「お腹が空きました」
そう言いながら、めぐみんは部屋の中で倒れながら呟く。
「仕方ないだろ。
まだ届いていないのだから」
そう言いながら、りんねは目の前にある内職の花を作りながら、答える。
「えっと、りんねさん。
こちらの食事って一体どうなっているんですか?」
現状の状況について来れず、クリスは思わず質問する。
現在、彼らは全員が集まって食事を行う為の部屋でくつろいでいるのだが、食事を始まる気配がまるでしなかった。
「もしかして、その、食事もですか」
貧乏だと聞かされ、不安になったクリスはゆっくりとりんねに尋ねると
「心配するな。
幸い、家の場合、食事に関してはあいつが帰ってくれば問題ない」
「あいつってきゃぁ!?」
そう言っていると、外から聞こえてきた物音に驚き、急いで見てみる。
「ひぃ!!」
そこにあったのは巨大なワニだった。
しかし、そのワニは普通のワニには見られない8本の足を生やしており、人間を遥かに超えていた。
「悪いな。
今日はガララワニだぜ」
そう言って、ガララワニの近くから出てきたのは青い短髪に人並外れた筋肉質な肉体を持つ男だった。
「おぉ、トリコ帰ってきたか。
それじゃあ、さっそく調理するか」
「いつも悪いな、りんね。
ほら、めぐみん、お土産のおにぎりだぜ」
「はぐぅ、ありがとうございます」
そう言いながら、慣れた動きでりんねは懐から取り出した包丁で次々とガララワニを裁いていき、めぐみんはトリコから受け取ったおにぎりを食べていた。
「あっあの、この方は」
「んっこいつか、例の新人は」
「あぁ。
クリス、紹介する。
こいつはトリコ、俺達ジュウオウジャーのメンバーの一人で、俺達の食事を主に担当してくれる奴だ」
そうりんねはトリコの紹介を行いながら、次々とガララワニをバラバラにしていく。
「あっ初めまして。
雪音クリスです。
あのこれは一体」
「そうだな、自己紹介もかねて言うと、俺の名前はトリコ。
未知の味を探求する為に色々とやっていたんだ」
「未知の味?」
その言葉に疑問に思ったクリスは首を傾げながら
「トリコは私と同様に別の世界の住人でしたが、とある食材を探している時に見つけたジュウオウチェンジャーに導かれて、この世界へ来たんです」
「ジュウオウチェンジャーって一体なんなんですか」
その言葉を聞いて、思わず聞いてしまう。
「ジュウオウチェンジャーについては俺も知らない事ばかりだ。
ただ、転生者に対抗する力を与えてくれたりと、今の所は力を貸してくれるからな」
「そして手早い」
そうしている間にりんねは瞬く間に食べられる部分を分けて、何時の間にか料理をしていた。
「ふふっ、色々と見て回ったが、まさかこんな所に人がいるとはな」
その言葉と共に出てきたのは青年だった。
「・・・誰?」
「んっ、どうやら転生者か」
そう言いながら、りんねは既に下ごしらえを終えていた。
「はっ早いですね」
「食事は俺達にとっては重要な基盤だからな」
そう食事の準備を行っているりんねに対して、トリコは
「おい、りんね。
ここは俺に任せな」
その言葉と共にトリコは目の前にいる転生者に対して笑みを浮かべながら、ジュウオウチェンジャーを構える。
「なんだっお前は」
「俺か?
俺はこいつらの仲間だ」
そう言いながら、ジュウオウチェンジャーを構える。
【ライオン!】
「本能っ覚醒!!」
【アーアーアアアーッ!】
その叫び声と共にトリコの身体は黄色の光に包まれ、その姿は獅子の力を身に纏った姿
ジュウオウライオンへと変わる。
「サバンナの王者 ジュウオウライオン!!」
その叫び声と共に地面を震わせながら現れる。
「まさかっ他にいるとはな!!
やれぇ影鬼!!」
その言葉と共に影から現れたのは全身が影によってできており、その黄色の目だけが異様に目立つ鬼が現れる。
同時に影鬼はその腕を巨大化させ、ジュウオウライオンに向ける。
「面白れぇ、俺に真正面に挑むとはなぁ!!」
それを受けて立つようにジュウオウライオンもまたその腕を振り上げて、拳をぶつける。
双方の拳がぶつかる事によって、地面が割れてしまうが、力負けしたのか影鬼吹き飛ばされる。
「なっ!?」
「今の俺は美味い物を喰ったばかりだからな。
最初から全力で来やがれ!!」
「凄いパワーっ!!」
体格からも予想していたが、それ以上の力を発揮したジュウオウライオンの実力にクリスは驚きを隠せなかった。
「なっ正面から無理かっ!
だったらっ!!」
その言葉と共に影鬼は影の中へと消えていった。
「どこにっ!」
そうジュウオウライオンは周りを探っていると、何か痛みを感じたのか倒れた。
「これは」
ジュウオウライオンの足には何かに喰われた痕ができていた。
「ちっ厄介な奴だな」
そう言いながらりんねはジュウオウチェンジャーから影鬼の情報を見た。
「一体何が起きたんだ?」
「そいつは人の影を喰らう事ができる。
そうすると本体も何処か喰われるらしい。
そのせいで攻撃が通る事は不可能らしい」
「んっ?」
ジュウオウライオンはりんねの説明を聞くと同時に首を傾げる。
「どうしたんだ」
「なに、奴に攻撃を当てる方法が分かっただけだぜ」
「何を言っているんだ?
影鬼が平面になっている限り、攻撃は絶対に当たらないんだよ!!」
その言葉と共に影鬼は再びジュウオウライオンの影を喰らおうとする為に近づく。
「確かに俺の攻撃は通じそうにない、特殊な奴だな。
だが、そいつには弱点があるぜ」
「弱点だと?
馬鹿な事を言うな!
お前の攻撃はこいつには決して当たらない!!」
「それはどうかな」
そう言い、ジュウオウライオンは構えると同時にその腕は徐々に巨大になっていき、人一人分程の大きさに変わる。
「えっ何が起きているんですか!?」
「トリコの必殺技です。
あいつは一瞬で腕の筋肉を伸縮・硬直させることで、数回のパンチを同時に打ちつける事ができる技です。
派手で私は結構好きな技ですよ」
その現象を見て、驚くクリスに対して、めぐみんは見慣れたように解説を行う。
「だけど、影鬼は物理攻撃が効かない!
このままじゃ、りんねさん!」
「トリコが任せろと言った。
だったら、俺は信じるだけだ」
そう言い、りんねはトリコを見つめる。
「ふふっ馬鹿な奴だぜ!!
だったら死ねぇ!!」
その言葉と共に転生者の言葉に反応するようにトリコの影に向けて、影鬼はその巨大な牙で襲い掛かる。
「そこだぁ!!3連釘パンチ!」
その言葉と同時にトリコは後ろに向けて、釘パンチを行ったが、そこには何も存在しなかった。
「どこを狙ってっ!!」
空振りした攻撃を笑みを浮かべる転生者だったが、次の瞬間、影鬼が影から飛び上がる。
「なっ!」
同時に影鬼はさらに吹き飛ばされるように宙へ、そして最後には爆発するようにその身を散らした。
「なっなんだよぉ!?」
「影鬼の能力は既に確認している。
人の影を喰らうという変わった食事で影を食われれば、本体も何処か食われて最終的には消滅するだったよな」
「それがなんだっ!!」
「ようするに喰うという事は影に触れているんだろ。
だったら、影だったら影鬼に攻撃する事ができるよな」
「なっ」
「へぇ、なるほど」
これまで影に隠れて攻撃する事ができなかった影鬼の恐怖するべき所をトリコは同時に弱点だと見抜いていた。
「どういう事なんですか」
「トリコはようするに自分の影で影鬼を攻撃したんです。
影鬼の攻撃が当たらないのはあくまでもトリコ自身の攻撃です。
そのトリコの影に触れるのですから、勿論、攻撃も当てる事は可能です」
「あっ」
つまり、トリコは相手の一番の攻撃でもある影を喰らう行為を反対に利用した。
だからこそ、構えていた。
「お前っ、それが分かっていたとして、なんで怖くなかったんだよ!!」
「怖かったさ。
でもな、何もしなかったら、何もできないだろ」
そう言いながら、ジュウオウライオンはゆっくりと転生者へと近づく。
「ひっひぃ!!」
「覚悟するだなぁ!!」
その言葉と共にジュウオウライオンの背後から巨大な鬼が現れ、転生者を睨みつける。
「あっあががあがぁ!!」
その余りにもの迫力に転生者は白目を向きながら、倒れた。
同時に宙に散っていた影鬼が集まりだし、そこには巨大な影鬼となって再誕する。
「ガアァア!!!」
「ちっ暴走しやがった!!」
「暴走!?」
倒したはずの影鬼が再び蘇った事に驚きを隠せないクリスに対して、りんねは影鬼を見つめながら
「特典は転生者のコントロールから離れると、時々暴走する事がある。
その場合だと、大抵はああやって巨大化したり、怪物になったりする」
「それじゃあ、このままじゃあ」
「既に対策はできていますよ」
「めぐみん、準備はできたか?」
「はい、おにぎりを食べて体力は回復しましたし」
「だったら、やるか」
その一言と共に、りんねとめぐみんは同時にジュウオウチェンジャーを構える。
【イーグル】【シャーク】
「本能覚醒!】
【アーアーアアアーッ!】
その音声と共に二人はジュウオウジャーへと変身すると共にジュウオウチェンジャーを開く。
「トリコ」
「あぁ、分かっているぜ」
りんねの声を聴くと共にトリコも同時にジュウオウチェンジャーを構える。
【キューブイ~グル!!】【キューブシャ~ク!!】【キューブライオ~ン!!】
その音声と共にジュウオウジャーの前に巨大なキューブが現れ、鷲、鮫、獅子の形へと変わり影鬼に襲う。
「あれは一体っ」
「ジュウオウキューブ。
ああいう暴走した奴を相手にする時に使う相棒だ」
その言葉と共にジュウオウキューブ達は叫び声と共に、襲いかかる影鬼を押し返す。
同時にジュウオウジャー達は各々のジュウオウキューブへと乗り込み、同時にジュオウチェンジャーを構える。
【3!2!1!ジュウオウキング!!】
その音声と共に、ジュウオウキューブは重なり、その形は新たな王者、ジュウオウキングが誕生した。
「あれがっ!」
「ガアアァァ!!」
ジュウオウキングが誕生すると同時に影鬼は、その腕を大きく巨大化させて襲い掛かるが、ジュウオウキングはその身を翻しながら、攻撃を避け、蹴り上げる。
それは人間を遥かに超えた巨人とは思えない動きであり、目の前にいる巨大な影鬼を圧倒していた。
「がぐぅ!!」
同時に影鬼はその腕を巨大な刃に変えて襲い掛かるが、ジュウオウキングのその腕には何時の間にか持っていた剣で攻撃を防ぐ。
「がぎぃ!!」
「必殺!!」
その言葉と共にジュウオウキングの手に持った剣から様々な色の光によって出来上がったキューブを纏う。
「キングソード!ジュウオウ斬り!!」
その言葉と共に影鬼を切り裂く。
「があぁあ」
同時に影鬼は切り裂かれた傷口から光のキューブに変わっていき、消滅する。
「これが、ジュウオウジャー」
その戦いを見守っていたクリスはゆっくりと戻ってくる3人を見つめる。
Mr.エメトさんの転生者です。
NEME:影鬼
TYPE:モンスター
賞金:90万円
概要
人の姿をしているが全身が真っ黒で、両目が赤い影の魔物。
人の影を喰らうという変わった食事をするが、影を食われれば、本体も何処か食われて最終的には消滅する(腕を食われれば腕が消える、足を食われれば足が消えるという感じ)
素早い上、闇に溶け込んでの奇襲が得意、更に平面に沈めば攻撃が通ることも不可能、勿論、隙間に入り込んでの逃走も可能。
変幻自在で何でも好きな姿になることもできたり、分身したりもできる。
弱点は太陽の下にいることで力が落ちるため、夕暮れ時にしか現れない。