雛鳥と籠の鷹   作:筆折ルマンド

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山城視点である意味が薄い。
そもそもヤンデレが書きたかったはずなのに、なんでバトルばっかさせているんだ。(自問自答)
そもそもフラグの立て方が分からぬ。(陰の者)




荒魂のなく頃に 〈山城由依〉

 飛鷹さんに怒られた。

 

 そりゃもう、ものすっごい怒られた。

 

「危険な実験に保護者抜きの独断で参加するなんて言語道断だ!」

 って

 今までの人生で一番強く怒られたと思う。

 それでも私は──自分で買った苦労なんだから、私の勝手だ

 って思って、そしたら私の考えは飛鷹さんにはお見通しで、

 思った事をピタリと言い当てられちゃって、

「それも我がままだ」って釘を刺されちゃった。

 

 ──

 

 青々とした緑生い茂る運動公園。

 

 その中央の広場から少し離れた木陰のベンチで

 

 もっちもっちと

 飛鷹さんが生八ツ橋を頬張っている。

 

「山城も買った八ツ橋食べな」

 

「未久のために買ったから食べません」

 

 飛鷹さんの座るベンチの横から横顔を見つめると、飛鷹さんはくるりと手首を一回転させた後、ビッと八ツ橋の箱を指差した。

 

「生八ツ橋の賞味期限は約10日。そして山城は明日から1ヶ月外出禁止。つまり、今山城が持っている八ツ橋は妹ちゃんの口に運ばれる前に賞味期限切れになる。勿体ないから食べときな」

 そう言いながらまた一つ飛鷹さんが生八ツ橋を口に運ぶ。

 

「え、1ヶ月外出禁止ですか!?」

 

「当然だろう?」

 

 さも当然、むしろこれで済むなら安かろう

 と飛鷹さんは言葉で言うまでもなく表情で雄弁に語っていた。

 

「いや、でも、1ヶ月なんて、そんな──」

 1ヶ月も未久に会えないなんて。

 そう思うと、頭がくらり、軽い絶望感が──

 

 

「山城」

 低い──低い声

 

 

 背筋が凍った。

 

 

 飛鷹さんの目が私を射抜くように据わっていた。

 

 飛鷹さんは怒っていた。

 

 お説教の時とは違う。さらに一段上の怒気を飛鷹さんは纏っていた。

 

「ひゅい」

 

「刀剣類管理局ってのはそこらの学校とは違うんだ。ここは山城と大して歳の変わらない女の子に命を掛けさせている所だ。だが当然、命を掛けさせてるからって失って良い訳が無い。刀剣類管理局には、刀使になった女の子を五体満足で家に返す義務と責任があるんだ。危険な事させて、死なせて、それを『本人が勝手にやった事だから』で通る世界じゃないんだよ」

 

 飛鷹さんの指が私を指し、飛鷹さんの首を指す。

 

「ましてや山城はまだ刀使として正式な資格を持っていない。そんな山城に無用な危害が及べば、山城が実験に参加する許可を出した相楽学長の首が飛ぶ。もちろん山城の保護者として側に居た俺の首もだ」

 

「え──でも、それは私が勝手にしたことで──」

「そんな言い訳は無意味だ。相楽学長も俺も、山城を信じて、山城は信じられるって太鼓判を押したんだ。それがどのような形であっても、山城が信頼を裏切ったなら、それは山城を推した相楽学長も俺も信頼を裏切った事になる。その責任を受け入れるのが、先生であり保護者だ」

 

 ──裏切る

 

 私はそんなつもりじゃなかったのに

 

 私はただ未久のために──

 

 ──

 

 でも、私が研究所に来られたのは、飛鷹さんのお陰で

 

 ──

 

 それは元々、相楽学長が私の想いを出来るだけ叶えてくれるよう配慮してくれたお陰で

 

 私は信じてもらっていた──のに……

 

「──ごめんなさい」

 私は、私が思っていた以上に、自分が危なくて酷いことをしてしまったんだって理解した。

 でも、私に出来ることは謝ることだけで──

 

 俯く私の頭に飛鷹さんの手が乗った。

 

 私が顔を上げると飛鷹さんが肩をすくめた。

 

「まぁ、正直言って、相楽学長も俺も山城の覚悟を舐めていた。まさか研究者と直談判して実験の検体に志願するなんて全く想像していなかったからな。山城が悪いというなら、山城を侮った俺も悪い」

 

 飛鷹さんが両手で紙をくしゃくしゃに丸めるジェスチャーをする。

 

「それに、今回のことは綾小路武芸学舎内の問題だ。相楽学長も内密に処理するだろう。山城への罰もそれほど重くしないはずだ」

 

 エア紙屑をポイと投げ捨てた飛鷹さんがにやっと悪い顔で笑い、口元に指を当てる。

 

「ただし、今回のことは絶対に他言無用。もしバレたら山城も刀使で居られなくなるから気をつけろよ」

 

「はぇ!? あ、はい」

 

「よろしい」

 おっかなびっくり返事をすると、飛鷹さんはにっこり笑って私に自分の生八ツ橋の箱を渡して立ち上がった。

 

「俺の八ツ橋食べてて良いから、ちょっと待っててくれ」

 

 飛鷹さんはぐーっと腕を上げて背筋を伸ばすと、ベンチにかけてあった竹刀袋から鮮やかな緋色の鞘に納められた刀を取り出した。

 

 

「さて、それじゃあ、証拠隠滅だ」

 

 

 飛鷹さんが すらり と鞘から刀を抜き放ち、鞘を投げ捨てる。

 男子用制服には、女子の制服に付いている鞘を保持するためのアタッチメントが付いていないからだ。

 

 飛鷹さんの持つ御刀は赤錆色の刀身に橙色に輝くヒビの入った異形の刀。

 たぶんアレも偽神刀なんだと思う。

 

 飛鷹さんが下段の構えをとる。

 剣士としては未熟な私でも分かる無駄のない動き、構え。

 

 その姿に見惚れていると私のスマホが突然騒音を立てた。

 見てみるとスペクトラムファインダーが荒魂の反応を検知していた。

 

 

 ──────

 

 

 方向は前方、数は複数。

 

 飛鷹さんの目の前で空気が揺れて、飛鷹さんの偽神刀と同じ赤錆色の物体が空から滲み出る。

 

 現れたの三体の人の形をした荒魂。

 頭部に頭のような膨らみが無い以外のっぺりとしたマネキンのような人型、片腕が刃のように先が尖っている。

 

 それが、ゆらりゆらりとゾンビのようにこっちに迫る。

 

「周辺の荒魂を引き寄せて配下にしたのか? 知恵がまわる」

 

 飛鷹さんが偽神刀を地面に擦りながら走って距離を詰める。

 そもそも10mも無い距離、間合いは一瞬で詰まった。

 

 飛鷹さんが一歩大きく踏み出して、

 

 その勢いを殺さず腰を捻って宙で一回転しながらの強烈な前蹴り。

 

 三体のうち中央の荒魂がカンフー映画のスタントみたいに吹っ飛んだ。

 

 飛鷹さんの回転は止まらず、前蹴りをした左足が地面に着くと、今度は右足が跳ね上がった。

 

 弧を描く

 

 後ろ回し蹴り

 

 右側にいた荒魂が中央の荒魂と同じように吹っ飛んでいく。

 

 最後に残った左側の荒魂が一拍遅れて尖った右手を振り上げる。

 

 サン

 と何かが裂けるような、はんぺんを包丁で切ったような軽い音がした。

 

 振り抜かれた飛鷹さんの左手。

 握られた偽神刀の橙色の輝きが一層強くなっていた。

 

 荒魂の右手は切り飛ばされていて、どこか遠くでガサガサと木の葉が揺れた。

 

 荒魂がそのまま右腕を振り下ろすが当然リーチが足りずに飛鷹さんの顔をかすめもしない。

 

「一つ」

 

 飛鷹さんが一歩踏み込み、片腕でくの字を描いた。

 それだけで荒魂はくし切り三等分され、バラバラと地面に転がる。

 

 右手の荒魂が立ち上がる

 

「二つ」

 

 それと同時に

 パン

 とビンの蓋を勢いよく開けた時のような小気味良い音が轟いた。

 

 飛鷹さんの逆袈裟斬り

 

 荒魂の上半身が高く舞ってベシャリと地面に落ちた。

 

 最後に中央の荒魂が起き上がって尖った腕を振り上げ迫る。

 

「三つ」

 

 飛鷹の偽神刀から炎が噴き出す。

 赤錆色の刀身が綺麗な赤色に覆われる。

 

 飛鷹さんも御刀を振り上げる。

 炎が舞ってちりちりと踊る。

 

 縦一文字斬り

 

 最後の荒魂がトウモロコシの皮みたいに綺麗に二つに裂けた。

 

「──凄い」

 

 三体の荒魂を討伐するのにかかった時間は10秒足らず。

 

 とてつもない速さだ。

 

 当たり前だけど単純な速さなら迅移を使った刀使の方が早い。

 でも、そんなただの速さだけじゃなくて、動きの迷いのなさ、鋭さが飛鷹さんの強さの秘密なんだ。

 私は飛鷹さんの体捌きに感動していたんだけど、飛鷹さんは倒した荒魂を前に怪訝な顔をしていた。

 

 真っ二つにした荒魂の残骸を足で転がして、何かを探しているようだけど、その何かが見つからないみたい。

 

「何を探しているんですか?」

 私は八ツ橋の箱を横に置いて、そう飛鷹さんの所に近づきながら聞く。

 

「偽神刀だ。山城を狙って現れたんだからコイツらのどれかの体内に有ると思ったんだが」

 

 私の言葉に答えて飛鷹さんが振り向く。

 

 その瞬間、飛鷹の目が大きく開かれた。

 

 ────

 

 振りかぶる。

 

 深く一歩

 

 上段

 

 突きの構え

 

「え?」

 

「動くな!!」

 

 飛鷹さんが吠える。

 

 裂帛の気合いに当てられ、身体が強張る。

 

 何かがヒタリと私の肩に手をかけた。

 

 飛鷹さんが鬼の形相で更に一歩踏み込んだ。

 

「神居!!」

 

 飛鷹さんの偽神刀が再度炎を噴き出し纏う。

 ごぅごぅと音を立てる神力で作られた炎は熱さを感じさせず、私の頬を撫でた後、私の後ろに放たれた。

 

 ごぼぉん

 と炎の塊が弾ける音が聞こえた。

 

 いつのまにか飛鷹さんの手が腰に回されていて、グッと抱き寄せられる。

 

「わ」

 

 飛鷹さんに抱かれてぐんぐん引き寄せられて後ろに下がる。

 見上げると飛鷹さんの顔、私の後ろに居た何かを睨みつけている。

 強い意志を感じる瞳。

 

 ちらりと目が合った。

「山城、大丈夫か」

 

「あ、う、はい。お陰様で」

 

「そいつは良かった。手を離す。後ろに下がってくれ」

 

「りょ、了解です」

 飛鷹さんの手が離れ、一歩飛鷹さんが進み出る。

 

「知恵が回ると思っていたが、ここまで賢いとはな」

 

 飛鷹さんが睨むその先に居たのは、人より二回りぐらい大きな人型の荒魂。ヒョロリと長い手足に犬のような頭部。手足の先は大きく鋭い。

 

「その頭はアレか。山城の犬になりたいって意思表示か?」

 

 グルグルと荒魂が唸り声をあげる。

 飛鷹さんを牽制するように威嚇して一歩下がると、荒魂は胸に腕を突っ込み、二本の錆びた刀を自分の身体から引き抜いた。

 

「赤羽刀…。そんなものまで拾っていたのか」

 

 大きな腕に不釣り合いな二本の刀を両手に持って荒魂が無骨ながら構えのような形で動きを止める。

 

 それに合わせ飛鷹さんが御刀を低く振りかぶる。

 中段、脇構え

 

「生憎だが二刀流にはちょっと煩いぞ。俺は」

 




赤羽刀
荒魂の体内から稀に出てくる錆びた御刀
名前の由来はこの刀が初めて発見された場所が赤羽市だったから。


山城編?偽神刀編?とにかくこのお話終わったらもっとキャラを立てたお話を書きますのでどうかご容赦ください。
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