世の中、よくわからないことが突如自分の身に降りかかるなんてことがある。
ある人は交通事故、ある人は眠ったら、ある人は扉を潜ると…「あなたは死にました!さぁ転生しましょう」とか言われるのだろうか。
小説とかマンガとか、アニメとか…まぉ創作物にも流行り廃りがあるが、いまってそんな感じ?
でも、これは、良くあることなのだろうか…。
(なにこれ、なにこれ、なに、え?え??)
まさに混乱。
でも、目の前に広がる狂気にSAN値が削られてるのはわかる。
(いきなり真っ黒触手っぽい腕が後ろから何本も羽交い締めしてきて、真っ暗ななかをぐるぐるかき回されて、頭おかしくなりそうっておもって…)
そう、「わたし」はただ歩いていた。
別に人が少ない夜道だったわけでもなく、会社帰りとかで疲れきったみたいなこともなく、ただショッピングを一人で楽しんでただけだった。
ショッピングモールを歩いてたんだ、休日だったし子供連れの親子とか、カップルとかもその辺にいっぱいいた。なのに、いきなり世界が止まった、と思った瞬間後ろから、そう、声が聞こえて…。
(そうだ、みつけたって…)
まるで、おもちゃを見つけたみたいな気軽な声で、ついでとばかりに、あ、それもいれちゃえ…てきな気軽さで。声を聞いてすぐ、真っ黒な手が腕とか腰とか足とかに絡み付いて後ろに引っ張られて…。
どのくらい時間がたったのかわからない。
でも、目をつむっていたことに気がついたから、そうっと目を開けたら、目の前がホラーでした。
真っ暗な和室、血痕が飛び散ってて、なぜか何振りもの折れたり壊れたりしている刀が転がってて、目の前に濁った目をしたひょろっとした男性が立っていた。
「……………」
なにか、ぶつぶつと言葉を発しているが、なぜか聞き取れない。
水の膜におおわれたみたいに音が濁っていて。
そして、ついにその男性と目があった。
(ヒッ)
こわい。
ギョロっとした真っ黒な目。狂気に渦巻いている目がなめ回すようにこちらをみた。そして嗤う。嗤う。ニンマリしたゾッとするような笑みだった。
「………!……………!!」
(なに、わからない…だれ、やだ、こわい、こわい!)
恐怖を感じているのに、なぜか身体は動かない。
まだあの黒い腕が巻き付いているのか、ぺたりと座り込んでしまっている状態から身動ぎひとつできなかった。
ただ上から眺め回す男性の目がこわい。
ひたすらなにかを叫んで、嗤って、そして…
(え………)
男性は近くに落ちていた刀を自分の首に向けて、そしてこちらを見つめながら…
「アイシテイル、ツルマル」
切り落とした。
吹き出す血飛沫、黒の世界に拡がるあか。
パチンとシャボン玉が割れたかのように音が戻ったときに囁かれた言葉。
それは「わたし」に、鶴丸国永に呪いの言葉を贈って逝った。
記憶が混濁する、鶴丸国永とはだれだ?
「わたし」だ。
わたしはだれだ?
「鶴丸国永」に混ざった「わたし」だ。
わたしはなんだ?
彼はだれだ?
ここはなんだ?
あの赤は、なんだ?
どさりと崩れ落ちた彼は、
「わたし」になにをした?
こんなとき、主人公になったものは、状況把握のために動き出すのか。
それとも、気を失うのか。
悲鳴をあげるのか。
わたしはただ、呆然と目の前に広がる惨劇を見ていただけだった。