和泉守のあとを追いたどり着いた鍛刀部屋の前では、パッと見は普通の閉じられた襖に手を掛け、開けようとしている堀川と、見守る平野がいた。
見た目は普通、横に引けばわずかにカタカタと音をたてる、が、両開きのそれはぴったりとくっついていた。
和泉守が見てろとばかりに力を込めて叩くと、ドンドンと鈍い音がなる。襖は鋼でも入ったかのように突き破ることなく和泉守の拳を受け止めたのだった。
「弾かれはしないが開かねーんだ」
「おそらくですけど、内側から閉じられているのではないでしょうか?」
「…そうだな。審神者がやってんなら俺が開けられるだろう」
シキは状況を一緒に確認した骨喰、長谷部、山姥切に他にも同じ状況の場所がないか探すよう命をだす。もちろん審神者の部屋や、刀剣各自の部屋に該当しそうな場所、手入れ部屋や刀装部屋などを重点的にするよう声をかける。
それを受け、各々うなずき、または、返事をし散っていく背中を見送る。
そんなときであった。
…………だ、れ
くぐもった、弱々しい声。どこか透き通った女性の声が鍛刀部屋の中から聞こえる。
はじかれるように平野が答えた。
「どなたかっ、中にいらっしゃるんですか?中から開けられますか?」
しばらく中の様子を伺う。
するとまた、確かに声がした。
だして、と。
弱っているのか、小さく咳き込む音が聞こえ、シキはすぐに動いた。
「いま助ける!近くにいるなら危ないから離れてくれ」
襖に手のひらを当てまるで見えない噛み合わない歯車の原因を探るように力を注ぐ。ここの審神者はどうやら論理的な思考力をもっているようだ。歯車は回ればただの結界だが、それをあえて塞き止めるかのように小さな噛み合わない欠片を詰めることで善いものを悪いものに変換しているようだ。
…ようは、欠片さえ取り除けば、力任せに結界を壊すことができるということ…。
(離れろとは言ったが動ける状態か不明だ。手順を踏んで解いたほうが良さそうだな…)
結界に侵入し、歯車のようなそれの歪みの原因となる欠片を見つけ破壊する。
(どうやら質の悪い審神者みてぇだな…が、詰めが甘い)
あっさりと欠片をパキリと砕くと、耳鳴りのようなきーーんっとした音を立てて歯車が廻りだす。もちろんそれは審神者の力の例えだが、その歯車を力任せにシキは壊した。そう、自分の荒い審神者としての力とやらをおもいっきりぶつけて破壊したのだ。
そして襖に手をやり横へと力をいれて開けながら、シキの脳裏にはふとした疑問が沸き上がった。
たしか事前の情報ではここの審神者はひょろっとした見た目の理系な男だったはずだ。
(…なんで女の声がするんだ?)
その疑問は開けた部屋の向こうにあった。
「………っ!!」
シキと共に中を見た、平野、堀川、和泉守も異常な、そして、酷く歪んだ狂気が充満していたであろう部屋をみて息を呑んだ。
折れた刀、散乱する破片、染み付いた血痕の後と、部屋の真ん中で倒れた男。そしてその目の前に座り込んだ赤い縄で身動きがとれなくなった白い女性。
明かりのなかった部屋にぼんやりとその女性は明るく浮かび上がり、呆然とした表情で襖を開けたシキ達を蜂蜜のようなとろりとした瞳で見つめていた。
そう、これが最初の出会いである。
シキという一人の審神者と、女性鶴丸国永(混ざりもの)との。そしてこれからであうだろう出会いの1頁目である。
出会いはこんな感じ。
このあと、少し話をざっくり飛ばしたいと思います。
鶴丸だと明るいからほのぼのにしたいけど、なんかシリアスが勝ちそうでちょっと悩む。