雛鳥と籠の鷹   作:筆折ルマンド

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今回の話には二つ、原作と違う設定があります。
(オリジナル設定とは別に)
どこか考えてみても面白いかもしれません。



去る者、来る者 〈十条姫和〉

 人が死ぬ時

 

 と言うものを、私はきちんと理解していなかった。

 

 人は誰しもそれぞれに命があり、心があり、人生があり、その死もそれに相応しいモノであるはずだと私は信じていた。

 

 ──

 

 信じていた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 母が息を引き取っているのに気付いたのは、居間で横になっている母に昼食の話をして、返事が無かったからだった。

 

 

 ──何より先に驚いた。

 

 

 今朝

 

 一緒に朝食を食べたと言うのに

 

 遺言のようなものなど一つとして聞いていないと言うのに

 

 ついさっき、春休みの宿題をするために母の前を横切ったばかりだと言うのに

 

 母は知らぬ間に──本当にいつのまにか、私を置いて死出の旅へと逝ってしまっていた。

 

 

 ──遅れて悲しみが押し寄せて、布団を投げて母を抱きしめた。

 

 

 抱き上げた母の身体は、小説で書かれるように、鉛のように重くも、羽のよう軽くも無く、鳥肌が立つほど冷たくもなかった。

 

 髪は多少荒れているものの、いい匂いがしたし、

 

 なにより──まだ暖かかった。

 

 

 それでも、どこか遠くを見つめるように薄く開かれたままの瞳は二度と瞬く事はなく、意思の力が抜けてほんの少しだけ軽くなった母さんの身体は、私が思っていたよりもずっと痩せ細っていて、骨張っていて、その感触は──

 

 ──どうしようもなく、石のように固かった。

 

 

 頰を伝った滴が落ちて、母の服に染みを作った。

 

 

 ──────

 ────

 ──

 

 父の位牌の横に、母の位牌を並べて手を合わせる。

 

 

 

 母の法事は驚くほどつつがなく行われた。

 

 母が前々から、自分が死んだ時の事を手配してくれていたからだった。

 

 最初の一週間。

 初七日は知り合いのお婆さんたちの手を借り、やるべき事をやっているうちに過ぎていて、法事が終わり、位牌を受け取った次の日、九日目になってようやく人心地着いた気がした。

 

 

 目を閉じて、母に想いを馳せると、まず一つのことが心に浮かんだ。

 

 

 ──母は父さんに会えただろうか。

 

 

 会えていればいいな。いや、きっと会えるだろう。

 

 父さんは優しくて立派な人だったと母から聞いていた。母も優しくて立派な人だった。なら2人はきっと、いや必ず空の上で会えているだろう。

 

 

 私はそう信じて、2人の冥福を祈った。

 

 

 ──

 

 ピンポーン

 

 インターホンが鳴った。

 母の弔問に誰か来たのだろうか? 

 

 手を合わせるのを切り上げて、玄関へ向かう。

 

 ガラガラと引き戸を開けると、目の前に、着物を着た知らないお爺さんが立っていた。

 

 

「始めまして──になるか。自己紹介をしよう。儂の名は柊──。君の祖父だ」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 なんだか何か面倒──と言っては悪いが、何かを依頼される予感がした。

 

「ん、どないしはった?」

 

「いえ、なんでもありません」

 

 この俺、飛鷹恭侍は、現在、着物女性に連れられて、平城学館の中を練り歩いている。

 

 

 十条篝の弔問の任。

 

 

 多忙な折神紫様に代わり、友であり、戦友であり、侍女であった十条篝さんへお焼香を上げに行く道中、俺は奈良県にある伍箇伝の一つ。平城学館に挨拶しに立ち寄ったのだが……

 

「実はねぇ、ちょお飛鷹くんに頼みたいことがあるんよ」

 

 何故か平城学館の学長「五條いろは」学長に相談(追加任務)があると言われて応接室に連れて行かれていた。

 

「……俺にできることなら」

 弔問はそれこそ半日で終わるし、簡単なお使い程度なら受けて良い。

 

 簡単なお使い程度ならな! 

 

 日にちの掛かる仕事は(後で結芽に殺されちゃうから)堪忍してつかぁさい。

 

「結月ちゃん(相楽学長のこと)が飛鷹くんに頼んだ篝ちゃんの弔問に少ぉし絡んだ話なんやけどね。実は、篝ちゃんの娘の十条姫和さんに面倒ごとが寄ってきてるらしいんよ」

 

「面倒ごと……ですか?」

 

「そう、面倒ごと。大人のくだらない見栄の話。篝ちゃんの事、結月ちゃんから何か聞いてはる?」

 

「一応は。十条篝さんは元々、柊と言う折神家に仕える家の出身らしいですが、それについてでしょうか?」

 十条篝女史は、20年前、紫様のお側仕えだった。

 柊家と言う折神家とも関係の深い由緒ある家の御息女だったんだが、彼女は相模湾岸大災厄で刀使としての力を失ったのち、彼女の今の苗字である十条──の家へ嫁入りし、柊の家を継がなかった。

 それが元で、柊家とはそれっきりになっていたらしいが……

 

 はぁ。

 

 まぁ、十中八九、そういう話なんだろう。

 

 五條学長がパチンと手を合わせた。

 

 当たりのようだ。

 当たって欲しくなかった。ろくでもない話の確率九分九厘。とうぜん9割プラス。

 

「そう、問題はそれなんよ」

 

 細い目は表情の機微が見えにくいが、頬に添えられた手と全身の雰囲気から五條学長から憂いた雰囲気が醸される。

 

「柊家って言うんは、ずーっと昔から折神家に仕えていた由緒正しいお家なんやけどね。

 ここ20年間。具体的には、篝ちゃんが紫様の近衛から、怪我で刀使を引退して以来、折神家と疎遠になっているんよ。篝ちゃん以降、分家を含めた柊のどの家の子も刀使になれへんかって。近い家の子ぉ、側仕えにしようとしてはったけど、紫様も篝ちゃんの後に新しい側仕えを付けることはあらへんどした。それでも柊家現当主の爺さまは、どーにかこーにか折神家と、また昔のように仲良ぅしたいと思っとるらしくて」

 

「直系の姫和さんを柊家に連れ戻して、折神家に貢ぎたい、と」

 

「まぁ、それしか考えられへん」

 

「醜い話ですね」

 

「酷い話や」

 

「でも、十条さんは、中学一年生でしょう? 彼女は伍箇伝に入学していないはずですが」

 

「飛鷹くん、御刀に選ばれたからと言って、誰もが刀使になるとは限らへんよ。お母さんが床に伏せながらも生きていた十条さんなら尚のこと。刀使として何処かの学校に行くよりも、一分一秒でも篝ちゃん──お母さんの側に居たいと思うのは自然のことだと私は思うわ」

 

 あぁ、なるほど、たしかにそれは当たり前の考え方だ。

 

 刀使の使命も大事な事だが、大切な人の側から離れるのは、なかなかに耐え難い。

 その気持ちはよく分かる。

 

 ──

 

 そしてその反対に、その柊の人間に対する怒りで俺の腹わたは、ぐらぐらと煮えたぎりはじめていた。

 

 病床の母、貢物できる娘。

 絶縁状態の祖父が今になって接触しようとするその意味。

 

 ──親が、自分の娘が死ぬのを待っていたと言うのかよ。

 

 この推論はあながち間違いではないのだろう。

 

 ──クソ

 

 罵倒の言葉がまろびでそうになるのを鋼の意思で食い止める。

 

「──で、俺は何をすれば」

 

 どうやら顔までは隠せなかったようで、五條学長はちょいちょいと両手を下げるように振り、どぅどぅと俺を宥める。

 

「飛鷹くんには、私らが十条さんの環境を整えて……いや、もう大体察しは付いてるようやし、言わしてもらうわ。飛鷹くんには、柊の人たちが親権を手に入れられんよう、うちらが工作している間、十条さんに近づく柊の人を追っ払ってもらおう思うとります。柊の人が十条さんの意思を尊重してくれるか分からへんからね」

 

 ──フゥ

 

「……いいでしょう、承ります」

 

「おおきに。大丈夫、飛鷹くんは紫様直属やろぅ? その学生手帳(作りはほぼ警察手帳)を見せれば、柊の人は、水戸黄門の印籠見たみたいにイチコロや」

 

 俺、折神家と特異的な関係がある事は、十条姫和ちゃんには秘密にしてくれって相楽学長に頼まれてんだけどな〜。

 

 まぁ、どうにかするさ。

 

「そうですね」

 

 五條学長が腰を上げ、それと同時に俺も立つ。

 

「そういえば、追い払うって言っても具体的にはどうすれば? その──私情で申し訳ないのですが、俺、早めに京都に帰らないといけなくて」

 

「それは大丈夫。事情は結月ちゃんから聞いとります。とりあえず十条さんの所にご挨拶してきたって。その後は、近くの交番に話通しとくから、そこに泊まって、明日、十条さんに迎えの車出すから一緒に京都に帰ればよろし」

 

「ふむ、了解しました」

 

 五條学長が深々と頭を下げる。

 慌てて俺も頭を下げた。

 

「それじゃあ、どうか十条さんをよろしゅう頼んます」

 

「はい、任されました」

 

 安請け合いな気もしたが、まぁ、こればっかりは性分なのだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 私の祖父を名乗った男は矢継ぎ早に、話を切り出した。曰く、母は優秀な刀使だった。曰く、母には許嫁がいた。それなのに母は、現場で知り合った別の男と勝手に結婚したと、最初は思い出話だったのに、話が進むにつれて、それは昔話の様相をした恨み言にすり替わっていた。

 そして、その最後にその人は言った。

 

「今まで苦労をかけた。柊の家に迎える用意はできているから戻って来なさい」と

 

 法事が終わり、ようやっと心の整理がつき始めたばかりだったと言うのに、その男の言葉はいちいち癇に触った。

 

 今まで苦労をかけただと。

 一番苦労していたのは母さんだ。

 父さんが死んだ後も、仲良くしてくれていた父方の祖父母も早くに死に、友達も遠く、頼る相手が居なかった母が一体どれほど苦労したか。

 

 それに、柊の家に迎えるだと。そもそも私は、柊と言う家の事などほとんど知らない。母の思い出話でチラリと名を聞いた程度でしかないというのに、

 

 なによりも、この男は──

 

 

「おい爺、無駄話はそこまでにしてくれねぇか? こっちはアンタのくっだらない自分語りなんぞよりも余程大事な用事があるんだ」

 

 私の堪忍袋が切れる寸前に、男が横に突き飛ばされた。よろめく男の後ろから私と同じぐらいの少年が現れた。

 

 なんとも珍しい毛先は黒いのに根本は白い逆プリン色の頭をして、白を基調として黒のラインの入った学生服を着た中肉中背の少年だった。

 

 

 男が少年に突き飛ばされた腰をさすりながら、少年に詰め寄る。

 

「くだらない話だと。私は今、この子と大事な話を」

 

「大事な話なら、そっちの十条さんだってそれなりの顔するはずだろ? 俺が見た限り、十条さんの顔は、小学校で校長の話を聞く時の俺と全く同じ顔してたぞ。というか、そもそも大事な話なら、こんな所じゃなくて家の中でやれよ」

 

 まぁ、アンタを十条さんが家に入れてくれるとは思わないけどな

 

 少年がそう言い切ると、男は顔を真っ赤にして少年に手を伸ばした。

 

 ゴッ

 

 と言う音と共に男が倒れた。

 少年が男が伸ばした手を払い退けると同時に、もう片方の腕で胸を拳を打っていた。

 

 綺麗な柄物の着物に土が付いて模様が霞んだ。

 

「おっと、ごめんよ、手が勝手に。まぁ、アンタも同じようなもんだろ? おあいこって事にしようぜ」

 

「……小僧、この私が、刀剣類管理局歴代局長、折神家に仕える柊家の家長と知って──」

 

「知らん知らん。貴方様がどなた様だろうが、どちら様に仕えるあちら様だろうが知らねぇよ。家族を亡くしたばかりの女の子の前で、お焼香もせずに好き勝手がなり散らすような常識知らずの名前なんざ、知る価値もない」

 

「おのれ」

 

「おいおい、そんな怒るなよ、元はと言えばアンタが悪いんだろう? 娘が嫁いで跡継ぎが居なくなって、それなのに娘とそのまま実質絶縁した結果、落ち目になった()名家の柊さん?」

 

 男が射殺さんばかりに睨みつけるのを、少年はなんとも思っていない様子で笑い返す。

 ただ、その目が全く笑っていない事は誰の目にも明らかだ。

 

「貴様」

 

「知ってますよぉ、知り合いの此花さんの話で()()()()軽ーく話されていたのを覚えていますから」

 

 怖い顔をしていた男が怯んだ。

 

「……此花……だと。いや、その制服──」

 

 白地に黒のラインの入った制服を採用しているのは日本国内に一校だけ。

 伍箇伝に所属する綾小路武芸学舎のみ。

 彼は綾小路武芸学舎の学生なのだろう。

 

「やっと気付いたかよ枯れ木爺。こんな制服の学校なんて、日本に一校しかないのに、全然気付かねぇんだもん。そりゃー、そんな節穴じゃ、政財界で生き残れるわけねぇわ」

 

 少年が小馬鹿にするように笑う。

 男が何か言う前に少年が畳み掛けた。

 

「俺さ。今、刀剣類管理局の長である折神紫様が直々に任命した伍箇伝の学長からの依頼で、ここに居るんだ。んでさ、今日中に済ませないといけない任務があるのよ、そこの十条さん絡みでな。でだ、なんか十条さんと世間話しに来たアンタには悪いんだけどさ、今日の所は帰ってくれねぇか?」

 

 アンタ邪魔なんだよ

 

 歯に絹着せないを体現した物言いで少年はそう言い切って男の肩を叩いた。

 

 男は顔を信号機のように目まぐるしく顔を赤青白に明滅させる。

 けれど返す言葉が見つからななかったのか逡巡の末に、一言「また来る」とだけ言い残して帰っていった。

 

 少年は坂を下っていく男の背中に、「もう来るんじゃねぇ」と言葉を投げつけた。

 男の足が一瞬止まったが、男は振り返らず、そのまま肩を怒らせ坂を下っていった。

 

 少年はからからと笑いながら、私の方を向き、ざまぁねぇぜと男の背中を指差した。

 ……流石にそこまであの男を小馬鹿にする気は起きなかった。

 少年は、私がそこまで望んでいない事をすぐに察し、カラ回った笑い声をピタリと止めると、私の方を向きながら恥ずかしげに頰をかいた。

 そして次の瞬間には、腰をブイの字に曲げて、深々とお辞儀をしていた。

 

「ごめん!! あの爺さんの物言いがあんまりにも癪に触ったもんでつい! 十条さんの前でやる事じゃなかった。本当に申し訳ない!!」

 

 さっきまでの威勢はどこへやら、平謝りする彼の姿に私は目をパチクリさせる。

 

「──いや、謝る必要はない。私もあの男にはあまり良い感情を抱いていなかった。むしろ追い返してくれて助かったぐらいだ」

 

「そうか! それは良かった!」

 いやぁ、万一、あんなクソ爺でも懐かれてたら面倒だったからなぁ

 と少年は言うが、安心してくれ。

 

 私もあんなロクデナシ、血が繋がっている程度じゃ絆されなどしない。

 

「それはそうと、伍箇伝の学長からの任務があると言っていたな。それは一体どういう任務なんだ?」

 

 あぁ、と少年は今思い出しかのように手をポンと叩くと、背負っていた竹刀袋に手を回し、竹刀袋に引っかかっていた何かをするすると取り出した。

 それは白いビニール袋で中身は結構膨らんでいたが、何よりもまずそのビニール袋から飛び出した色とりどりの花に目がいった。

 

 一目で分かる。花束だ。

 

「学長の代わりに、十条篝さんへのお焼香に来たんだ」

 

 少年はそう言うと、にかっと笑ってみせた。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 少年──いや、私より一つ年上だったな。

 

 飛鷹恭侍さんは、持ってきたモノを全て仏壇に供えて手を合わせていた。

 先程の私の祖父を名乗る男を追い返した時から想像できないほど、その所作は丁寧だった。

 

 随分と長く手を合わせていた飛鷹さんが、つむっていた目を開け、私の方に振り向いた。

 

「ありがとう。これで学長からの頼みを果たす事ができた」

 

「いや、こちらこそ。母の葬儀は本当に近くの友人たちだけを呼んだ小さなものだったから、こうして来ていただいて母も喜んでいるはずだ」

 

「そう言ってくれると助かる。なんだか変なものをお供えしてしまった手前、ちょっと後ろめたさがあったから」

 

 そう言いながら飛鷹さんは苦笑い。

 

 飛鷹さんが持ってきた来たものは、まず、豆の甘煮感と寒天。これは母の好きなスイーツの豆かんの材料だ。

 これに関しては、ただキチンと母のことを知っている人の代理なのだなと素直に思えたのだが──問題はその隣、ドンと置かれたカップ焼きそばにあった。

 

 飛鷹さん曰く「これは必ずお供えしろ」と念を押されたそうだが……。

 

 手軽なため、それなりの頻度で食べていたものの、母はカップ麺も焼きそばも特別好きだったという覚えはない。

 

 にこにこと自信満々に取り出したソレを見て私が首を傾げたのを見て、飛鷹さんは困った顔をしてしまったが、知らないものは知らないのだ。

 それでも飛鷹さんは、念押しされたからと、カップ焼きそばを豆かんセットの横にお供えし、私たちは、2人とも頭にハテナマークを浮かべたまま仏壇に手を合わせたのだった。

 

 

 ──────

 

 

「なんでも、なかなかの堅物だったらしいぞ。君のお母さんは」

 

「そうなのか? 私は母としての姿しか見た事がないが、母は柔軟な考え方をしていた」

 

「まぁ、学生時代の話だからな。考え方も変わったんだろう」

 

 私は飛鷹さんの持ってきた寒天と豆の甘煮で豆かんを作り、それを肴に、母さんの話をしていた。

 

 飛鷹さんは自分の話は全て、知り合いの受け売りだと念押しして来たが、あまり刀使だった頃の話をしてくれなかった母さんの話は、又聞きだったとしてもとても興味深かった。

 

 その他にも、飛鷹さんは、伍箇伝の学長の小間使いとして、色々と頼み事をされているらしく、その話もまた面白かった。

 流行にあまり詳しくない私に対して、流行もへったくれもない話ばかり振ってくる飛鷹さんは、逆に気兼ねなく話せた。

 

 ただそれでも、話のレパートリーが互いにあまり無いもの同士、1時間としないウチに私たちの話の種は切れてしまった。

 

 人の家に理由もなくいつまでも居るべきではないと思ったのか、飛鷹さんはスッと立ち上がる。

 

「それじゃあ、そろそろ俺はお暇するとしようか」

 

「そう──ですか」

 少し名残惜しく感じるのは、こうして他愛無い話をしたのが随分と久しぶりだからだろうか。

 

「もう帰ってしまうのは残念だが、色々と母さんの話が聞けて良かった。……もし飛鷹さんが良ければ、またウチに来てくれ」

 

 次の機会など、そうそう有るはずは無いが、せめてもの思いでそう言うと飛鷹さんは、楽しそうに笑った。

 

「あぁ、また会おう!」

 

 何故かそう自信満々に飛鷹さんは言い残し、私の家を後にした。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 そして次の日。

 平城学館の学長 母の友人である五條いろは学長に請われ、家を開けることになった私は、隣の席に飛鷹さんが居ることに気付いた。

 

「また会ったな!」

 

 飛鷹さんは悪戯が成功した子供のように にかっと笑った。

 




裏話
今回で発生した原作と違う設定は……だいたい作者のミスです。
設定うろ覚えの結果です。
どうか、二次創作による独自設定として堪忍してつかぁさい。

1.この作品では、柊家と十条家には特別な繋がりは無いとしていますが、
公式では宗家と分家の関係です。
柊篝さんが分家筋の兄のような存在だった のちの夫に恋心を抱き、刀使を引退した後に結婚しました。
十条姓になったのは、たぶんお爺さんが、分家に降ることを許してくれたからでしょう。
(今回の話とぜんぜん違うじゃねぇか)
そういった情報無しに背景を想像で書いた結果がこのザマです。
ですが、普通に書くより展開が盛り上がりそうなので、このまま書いていきます。
一方的に悪者にされる柊のお爺ちゃんに今のうちに謝っておきます。ごめんなさい。

2.作中では篝さんの死亡が2年前ですが、公式では1年前です。(バカタレ)
コレ、割と致命的なミスですが、どうにかこのミスを転じて新しいストーリーにして行こうと思います。
姫和ちゃんと篝さんには一緒に居られる時間を一年削ってしまい本当に悪いことをしてしまいました。
本当に…申し訳ない。

飛鷹恭侍の口調
TPOを弁えて口調を選んでいるため、同年代といる時と、真面目な時とで口調の落差が激しい。
作者自身、真面目モードと素の口調が違いすぎて、キャラの整合性大丈夫か⁉︎とか思ってたり

*申し訳ないのですが、当分の間、リアルの事情で投稿頻度が低下します

[今回のあらすじ]
母は去り、男が迫る
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