特典で稼ぐ王者   作:ボルメテウスさん

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第5話 覚醒の白虎

「なっなんとか脱出できた」

 

そう言いながら、無人島にて作り上げたイカダに乗りながら、5人は日本に向かっていった。

 

「せめて、電波が届く場所まで行けば」

 

「普通、こういうのって、どこでも巨大化できるんじゃないですか?」

 

そう言いながら、イカダに乗っているりんね達と一緒にいたジュウオウキューブ達を見つめながら、クリスは質問する。

 

「・・・巨大化は戦闘時のみ無料のお得コースにしていまして、電波がない所で行うと料金が恐ろしい事になるんですよ」

 

「wifaiですか」

 

その言葉に思わずクリスは呟く。

 

「なんで、私はできないんでしょうか」

 

「またですか」

 

そう言いながら、隣にいためぐみんはクリスを見つめる。

 

「だって、私だって戦う覚悟はできています!!

だけど、ジュウオウチェンジャーは反応しません」

 

「いや、ジュウオウジャーになるには戦う覚悟はいらないぞ」

 

「えっ!!」

 

そう答えたのはクロウだった。

 

だが、オールでこぎながら当たり前のように答える。

 

「ジュウオウジャーになる為の資質はジュウオウチェンジャーを持っている時点で既に合格している。

あとは大切な事だけだ」

 

「それって」

 

「それを教えたら意味はない。

まぁ俺達全員に共通していて、誰でもあり得る事だ」

 

その答えに対して、クリスは疑問に思った。

 

「おいおい、あれはなんだよ」

 

そう叫んだトリコの声に合わせるように全員が街の方を見る。

 

「なっ!!」

 

そこに広がっていたのは、都会ではなく、全てが森へと変わった街だった。

 

「また、面倒な事になったな」

 

そう言いながら、りんねはその身に纏った白い羽織と共に宙に舞う。

 

「これは一体」

 

そこはまさに無法地帯と言っても過言ではなかった。

 

見た事のない生物が溢れており、人々は悲鳴を上げながら逃げている。

 

「GPSが未だに起動して、離島にある新しい都市らしいですけど、これは」

 

あまりの光景に戸惑いながら、ふと鳴り響くジュウオウチェンジャーに全員が見た。

 

「・・・マジかよ」

 

そこには転生者の情報が書かれており、その賞金額は10億円。

 

これまでにない値段であり、その能力の詳細も書かれていた。

 

「大儲けのチャンスだけど、さすがに危険だな」

 

「だが放っておいてもやばいだろ。

犠牲者も出る」

 

「とにかく、行くしかないな。

めぐみんとクリスはとりあえず離れるなよ」

 

その言葉と共にりんねが取り出したのは小さなビー玉だった。

 

「それは?」

 

「死神道具の一つ、追跡鬼火玉だ。

これで」

 

その言葉と共に手元から離れたビー玉は鬼火玉になって宙に舞う。

 

「普段はもったいなくて使わないけど、この事態では仕方ない」

 

そう言いながら、りんね達は鬼火玉に導かれ、そのままついていく。

 

その道中、クリスは未だに力に使えない事が情けないのか、顔を俯いたままだった。

 

「私が言うのまんですが、気にすぎでは?」

 

「めぐみんには分からない。

私は自分の命を賭けてでも、誰かの為に戦いたいから」

 

「命を賭けるですが」

 

その一言に何か含みがあるようにめぐみんは呟く。

 

「おい、お喋りはそこまでだ。

目的の奴だぞ」

 

そう言い、見てみると、樹の蔦で作り出された服を身に着けた女性が立っていた。

 

「お前がこの事態を引き起こした転生者だな」

 

「なに?

また人間?」

 

そう呟きながら、生気のない瞳でりんね達に向ける。

 

「人間だけど、お前だって人間じゃないか」

 

「そうね。

でも、私は自身はただの環境テロリストだ」

 

「環境ねぇ?

この街での惨劇はお前の仕業という事か?」

 

「えぇ、でもこれも仕方ない事。

地球を救われる為だから」

 

そう言いながら、自虐染みた言葉を言うが

 

「そんなの、無理に決まっているだろ」

 

「えっ?」

 

りんねは当たり前のように、転生者に向けて言う。

 

「お前は自分自身から再生させていると言っているようだけど、それってつまりはお前自身が死んだら、その時点で地球は駄目になると言っているようなもんだぞ。

そんなの救いでもなんでもないよ」

 

「そうでもしないとっ地球はっ自然は全て滅びてしまうっ!!

私は前の人生でそれをっ」

 

「確かにそうかもしれないな。

だけど、それは可能性の一つだ」

 

「可能性ですってっ!!」

 

りんねのあまりにも冷たい言葉に対して、これまで無表情だった転生者はりんねに向けて怒りを露にするように睨む。

 

「あなたはっ何にも分かっていない!!

このまま環境破壊が進めば「だったら、変えれば良いだけの話だ」それを私がやっているんです!!」

 

「あぁ、だけど俺が言っているのは、多くの人間とだ」

 

「はっ!?」

 

その言葉の意味が分からなくなった転生者はついに混乱するように頭をかきむしる。

 

「環境を破壊したのは確かに人間だ。

だけど、環境を再生させる事ができるのもまた人間だ」

 

「そんな悠長な事をしていたら「それはお前の世界の場合だ。この世界はまだ終わっていない」っ!!」

 

「お前は結局、前世での記憶を引きずっているだけだ。

この世界もどうせ駄目だから、私が汚れば地球は救われる?

自意識過剰も大概にしろ」

 

その一言と共にりんねは明らかな怒りと共に転生者に向けて言う。

 

「ダマレダマレダマレ!!

何も知らないお前がっ、私の邪魔をするな!!

お前らだって、自分の事しか考えていないだろ!!」

 

「それがどうした?」

 

その一言にクリスは少し驚きを感じて、見つめる。

 

「俺は親父のようになりたい。

その為にも、生きて、強くなりたい」

 

「私は爆裂魔法を極めたい。

未だに見えない境地の為に」

 

「俺もだぜ。

俺は未だに知られていない味の探求の為だ」

 

「俺はそんなたいそうな理由はない。

だけどまぁ、借金を返さない限りは生きなくちゃいけないのでな」

 

4人はそれぞれがバラバラな事を言っているが、クリスはその言葉を聞きながら、確かに感じ取った。

 

全員は目の前にいる女性とは対照的に、今、この瞬間も生きる事を諦めない力強さがあった。

 

(そっか、私に足りなかったのはこれだったのか)

 

その言葉と共にジュウオウチェンジャーを握りしめる。

 

「私は、生前のような犠牲者を出さない為なら、命も捨てる覚悟ができていた。

でも、それじゃあ駄目なんですね」

 

「ようやく分かったか」

 

クリスはりんねに頷くように彼らに並ぶ。

 

「犠牲者を出さない為に戦うのは変わらない。

けど、私は、生きる目的を見つめる為にも、今はっ生きたい!!」

 

その言葉と共に不完全だったジュウオウチェンジャーは完全な形となって、クリスの手に収まった。

 

それを見たりんねは普段の無表情からは考えられない笑みを浮かべながら

 

「さぁ行くぜ、皆」

 

その言葉と共に、全員が各々のジュウオウチェンジャーを開く。

 

【イーグル】【シャーク】【ライオン】【エレファント】【タイガー】

 

「「「「「本能覚醒!!」」」」」

 

【アーアーアアアーッ!】

 

その音声と共に、りんね達は光に包まれ、その姿は変わっていく。

 

そこに現れたのは各々の動物の力が宿った姿ジュウオウジャーへと変身していた。

 

「大空の王者ジュウオウイーグル!」

 

「荒海の王者ジュウオウシャーク!」

 

「サバンナの王者ジュウオウライオン!」

 

「森林の王者ジュウオウエレファント!」

 

「雪原の王者ジュウオウタイガー!」

 

各々の名乗りを終えると共に全員が合わせるように叫ぶ。

 

「「「「「動物戦隊ジュウオウジャー」」」」」

 

その言葉と共に、本当の意味でジュウオウジャーが誕生した。

 

「私がっ私がやらなければ駄目なのぉ!!」

 

「悪いが、あんた一人に頼る程、この星は弱くない。

この星を舐めるなよ!!」

 

その言葉を合図にジュウオウジャー達は走り出す。

 

それに対抗するように女性は頭を抱えると、周りに生える木々が一斉にジュウオウジャー達に襲い掛かる。

 

法則性はまるでなく、どこから現れるのか分からない木々に対して、その足を使い飛び上がり、手を使い避け、その姿はまるで動物を思わせる動きでその攻撃を避ける。

 

「なんでっなんでっ!!」

 

「お前の能力は自然を貶す人間には無敵だと言う。

けどなぁ!」

 

同時にジュウオウイーグルはその手に持った武器、イーグルライザーを手に持ち、振り上げる。

 

すると刀身は伸び、鞭を思わせる動きで迫り木を切り裂いていく。

 

「人間だろうと動物だろうと、木々は破壊します。

ですが、それは決して破壊だけが目的ではありません」

 

同時にジュウオウイーグルの後ろからジュウオウシャークはその手に持ったジュウオウバスターを構えながら、放っていく。

 

「自然の力を借りなければ、人間だろうと動物だろうと生きていけない」

 

同時にジュウオウライオンはその腕を構え、振り下ろす。

 

「ナイフ!!」

 

その一言と共に目の前に迫っていた木々を全て真っ二つに切り裂く。

 

「だが、それは自然も同じだ。

動物達の力はやがて自然にも力を与える」

 

その言葉と共にジュウオウライオンから借りたジュウオウバスターを二つ持ったジュウオウエレファントは、周りに迫り来る木から放たれていく種を全て撃ち落としていく。

 

「全ての生き物は同じ星で生きる生命だからっ」

 

ジュウオウタイガーはそう言うと共に、最後に転生者の前で盾となって防いでいた木をジュウオウバスターで切り裂く。

 

「一気に決める」

 

その一言と共にジュウオウイーグルの叫び声に応えるように地中から次々と5色の光がジュウオウジャー各々の手に集まる。

 

「これは」

 

「ジュウオウキューブウェポン!!」

 

その正体が分かると同時にキューブカジキが中心に、キューブカジキの先端にキューブツバメ、横にキューブセンザンコウがまるで刀身のように重なる。

 

巨大な刀身になったジュウオウキューブウェポンを支えるようにキューブキリンが合わさり、最後にキューブモグラがそれらの鍔となり、ジュウオウキューブブレイドが完成する。

 

「借りるぜ、地球の力!!」

 

その言葉と同時に構える。

 

ジュウオウイーグルの言葉に合わせるように残り4人はその背中を支える。

 

同時にジュウオウキューブブレイドはその巨大な刀身には様々な色の光を放ちながら

 

「ジュウオウキューブストーム!」

 

その一言と共に様々な色のキューブが刃を一振りで風の衝撃波と共に放たれる。

 

「っ!!」

 

すぐに防ぐように次々と木々が転生者の前に現れるが、それら全ては破壊されていく。

 

「なんでっ!!」

 

その最後の一言と共に、彼女は嵐の中に吸い込まれていった。

 

やがて全ての攻撃が終わったのか、彼女は地面に倒れながら、その身体から特典が抜ける。

 

「・・・・」

 

同時にジュウオウイーグルはその手にジュウオウチェンジャーのボタンを押すと同時に街へと生えた全ての木々と人々の記憶は消え、被害者が次々と蘇っていく。

 

「まったく、こんな大金がすぐに無くなるなんて」

 

「まぁ人の命には代えられないからな」

 

「どっどういう事なんですか?」

 

思わずクリスは状況について来れずに質問する。

 

「もしかして人を蘇らせる事もできるんですかっ!!」

 

「転生者の事件に巻き込まれた状況のみですけどね。

それでも、人を一人生き返らせるには100万円ですから、大金ですよ。

今回の10億なんて、すぐに消えてしまいますよ」

 

そう言いながらめぐみんは悲しそうに項垂れていた。

 

「・・なんで、私はただ」

 

「それは地球自身が望んでいなかったからじゃないのか?」

 

「でもっ」

 

そう言いながら既に力を失った転生者に対して、りんねは

 

「自然を取り戻したい心は確かに大切だ。

だけどな、過剰な行動はやがて地球をも壊す。

ゆっくりと一歩ずつで良いんだよ」

 

「一歩ずつ。

でも、そんな時間なんて「あるよ」えっ」

 

 

そう言い、りんねは空を見つめる。

 

「まだ、終わっていないから。

なんだって、まだこの星には可能性がある。

多くの人々と力を合わせる事ができる可能性が未だに残っているじゃないか」

 

「・・・綺麗事ね」

 

「それでも、目標がある方が良いだろ」

 

その言葉に納得したように転生者は立ち上がる。

 

「そうね、あなたのおかげで少し分かったかもしれないわ。

私がやるのは諦める事じゃなくて、私の知る未来へと進まないように努力する事だって」

 

その表情は、少し晴れやかになってたい。

 

そうして、事件は終わりを迎え、りんね達は残りの金を使い、駒王町へと帰っていく。

 

「あの、聞きたいのですが」

 

「なんだ?」

 

帰り道の中で、クリスはりんねにとある疑問をぶつけた。

 

「あの人はその自然を元に戻したいと言っていました。

経歴から見ても分かるけど、やっぱり人間が自然を壊したのが原因でしょうか」

 

「確かにそうかもしれない。

けどな、自然事態が自然を壊す事もある」

 

「えっ?」

 

それに疑問に思ったクリスは首を傾げる。

 

「台風、噴火、世界における災害の多くは人間の都市を破壊するけど、自然も破壊する。

それは自然の産物であり、同時に放っておいても自然は再生する時間は長すぎる」

 

「それは」

 

「結局は自然と人間。

何か欠けていても駄目なんだ。

支えあいながら生きる、それが地球だから」

 

そう言いながら、りんねは窓の外から見える景色を見る。

 

「そうですね」

 

そんな彼に同意するように、クリスもまた笑みを浮かべる。




今回は3名の方のアイディアを頂きました。
本当にありがとうございました。
また今回で登場したように、ジュウオウキューブウェポン同士が合体した武器などジュウオウジャーのブロック要素があったオリジナルを多く行っていきますので、興味がある方はぜひ活動報告をお願いします。

エイリアンマン様
転生者
NEME:自然の救済者
TYPE:アンノウン
賞金:十億円
概要:世界中を旅して、自身から溢れる再生の力で森や海の汚れやゴミを総て浄化し、自然を再生させている。ゴミを総て自然に還す事の出来る優しい物質に変えて、森や水を再生させるエネルギーに変える。また、総ての生命を惚れさせるフェロモンと、総ての生命を孕める特殊な子宮を宿し、此れを利用して生命の繁殖を促している。絶滅寸前の生き物ならば絶対に孕み、少し成長した状態で百体も産み落とす事が出来る。しかし、人間にはこのフェロモンは効かない。また、人間を孕む事は出来ない。寧ろ自然を貶す人間が彼女に触れてしまえば、それだけで死んでしまい、その死体は自然を再生させるエネルギーに変わる。分厚いアーマーを纏った状態で触ったり、乗り物で乗り上げようとしても、同じ事である。また、自然を汚す人間の攻撃は一切効かず、逆に攻撃した者へダメージ総てが跳ね返る。また、自分に触れた人類の生み出した文明や建物、開発した物を総て植物や生命力溢れる水、そして様々な動物に変える。兎に角、環境を壊す人間や文明を浄化し、自然を再生させるのが彼女の力と言えるだろう。
しかし、本人に戦闘能力は皆無。特典に頼りきりな所がある。

前世は環境保護団体の仕事に就いていた。しかし、人類が自然を汚し続けた結果、核戦争で自然や人間が総て滅びてしまう。その戦争に巻き込まれて死んだ彼女は、自然を再生させる事を願い、この特典を手に入れた。この特典を使い、世界中を回って自然を再生させる活動に取り組んでいる。しかしその反面、人間を触れただけで殺してしまえる事に不安を抱いており、天罰が下るのではないかと心底不安であった。環境を貶していても、やはり人間臭さを捨てられない所と、自然を再生させるという使命感が、彼女自身に『自身はただの環境テロリストだ』と自覚させてしまう。しかし、やめてしまえばまた自然が犠牲になる。そんな不満を抱いていく内に、何時しか賞金首になってしまい、いつか自分を殺しに来る者達に怯えながら、自然を再生しつつ逃げ続ける日々を送っている。


烈 勇志様

りんね 死神道具
名前:追跡鬼火玉
値段:500円
概要:逃げ足の速い悪霊や転生者を追う為に使われる道具。普段はビー玉サイズの玉だが、持ち主が見た相手の姿などをイメージして込めると鬼火となり、逃げた相手を追跡する。

ジュウオウキューブウェポン
名前:キューブカジキ
ジュウオウバスター連動時:カジキスピア
巨大武器時:カジキランサー
概要
カジキをモチーフにしたジュウオウキューブウェポンで、体色は水色。
ジュウオウバスター連動時は片手で使う槍となり、巨大武器時は突撃槍となってジュウオウキングの片腕に装備される。
必殺技は激流を纏って突撃して敵を貫く『キューブカジキ・ウェイブチャージ』

ジュウオウウェポンキューブ
名前:キューブツバメ
ジュウオウバスター連動時:ツバメサイズ
巨大武器時:ツバメボーガン
概要
ツバメをモチーフにしたジュウオウキューブウェポンで、体色は藍色。
ジュウオウバスター連動時は片手で扱う鎌となり、巨大武器時は弓となってジュウオウキングの片腕に装備される。
必殺技は嵐を纏った矢を放って敵を貫く『キューブツバメ・ストームアロー』。

はっぴーでぃすとぴあ
ジュウオウキューブウェポン
名前:キューブセンザンコウ
ジュウオウバスター連動時:センザンコウソー
巨大武器時:センザンコウスラッシャー
概要:センザンコウをモチーフにしたウェポンキューブでメインカラーは山吹色。
ジュウオウバスター連動時は大剣型のチェーンソーに、巨大武器時は片手剣型となりジュウオウキングならビックキングソードとの二刀流で戦う。

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