現在、色々あって創作に手が回りません。
今しばらくお待ちを
刈り取られた芝の発するむせるような緑の香り
喉を突く生焼けた草の白煙
青々とした芝生の上で朱色の剣闘は続く。
オォォォォォン
手足の長い犬面の人型荒魂が赤羽刀を豪快に振り下ろす
赤羽刀は錆びた刀ゆえ切れ味は無いに等しい。
だが珠鋼の『絶対に折れず曲がらない特性』は残されており荒魂の腕力と合わさって、その威力は力技で車を両断するほど。
ギシィ
その一撃を燃える刀が受け止めた。
刀を支える恭侍の黒く染めていた髪が白く塗り替えられ、瞳が赤く輝く。
恭侍の所持する偽神刀一号『
その刀が放つ負の神気を恭侍は体内のノロを通じて制御し、身体能力を向上させていた。
刀同士が擦り合い、火を噴く偽神刀が荒魂の赤羽刀を斜めに受け流す。
荒魂は二刀、すぐさま次の一刀が迫る。しかし恭侍はそれを紙一重で躱しカウンターを決めてみせた。
胴一閃
完璧に決まっていたが、荒魂の胴体には偽神刀が収まっているため両断には至らない。
恭侍はそのままテコの原理で横っ飛び、荒魂の横につくが、荒魂も二刀の手数の利を活かして逃げきる事を許さない。
極至近距離
互いに怯まず剣を交わす
荒魂の身のこなしは軽く、その剣は、獣の剣にしてはずいぶんと立派な理合が握られていた。
噛み付くように執拗に伸びる剣閃
「お前、ずいぶんと剣術が上手いな」
だが弾く
恭侍はそう感心するが、荒魂の剣を掠らせはしない。
どこか見覚え、馴染みのある剣。
なんとなく先が読めるからか尚更に、恭侍の顔は涼しげだ。
ゴゥゴゥ
と荒魂の持つ赤羽刀が風を切る。
ごぅごぅ
と恭侍の持つ偽神刀が炎を吐く。
二刀、速く、重く
一刀、素早く、鋭く
剣が交錯し、荒魂が踏み込み、その分だけ恭侍が引く。
一合
剣が噛み合った瞬間、恭侍の剣がするりと抜けて跳ね上がり、荒魂の顔に傷がつく。
あまりに読みが噛み合いすぎるせいで恭侍は気付いた。
「俺の剣を覚えたのか」
偽神刀の運用実験は主に恭侍がやっていた。
その時使っていた剣の理合を荒魂は真似ていたのだ。
刀がすれ違う。
恭侍の剣が荒魂の前を過ぎ去り、荒魂の振り下ろされた剣が芝生を刻む。
炎の余韻が荒魂をちろりと舐め上げる
荒魂の胸元でパクリと傷口が開いた。
荒魂は吠え、刀を振り上げ恭侍を追い払い、場を仕切り直す。
犬面の人型荒魂の身体には既にいくつもの刀傷が刻まれていた。
偽神刀が剣術を多少見取っていたとしても、本物には、恭侍には及ばないと言う事実がそこには有った。
散ったノロが朝露のように芝生を煌めかせていた。
通常の荒魂ならば、もうとっくの昔にノロに還ってしまうほどのダメージ。
しかし偽神刀という核を持つが故に頑丈さが向上した荒魂はすぐさま恭侍に襲いかかる。
再び背を見せるほどに振りかぶる腕
見えるのは一際深く刻まれ今もノロを滲ませる背中の刀傷。
それは一見消極的に見える恭侍を置いて、
────
恭侍が引き空けた間合い、荒魂はなおも強く踏み込み振り抜く。
順を追っての左右二段の薙切り
恭侍はトンと飛んで射程から逃れ、振るわれた二刀の一撃は成木をバツリと両断し切り倒した。
「膂力だけなら花丸もんだが」
怖くは──ない
二閃
次いで一合
避けて
斬りつけて
次いで──
次いで──
大振りに、それでいて素早く連続して振り抜かれる二刀
だが恭侍はそのことごとくを躱し捌く。
いつぞやの折神紫との
荒魂の振るう刀は、なおも恐ろしい風切り音を発する、しかし風は切れても、恭侍の顔色を変えることすら叶わない。
──コイツ、荒魂のくせに剣が人臭いな
そんな思考を巡らせる余裕まである。
恭侍の優勢は
それでも恭侍が踏み込まないのは、人型とはいえ相手が荒魂であるがゆえ。
その気になれば、荒魂は関節など無視して、腕を、腰を、脚を、360度回転させて奇襲できるからだ。
人の形をしているからと高を括る気はなかった。
──けどこの荒魂は
恭侍が刀を大きく薙いで隙を見せる。
大きな予備動作
勿論、ただの隙ではない。
荒魂が人体構造を無視すれば隙になる
──かもしれない誘いの一手。
しかも阻止できなければ恭侍の痛烈な一撃が飛んでくる二段構え。
──どう出るか
恭侍は期待とも取れる目で、荒魂の崩れた体勢がどうなるか見定める。
右手、左手、両足、胴、頭部
しかし、荒魂の動きはどこも人体の限界を超えないまま
──なるほど
次の一手も恭侍が先んじた。
大振りの返し、更に強い一閃が荒魂の片腕を切り飛ばす。
荒魂が恭侍の誘いを見切ったのか
否
ただ避けきれなかっただけ
──お前は人の姿に拘っているんだな
苦し紛れではなく意思を持って、荒魂が残った赤羽刀を振るう。
縦斬り
身を半身にして躱す
〆の字を描くようにキュンと刃先が跳ね上がり、流れるように横薙ぎに繋がる
恭侍は迫る刀を高くカチ上げる。
同時に荒魂の体勢も上に崩れて浮き足立った。
そしてその時
ドン
と
恭侍が初めて踏み込んだ。
刀の炎が腕を呑み、肌を燃やしてしまいそうなほどに一層燃え上がる。
荒魂の脇を抜け、背中を取る。
身を翻し、刀は天高く
両腕でしっかりと掴む
大上段の構え
その姿は介錯人のよう
『神居』
『──破山』
────
恭侍の刀が地をえぐる
火炎が刀から地面に伝わって じゅわり と広がり周囲を黒く焦がす。
炎のカーテンが一瞬だけ1人と一匹を覆い隠し、炎が消えた頃には荒魂の首が無くなっていた。
刀は荒魂の頸部を通り抜けていた。
犬の頭が
コロリと転がり
芝生に琥珀色の水たまりを作った。
荒魂がガクンと膝をつく。
その切断された首の断面からは偽神刀の柄が見えていた。
「お前を使ってやれる奴はいないんだ」
荒魂の身体から力が抜けてへたり込む。
人型を模していたノロが溶岩のようにドロドロと溶け始める。
未練がましく、ゆっくりと
ほんの一瞬、ノロの溶解が逆流しかけたが、それも一瞬。
すぐに押し流され、どろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろどろ と
最後に溶け落ちたアイスのような橙色の小山が残った。
その中心には地に突き立った偽神刀
恭侍はランランと赤く輝く瞳をぐりぐりとまぶたの上からこねて光を治めると、緋色から徐々に輝きを失い赤錆色に戻る偽神刀を手に取り、空にかかげる。
恭侍の刀の形をした荒魂のような偽神刀とは違う、少しだけ赤みがかった刀身が日差しを遮った。
「山城、鞘を持ってきてくれ」
──これにて一件落着か
転がった八ツ橋がほんのりと甘い香りを運んだ。
◇◇◇
──────
────
──
さてさて、今回の事件の顛末を語るとしよう。
まず、偽神刀の暴走について
これは紫様がただの実験の失敗として、責任問題については不問としてくれた。
つまりお咎め無し。
まぁ、紫様は元々こうなる事が分かっていたんだと思う。
正体が正体だけに荒魂関係のことであの人に分からない事は無いだろう。その上でこうして事件を起こさせる理由は単純。
あの人は見た目に似合わずイベントが好きなのだ。
まったく、それならテレビでも見てれば良いのに(見れる時間が有るかは知らないけど)
ま、とにかくだ。
紫様は面白いモノが見られたとご満悦
アルカイックスマイルで研究員たちを虜にしたのち、悠々と東京へ帰っていった
ご機嫌麗しゅうて良うござんしたねぇ、まったく
──
残念ながら、今回暴走した偽神刀2号は折神家直轄の寺社に奉納されることになってしまった。
彼がそれで満足するかと言えばしないだろうが、現状管理者が居ないため眠ってもらう他無い。
はたして彼が主を得る時は来るのだろうか
それは紫様にも分からないが、
とりあえずあの刀は、次に人に使ってもらう時までに侵食癖を直しておくべきだろう。
──
高田博士は今回の一件によって、現在の京都特異災害研究所から異動することになった。
左遷と噂されているけど、実際は転属どころかワンチャン栄転の類いだったりする。
荒魂技術の研究者として優秀な彼は、これから鎌府女学院の極秘の荒魂研究に関わることになるのだ。
──
で、蚊帳の外で派手にやらかされた本間博士は今回の件を受けて意気消沈……
すると思いきや、いずれこうなる日が来ると思っていたらしく、きっぱり開き直って今日も鉄札の研究に励んでいる。
鉄札の研究費用も紫様の温情で微増という結果に終わり、一安心といった所。
──
山城は反省文とトイレ掃除1週間。
随分と古風な罰だが、思っていたよりさらに軽くて、ちょっと驚いたのは内緒の話。
相楽学長の甘さが光る。
──
そして俺は紫様からお褒めの言葉と金一封を貰った。
以上
……うんまぁ、それだけ
俺に関してはほぼ通常業務だったし、ちょっとボーナス貰えただけ儲けものだ。そもそも金貰っても使い所が無いしな。
──────
────
──
早朝
食堂
「飛鷹さん、結局あたしってなんで荒魂に襲われたんですかね?」
そう疑問を俺に投げつけながら、今日の日替わり定食のチキン南蛮をパクつく山城。
甘酸っぱい匂いが食欲をそそるが、今日の俺はもっとガッツリとした気分。
目の前にあるのはソースカツ丼に、マヨにラー油に追いソースのカツ丼お好み焼き味。
当然、店ではこんなことできないし、出張が多い関係上、コンビニ飯かパン食がデフォルトな俺にとって、学食のセルフ調味料はジャンクな和食を食べるためのオアシスなのだ。
まぁ、味は良いものの見てくれは悪いので、人が多い時間帯はやらない。TPOは弁えているつもりだ。
「飛鷹さん?」
「──あぁ、少し考え事をしていた」
「ああ、今回の件はアタシが知らない所でいろいろと混み合った事情があったでしょうし、仕方ないですね」
飯である
「ま──そんな所だ。で、山城が荒魂に襲われた理由だったか」
「はい!」
「ふむ、そうだな──その前に一つ聞きたいんだけど、山城、お前偽神刀の実験を始める前に何を考えてた?」
「え? えっと──あー……その、偽神刀っていうよく分からない剣に触るのは怖かったんですけど、でも『未久のために頑張らないと!」て。ちょっと勇気を出して……て、えへへ。……何恥ずかしいこと言わせるんですか!?」
「どぅどぅ、全然恥ずかしくないぞ。山城の志は実に立派だ。立派すぎて俺と相楽学長の首が飛びかけるぐらい立派だ」
「あぅ、すいません」
「ま、その話は置いといて。山城が荒魂に襲われた理由は簡単『偽神刀が山城を気に入った』それだけのことだ」
ザクザクとトンカツを頬張り、米をかきこむ。
サクサク衣にキャベツのシャキシャキ、そしてとっぷり絡むソースマヨ。実にべったりとした味のソースカツ丼。
たまに食べたくなるこの味。
ふんわり卵とじのカツ丼も、じくじくにソースに漬けた味噌カツ丼も悪くないが、このザクザクとした食感とソースのパンチによるジャンクフードにも似た美味しいけど身体に悪い感じが最高だ。
「それってどういうことですか?」
「御刀は持ち主を選ぶ、荒魂には意思がある。なら偽神刀にも持ち主を選ぶ意思ぐらい有るに決まってる」
お味噌汁
小さいがシジミ入り。
このシジミが入っている時の味噌汁の風味が好きなんだ。
豆腐ワカメは味気ない。なめこは好きだけど。
「な、なるほど。でもどうしてアタシなんて」
「どうしてって」
御刀はロリコンだから偽神刀もロリコンなんじゃねぇか?
──とは言えないな
「山城が妹ちゃんのために自分を使ったのが偽神刀の琴線に触れたんだろうな」
きゅうりのしば漬け
キュッと酸っぱい感じとぽりぽりとした食感が重たいカツ丼の味を洗い流してくれる。
「え」
「『山城ちゃん健気で可愛い! むさ苦しい男に使われるより山城ちゃんに使って欲しいー』って偽神刀が思ったんだよ」
「御刀がそんなこと考えるんですか?」
「さぁ? ただ人を判別できる以上、知性はあるだろう」
──隣の芝は青く見えて、庭の花は赤く見えるモノ。
荒魂──ノロの根源的に抱く感情は喪失感。
いわゆる『寂しさ』だ。
「物に心があるのなら、寂しい時だってあるだろうさ。そんな時には暑苦しい男より可愛い女の子に慰めてもらいたいと思うのはある意味当然とも言える」
荒魂としての喪失感を抱えたままの偽神刀は、妹想いの山城なら、自分も受け止めてもらえるかもしれないと考えたのかもしれない。
ま、その姿ははたから見たら、知り合いの小学生にシャアしようとするただのストーカーでしかない訳で。
この結果は必然と言えるだろう。
「──」
「……ん? どうした」
「いやー、飛鷹さんってお世辞が上手だなぁって」
「世辞じゃない。山城は十分可愛い。背筋が良いし、清潔感があって──」
「いいですいいです! 言わなくて!」
「い──そうか」
「もー、そういうのはもっと可愛い子に言うべきですよ! たとえば──ほら、燕さんとか」
「結芽は褒めてあげないと拗ねるからな」
「デフォルトなんですか!?」
「まぁー、女の子を褒めるのも男の仕事みたいな所あるだろ」
「──はー、いつか刺されても知りませんよ」
「刺されるぐらいで許してくれるなら、俺は刺されても良い」
「あー!うわー! 私もこんな事言ってみたい! 女の子にキザな言葉言ってドキドキさせたーい!!」
とりあえず、字数を戦闘シーンと説明で稼ぐやつ。
敬愛する西尾維新先生なら、この話のプロットで1話ぐらい作れるだろうに。
ーーそんな事よりヤンデレ書けよお前
ですよね。
《用語》
偽神刀の炎
炎の呼吸!壱ノ型!ーー
神気をエネルギー変換した時に発生する熱くない火
実際には派手でカッコいいだけで、目眩し程度にしか役に立たないただのエフェクト。リスペクトと言おう。
神居・破山
神居は御刀に神気を纏う技
破山は技術名
鬼滅風味に言うと「神居の呼吸 弍の型 破山」
大上段から正中線上を真っ直ぐ振り下ろす「切り落とし」と呼ばれる技で、左右均等に力強く振り下ろす事で生半可な打ち込みを押し返して面に剣を叩き込める。
エフェクトは水の呼吸滝壺に近い
ヤンデレを書かねば…
もっとストーリーとか考えないで…