「あんた、それでも代表候補性?」
「鳳さんだって、酷い動きでしたわよ」
「なんで、一発も当てられないよの」
「鳳さんも人のことが言えるのですか?」
お互いに文句をぶつけながら降りてくる。二人はとってもみっともなく見えた。
「オルコットさんも鳳さんのこれからですから気にすることはないですよ」
真耶は二人の前に降りた。
「諸君もわかったと思うがこれが教員の実力だ。敬意をもって接するように」
「「「「「はい」」」」」
「では、グループごとに分かれてISの基本動作を行え。それとジェスト」
「なんですか、織斑先生?」
「お前は、こっちに来い。試験だ」
試験と聞いて周りがざわめきだす。
「試験は免除になったはずでは?」
ジルベールは、腑に落ちないようだ。
「いくら専用機持ちとはいえ実技までは免除にはできん。だが安心しろ。形だけだから、不合格はまずない。それとデュノアはもう終わっている」
「わかりました」
ジルベールは渋々、千冬のほうに行きと同時にISを展開する。
「展開に一秒ともかからないか。やるじゃないか」
「ありがとうございます」
ジルベールのISに皆が注目する。
「ジェスト君のって」
「デュノア社が独自に開発した第三世代機ストレイド。機体制御にイメージインターフェイスを導入した機体。つまり、ミサイルや弾丸を視認してから避けることが可能ですわ。ですが私とブルーティアーズの敵ではありませんわ」
「おおー、流石セシリア。詳しいね」
「候補生なら当り前ですわよ」
さっきの負けを挽回するかのように自信ありげにセシリアは言う。本当は違うんだけどと内心ジルベールは愚痴った。
「だとさ、ジェスト」
千冬はジルベールに笑いかけた。
「俺には関係ないです」
「つまらない奴だな。相手はまあ、わかっているが山田先生だ」
「よろしくお願いしますね」
「こちらこそお願いします」
「山田先生が実演したところまで行ってくれ」
二人とも位置につく。眼下の生徒たちは米粒くらいの大きさだ。確かにこれくらい離れているのなら安全だ。
「制限時間は五分だ。それまでにどちらかのシールドエネルギーが尽きたらそこで試験終了だ」
「「はい」」
「試験開始!!」
ジルベールは試験開始の合図と同時に肩と背中のミサイルを起動しレーザーライフルで真耶を撃つ。
だが、撃った弾は避けられマシンガンの反撃を食らう。
ジルベールはクイックブーストで避け、ミサイルを発射する。三十二の連動ミサイルと八つに分裂するクラスターミサイル。計四十発のミサイルが忠実な猟犬のごとく真耶に襲い掛かる。
「なっ!?」
真耶はミサイルの多さに驚く。だが、真耶がここで負けてしまっては、教師の名折れ。通常の起動で避けきれないと判断すると
ジルベールは
しかし、真耶は背中に目があるかのような動きをし避けた。
ジルベールと真耶は向かい合う。
「一瞬、ヒヤリとしましたよ。ジェスト君、素晴らしい動きです」
「ありがとうございます」
言い切る前にジルベールは再びミサイルを発射する。真耶も同じ手を食らわない。すぐに
ミサイルの中に一つだけ大きくそして速いものがある。ジルベールだ。
ジルベールはミサイルの発射した一瞬後にオーバードブースートを起動し真耶を追いかけた。
追い抜かしざまに真耶の背中にレーザーブレードで切り裂く。真耶は
クイックターンをしようとしたときジルベールの背中に衝撃が走る。
振り返ると真耶の両手にはグレネードランチャーが装備されている。真耶はジルベールと目があったのが判ったのか悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべた。
二門のグレネードランチャーがジルベールに火を噴く。クイックブーストとダブルクイックブーストの駆使し避け真耶の死角に入りこもうとする。
真耶は持っている全ての武器を使って、死角に入らせまいと攻撃をする。だが、この時すでに真耶はジルベールの罠にはまっていたのだ。
ジルベールは死角から攻撃するのではなく、そうするように見せかけて接近戦で仕留めようとしていたのだ。
真耶が気が付いたときはすでに時遅し。ジルベールがすぐ傍まで来たとき真耶はブレードを展開する。しかし、タッチの差で間に合わない!!
負けると真耶が思ったとき試合終了のブザーが鳴った。
「「ふー」」
地面に降りてISを解除する。試験が終わって二人の緊張の糸が緩んだ。生徒たちの中には拍手をする者がいた。それが全員に広まりジブベールたちを包み込む。
「本当に今まで一回もISに乗ったことがないんですか?」
真耶は笑顔でジルベールに尋ねた。
「はい、よく言われます」
ジルベールは肩をすくめた。
「スゲーよジルベール。今度ISを教えてくないか?」
一夏は興奮気味にジルベールに駆け寄る。
「一夏、私の教えでは不満なのか?」
「一夏さん、私のほうが教え方が上手でしてよ」
「私じゃ不満なの!?一夏!!」
女子が三人、一夏に詰め寄る。
「コーチは多いほうがいいだろう?そうは思わないか、ジルベール」
女子三人がジルベールを睨んだ。思わないと言え、そう女子三人は訴えているようだ。
「なあ、イチカ。三人を紹介してくれないか?」
明確な答えを出さずにジルベールは話題をそらすことにした。
「そうだったな、悪りい。右から、篠ノ之箒。セシリア・オルコット。鳳鈴音だ。箒とリンは幼馴染、セシリアはここで知り合ったんだ」
「よろしく、みんな」
「ああ、こちらこそ」
「よろしくお願いしますわ、ジルベールさん」
「ま、私は違うクラスだけどよろしく」
気が付くとジルベールの周りには人だかりができいた。周りの皆も一夏と同じような感じだ。
「こら、何をしている。時間は限られているのだぞ。さっさと戻らないか」
千冬が注意すると蜘蛛の子を散らすかのようにISの実習に戻った。
何事もなく夜を迎えた。ジルベールは、今、寮の屋上にいる。ジルベールは目の前に広がる海を眺めている。何の変哲もない海はジルベールにとっては珍しくそして美しいと感じられた。同室の一夏には飲み物を買いに行くと言ってここにいる。
後ろで何か気配がするが何もしてこないのでほおっておくことにした。
扉の開く音がした。ジルベールは振り返るとシャルロットがいる。
「なんだ、お前か」
「すいません、私で」
「別に謝られるようなことじゃないさ」
また、海を眺めた。
「なんでここに?」
「ジルベールさんがここにいるって聞いたので……」
シャルロットの声がどんどん小さくなる。
「俺になんかよう?」
「きょ、今日の試験見事でした。素晴らしかったです」
顔を見なくてもジルベールにはぎこちなく笑っているのがわかる。
「もしかして、それだけを言いに来たのか?」
「え、えーと」
「もう、用がないんだったら」
「あ、あります!!」
シャルロットは遮った。
「フランスにいたとき、私が協力する理由がないって言ったとき残念だと仰いましたよね。何故ですか?」
「お前は自分なりに考えてみたのか?」
「はい」
「で、答えは出たのか?」
「いいえ」
そうかとため息をつきシャルロットに近づく。
「シャルロット、自分で考えたことは褒めてやってもいい。だけど、人に答えを聞くのはいただけないな」
「………教えては、くれないんですか?」
「人から聞いた答えに何の意味がある?」
当たり前だろという顔をした。
「じゃ、どうしろっていうんですか!?」
「悩み、足掻けそしてもっと考えろ。今度二人っきりで会うことになったら答えが聞けることを楽しみにしているよ」
シャルロットを残してジルベールは、屋上から出た。
同時刻のIS学園の教員室。殆んどの教員はいないがまだ残っている者がいる。
「もう、こんな時間ですか。織斑先生、生徒たちの消灯の点呼を取りに行かないといけませんね」
「そんな時間か。山田先生、代わりに行ってくれないか?」
千冬は伸びをしながら言った。
「私が行ったら、点呼どころじゃありませんよ。織斑先生が行っていただかないと」
前に一回頼んだら、気が付いたら、真耶は生徒たちと一緒になって遊んでいたのだ。それを思い出した千冬は困った顔をした。
「この報告書が終わっていないんだよ」
「だったら、代わりに私がやっておっきましょうか?」
「いいんですか?」
千冬は嬉しそうに聞いた。
「はい」
「じゃ、お願いするよ」
「本当は、押し付けるが狙いでしたよね」
ニヤリと真耶は千冬に笑いかけた。
「ばれてました?」
「何年、織斑先生と一緒にいると思っているんですか?」
「で、ちなみに何時から?」
「報告書を今日、提出するように指示があった時から」
千冬は降参のポーズをとった。真耶は満足したようだ。
「男性パイロットだからですかね?今日中に報告書を出せ、なんて指示は」
「そうかもしれんな」
「ジェスト君の動きはどうでしたか?織斑先生からみたら」
千冬は首を捻った。。
「良くもなく悪くもない。そんな感じかな」
「おお、手厳しいですね。私だったら満点をあげちゃいますよ」
「逆にまだISに乗り始めたあいつが何であんな動きができたのか、そこが不思議だ」
千冬の顔が険しくなった。
「考えすぎじゃないんですか?織斑君だってセシリアさんといい勝負をしましたし」
「あいつの場合は機体性能に助けられただけだ。実力じゃない」
「じゃ、何だって言うんですか?」
千冬はまた首を捻る。だが胸の中にあるしこりのようなものをどう表現すればいいのか判らなかった。
「私から聞いといてなんなんですけど、時間気にしてくださいね」
真耶に指摘され千冬は時計を見るなり慌てて教員室を出ようとした。
「織斑先生」
真耶は引き留めた。なんだと千冬は振り返った。
「廊下、走っちゃいけませんよ」
「お前は、先生か」
千冬は小さく笑う。
「はい、私は先生です」
満面の笑みで真耶は答えた。
(ジェストか、あいついったいどんな何者なんだ?)
千冬は寮に向かって走りながら考えていた。
(あんな動きができる生徒はそういない。もしかしたら何かしらのアクションを起こしてくるかもしれない)
途中まで手加減していたとはいえ真耶にあと一歩で勝てたのだ。疑うのも無理はない。
(
千冬は結論を出した。教師が生徒を疑うとは、と自傷気味に笑いながら。
寮に着くと千冬を見た生徒は皆、自分の部屋に戻った。
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