雛鳥と籠の鷹   作:筆折ルマンド

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孤高の片鱗 〈衛藤可奈美〉

 剣術が好き。

 

 誰よりも何よりも私は剣術が大好きだ。

 

 相手の一太刀一太刀に込められた想い。勝つために一太刀一太刀に秘めた思い。それを見て聞いて感じて自分の一刀に答えを乗せて返す。

 その繰り返し。

 

 立ち合いは対話だ。

 

 剣術でならどんな人とだって分かり合える。

 一度立ち合えばその人がどんな人か分かる。

 

 相手が剣術をどう思っているのか、その向こうにあるその人の本心さえも、剣は教えてくれる。

 

 強く攻めてくる人は、私の実力に期待してくるような向上心が強い人だったり、はたまた剣術そのものはそんなに好きじゃないけど、相手と激しくぶつかり合うのが好きな人だったりする。

 反対に絶対に先手を取らない人は、とにかく慎重派な人のこともあれば、後の先には絶対の自信があるって感じの自分の得意不得意をハッキリと理解してる人だったり。

 

 そういう、人それぞれの剣を知るのが、私は最高に楽しいって思う! 

 

 ……

 

 それなのに

 

 それなのにどうして最近、剣術がつまらないんだろう。

 

 

 ◇◇◇

 

 師範に言われて、高校生の先輩と対戦した。いつもは同年代の子だけとしか立ち合えなかったから、師範のその提案は本当に嬉しかった。

 

 先輩の剣は早くて、重くて、キチンと先の先まで考えて打ってきてて、先輩の思い通りにならないようにいなすのはとっても難しくて大変だったけど、とっても楽しかった。

 

 ────

 

 袋竹刀が鍔迫り、頰を掠める。

 

 もっと、もっと

 

 先輩の本気はそんなものじゃないはず! 

 

 まだ、隠し球があるんですよね! 

 

 まだまだ! 試合は始まったばかりですよ! 

 

 新しい技を、もっと鋭い突きを、もっと早い太刀を! 

 

 もっと

 

 もっと! 

 

「もう嫌!」

 

 ……え? 

 

「勝者 衛藤」

 

 え? 

 

「おめでとう! 可奈美!」

 

 私は……まだ……

 

満足してないよ……

 

 

 ◇◇◇

 

「勝者 衛藤」

 

「やっぱり可奈美は強いね!」

 

「うん、ありがとう」

 

 ──

 

「勝者 衛藤」

 

「くーっ、ダメだったかー」

 

「あそこは無理に攻めちゃダメだよー」

 

 ◇◇◇

 

 高校生の先輩と立ち合いをした次の日、私は師範に呼び出された。

 他の子に聞かせにくい話なのか、道場の奥の畳部屋。

 

 部屋に入った私を正座をした師範がジロリと睨め付ける。

 怒ってるわけじゃないし、ただ来た私に目線を向けただけなんだろうけど、やっぱりちょっと怖い。

 

「衛藤さん。貴女には切磋琢磨する友が必要です」

 

「友? 友達なら、この道場に」

 

 師範が苦々しげな顔をした。

 え? 私何か悪いこと言ったかな。

 

()()()()()ではなく、高め合う好敵手が、今の貴女には必要なのです。……貴女も、その事に気付いているはずです」

 

 私は師範の言葉に驚いた。

 いつも門下生のみんなに優しい師範が、こんな明確に人を貶す……、じゃない。貶める……。酷い事を言ったのは初めてだったから。

 

 そりゃあ。うん。たしかに、みんなは単純な剣術の腕はまだまだかもしれないけど、でも私は、友達として、みんなの事を悪く言わないでって、たとえ相手が師範でも言うべきで

 

「──」

 口が金魚のようにパクパクと動く──言葉は何も出なかった。

 

 ……それなのに私は黙ってしまった。

 ──うなずきかけてしまった。

 

 俯く私に先生が哀しそうな顔をする。

 分かってるって顔。……そんな顔しないでよ。

 

 

 最近のみんなは同じ剣をするようになっていた。

 

 私に何かを見せるんじゃなくて、私の剣を知ろうとする剣。

 それ自体はいいんだけどね。その事自体は。

 

 問題は、その後が無いということ。

 

 私に勝つために私を知ろうとしてるんじゃなくて、強くなるためにまず私を知ろうとしてる。

 ぶつけるものも無く、ただ私に剣を教わりに来てる事が問題なんだ。

 

 私がやりたい立ち合いは、互いの想いを練り上げた剣技をぶつけあって相手の剣を学んで、もっともっと強くなる事なのに、最近はそういう、言っちゃ悪いけど、心が踊るような立ち合いができていない。

 勝つのは必定。現実の相手が空想や夢の相手よりも弱くなっているのが真実だった。

 

 でも、でもさ。

 

 だからって、友達を弱いからいらないなんて言えないよ。

 だって、みんな本当にいい子たちなんだよ。私の練習に付き合ってくれるし、練習の帰りには一緒に遊ぶし、流行りのスイーツとか教えてくれるし。

 

「貴女に会わせたい人がいます。折神家から来た天然理心流の飛鷹恭侍さん。在籍している綾小路武芸学舎では()使()()()()()一二を争う実力を持つそうですよ。立ち合いも了承してくださいました」

 

 瞬間、私の頭から友達の事がスコーンと落っこちた。

 

「本当ですか!?」

 天然理心流! 

 千変万化臨機応変を極意とする幕末、新撰組の隊長筋の多くが使用したとされる剣術! 柳生新陰流において突きは死に太刀。次の剣を考えない最後の太刀であるのに対して、天然理心流の突きは如何に避け辛い突きを出しつつ次に繋げられるかを考えて作られていて、有名な平突きは、突きの後に横なぎに派生できるという利点がある。他に有名な技と言えば、やっぱり沖田総司の三段突きとも呼ばれる無明剣! あ! もしかしてその人も使えたりするのかな!? 

 

 師範がコホンと咳をした。

 ぽーんと飛んでた思考が現実に引き戻される。

 師範はさっきとは逆に、なんだか面白いモノを見るような目で私を見つめていた。

「……衛藤さん。素振りは道場でやってくださいね」

 

 師範の冷ややかな声。いつのまにか手に握られていた袋竹刀。

 

 い、いつのまに!? 

 

「あ! しっ、失礼しました!」

 

 素早く、それでいて極力音を立てないように畳の上を足を滑らせるように歩いて、私は部屋を後にした。

 やりたい事とやるだけの元気がもりもり湧いてきて居ても立っても居られなかった。

 今日は久しぶりにいい鍛錬ができる予感がした。

 




愛量
愛=100<病み
薫 160
エレン ???
可奈美 0
結芽 ???

衛藤可奈美
原作開始時点中等部2年(現在小学生6年生)
血筋うんぬん、強化うんぬんを全て剣術の腕一本で蹴散らした、一度見た技を完コピしたり、一番の危機が前期opだったとか言われる最強の主人公。
性格は、明るく快活で純情一途。その実、感情を溜め込むタイプ。
ヤンデレとしての特性
どこでも一緒が良い。一緒なら多少あっちこっち行っても良いよ。といった弱束縛タイプ(初期値)
嘘に対しては必ず見抜き問い詰めてくる。当然嘘を重ねたら死ぬ。

[本日の(人聞きが悪い)あらすじ]
衛藤可奈美は欲求不満。
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