わっ!驚いたかな?鶴丸国永(女性)参上!   作:玖渚真白

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鶴丸だからわかること(続)

審神者見習いとして、叔父の本丸へ住み始めてから、初めて「ブラック本丸」という知識でだけ知った存在と関わった。あれは、そう、目の前にいる黒いフードを被った亜種と呼ばれる刀剣「鶴丸国永」との出会いであった。

詳細はまだ早いと教えてもらえなかった。

でも、この鶴丸と目が合うと他の刀剣と違う何かを感じて、毎回ドキリと心臓が鳴る。

それは恐怖なのか、畏れなのか、見透かされている感じでどうしても異常な何かが目の前にいるように感じてしまってどうしようもなくなってしまう。

 

最近はだいぶ通常の鶴丸国永と似た気配に戻ってきているとのことで、少し安心していた。

 

だが、目の前の彼は初めて会った頃の彼と一緒だ。異常な気配、触らぬ神に祟りなしとはこのことだと言いたい雰囲気。黒フードの向こうの瞳と目が合うと、ぎくりと体が無意識にこわばらせてしまう。

そんな彼と、彼女が同じ刀剣であるとは思えなくて。

 

彼女、鶴ちゃんはすごく綺麗な澄んだ気配とどこか守ってあげたくなる雰囲気があって、ついさっきまで、そんな彼女に庇護欲を掻き立てられていたというのに…。

 

(なに、これ)

 

それは、シキさんが彼女に質問をしたことで突如として表面化した。

 

ブラック本丸の刀剣は、様々な思いや感情を煮えたぎらせている為、扱いには十分に気を付けなければならない。

そう教えられてきたが彼女はただ怯えと不安が大半で。質問されてすぐはぼんやりとしながら、ぽつりぽつりと言葉が落ちてきた。だが、だんだんと様子がおかしくなる。

 

それを察し、ストップをシキさんがかけているが止まらない。

呟かれる言葉は次々と、肯定、否定、また肯定を繰り返す。

そして、一人称がわたしから”おれ”になった瞬間にぞわりとした寒さを感じる。

あぁ、彼女から漏れ出した神気だと認識する前に、体は正直だった。

 

息が止まるかと思った。

手先が冷たくこわばり、畏れを抱き、抑え込まれるように頭を下げてしまいたくなる。

だが体は動かない、ひゅっと息を吸うが空気が脳へいかない。頭が回らない。苦しい。

 

そんな時だった。

そんな彼女に近づくのは同じ名を持つ黒フードの彼。

顎を白く細い指ですくい、額をこつりと合わせるその様子は、神聖な儀式か何かのようだ。

何を囁いているのか、回らない頭では入ってこないが、少しずつ彼女からにじみ出ていた気配が元に戻っていく。

 

「……っ…」

 

浅く呼吸を繰り返す。

少しずつ絹の擦れる音、彼らの声が聞こえてくる。

 

「…ありがと」

「別に礼を言われることはやってないぜ?これ以上は朝食に遅れそうだとおもっただけだ」

「そういうことにしとく…」

 

彼はにやりと笑い、それを見て鶴ちゃんも小さく笑みをこぼした。

もう先ほどの気配は感じない。

この短時間で何か繋がりを作り上げた彼に少しの嫉妬感を覚えてしまうくらいには自分も、元の状態に戻ってきてはいるようだ。

 

その後、加州が朝食を食べに行くと声をあげ、それに頷く大和守。

そして、引き留めようとしたシキさんを尻目に鶴ちゃんを促して歩き去っていくその彼が振り返った。

 

「悪いな主、今は時じゃないから攫っていくぜ」

「…めずらしいな、お前がそこまで構うのは」

「……俺の楽しみを取り上げてくれるなよ」

 

驚きがなくちゃ味気ないだろう?彼女のような驚きに満ちた存在(やつ)に会えるのは稀だからな。

そう、にっと笑った彼はどこか楽しそうに、だが、何か拒絶するように…目を細めてから去っていった。

 

あれは、牽制?忠告だろうか…ともあれ、残されたのは人間二人、それにどこか安心してしまうのは審神者見習いとしてはダメなのだろうが、本音を言ってしまえば。

 

(こわかった…)

 

ただこの一言だろう。

底が見えない暗闇をのぞき込んだかのようで、確かに自分は畏れ、恐怖した。

そして…「  」したのだ。無意識的に。

 

(あぁ、なんて…)

 

なんてひどいやつなんだろう。

さっきまで仲良くしよう、守ってあげようとしていたのに、それが上っ面だけのものに感じて恥ずかしくなる。

 

「……シキさん…わた、わたし…」

「落ち着け。そう感じんのも無理ないが、今は忘れちまえ」

 

胸元から徐に煙草を引っ張り出し、一息入れる叔父の姿。

白い煙が昇っていく。苦い香りとともにシキさんは呟いた。

 

「今回は確かに俺が悪いわな…」

 

何度もブラック本丸と接触してきた審神者ベテランの彼が言うのだ。

自分に気づけない何かがあったのかもしれないがわからない。

だが、決して触れてはいけない何かに触れようとしたようにも感じる。

 

「…シキさん、鶴ちゃんはこの後どうなるの?」

 

このまま、一緒にこの本丸で生活できるのか、それとも政府に引き渡すのか。

 

すぅ、と煙草を吸い上を向いて吐き出す彼は、どこか様になる。頭の隅で、このイケオジはワイルド系雑誌にでもでれる気がするなんてふざけたことを考えつつ眺めた。

しばらくの沈黙。そしてポツリと返される言葉に、そうか…とどこか納得して頷いた。

 

「あいつ次第だろうな…」

 

 




今回は見習いちゃんsideです。
少し短いですが、暗い話はここまでにして、次なる刀剣との出会いに切り替えましょう!
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