わっ!驚いたかな?鶴丸国永(女性)参上!   作:玖渚真白

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白と黒のはじめまして

へし切長谷部という刀は、大差あれど主命を大事にする主の為になんでもやろうとする刀剣である。

といっても、この本丸にいる長谷部は多少冷めている部分があるのは否めない。

根本は同じであろうとも、主との関係性は本丸によりけりである。

 

「して、主はあの刀剣をどのようにするおつもりですか?」

「ん~…少し悩んでる、と言ったらどうする?」

「質問を質問で返さないでください」

 

あぁ、頭が痛いとわざとらしくため息をこぼした長谷部に対して、シキは慣れたように口角をあげながら机に向かっている。

審神者の仕事は基本的にデジタル化(3D化やらテクノロジー満載なのだが)していようが、いつの世も紙媒体というものは残り続けるものである。

質の良い紙の手ざわりを感じながら書面を確認する。

片手で紙を確認しつつ、宙に浮かぶいくつかの画面をスクロールしていく。

時折人差し指で入力部分を触り、勝手に入力が進む画面―――これは、脳で文字を構成し、人差し指から文字入力を流し込む技術であり、審神者であれば必須となるコミュニケーション能力の一つである。もちろん見習いはこの方法はできないところから始めるので、練習から始めるのだが―――今、シキが行っている作業は”情報収集”である。

審神者もある意味政府の役人と同じ公務員のようなものである。

そのため、情報収集や本丸の管理も含め戦略や報告なども審神者としては立派な仕事の一つである。

 

今回は上から依頼がありブラック本丸へ乗り込んだシキだったが、一振りのみの保護となった。

それも、聞いたことのない女性の鶴丸国永で、しかも状況が状況だった。

手入れを行っても消えない縄の跡。混沌といえる気配。堕ちているわけではないのにどこか気配が乱れている状態。

長いこと審神者を行っているシキでも聞いたことのない状態であった。

 

そういったわけで似た事象がないか、事例はないかと情報収集を行っているのだ。

そんな主の様子に、長谷部も手当時の様子を知っていることもあり、主の行動の先が読めないでいた。

現状、この本丸には「鶴丸国永」は存在する。

それは別のブラック本丸から来た黒い亜種ではあるが。

長谷部は主の後ろに座しているが、当たり前のように自分の背後の柱に背を預けながらにやにやしている鶴丸に何も思わないなんてことはない。

確実に今回の騒動が楽しくてしょうがないのだろうと予想しているが、二振り目の亜種を引き入れるのかは主の意思次第である。

 

「長谷部は、あの俺を受け入れちまっていいのかい?」

「…それはどういう意味で聞いているんだ」

「別に他意はないさ。変わり種であることには変わりないだろ?だが、ここまで政府から指示がないことも事実だ」

「俺は…足手まといにならないのなら構わん」

 

主の意思を一番に支持するのは当たり前だが。と、付け足して静かに話す長谷部に鶴丸は目を細めながらちらりと長谷部の背から「主」のシキへ視線を移した。

 

「と言っているが、実際問題鶴丸が増えることには賛成なのか?主」

「そうだな、最終的には本人次第…だが、解決しなくちゃいけないことがあることも確かだ」

 

畳に胡坐をかき、片足を立てた姿のシキは少し乱れた着物も気にせずそう言った。

そしてちらりと後ろの鶴丸へ振り返りその瞳を見つめる。

 

「あれを、お前はどう思っているんだ?」

「そうだなぁ、かわいい化け物といったところか」

 

黒いフードを被った彼は、その内側から覗く金色を弓なりに細めて楽し気に笑った。

 

「かわいい…ねぇ。好意的ではあるんだな」

「…っくく、ああ、気分が悪くなるもんでもないのは確かだな、良い驚きをもらっていると思っているさ」

 

それで?と鶴丸はシキに問うた。

何か進展はあったかと。

 

「お手上げだな。事例もなにもあったもんじゃねぇ」

「では、政府の判断を待ちますか?」

「いや…今回は……」

 

そこまで言ってこちらに向かってくる足音に気付いた。

扉は開け放っているため、話し声も含め少しずつ近づいていることから、この部屋に向ってきているようだ。

 

「おっと、良いタイミングだな、この先は本人含めて話した方がよさそうだ」

 

腕を組んで笑っている鶴丸は、ん?と首を傾げた。

それにシキはどうしたと長谷部と共に鶴丸を見上げた。

 

「あぁ、いや…どうやら話をする前に手入れが先かもしれんなぁと」

「は?」

 

眉間のしわが深くなったのが本人であるシキ自身にも分かったが、また誰かなんかやらかしたのかとぐっと力を入れてしまった。

そんなシキの表情に長谷部は苦笑いが込み上げてしまうのは仕方ないだろう。

この過保護気味な主としては怪我はかすり傷一つでも怪我のうちに入ってしまうのだから。

 

「シキさん、連れてきたよー」

「おはよう、主」

「燭台切も一緒だったか」

「やぁ、長谷部くん、おはよう」

 

そこに現れた団体には、加州と大和守だけでなく、なぜか加州の腕の中にいる鶴丸と後ろから背の高い眼帯をしている燭台切光忠も居た。

 

「なんだ、光坊も一緒か」

「うん、いろいろあってね、そのまま一緒についてきちゃった」

「それで…へぇ」

 

今まで背を預けていた柱から離れ、黒い姿の鶴丸は加州の腕の中の「白い」鶴丸へ近づいた。

自分よりも長い白い髪をするりと掬い上げる。

 

「きみが…わかるだろ?俺が何か」

「……つ、るまる」

「あぁ正解だ。まさか”俺”がこんなお姫様みたいな形になるとは驚いたな」

 

不思議そうに白と黒が会話をする。

二人を並べてみると、確かに相違が多い。

 

白い鶴丸はやはり女性的で線が細いだけでなく、どこか華奢な印象を受ける。

そして特徴的として長髪であり、瞳はとろりとした蜂蜜色だ。

一方黒い鶴丸は黒い羽織以外は通常の鶴丸と同じ風貌をしている。

しかしやはり細いが骨格は男性で白い髪を掬い上げた手は骨ばっていた。

だがそれ以上に違いをあげるとするとその瞳である。

こちらは猫のような好奇心という色を浮かべる金色だ。

瞳だけでだいぶ印象が変わるのだなと、その二人を眺めた清光は、腕の中の彼女がおびえていないことに気付いた。

 

(普通、この鶴丸の方が怖くない?)

 

不思議そうに黒い鶴丸を見返す彼女は不自然なくらい緊張や怯えが見えない。

先ほどまでの怯えはどこにいったのかといった様子だ。

 

どこか納得いかないような気がするが、ふぅん、とにんまり笑う目の前の鶴丸に、むすっとしても仕方ないと声をかけた。

 

「ちょっと鶴丸、どいてー。主、こっちの白い鶴丸怪我しちゃったんだ、手入れするでしょ?」

 

このまま連れて行っちゃって良い?と首を傾げた加州に、あぁと頷いて立ち上がるシキに首を傾げた。

 

「あれ、聞かないの?」

「あぁ…何があったかは気になるが、それは後でだ。あぁそうだ、見習いはついでだから手入れ見ていけ。あとは自由にして良い」

 

そう簡単に指示を出したシキに、燭台切や長谷部は、

「なら、僕は先に食事をすませちゃうね。確か今日出陣予定だったし」

「なら俺も行こう、主、失礼します」

と言いう。

燭台切は去り際に、またねと白い鶴丸に手を振って。

 

「安定はついてくるんでしょ?」

「うん。ご飯まだでしょ?みんなで食べようかなって」

「じゃ、いこっか。」

 

鶴丸は手当終わったら戻ってくるというシキに、ならここで待つと部屋の隅に胡坐をかいた。

部屋から去っていく面々、残った鶴丸は頭の後ろで手を組みながら、木造の天井を見上げた。

黒いフードがその瞳に影を落とす。

 

「…ありゃぁ根深いな…、っく、やっぱりここに残って正解だった」

 

薄い唇が小さくつぶやきをこぼし、こらえられないというように喉で笑う。

あの”俺達”と混ざった小さい光に、言葉にならない感情を抱きながら。

 




手入れと手当てを書き間違えるのは日常茶飯事です。
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