I・S~戦い続けるリンクス~   作:5時10分

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第01話

 

 

ジルベールは、死を覚悟していた。

それだけに今の状況は、驚愕に値するものだった。

目を開けてみると、ジルベールは自分が落ちていることに気づく。

「何なんだよ!これは!?」

驚いている間も地面に近づいていく。ただ落ちていくことに身を任せることしか出来なかった。

(搭乗者保護機能プログラム作動。ISを展開します。)

自分の頭に突然声が響いたがそれを気にする余裕はなく、目の前の建物から身を守る体勢を取った。

建物の天井を突き抜け、地面にめり込んだ。もうもうと土煙が立つ中、ジルベールは、なんとか立ち上がることが出来た。そして、自分の目線が普段より高いことに気が付いた。

(いてー。怪我はないようだげど何が起きたんだ?)

すると、頭の中に濁流がごとく流れてくる情報。その中には、なぜ自分が怪我を負わなかった原因があった。

(インフィニットストラトス(IS)?飛行パワードスーツ?おまけに装備は俺が使っていたネクストの武器と同じ……)

「すいませんが、動かないでください」

いきなり右の方から警告された。右の方に意識を向けると確かにオレンジ色のISを装備して銃を構えている少女がいた。

「嫌だと言ったら?」

「!!そんな男性パイロット!?」

警告を発した女は、驚き銃口をわずかに下げてしまった。だがジルベールは、その隙を逃さず、クイックブーストを起動して女に肉薄し顎に右手のライフルを押し付けた。なぜ自分がこんなことが出来たのか一瞬疑問に思ったが、今は一旦頭の片隅において目の前の女に集中することにした。

「立場が逆転したな。俺の質問に答えて貰うぞ!」

尋問を始めようとした時、頭上のガラス張りに明かりが灯った。

「いやいや、済まなかったね~。突然の事で荒っぽいことになってしまったのだよ」

いきなり現れた男は、別段本当に済まないと思っていないようだ。逆に目の前にご馳走が置かれている子供のように何かをこらえているようだった。

「お前がここのボスか?」

 ジルベールは緊張を解かず男を見る。

「ボス?まあ確かにそうだな。正確に言うなら社長だな。デュノア社の」

「デュノア社?聞いたことのない会社だな」

「聞いたことがない?」

「あぁ聞いたことがないな」

「まぁいいさ。聞いた聞いてないは、関係ないさ。それよりも、君が拘束している“それ”を解放してくれないか?我が社の貴重なテストパイロットなのだよ」

「解放した途端、襲ってこないという保証はない」

「わかった、ならこうしよう。ISを解除させるそれで文句はないだろう」

「わかった。それならいい」

すると、ジルベールが拘束していた女は光に包まれ気がつくとオレンジ色のISはなくなっていた。ジルベールは少女を解放した

「シャルロット、その方をここまで案内しなさい。」

 はいとシャルロットと呼ばれた少女は、ジルベールに近づいた。

「どうだい?少し話をしようじゃないか。お菓子も出すよ。とびっきりのやつをね」

 男は、見下ろしながら言った。ジルベールはその誘いを受けるしか他なかった。なぜなら今の彼には情報が全くないのだ。だから少しでも情報を手に入れるためには、危ない橋を渡るしかなかった。

「ああ、そうだな」

「ありがとう、待っているよ。忘れていたけどここの通路狭いからISを展開していると通れないよ」

「わざわざ、ありがとう」

 ジルベールは嫌味たっぷりに言ったが男は気にしなかった。男は消え明かりも消えた。いなくなったのを確認したジルベールは、ISを解除した。地面にうまく着地したあと少女(シャルロット)と向き合った。

「では、こちらです」

 ジルベールは、シャルロットの後に付いて行った。

 

 

 

「つまり君は、ここではない別の世界で傭兵をやっていたんだね」

「ああ、そうだ」

「君は、ミッションの最後、爆発に巻き込まれて気がついたらここにいたと」

「そうだ」

 ここには、ジルベールとデュノア社長しかいない。シャルロットは、ジルベールをここまで案内したら外で待つよう言われたのだ。お互いに自己紹介をした後、それぞれの知りたいことを聞いたのだった。

「傭兵は金さえあれば、どんなミッションをも受けるのでいいのだな」

「仕事の依頼か?」

 どうやら仕事の話にそれも何かものすごく嫌な仕事の話になりそうだったので、ジルベールは立ち上がろうとした。

「ま、待て。別に今すぐどこかを襲撃して欲しいとは言わないさ。ただ……」

「ただ?」

 ジルベールは立ち上がるのを一旦やめて話を聞くことにした。

「お願いがあるのだよ」

「『お願い』?依頼じゃなくてか」

 そう聞くと、ああそうなるなと言ってデュノア社長は続けた。

「当初の計画では、“あれ”に男装をさせて日本に現れた男性パイロットと接触させて機体データ、あわよくばDNAをとってくる予定だったのだが……」

 ここでいう“あれ”とは、外で待っているシャルロットのことだ。普通なら親が子をモノみたいに扱うのは非難されることだが、生憎ジルベールはそういった輩を見てきたし、デュノア社長とのやり取りで彼がどういった人物なのかを把握していた。故に非難はしない。

「俺が現れ、ここで協力すると言ったら後の半分は達成されるかもしれないと」

「話が早くて助かる。頼む、この通りだ」

 ジルベールの答えはもう決まっていた。

「嫌だよ」

 ためらうことなく断った。

「なぜ!金は払うぞ」

 逆に断らない奴がいるかよと内心毒付きながら言った。

「ISの男性パイロットは貴重なんだろう?承諾したら何をされるかわかったもんじゃない」

「そうかあ、残念だよ。仕方がない。代わりとしてだな」

「変わりじゃなくてそっちが本命だろ?」

「ふっ、バレてたか」

「傭兵をなめんなよ」

 ジルベールは睨むがデュノア社長は怯えることなく言った。

「君に頼みがある」

 デュノア社長は、一旦ジルベールの顔を見た。ジルベールは軽く顎を動かし先を促す。

「日本に行って、我が社の広告塔になってもらいたい」

「なぜ?」

「さっきの話を理解できなかったのかい?」

 ジルベールはむっとしたがデュノア社長は構うことなく続ける。

「男性パイロットだけでも十分すぎる注目を浴びるんだ。さらにその男性パイロトが使うISも同じように注目されるんだよ」

「貴様、俺に飼い犬(ピエロ)になれと?見世物はごめんだ。」

 ドスのきいた声で言った。

「そうなっちゃうよね。でも、それに僕は似合う対価を支払うつもりだよ」

「“つもり”じゃだめだ。確約しろ」

 デュノア社長は腕を組んでぶつぶつと何か言っている。

「月収制になるけどいいかな?」

「で、いくらだ?」

「30000ユーロでどうだい」

 デュノア社長にはこれで手を打ってくれるという自信があった。だが、ジルベールは納得しなかった。

「だめだ。3っていう数字は嫌いだ。5か10のどっちかにしろ」

「ちょっと待ってくれ。30000なんてフランスの平均年収より多いんだぞ!!」

「そんなもん知るか。で、どっちにするんだ?」

 デュノア社長の顔が青くなっているのをよそにジルベールは出されている紅茶を飲んだ。

「“5”で」

 デュノア社長は苦虫を噛み潰したような顔をして言った。

「随分少なく出たな。社長はさっき『男性パイロットは十分すぎるほど注目を浴びる』って言ってたよな。もうちょっと上げてくれてもいいんじゃないか?」

 最後にこれが駄目だったら依頼受けないよと付け加えた。

「“6”でどうだ?これ以上はでせん」

「もう一声!!」

「君はもっと上げろと!?」

 デュノア社長はさらに顔が青くなった。

「これでも安いほうなんだぜ。前じゃ億単位の金だったからな。で、どうなんだ?」

 億単位と聞いてデュノア社長は目を見開いた。

「6.5これが限界だ。その代わりにサポートをするから頼む」

 デュノア社長はゲッソリと痩せているように見えた。

「サポートって?」

「君のその機体の修理と弾薬調達にかかった費用は全てこちらが持つ。それと元の世界に戻れるように協力する。でどうだい?」

 ジルベールは少し考えた。

「質問がある」

「なんだ?」

 質問と聞いてデュノア社長は警戒した。そんな様子を見てジルベールは笑った。

「すごく自然なことだよ。俺は、昨日までこの世界にいなかった。それなのに俺を日本にどう行かせるんだ?」

 まっとうな質問。デュノア社長は慌てる胸を下ろして言った。

「それなら心配ない。こちらでなんと手を打っておく」

「わかったよ。じゃ、報酬は月65000ユーロとサポートで決まりだな」

「高い広告料だな」

 デュノア社長は苦笑いをした

「なに、報酬に似合う分だけの働きをするさ」

「そうでなくちゃ困るよ。期待している」

 ジルベールとデュノア社長は握手をした。それはとてもイイ笑顔で。

 




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