広がる。

 気がつくとそこには、黄と黒の装甲を持ち黄色の稲妻を纏った騎士が立っていた。その周囲には2つの球体が円を描くように漂っている。

 

「ランク4!『塊斬機(かいざんき)ダランベルシアン』!」

 

「エクシーズ…!」

 

「このカードは、X(エクシーズ)召喚に成功した時、使用するオーバーレイユニットの数によってその効果を変化させるモンスターです」

 

「2つ使用した時の効果は、『デッキから『斬機』カードを手札に加える』。3つ使用した時の効果は、『デッキからレベル4モンスター1体を手札に加える』。4つの効果は、『デッキから魔法・罠カードを1枚を手札に加える』」

 

 

「ええと、エクシーズ召喚に使用されたモンスターはそのモンスターエクシーズのオーバーレイユニットになるんだよな。ってことは…」

 

「私はオーバーレイユニットを2つ使い、効果を発動!デッキから『斬機』カードである罠カード『斬機超階乗(ざんきちょうかいじょう)』を手札に加えます!」

 

 デッキから自動的に抜き出された『斬機超階乗』を京太郎に見せ、手札に加える和。

 

「好きなカードをサーチできるのか…!」

 

「それだけではありません!私はダランベルシアンの更なる効果を発動!自分フィールドのモンスター1体をリリースし、手札か墓地からレベル4の『斬機』モンスターを特殊召喚できます!私はダランベルシアン自身をリリース!」

 

「せっかく出したモンスターエクシーズを!?」

 

 ダランベルシアンの体が0と1で構成されたデータに分解され、再構成される。そこにはエクシーズ召喚の素材となったはずの斬機シグマの姿があった。

 

「そうか…エクシーズ召喚の素材になったモンスターはそのモンスターのオーバーレイユニットになる。でもそれはフィールドから離れた扱いじゃないから…」

 

咲の呟きを聞いて、京太郎はそんなのアリかよと思った。

 

「ふふ、私は『斬機シグマ』を特殊召喚!更に手札の『斬機ディヴィジョン』を通常召喚!」

 

 今度は先程のダランベルシアンと同様黄と黒の鎧を持ったモンスターが現れる。

 

「更にシグマを対象に手札の『斬機アディオン』の効果発動!このカードを特殊召喚し、シグマの攻撃力を1000アップする!」

 

「今度は強化か!?」

 

弱体化だけではなく強化まであるのか、と京太郎は戦慄する。

 

「私はレベル4のシグマとディヴィジョン、アディオンでオーバーレイ!」

 

「またかよ!?」

 

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

 

 再びエクシーズ召喚のエフェクトと共にモンスターが現れる。

 

「ランク4!『塊斬機(かいざんき)ラプラシアン』!」

 

 現れたのは先程とはまた別の黄と黒の装甲のモンスター。

 

「そして、このカードがX召喚に成功した時にオーバーレイユニットを3つまで使用して、次の効果から取り除いた数まで選択して効果を発動できます!」

 

「1つは『相手の手札をランダムに墓地に送る』効果!2つ目は『相手のフィールドのモンスター一体を選んで墓地に送る』効果!最後は『相手の魔法・罠カードを1枚選んで墓地に送る』効果です!」

 

「でも、俺の場にはまだカードは無いぞ?」

 

「ええ。ですから私はオーバーレイユニットを1つ取り除き、1つ目の効果を発動します!相手の手札をランダムに1枚捨てる!」

 

 ラプラシアンの体から紫の稲妻が迸り、京太郎の手札の1枚を弾き飛ばした。

 

「何!?」

 

 墓地に落ちたのは永続魔法『補給部隊』。京太郎のデッキにおいてドローエンジンの役割を持つ重要なカードである。

 

「ふむ、補給部隊ですか。展開用カードではなかったにせよ、ドローカードを潰せたなら上出来ですね」

 

「くっそ…!」

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

 魔法・罠ゾーンに伏せカードが出現し、ターンが京太郎に回る。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「原村さん、結構動いたね」

 

「でものどちゃんのあれは本来後攻用の動きだじぇ。その証拠にラプラシアンの効果を十全に発揮できてないし、手札は残り1枚になってる」

 

「和なりの手加減ってことかしら」

 

「でもああも動かれたら京太郎のプレッシャーはかなりのものだと思うがの」

 

 ドローした京太郎は5枚の手札を見て冷静に戦術を構築する。

 

「(補給部隊を捨てさせられたのは痛いけど、この手札ならなんとか…)」

 

「俺は手札からフィールド魔法『召魔装着』を発動!このカードがある限り自分フィールドの戦士族・魔法使い族・ドラゴン族は攻撃力守備力を300ポイントアップする!」

 

 フィールドの中央に不可思議な光の渦が出現し、そこから光が一帯へ広がる。風景に大きな変化はないが、その効力はしっかり働いているようだ。

 

「そして俺は召魔装着の効果発動!手札を1枚捨ててデッキから『魔装戦士』を一体特殊召喚できる!手札の『魔装戦士テライガー』を墓地に送り、デッキから『魔装戦士ヴァンドラ』を特殊召喚!」

 

 光の渦から鎧のパーツが放出され、それが京太郎のフィールドで組み立てられるように人型を形成する。やがてそこに青い鎧と金の左腕に片翼で構成されたヴァンドラが出現した。

 

「さらに俺は手札からチューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

 

 勢い良く手札をディスクに置くと、ジャンク・シンクロンが出現し、その体についたレバーを引きエンジンを吹かすような音が響く。

 

「俺はレベル5のヴァンドラに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

ジャンク・シンクロンが3つの光輪に分裂し、ヴァンドラを囲むように配置される。

 

「シンクロ召喚!レベル8!『ギガンテック・ファイター』!」

 

遥か上空からギガンテック・ファイターが現れ、地面を盛大に砕きながら着地する。いわゆるスーパーヒーロー着地と呼ばれるそれから立ち上がり、仁王立ちでラプラシアンに相対した。

 

「おぉ!かっけぇ!」

 

「──このカードは」

 

 


 

 

『現れろ!レベル8!全てを砕く不屈の闘士!『ギガンテック・ファイター』!』

 

 

 


 

「(あの時、私のマグマを打ち破ったシンクロモンスター…!普通に出回っているカードですけど…)」

 

「いくぜ!俺はギガンテック・ファイターでラプラシアンに攻撃!ギガンテック・ファイターの攻撃力は墓地にジャンク・シンクロンとヴァンドラ、トライガーがいる事で300アップ!さらに召魔装着の効果で300アップし3400!対するラプラシアンは2000だ!」

 

原村和 LP4000→2600

 

 ラプラシアンの剣とギガンテック・ファイターの拳がぶつかり合い──一瞬の拮抗と共に拳が剣ごとラプラシアンを打ち砕いた。

 

「ラプラシアン撃破!俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

 京太郎の手札が1枚になり、ターンが和に返される。

 

「…なるほど、動きはシンプルながらたしかに使いやすい優秀なデッキです。そしてその使い手であるあなたの判断力も初心者のレベルではない」

 

「お、おう…そう褒められるとなんかむず痒いな」

 

「けれど、そのデッキの急所も見えました。魔装戦士の時点で予想はできていましたが」

 

「何!?」

 

「私のターン!ドロー!」

 

 和がデッキからカードをドローし、そのカードを確認。手札に加える。これで手札は2枚となった。

 

「そうですね…すこし仕掛けてみましょうか」

 

 そう呟くと、伏せカードに向けて手を翳す。

 

「メインフェイズ、私は罠カード『斬機超階乗』を発動!」

 

 反転し、その正体を顕にする伏せカード。それはダランベルシアンの効果により手札に加えられていた『斬機超階乗』のカードだった。

 

「このカードは墓地の『斬機』モンスターを3体まで対象として発動し、そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚できる。そしてそのモンスターのみを素材としてS(シンクロ)召喚、またはX(エクシーズ)召喚できる!」

 

「墓地から特殊召喚して、そのままEX召喚!?」

 

「…ただし、この時特殊召喚する『斬機』モンスターは全て異なるモンスターでなくてはなりません」

 

 フィールドに光り輝く三角形のエフェクトが走り、その頂点の二角に2体の斬機が現れた。

 

「私は墓地からチューナーモンスターのシグマとディヴィジョンを特殊召喚!そしてこの2体を用いてシンクロ召喚を行います!」

 

「レベル4『斬機ディヴィジョン』にレベル4の『斬機シグマ』をチューニング!」

 

 シグマの体が4つの輪になり、ディヴィジョンの体を囲む。

 突如としてディヴィジョンの体が燃え上がり、その炎がより大きな人型に広がる。

 

「灼熱の剣携えし斬機士!その(ほむら)纏いし(つるぎ)で敵を根絶せよ!!シンクロ召喚!」

 

「レベル8!『炎斬機マグマ』!!」

 

 炎の中から剣が突き出され、振るわれたと同時に纏わりついた炎が一瞬に掻き消える。

 そこには焔と純白の鎧を纏った斬機士が佇んでいた。

 

「レベル8のシンクロモンスター…!けどその攻撃力は2500!それじゃギガンテック・ファイターは倒せないぜ!」

 

「まだです!さらに私は、シンクロ素材となって墓地へ送られたディヴィジョンの効果を発動します!」

 

「このカードが墓地へ送られた場合、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できます!私はギガンテック・ファイターを対象に選んで、その攻撃力をターン終了時まで半分に!」

 

「なんだと!?」

 

 墓地からホログラムのようなディヴィジョンが出現し、一瞬回路のような線がギガンテック・ファイターまで走った。

 すると屈強な肉体を持つはずのギガンテック・ファイターは倒れ込み──片膝をついてどうにかその体を支えた。

 

ギガンテック・ファイター ATK3400→1700

 

「まだです!私は手札から、装備魔法『斬機刀ナユタ』をマグマに装備!」

 

 マグマが自身の剣を地面に突き刺すや否や、その剣を包むようにデータの炎が燃え上がる。

 火柱のように燃え立つそれにマグマが腕を突っ込むと、勢いをつけて引き抜く。

 そこにはより巨大で刺々しく、元の剣よりも圧倒的な力を秘めた片刃の大剣──斬機刀ナユタの姿があった。

 

「このカードはサイバース族モンスターにのみ装備できます。そしてバトルです!私はマグマでギガンテック・ファイターを攻撃!」

 

「くっ!」

 

「この瞬間、ナユタの効果を発動します!1ターンに1度、デッキから『斬機』モンスター1体を墓地に送ることで、そのモンスターの攻撃力分だけ装備モンスターの攻撃力を上げる!」

 

「なんだと!?」

 

 マグマがナユタを構えると同時にその背後にマルチプライヤーの姿が現れた。

 

「私は『斬機マルチプライヤー』を墓地に送り、マグマの攻撃力をマルチプライヤーの攻撃力である500アップします!」

 

 マルチプライヤーの体がデータの炎へ溶け、ナユタの刀身へと吸い込まれる。同時にナユタの峰の部分に存在するブースターから放たれる炎が僅かにその勢いを増した。

 

炎斬機マグマ ATK2500→3000

 

「500だけ…?今まで出てきた他の斬機モンスターでももっと高い攻撃力はいたのに…」

 

 久の呟きに、ハッとしたのは和と対峙する京太郎。

 

「…!つまり、目的はディヴィジョンのような墓地に送られた時の効果か!」

 

「その通りです!私は墓地に送られたマルチプライヤーの効果!このカードが墓地に送られた場合、フィールドのサイバース族モンスター1体の攻撃力をターン終了時まで倍にできます!」

 

「倍!?」

 

「ってことは…」

 

 突如としてマグマの全身とナユタのブースターからとてつもない出力の炎が放たれ、その力を倍増される。

 

炎斬機マグマ ATK3000→6000

 

「攻撃力…6000!?」

 

「これで終わりです!攻撃力6000のマグマで攻撃力1700のギガンテック・ファイターへ攻撃!」

 

 マグマがギガンテック・ファイターへと跳躍し、大剣を振りかぶる。瞬間、ナユタからかつて無いパワーの炎が吹き出されその勢いを増した。

 

「その攻撃力の差は4300…これが通れば…!」

 

「させるか!罠カード発動!『ガード・ブロック』!戦闘によって発生するダメージを0にして、カードを1枚ドローする!」

 

 ギガンテック・ファイターが防御姿勢をとり、その両腕をクロスする。マグマの持ったナユタはそのままギガンテック・ファイターへ斬りかかり──一瞬の抵抗とともに両断した。

 しかし、その一瞬の抵抗が功を奏したのか余波が京太郎へと届くことは無かった。

 

「でもギガンテック・ファイターは破壊させてもらいます!そしてマグマの効果発動!」

 

「何!?」

 

「マグマが相手モンスターを破壊した時、相手フィールドのカードを2枚まで対象として、破壊できます!ギガンテック・ファイターはこの時点で場にいないため破壊できませんが、召魔装着は破壊させていただきます!」

 

「くぅっ!」

 

 京太郎への余波は防げても、他への余波を防ぐには至らない。斬撃の攻撃により広がった炎はフィールドの中央の光を取り巻き、欠片も残さず燃やし尽くした。

 

「だが、ギガンテック・ファイターは自身の効果により蘇る!そして墓地から特殊召喚されたギガンテック・ファイターは全ての効果の影響をリセットされ、その攻撃力は3100に戻る!」

 

 フィールドに残った炎の残滓が突如として京太郎のフィールドに集まりはじめ、やがて人型へと形成されていく。

 炎が弾け拡散すると、そこには高熱の体から蒸気を発するギガンテック・ファイターが存在していた。

 

「…防御札も用意していましたか、さすがですね。しかもギガンテック・ファイターの効果もあってほぼノーリスクでドローできるとコンボ性能も高い。本来は補給部隊も併せて2枚ドローできる算段だったのでしょう」

 

 関心するように微笑む和は、チラリと京太郎のデュエルディスクの墓地置き場へと目を向ける。

 

「…すごいな、そこまで読んでたのか」

 

「補給部隊を捨てられた時、明らかなオーバーリアクションでしたから」

 

「あー…」

 

 思えば京太郎は、事前にその効果を聞いていたにも関わらず手札を捨てられたことに驚いていた。それはおそらく効果に対する驚きではなく『補給部隊』を捨てられたことに対する驚きだったのだろう。

 

 そして同時に、ギガンテック・ファイターの高い攻撃力と復活能力があるにも関わらず、防御カードであるガード・ブロックをデッキに積んでいることに和は注目していた。

 

「(彼のデッキ構成から、おそらくギガンテック・ファイターをシンクロ召喚する事に長けています。しかしギガンテック・ファイターが破られることも考慮に入っていたのなら、その次(・・・)があるはずです!)」

 

「私はカードを1枚伏せて、ターンエンドです!」

 

「俺のターン、ドロー!…よし!俺は1000のLPを払い、手札から『簡易融合(インスタント・フュージョン)』を発動!EXからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚する!」

 

須賀京太郎 LP4000→3000

 

 

「簡易融合!?」

 

 驚きの声を上げたのは咲である。昨日デュエル部への入部手続きを行った後、京太郎の部屋へ行きデッキ構築を手伝った。

 しかし、その時にあのカードは入っていなかったはず。とするなら、あれは素人のはずの京太郎が自分で判断して投入したカードということになる。

 

簡易(インスタント)融合召喚(ゆうごうしょうかん)!来い、レベル5!『炎の剣士』!」

 

「炎の剣士…?」

 

 出現したのはデュエルモンスターズの初期も初期に登場した融合モンスター『炎の剣士』。確かに種族や攻撃力から投入されることも多い。

 が、近年においては『召喚獣ライディーン』の方が攻撃力効果においても優先される傾向にある。和はそこに疑問を持った。

 

 京太郎のデッキがエースモンスターを除き寄せ集めによって構築されたものだと知ったら和はひっくり返るだろう。

 

「これで終わりじゃない!俺は手札から魔法カード『置換融合(ちかんゆうごう)』を発動!フィールドのモンスターを素材として融合召喚を行なう!」

 

 

「召喚条件はレベル5以上の戦士族2体!フィールドのギガンテック・ファイターと炎の剣士を融合!」

 

 ギガンテック・ファイターと炎の剣士が黒い渦に呑み込まれ、圧縮される。

 やがて渦は黒い球体となり、黒色の光が放たれた。

 呼び出されるのは、彼から貰った2枚のうち、残る1枚。

 

「来い!レベル10!『覇勝星(はしょうせい)イダテン』!」

 

 現れたのは、三叉の槍と紫の鎧を纏った巨大な戦士。その名を覇勝星イダテン。

 

「…なるほど、ナユタの攻撃力上昇。そして墓地に送られた斬機の効果をも突破する方法としては最適解の1つです」

 

「イダテンの融合召喚時効果!デッキからレベル5の戦士族を1体手札に加える!俺は『ターレット・ウォリアー』を手札に!」

 

 和はそのカードを見て京太郎のデッキを分析する。

 

「(ターレット・ウォリアー…戦士族の攻撃力を底上げできる特殊召喚可能なレベル5戦士族モンスター。事故回避用の、そしておそらくギガンテック・ファイターやイダテンの素材としても有用なカード)」

 

「さらに俺は墓地から『置換融合』の効果を発動!墓地のこのカードを除外し、墓地の融合モンスターをEXデッキに戻し、デッキから1枚ドローする!俺は炎の戦士をEXデッキに戻す!さらにその後、1枚ドロー!」

 

「(さらに、簡易融合で呼び出し素材にしたモンスターをEXに戻しつつ手札を増やしました。これで須賀くんはイダテンを融合召喚しつつ、手札の枚数を減らしていません)」

 

 和は脳内で京太郎の評価を上げる。

 いささか運に頼った部分はあるが、そもそも多大に運が絡んだゲームである以上は許容範囲だ。それよりもそのデッキを十全に使いこなして見せている京太郎の構築力とタクティクスは初心者のそれではない。

 

「(天性の、とまでいうつもりはありませんがどうやら須賀くんはデュエリストとしての並々ならぬ才能を秘めているようですね)」

 

「バトルだ!俺はイダテンでマグマに攻撃!」

 

「俺は『覇勝星イダテン』の効果を発動!!ダメージ計算時、相手モンスターのレベルがイダテンのレベルより低い場合、その攻撃力を0にする!」

 

 それは対レベル持ちモンスターとしては紛れも無く破格の性能である。レベルを持たないエクシーズやリンクに対してもその3000からなる高いステータスは驚異になりうるし、そうでなくてもイダテンにはもうひとつの効果があった。

 

 いずれにせよ、これでマグマの攻撃力は0になる。が、そう易々とやられる和ではなかった。

 

「装備されたナユタの効果を発動します!デッキから『 斬機』モンスター1体を墓地に送り、攻撃力分だけマグマの攻撃力を上昇する!」

 

「だがチェーンの処理順によりその攻撃力は0だ!」

 

「承知の上です!私は2体目のディヴィジョンを墓地に送り、その攻撃力である1500を加え攻撃力を4000に!」

 

「そしてその攻撃力は0になる!」

 

「ですが、墓地に送られたディヴィジョンの効果発動!このカードが墓地に送られた時、フィールドのモンスターを1体の攻撃力を半分にする!私はイダテンの攻撃力を半分の1500にします!」

 

『炎斬機マグマ』 ATK2500→4000→0

『覇勝星イダテン』ATK3000→1500

 

「くっ、原村のLPは2600!これじゃ削りきれない!」

 

原村和 2600→1100

 

 度重なる攻撃力変動の応酬、その勝利を収めたのは原村和だった。

 

 三叉槍によって赤白の鎧を貫いたイダテンだが、その一撃は倒される時に生じた炎の壁に阻まれ、衝撃を与えはしても和に届くには至らない。

 

 ディヴィジョンの効果を用いて自身のライフを残すことに成功した原村和は、しかし意外と焦りを感じていたのか溜息をつく。

 

「…ふぅ、まさかそんなカードを持っていたとは。ですが破壊されたマグマと、対象を失い墓地に送られたナユタの効果を発動!」

 

 持ち主が倒され地面に突き刺さったナユタから炎が吹き出し、その炎が和の掌の上に収束してカードとなる。

 

「まずナユタの効果!墓地からナユタ以外の『斬機』カードを手札に加えます!私はマルチプライヤーを手札に!」

 

「そしてマグマの効果!戦闘または効果で破壊された時、デッキから『斬機』魔法・罠1枚を手札に!私は魔法カード『斬機方程式(ざんきほうていしき)』を手札に加えます!」

 

 デュエルディスクがデッキから自動的に排出したカードを手札に加え、和は京太郎を見据える。

 

「…もう俺にできることはない。カードを1枚伏せて、ターンエンドだ」

 

「では、私のターン。ドロー!」

 

 ドローによって手札を潤沢にした和は、静かに京太郎を見据える。

 

「正直、ここまでできるとは思っていませんでした。さらに磨けばきっと全国でも通用するデュエリストになれるかもしれません。」

 

 それは、紛うことなき賛辞の意思。初心者であるはずの京太郎がインターミドルチャンプとここまで渡り合った。それは誰の目から見ても賞賛に値するものだった。

 

 が、それでも和に勝つには遠く及ばない。

 

「ご褒美と言ってはなんですが、今の私の全力をお見せしましょう!私は墓地のシグマの効果発動!EXモンスターゾーンに自分モンスターがいない時、このカードを特殊召喚します!」

 

 再びシグマが墓地から炎を上げて甦る。

 

「更に私は手札から魔法カード『斬機方程式』を発動!自分の墓地の『斬機』モンスターの攻撃力を1000アップして特殊召喚します!私は墓地のディヴィジョンを特殊召喚!」

 

 ディヴィジョンがデータの渦から形を取り戻して蘇生される。

 

「…私は、手札から『斬機マルチプライヤー』を通常召喚!」

 

「私はレベル4のディヴィジョンとマルチプライヤーに、レベル4のシグマをチューニング!」

 

 シグマが光の輪となり2体のモンスターを取り囲み、シンクロのエフェクトが起動する。

 

「レベル12のシンクロモンスター!?」

 

「紅蓮の刀携えし最終斬機士!その炎を統べし刀で敵を滅絶せよ!!シンクロ召喚!」

 

 空間をねじ曲げるかのような高熱のと閃光を纏った炎が周囲を飲み込む。その中心には、マグマをも超える最強の斬機士。

 

「レベル12!『炎斬機ファイナルシグマ』!」

 

 炎そのものを刃としたかのような焔の刀を携え、佇む姿は一種の神聖さすら感じさせる。

 

「レベル12…そのレベルを持つのはあらゆるモンスターの頂点とも言えるカード。それが和の切り札なのね」

 

「あれはのどちゃんが来たるべきキングとのデュエルのために用意した最強のカードだじぇ。あれを使うほど、のどちゃんのお眼鏡にかなったか」

 

「キング…?」

 

 優希の言葉に疑問を持つ咲。キング、とは決闘王の事だろうか。ならば原村和はキングとのデュエルをした事がある?

 

「自身の効果で特殊召喚されたシグマは除外されます。ですが素材として墓地に送られたディヴィジョンとマルチプライヤーの効果発動!イダテンの攻撃力を半分にし、ファイナルシグマの攻撃力を倍に!」

 

『覇勝星イダテン』 ATK3000→1500

『炎斬機ファイナルシグマ』ATK3000→6000

 

「攻撃力…6000!?」

 

 攻撃力6000、それはあの五つ首の龍さえ凌駕する超ド級の領域。

 

「これで最後!手札から『斬機アディオン』の効果を発動!ファイナルシグマの攻撃力を1000アップし、このカードを特殊召喚する!」

 

『炎斬機ファイナルシグマ』ATK6000→7000

 

「な、7000…!」

 

これを食らえばLP3000の京太郎であっても。否、例え万全なイダテンと無傷のLPがあっても耐えきれない。

 

「バトルです!『炎斬機ファイナルシグマ』で、イダテンに攻撃!」

 

「攻撃された時、罠カード『聖なるバリア-ミラーフォース-』を発動!相手の攻撃表示モンスターを全て破壊する!」

 

 京太郎は一縷の望みを賭けて伏せられた罠を発動する…が。原村和はそんなに甘くない。

 

「ファイナルシグマの効果!EXモンスターゾーンに特殊召喚されたこのカードは、『斬機』以外のあらゆるカードの効果を受けない!」

 

「なんだって!?」

 

 ファイナルシグマは放たれた光の奔流を刀の一太刀にて斬り捨てる。残されたのは、ただ守るもののないイダテンのみ。

 

「そしてファイナルシグマが相手モンスターとの戦闘で相手に与えるダメージは、倍になる!」

 

「ファイナルシグマの攻撃!一撃必殺(いちげきひっさつ)紅蓮羅斬(ぐれんらざん)!」

 

須賀京太郎 LP3000→0

 

 ファイナルシグマの鋭い一太刀が、イダテンごとその後ろにいた京太郎を斬り裂く。倍の威力を持ったそれはLPにして実に11000もの強大な衝撃を伴い、京太郎を襲った。

 

 炎のソリッドビジョンに巻かれる京太郎は、炎の中で思考する。

 

「(攻撃力7000、そしてデュエリストへのダメージ倍増効果…。なるほど、あのドラゴンを切り伏せてなお万全のLPを一撃で屠る超ド級のモンスター。これが原村和の領域なのか…!)」

 

 戦いは終わり、デュエル終了のブザーが鳴り響いた。

 

 


 

 

「凄い、凄いよ京ちゃん!原村さん!」

 

「いやはや、驚いた。和の方はまあ予想よりかなり強かった程度の感想じゃが、京太郎の方は初心者があそこまで食らいつくとはのう。お主ほんとに初心者か?」

 

「でも、和の手加減あっての話だじぇ!私なら2ターンもあれば瞬殺だ!」

 

「いやー…予想外の掘り出し物ねぇ。こりゃ案外大会が始まる頃には団体戦レギュラーの座もあぶないかもよ?ね?片岡優希さん?」

 

「じぇっ!?」

 

 デュエルが終わり次第、わいのわいのと集まって騒ぎ始める一同。

 気づけば新聞部っぽい生徒は姿を消している。さっそく新聞作りだろうか、仕事熱心なことである。

 

 ムクリと起き上がったらワイワイ囲まれてた京太郎は滅多に無い女子達の急接近にしどろもどろである。軽薄に見えるがこう見えて初心なのでしかたない。

 

 それを見てクスクスと笑みをこぼす和。

 

「お疲れ様です、須賀くん。すごいソリッドビジョンだったでしょう?大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ。しかしすごいな原村、あんなにデュエル強いなんて。流石はインターミドルチャンプだぜ」

 

「須賀くんも、私にあそこまで食らいつくとは思いませんでした。マグマ以降はわりと本気で倒しに行ってたんですよ?それと、私のことは和、で構いません」

 

「え、ああそうか?じゃあ和、俺の事も名前でいいよ」

 

「それはちょっと」

 

「なんで!?」

 

 まさかの拒否に狼狽えを隠せない京太郎。それをみてまた笑みを零す和。その目はしっかりと京太郎を観察していた。

 

「(これは…もしかすると、本当にあのキングへのリベンジが叶うかもしれませんね)」

 

 和の心は、外からは欠片もわからないながらも、たしかに強くリベンジに燃えていた。

 

「(待っていてください、逆巻遊陣。必ず私が貴方を打ち倒してみせます!)」

 

 


 

 

620:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:06:00 ID:YNI6Enkku

はえー新入部員すっごい…あの原村和と互角に渡り合ったってさ

 

622:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:07:23 ID:goPmtx4n1

これマジ?

初心者って聞いたんだけど

 

623:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:08:50 ID:TXxCfRE+8

2人の最終エースっぽいのはさすがに伏せられてるな

でも自分のエースを両者1ターンで召喚するってんだからレベル高ぇわ

 

625:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:10:22 ID:ynbfg51Up

そんな…俺なんてリクルーター使って2、3ターンかかるのに…

 

626:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:11:49 ID:fV+UPbeTN

>>625 遅すぎる…

 

627:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:13:21 ID:LrENDus3n

待って魔装戦士ってそんな強かったの

ストレージ常連のイメージしかなかったんだけど

 

628:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:14:59 ID:4bBcBdrse

フィールド魔法のパワーはかなり強いからね

フィールド魔法引けばそら回せるよ

 

630:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:16:37 ID:m1yCs7RHe

テラ・フォーミングそこそこ高いんだよなぁ

小遣いじゃちょっと手伸ばすのは躊躇われるぜ

 

632:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:18:16 ID:jAOSHUGNO

原村和は相変わらず斬機か

アレ強いのにどうやってエースのマグマ突破したんだよ

 

634:清澄学園名無し部 20XX/XX/XX 18:19:41 ID:vx818ZEmk

そら打点上げまくってじゃないかな

斬機超える打点とかどう出すのかイマイチ浮かばんけど

 

636:清澄学園名無し部 2019/XX/XX 18:21:21 ID:8jfaMscn4

噂ではベンケイワンキルの使い手だとかなんとか

 

639:清澄学園名無し部 2019/XX/XX 18:23:00 ID:WRYDkwVc4

>>636 だからあいつのエースはギガンテック・ファイターだっつってんだろ!?

 

640:清澄学園名無し部 2019/XX/XX 18:24:37 ID:C7yc+mb6L

>>636 ギガンテック・ベンケイ…完成していたのか

 

641:清澄学園名無し部 2019/XX/XX 18:26:04 ID:jEXQs7mnW

相手にアームズ・エイド装備させてキガンテック・ファイターの連続自爆特攻だ。俺は詳しいんだ

 

643:清澄学園名無し部 2019/XX/XX 18:27:41 ID:hPa4KwC90

>>641 できないんだよなぁ…

 

 




悲報:作者氏前回の山場においてミスを犯す
   幸い京太郎の手札が1枚余ってたのでなんとかできたけどギガンテックが攻撃力くらいしか貢献してねぇ


原村和
 斬機使いのインターミドルチャンプ。このssではレベル12、ランク12は各召喚の到達点とされるのでそれに至った決闘者。
 キングにワンチャンある勢の1人であり尋常でないタクティクス見せる。
 使用デッキが斬機の理由はデジタル系と聞いてサイバースしか浮かばなかったのとその中でキングにワンチャンありそうな脳筋最有力が斬機だったから

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