ちょっと視点変更するだけで何話使うのか…
昨日は、ここ本丸の主であるシキがブラック本丸へ突入するということで、刀剣達はみんないつ帰宅するか、傷は負っていないかと心配をしていた。
そんな刀剣はここにも。
加州清光は同室の大和守安定にため息を吐いていた。
「そんなに心配しなくっても、主なら大丈夫だよ」
主であるシキは安定が来る前も何度かブラック本丸への潜入、戦闘、捕獲、救出などを数度熟している。
だが、安定は初めてのことなので心配なのはわかるが、いつまでも障子を開けっ放しで外を眺め続ける相棒に布団に寝そべりながらあくびをする。
「清光は心配じゃないの?」
「そーね…うちの主なら大丈夫だって、山姥切とかと一緒だし」
初期刀であり、最古参組がついていっていることも、清光を安心させていた。
それに昔は清光も心配して玄関で一晩待ってたりしてたものだ。
だが、数をこなせば慣れが出てくる。
たとえ、黒い刀剣を持ち帰ろうが、真夜中までかかろうが、毎回誰も傷一つなくけろっと帰ってくるのだ。
そして玄関で待っている刀剣に「まだ起きていたのか」なんて言われちゃ、なんだか心配を通り越してしまう。
そう、顕現して日の短い刀剣程、心配して起き続け寝不足になり、だんだんとなれ、まぁあの主だし大丈夫か…という結論に行きつくあたりでこの本丸に染まった古参と呼ばれるようになるのだった。
清光は初期刀ではないが、比較的初期時代に顕現した刀なのだ。
「今回は審神者の捕縛と刀剣の救助でしょ?敵が人間なら主だけでも大丈夫なくらいだ」
「えー、そこまでいう?…うーん、確かに刀剣が敵に回らないなら本丸で攻撃してくる存在もいないだろうけどさぁ」
「そこまでいーうーのー。だからさっさと寝て、明日朝一で主のところに挨拶しに行くのが正解ってこと」
「でも…」
まだ渋る安定に苦笑いしながら、俺は寝るからねーと電気を消した。
月明りだけが部屋に差し込む形となり、外を眺めていた安定もため息をついてようやく障子を閉めて部屋へと退散した。
朝になり、早々に起き上がり身支度を始める。
さっさと眠りについた清光も、なにもまったく心配していないわけではなかった。
眠りが浅かったのか、まだ眠たそうな安定を横目に、今回はどんな感じだったのかと鏡で髪を整えながら考える。
(前回は放置本丸で、刀剣も殺伐としていたみたいだけど…)
「清光、布団畳んじゃうよー」
「ん?あぁよろしくー」
布団を畳む安定、そして安定の爆発した頭を見てため息をついた。
「ちょっとー、いまから主のところ行くんだから髪なんとかしてよー?」
「え、わっ」
乱れた髪をくしでとかして、再度結わいなおす清光に、ありがとと安定が礼を言った。
「よし、それじゃ様子見にでもいきますかー」
「うん」
部屋を少し片づけてから、主の部屋へと向かう。
ブラック本丸へ行った後は、寝ずに後処理をしていることが多いため、審神者部屋と呼ばれる仕事部屋へと二人は向った。
案の定審神者部屋がにぎわっていた。
といっても朝早いこともあり、すし詰め状態になるわけではなかったが。
「あーるーじー、おかえり。今回はどうだったのー?」
「あぁ、加州か。毎回朝からありがとうな、ケガはない」
「僕もいるよー、おはよ!心配してたんだから」
ひょっこりと空いてる部屋をのぞき込み軽く挨拶をする。
シキの様子はいつも通りだ。ただ、珍しい刀がそこにはいた。
「あれ、鶴丸?珍しいじゃん、どうしたの」
「おう、今回はちょっと驚きを提供してもらったからその挨拶だな」
「驚き?」
清光と安定は首をかしげる。
そこにいた黒い服の鶴丸はにやっと笑い、詳細は述べてくれない。
「2人ともおはよ!聞いてよー、シキさんったらすっごい美少女をお姫様抱っこしてお持ち帰りしてきたんだよー!」
「美少女?」
「お持ち帰り?」
まぁ、所謂刀剣女士ってやつなんだけどね。と、シキに湯呑みを渡しながら見習いが横から口をはさんだ。
「人聞きの悪い言い方は寄せ、主に失礼だぞ」
机に広がった書類をまとめながら、長谷部が見習いに苦言を言う。そんな様子を腕を組みながらニヤニヤしつつ、鶴丸は茶化している。
そんな時、新たなメンバーが顔を出した。
「おぅ、朝から集まってやがんな」
「おはようございます」
和泉守兼定が長い髪をそのまま流しており、なぜかいつも羽織っている浅葱色の羽織りがない状態で、相方の堀川国広とやってきた。
「おはよ。和泉守は昨日出陣だったんでしょ?早くない?」
「あー…まぁ、ちょっと今回は特別だな」
「特別って…女の子の刀剣の話?」
安定の疑問に首を縦に振った和泉守は、起きれる気がしなくて国広に引っ張られてきたとあくびをしながら眠たそうに告げた。
「もう、兼さんったら報告の順番が最後だからってずっと寝てるんだもん」
主さんは寝ないでやってるんだから、協力しなくちゃ!と堀川がいえば、「へぃへぃ」とけだるそうに返事を返す。
相変わらずお世話係やってるなぁと清光は口にしないで思う。
「それで、和泉守の報告で最後になるんだが?」
シキが声を発すればそれまでのんびりとした空気が引き締まり、眠そうにしていた和泉守もすっと表情をただした。
どさっと腰を下ろした和泉守。邪魔にならないように、清光や安定、堀川はその場を後にした。
なぜか、鶴丸はひらひらと手を振って、部屋の柱に背を預けたまま見送ってきた。
それを不思議に思いながら、堀川はやることがあるとそのまま別れ、2人はとりあえず朝食でも食べに行くかと食堂へ足を向けた時だった。
「2人とも、まってまってー」
声をかけたのは見習いである。
ぱたぱたとかけてきた彼女は清光たちに追いつくと口を開いた。
「2人とも、このあと時間ある?」
「とくに用事はないよ」
「朝食行こうってなってたくらいでまだ暇してるけどー」
「よかった!なら、ちょっと噂の美少女のとこに一緒に行かない?」
「は?」
「え?」
きょとんとした彼らを見て、内緒話をするように声を潜める見習い。
それに倣い、廊下の隅へと3人で寄っていく。
「実は昨日のブラック本丸で救出した子がその美少女なのね、結構今回は悲惨な現場だったらしくて…」
「保護できたのは、その刀一人だけ?」
「そう、シキさんが言うには審神者らしい人が折れた鶴丸国永で自殺したみたいで…その部屋に全身縛られた状態だったのがその美少女だったみたい…」
部屋の中にもいっぱいの鶴丸があったらしいんだけど、全部折れちゃってたんだって。
そんな話を聞いて、あぁだから鶴丸が報告を一緒に聞いても咎められなかったのかと頭の片隅で思う。
「ていうか、そもそも救出できたその美少女ってのはだれなのさ?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「そういえば聞いてない」
「すっごく綺麗な真っ白な髪の『鶴丸国永』ちゃん!」
ほんっと美人なんだよ!儚い系リアル美少女ってはじめてみた!と、興奮しながら話す見習いをみながら、どうする?と安定が視線を寄越す。
この短時間で何度「鶴丸」の名前がでたのやら。
そう思いながらも、好奇心は押さえられないので、結局は行くと見習いのあとについていくのだった。