難産だよ、イケオジってなに考えてんのかな。
筆がのらないので、さっさと「わたし」ちゃんに視点切り替えたいです。
これまで、それなりにブラック本丸なる場所へ、政府の指示を受け突撃をしてきたが、今回のソレは異常であり、シキの感情を揺さぶる程度には衝撃を与えていた。
もともとの指令では、審神者の捕縛と刀剣の救助。
だが、ついさきほど立ち去った本丸には見たことのない、しかし、誰かは推測できる付喪神らしき女性と、息絶えた骸の姿。おそらく審神者であろう男の亡骸が転がっていただけであり、他の部屋を簡単に見回ってきた結果ももぬけの殻だとの報告のみだった。
それよりも最優先事項は、己の腕におさまる温もりだ。
本体となる腰の刀と一緒に赤い縄でぐるぐる巻きにされ、おそらく呪がかけられている刀剣の付喪神。
外見は真っ白な長い髪に金の瞳、色白で、とにかく本来の付喪神の衣装と似通った装飾をあしらったフード付きの戦衣装。そして、見覚えのある刀の拵え、そう、あの刀剣であることは想像がつく。
手入れ部屋に近づくにつれ、顔がこわばり不安そうにしている、らしくない姿。
『鶴丸国永』である。
女の姿や、子供の姿、色が違うなど時折普通とは違う顕現のされ方があることは耳にしたことがあるが、そのほとんどは偶然という奇跡との話だったが、今回の場合は偶然ではないと考えられる。
(でなきゃ、あんな数の折れた鶴丸国永が大量にあるわけない…か)
ついには手入れ部屋にたどり着くも、ゆらゆらと揺れる瞳に個体差があっても同情と憐憫を覚えない訳がない。
柄にもなくどっかりと胡座をかいた上に彼女を座らせて、ぽふぽふと頭を撫でていた。
「あー…まぁ、そこまで不安がるな、お前さんをひとまず手入れさせてもらいたいだけだから」
「ていれ…」
「あぁ。まずはその縄をどうにかしねーと、身動きがとれねぇだろ」
彼女はシキの瞳をじっ…と見つめ、「ん」と小さく返事をした。
(鶴丸国永っていやぁ、うちのやつも変わりもんだが、こっちはこっちで大人しいのか、警戒しているのか…まぁ、本人が手入れを受ける気になったんなら関係ねーな)
よし、ともう一度頭を撫でてから、忌々しい縄に手をかざす。必要以上にねっとりと死んだ審神者の気配がするので、強制的に上書きをしようと力を込める。
じわり、じわりと赤い縄の色が黒く変色していく。
罠の気配はなく、彼女の動きを、力を封じるものらしかった。プツリと太い縄の一部が切れれば、後は簡単だった。ざわり、と彼女から力が漏れ出す。それは白く発光して残りの絡み付いた縄を瞬時に燃えかすのような何かに変えた。
「?!…っおい!」
「……ぁ…っ……こわ、こわい…なに」
「おい!しっかりしろ!」
その吹き出した力には意思が込められていないため、攻撃性も全くない単なる力の暴走のようなもの。しかしその力は大きく腕のなかで彼女が頭を抱えた。急いで片腕で彼女を力強く抱え込み抱き締める。
「落ち着け、ここにお前の敵はいない、ゆっくり息を吸って吐け」
大丈夫だ、そう耳元で囁きながら右手で彼女の頭を撫でる。息を詰めていた彼女が、細く、小さく、だが確かに呼吸をし空気を循環させている。そして、そっと彼女の左手がシキの服を掴み、次第に身体の力が抜けていく。
いつの間にか、彼女の溢れた光は消えていたのだった。
やっと眠りにつけた(意識を飛ばした)「わたし」ちゃん。
実はイケオジに萌え萌えしてたら…な展開にパニックになるという話は次回にでも。