わっ!驚いたかな?鶴丸国永(女性)参上!   作:玖渚真白

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朝食を食べましょう

 

目の前を2人の赤と青の着物が歩く、その後ろを歩きながら右側に広がる大きな庭や、左側のいくつもの部屋を通り過ぎていく。外は春の陽気に包まれており、広々とした日本庭園。遠目でも何人か人の姿が見えたりしていた。

まだ1日しかたっていないのに、自分の現状の目まぐるしさに心が追い付けない。

そんな中でも人ってお腹がすいたりするんだなぁと他人事のように感じていた。

 

今日は何を食べようか、みそ汁の具は何かな、なんて会話が聞こる中、ぼんやりとそんなことを考えていた。

 

私は何をしていたんだっけ、どんどんと記憶がぼやける中らしくないなぁとか「らしい」ってなんだろ…とか。不完全でもたくさんの鶴丸国永と混ざったことにより、思いのほか自分の思い出の引き出しは開かなくなってしまっているようだ。

 

「どうした?」

 

黒鶴の声が耳元で聞こえた。

はっとして振り返ると、思いのほか顔の近くから覗きこまれていたようで、心臓がどきりと鳴る。

 

「…びっくりした…」

「そうかい?驚けるならまだ大丈夫だな」

「……次は私が驚かせるから」

 

にやにやからかってくる彼に、むすっとしながらそう答えたが、さらりと「できたらいいな~」なんて返されてしまった。

そうこうしているうちに、人のざわめきが増え、それに伴い人の気配も増えてきた。

 

「ついたよ~」

「ここの本丸は食堂みたいな感じなんだ」

 

足を止めた加州と大和守が振り返りそういう。

二人の間から見える部屋は広い部屋。その半分はテーブルとイスやソファといった洋風テイスト、もう半分は掘りごたつのようなお座敷のようになっていた。

 

奥にはカウンターキッチンのような場所もあったり、配膳を回収するような場所だったりと様々なものがある。

 

そして、そこかしこに様々な風体の刀剣達がグループになったり一人に散ったりしながら食事を楽しんでいるようだ。

 

(…いきなりこの人数の中入るのは…)

心の中で泣き言を呟きながら、一番近くにいる黒鶴の袖を引っ張った。

 

「怖いかい?」

「…怖くはないけど…えっと、圧倒されてる?」

「まぁ、仕方ないか、慣れるまでは共にいればいい。なかなか面白いやつらが多いからな、すぐ慣れる」

 

じりじりと黒鶴の後ろに隠れようとする鶴を、逆に黒鶴は頭を撫でながら押し出していた。

 

「なんで押すの」

 

じとっと見れば、にやにやした(さすがに見慣れてきた)笑顔を浮かべてケロッと「その方がおもしろくなりそうだ」と言い放つ彼は優しくない。

 

加州達はそんな二人を苦笑いしながら「ほら、いくよー」と中に促した。

 

そんなやりとりは、もちろん中で食事をしていた彼らの視線を集めていた。

その理由はいくつかある。

噂話として昨日連れてきたという珍しい女性の姿の刀剣。

ブラックから来たというだけで注目の的なのだが、そこに同じ刀剣である「あの」鶴丸国永が共にいることも目を引いた。2人がじゃれている姿は、どこか兄妹のような姿をしておりいつもの鶴丸国永とは様子が違うことは一目瞭然で。

 

そんな中、いつもの粟田口集団に混じって食後のお茶を飲んでいた乱藤四郎も部屋に入ってきたその一行を目にして目を輝かせていた。

 

「ねぇねぇ、彼女だよ昨日言ってた子!」

「へぇ、あの鶴丸とも仲良さそうだな…珍しい」

 

隣で同じくお茶を飲んでいた薬研藤四郎も興味深げに噂の彼女を眺めた。

白い髪が長く動きに合わせてふわふわと揺れている。全体的に線の細い以外は鶴丸国永と似た姿かたちをしているが、比較対象の鶴丸が横にいることでさらに儚さが増しているように見える。やはり女性ということもあるのか、一回り小さいようで、背もそんなに高ない。なぜか刀は片手で握ったままになっている。

まぁブラックから来たばかりで、食堂に来れる時点でそこまで酷い状態ではないのかと推測する。

 

(場合によっちゃ、部屋から出てこないこともあるからなぁ…)

 

「やっぱ綺麗だよね~、着飾ってみたい!」

「乱、あんまりはしゃぎすぎちゃ駄目だよ?」

 

くすりと笑いながら長兄、一期一振がそうたしなめる。

それにわかってるよ~と拗ねた返答をしながら、視線の先の一行がご飯を食べ終わったら声をかけようと計画を立てていた。

 

この本丸の食堂は、基本的に妖精さんに頼むことで配膳される。

基本的に材料となる野菜や魚、肉、その他調味料類に関しては宅配されるシステムになっており、とくに食事の用意等はお任せ。

まぁ、一部料理に興味のある刀剣は、厨房の一部を利用して自分で好きに料理をすることもあるのだが。

定食からおやつまで、戦場に赴く刀剣をサポートするように至れり尽くせりである。

 

 

―――

 

 

温かな緑茶が胃にじんわり染みわたる。

やっと一息付けた気がして、肩のこわばりが少し緩む。

食事はあまりとる気になれず、でもお腹は空いているようだったので、白い小さなおむすびとみそ汁を頼んでみた。

 

「おいおい、そんな少しで足りるのか?」

 

焼き魚定食のような和風な彼、黒鶴の茶碗には大盛りの白米が。

 

「…黒鶴のそれは、普通なの?…多くない?」

 

正面に座っている加州と大和守もそんなには多くない。

まぁ、その二人と比べても自分の頼んだものは少ないと認識はしているが…再度横に座っている黒鶴の茶碗の米を見て自分の3倍?とか考えてしまった。

「まぁ、鶴丸はもともと細いくせにたくさん食べてるよね~」

「確かに。それにおやつも結構食べてるイメージ」

「甘いもんは別腹っていうだろ?それよりもう少し食べた方がよくないか?」

 

ほれ、と口元に持ってこられたのは黒鶴の箸が挟んでいたたくあん。

え、これ食べた方が良いの?

ちらりと黒鶴をチラ見したら、なんだかわくわくしているように見える。

あぁ、これは善意なのかな~と思い、目の前のそれをパクリと食べてみた。

 

「ちょ!!」

「ぇぇえ?!」

「どうだ、少しでも食べて動けるようにならんとな」

「ん(ぽりぽり)」

 

なんだろう、ざわめきが大きくなった気がするが、それよりこのたくあん美味しかった。

塩おむすびを少し口に含み、お米の甘みと塩の塩梅にも、なんでこんなにおいしいのか不思議だ。

 

「まだ食べるか?」

「…………(悩む)」

 

どうしよう、黒鶴が私を誘惑してくる(たくあん…)。

そんなやりとりを正面に朝食を口にしながら、加州と大和守はなんとも言えない表情をしていた。

 

「あれ…どう思う?清光…」

「あの鶴丸だし…からかってる?でも、悪気なさそうだしなー…」

「だよねぇ…というか楽しんでる?…触れない方が吉かな」

「でしょーね、さっさと食べちゃお」

 

小さな口で、小さなおむすびを口に運ぶ鶴に対して、横からちょいちょいたくあんやらゴマの和え物を口に運んでいる鶴丸はどこか楽しそうだ。

周りがぎょっとしているのもなんのその、その行為は鶴がもういらないと首を振るまで続くのだった。




地味に黒鶴は鶴ちゃんを気に入っています。
あと、別に特別な意味でご飯を分けているわけでは…ないと思われます。たぶん自分と比べて食べない彼女を本心から心配しているんです。きっと。同じ鶴丸だからこそ、性別の違いでここまでだと心配という気持ちが前に出ているのではないでしょうか。
さて、このお話恋愛は無いと思っているのですが、どうしましょう。
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