毎週月曜日のサム8を楽しもう!
そう、彼は、生まれた時からサムライ8そのものだった。
理屈は分からぬ。
だが、存在そのものがサムライ8そのものだった。
輪廻転生の輪の中に存在した『サムライ8』そのものが人間に転生した―――それ以外の説明は成り立つまい。
ありえないと思う人間も居るだろうが、この世界に絶対はない。
彼はサムライ8であり、サムライ8が彼。
そうとも言えるし、そうでもないとも言える。
作品を読む側がそれを"読む"レベルに達していなければ理解はできない。
この世界に完璧なものなどなく、完璧でなかった『鬼滅の刃の世界』は、『サムライ8』を加えることで『完璧』となった……そういうことだった。
夜明け前、ほのかに空が明るくなる頃。
"その男"は、二人の男と相対していた。
相対する二人の男の名は産屋敷耀哉、不死川実弥。
片や、人を食らう鬼を狩る集団、鬼殺隊のトップである産屋敷。
片や、鬼殺隊の戦闘者の頂点、最強の鬼狩り『柱』の一人である不死川。
不死川は今この近辺に居た唯一の人間として産屋敷の警護にあたっていたが、"その男"は産屋敷にとっても不死川にとっても味方であったため、その場に警戒の空気は無かった。
ただ、不死川が嫌そうな顔をし、産屋敷が優しげな微笑みを浮かべ、その男を見る二人の表情が対照的なことが印象的であった。
「八八、私が言いたいことは分かるね?」
「勿論だ、やっとらしくなってきたな」
「はは、何がだい?」
男の名は、
彼もまた鬼殺隊士の一人であったが、産屋敷より高い位置に自分の頭が来ないように跪いている不死川のような礼節を、上司の産屋敷に向けているようには全く見えない。
産屋敷は笑って流すが、不死川は突っかかった。
「おい八八テメェ、お館様の御前だろうがよォ、礼儀作法ってもんを知らねえのか?」
「お館様は爆発して死ぬのに? 意味ないよ」
「八八ィ! お館様が爆発して死ぬわけねえだろォが!」
「そうとも言えるし、そうでもないとも言える」
「はぐらかすな!」
「この世に絶対はない」
「ぶっ殺すぞ……? 第一それがお館様に対する口のきき方かァ!」
「実弥、いいんだ。構わないよ。八八はこういう子だからね」
ふふふと笑って流す産屋敷。キレ散らかす不死川。したり顔の八八。
ストレスを溜め込むのは不死川だけだった。
「合同の任務に失敗したらしいね。
死者は出なかったらしいが、八八にしては珍しい。
君の口から事情を聞きたいんだ。
断片的に聞いた話からも、君が悪いとは思えない。死人も出なかったようだし」
「アレ? 言ってなかったか」
「テメェが今日お館様の前に顔出したのは今が初だろうがァ」
「だが不死八」
「誰が不死八だァ誰が!」
「実弥。寛容に、寛容にね」
「その説明をする前に煉獄家に行った時のことを理解する必要がある。
少し長くなるぞ。
これは拙者が煉獄家に行き、始まりの呼吸の剣士について調べていた時のことだ……」
「お館様ァ……俺は怒りで鬼になりそうです……!」
「始まりの剣士曰く、
『兄上の剣術のノウハウを全部ブチ込んでいるので、
順当にいけば兄上を超える剣士の呼吸になるはず!』
『おおおおおっ!!』
『縁壱……』
伝承の書にはそんな会話が書かれていた……お前もいずれ分かる時が来よう」
「今分かるように話せや!」
「分かるように話すかはオレが決めることにするよ」
「……」
不死川の手が、腰に携えられた剣に添えられ、チャキッと音が鳴る。
八八が格好つけて指の骨をコキ……と鳴らす。
微笑む産屋敷が笑顔のまま手振りで、二人の挑発合戦を止めた。
「順を追って説明しよう。拙者、不死八の中に勇を見た」
「どこから順を追って説明する気だテメェ! 結論から言え!」
「拙者、人混みの中に鬼舞辻を見た」
「お……おゥ?」
「義を見てせざるは勇なきなり。
鬼舞辻無惨を殺すのが鬼殺隊の義……
拙者の目は心眼。
大切なものは目に見えぬもの也。
枯れ木となった地上の木ではなく地中の活力ある根を見る。
その本質を見る目こそが心眼と言える。
上っ面だけで本質は見えぬ。
だからこそ鬼舞辻を見つけられたと言える。
大切なものは目に見えるところには無いのだ不死八。
まやかしに惑わされ真なる敵を見逃してしまうがゆえに、眼はあれど見る目はなく……」
「その鬱陶しい語りを今すぐやめて話を進めろォ!」
「八八は禅問答が好きだね。でも実弥が怒るから、話を進めてくれると嬉しい」
それは、大変な戦いであったらしい。
らしい、というのは、八八の言い回しが面倒臭く迂遠でややこしく余計な装飾と説明に飾られていたため、不死川が理解するのにそこそこの時間を要したからだ。
『柱』こそ居なかったものの、鬼殺隊の剣士十数人を巻き込んだ、街中での戦闘。
鬼舞辻無惨は一般市民を巻き込むことを一切厭わず、死人が出なかったことが奇跡……と、産屋敷の手元まで報告が上がって来ている。
一般人の負傷者が数人、死者が0。鬼殺隊も死人は0。
だがそのせいか、鬼殺隊の怨敵・鬼舞辻無惨には逃げられてしまったらしい。
産屋敷が聞きたかったのは、その戦いで最も前に出て、誰も死なせなかったというこの男―――階級・甲、
「鬼舞辻は言った。
『私の全力の攻撃を全てかわしているのか?』
拙者はこう答えた。
『半分は当たっている。体が痛い』と。痛かった」
「全然かわせてねえじゃねぇか」
参考になるようなならないような話に、産屋敷が苦笑する。
「つーか取り逃がしてんじゃねぇよ、きっちり鬼舞辻ぶっ殺せってんだこのアホが」
「全部当たっている、耳が痛い。まだまだ鍛錬が足らぬ」
「仲間を誰も死なせず情報を持ち帰って来れただけでよしとしよう。
よく生きて帰って来てくれたね、八八。少し休むと良い。……最低でも、体が治るまでは」
「御意。不死八、お前は物事を焦りすぎる」
「オイ今なんで唐突に俺を煽った?」
「鬼舞辻無惨は強敵で御座った。拙者一人ではまだ勝てぬ」
そして八八は、自分の頭部でリフティングを始めた。
「よって拙者、無事だった腰から下の肉体に頭を乗せて、ここまで走って来たという次第だ」
「大変だったね八八。でもよく情報を持ち帰って来てくれた、ゆっくり休んでほしい」
「お前鬼よかモンスターじゃねえのかァ?」
サムライ8世界におけるサムライ―――それすなわち、サイボーグ。
首を切ろうが、全身を灰にしようが死にはしない。
鬼舞辻無惨にバラバラにされながらも仲間と市民を守りきった男は、切り飛ばされた頭を切り飛ばされた腰の上に乗せ、足と頭だけで走って帰り、産屋敷に報告を行っていた。
八八を怪物として扱うことなく、消耗しすぎで回復が遅くなっている八八を気遣い、産屋敷は休息を命じた。
物語は、戦いの終わりより始まる。
これは、サムライ8が鬼滅の刃を超える物語。
一石二鳥
鬼滅とサム8いっぺんに書いてみていースか? 師匠