I・S~戦い続けるリンクス~   作:5時10分

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第06話

 

 

――NEXT専用格納庫 

 

 

 

 

 

 NEXTが一機、ガントリーに接続されている。任務から帰ってきたばかりなのか至る所に損傷が目立つ。

 格納庫の待機所から声が聞こえてくる。

「なぁジル、もうそろそろやめにしないか?」

 セレンがジルベールに膝枕をしている。メイド服で。普段の彼女からは想像がつかないような艶めかしい声が響く。そんな声を聞いているせいかジルベールの顔はとても満足にしている。

「いやだ」

「なぜ!?」

 ジルベールの反論にセレンは顔をリンゴのように真っ赤にして反論する。

「だって、この感触が好きなんだもん」

 ジルベールはセレンの太ももと尻を撫で回す。セレンは撫で回されるたびに嬌声をあげる。

「それにセレンさん、任務が終わったら俺のやりたいこと決めておけって言ってたじゃん」

「なぜこれなんだ!『付き合ってくれ』っていうから付き合ったって言うのに!」

「一度でもいいからやってみたかったんだ」 

 満面の笑みを浮かべてジルベールはセレンを見上げる。

「こ、このエロガキ!!」

 顔を険しくして起こったところで普段の覇気は全く感じられない。逆にどこか可愛らしさを感じる。

「今度は写真でも撮ろうかな~」

「なんでそんなことになるんだ!?」

 ジルベールは、いいじゃん、いいじゃんと言ってセレンの膝枕を堪能している。

「じゃあさ、その写真私にも見せてくれないかな?」

 当然、セレンの声ではなく別のどこかで聞いたことのある声がしてジルベールは飛び起きる。

 

 

 

――放課後 IS学園 生徒会室

 

 

 

 

 

(なんだ、夢か)

 ジルベールが目を覚ますとさっきまでとは違う光景が広がっている。まだ少し痛む頭を押さえながらソファから起き上がった。

「お目覚めのようね」

 ジルベールのテーブルを挟んだ向かい側のソファに一人の女子生徒が座っている。

「あんたは確か……」

 ジルベールは何とか思い出そうとするがなかなか思い出せない。

「一応、もう一回自己紹介をしとくね。私は更識楯無。この学校の生徒たちの長よ」

 あと、さっきはごめんねと付け加えて。

「さっき?」

「あれ!?覚えてないの!!」

 楯無の顔に驚きが見て取れる。

「会長はいちいちやりすぎなんです」

「あはは、ごめんごめん虚ちゃん」

 ジルベールの後ろからお盆に湯呑をのせてウツホチャンと呼ばれた女子生徒が現れる。制服のリボンの色からいって三年生であろう。

「私に謝ってどうするんですか。ジェスト君に謝るのが先なんじゃないんですか」

 虚は軽くため息をつきながらテーブルに湯呑を置いた。楯無は口を尖らせている。

「ごねんね、ジェスト君。乱暴な真似をして。でもね、ジェスト君が素直に聞いてくれたら痛い思いをしなかったんだよ。だから」

 そう言って楯無はどこからともなく取り出した扇子を勢いよく開いた。扇子には『身から出た錆』と書かれている。

「ふざけすぎです」

 虚は楯無の頭にチョップを繰り出した。ジルベールは自分の目の前で繰り広げられているコントのようなやり取りについていけずただ茫然と見守っていた。

「う~、痛いよ虚ちゃん」

「まだ、ありますか?」

「いえ、何もありません」

 涙目を浮かべながら文句を言おうとした楯無だが虚の不気味なまでに素晴らしい笑顔の前では何も言えなくなった。

ふう、一呼吸を入れ真剣な表情に戻る楯無。

「もう、すでにわかっていると思うけどここはIS学園の生徒会室です。ジェスト君、貴方をここに連れて来たのは再度の取り調べのためです」

「取り調べ?」

「はい、フランスにいたころでも受けていたと思いますが私が必要だと考えたのでもう一回受けてもらいます」

「拒否権は?」

「ありません」

 ジルベールは苦虫を噛み潰したような顔になった。

「わかりました。では、説明します」

 虚が調書を取る準備を始める。

「俺が物心つくころにはもう孤児院にいました。だから両親の顔は覚えていません。孤児院が閉鎖後はどこかに行くあてもなく、ただその辺をうろついてその日暮らしをしていました。そんな暮らしが何年か経ってからふと思いついたんです。『ISを盗んでそれを売れば一生遊んで暮らせる』ってね。そのあとはデュノア社に忍び込んでISのコアに触れたら俺も起動できるって判明したわけです」

 ジルベールは楯無を見る。彼女はまだ完全には納得していないようだ。

「『その日暮らし』って言ってたけど具体的には何をしてたの?」

「それはですね、適当にその辺のものを盗んでた、だけですよ」

 肩をすくめるジルベール。

「本当に自分でISのコアを盗もうと考えたの?」

「本当ですよ」

「もし報復を恐れているならジェスト君、全力で君を保護するわよ」

「報復って……。自分で考えて盗みに入ったんですよ」

 何かを疑う楯無にジルベールは苦笑いを浮かべる。

「……そう。何か言いたくなったらいつでもいいわよ」

 ジルベールをそんな様子を見て何も聞き出せるものがないとわかったのか楯無は落ち込んでいるように見える。

「じゃあこれでおしまいですね。俺は失礼します」

 そんな彼女を置いてジルベールは生徒会室から出ようと扉に近づいた。

「あ、そうだ」

「なんですか?まだあるんですか」

 いい加減にしろ、そう言わんばかりの空気をジルベールは出したが次の楯無の一言でそれは急激に萎む。

「“セレンサン”って誰?」

「誰ですか、その人?」

 何事もなかったかのようにジルベールは失礼しましたと言って生徒会室から出だ。

「お嬢様はどうお思いになられましたか?」

 今まで調書を取っていた虚が口を開く。――どう思う。それは楯無が追っている案件に関わっているかどうかのことだろう。

「グレーね。まだ断定することはできない。ジェスト君の周辺人物について調べといて。あと、セレンっていう人物にも」

 今回の取り調べでジルベールは何かを隠してると楯無は直感でそう感じた

 

 

 

――放課後 IS学園 アリーナ グラウンド

 

 

 

「はぁ~~~」

 一夏はここに来てかれこれ二桁を超すほどの溜息をついている。原因は目下のところ目の前の三人のコーチである。

「あんた、私の前で溜息って何が不満なのよ!?」

 鈴が一夏に詰め寄る。と言っても一夏はISを展開していて鈴のISは点検中で今は展開していない。それはセシリアも同じだ。傍から見ると鈴が一夏にじゃれているようにしか見えない。

「それはファンさんの教え方が下手だからじゃないんですか?」

「確かにそれは言えてるな、セシリア」

 セシリアの意見に箒が肯く。鈴の額に青い筋が浮かぶ。

「あなたたちの教え方のほうが私より数段下手よ!」

 それがきっかけで鈴、箒、セシリアの言い争いが始まる。それを見ている一夏は彼女たちを置いて地上を離れた。

「教えてくれるのは嬉しいんだけど全然わからないいだよな。ジルベールはいいけど」

 一人愚痴る一夏。それも仕方ないことだろう。コーチそれぞれの独特の教え方――擬音語、感覚、完璧すぎる理論――は一般人にとって理解するのが難しすぎる。

「今日は何をしようかな」

「私と()()()はどうだ?」

 一夏へ一方的な通信。それと同時に下からいきなりの砲弾の攻撃。直撃こそは免れた一夏だが大きく機体のバランスを崩してしまう。

「何すんだ、いきなり!!」

「貴様が暇そうにしてたからな、模擬戦の相手をしてもらおうと思ってな」

 一夏に攻撃を仕掛けたのはラウラだ。ラウラは一夏の近くまで来ている。

「断る。お前と()()()をする理由がない」

「つれないことを言うものではないぞ、織斑一夏!!」

 ラウラのIS――シュヴァルツェア・レーゲンのリアアーマーからワイヤーブレード6本が展開され猟犬のごとく一夏に襲い掛かる。

「なっ!?」

 とっさの出来事に一夏は逃げることしかできない。

 回避に専念したおかげで直撃こそは受けなかったもののラウラから大きく離れてしまった。

「まだまだこれからだ!!」

 シュヴァルツェア・レーゲンのレールガンが火を噴く。同時に一夏に襲い掛かるワイヤーブレード。

 だめだ、避けきれないそう思った一夏の前に何かがラウラの攻撃から守った。

「ちっ、型落ち(アンティーク)が出しゃばって。そろそろ後身に道を譲ってもらおうか」

「出しゃばる?それはあなたのほうでないの。それに試作段階の機体で粋がるのはお笑いものね」

 忌々しく吐き捨てるラウラ。そのシャルロット(相手)は楯から瞬時に銃に切り替え一歩も引かない構えを見せる。

「よく言うな。やっと第三世代機を開発したというのに」

 シャルロットに影が差す。ラウラは満足そうに下がっていく。

「まあ、いいだろう。織斑一夏はいつでも倒せる相手だとわかっただけでも良しとしよう」

 残されたシャルロットと一夏は言いようのない敗北感が胸に広がった。

 

 

 

――夜 IS学園 寮 食堂

 

 

 

 放課後のアリーナの一件は多くの生徒に知れ渡っている。無論、ジルベールのその一人だ。

「聞いたぜイチカ。今日、ボーデヴィッヒとやったんだって」

 夕食をのせたトレーで一夏に突きにかかるジルベール。流石に一夏はムッとする。

「その話は今はしたくない」

 他人にはあまり触れてほしくないところに触れてきたジルベールに素っ気無く答え一夏はある人を探している。

「あ、いたいた。ジルベールあそこで食おうぜ」

「おい、いいのか?あの三人にバレたら怒られるどころの騒ぎじゃ……」

 先を行く一夏。その先には一人淋しく夕食をとっているシャルロットがいる。

「ここいいか?シャルロット」

 声をかけられたシャルロットは目を見張る。

「い、いいよ。織斑君」

「サンキュー。ほら、ジルベールも早く来いよ」

 ジルベールと聞いてシャルロットの顔は強張る。

「いや、俺は別のところで食べるよ」

「お前にも話があるんだよ」

 一夏はジルベールを無理やり座らせる。ジルベールはさすがに諦めたようだ。

「話って何?織斑君」

 その前にと言って一夏は姿勢を正した。

「今日は助けてくれてありがとう。正直、あのまんまだったら不味かった」

 一夏はシャルロットに頭を下げた。

「別にお礼を言われるようなことはしてないよ。流石にラウラさんのあれをどうかと思っただけで……」

「それでも俺はありがたいと思ったんだ、ありがとう」

「う、うん」

 そこで会話が途切れ沈黙が流れる。

「話ってなんで?」

 沈黙を破ったのはジルベールだ。彼はもう食事を片付けたようだ。

「そうだっけ。シャルロット、俺にISの操縦を教えてくれ」

 一夏は真剣な眼差しでシャルロットを見つめる。

「なんで、私なんか?確か、私になんか頼まなくても足りてるんじゃないかな」

「そうだぞ、一夏。あの三人にはどう説明する?」

 シャルロットの意見にジルベールが同意して彼女は驚くが一夏はそれに気が付かない。

「それは……、なんとかする。だから、俺にISの操縦を教えてくれ。頼む」

 一夏に深々と頭を下げられたシャルロットはちらりとジルベールを見たが知らんぷりを決め込んでいる。

「……私なんかでよければ」

「本当か!!ありがとう!!」

 一夏の表情がパッと明るくなる。

「そんなことだから、ジルベールもよろしく」

「ごめん、イチカ俺は無理だわ」

「なんでだよ!?」

 断らないであろう相手からのまさかの拒絶の反応。一夏は驚く。

「俺、デュノアのことが嫌いなんだわ。だから無理」

 一夏は何も言えず、シャルロットは俯く。

「先に返っているわ」

 そんな二人を置いてジルベールはすたすたと歩いて行った。

 

 

 

「別にあんな風に言わなくても」 

 一夏の顔にはあからさまに不満が見て取れる。

「仕方ないよ、織斑くん。私、ジェストさんにがっかりさせたんだもん」

「でもな~……。あっ、シャルロット、俺のことは一夏でいいぜ。織斑が二人もいるとややこしいからな」 

シャルロットの複雑な表情をみて一夏は話題を変えた。

「うん、わかったよ、一夏君」

「おう!よろしくな、シャルロット」

 自然と二人は微笑みあう。

「そう言えば、シャルロットのISってなんだ?なんかこの前、山田先生が使ってたのと同じように見えたんでけど」

「それはね、私が使っているのはラファール・リヴァイヴのカスタム機からなんだよ」

「へーそうなんだー」

 目を輝かせる一夏。シャルロットの表情は明るくなる。

「うん、具体的にはね……」

 それから二人は食堂が閉まるまでISのことや趣味や愚痴あといろいろなことを話し続けた。

 もちろん、食堂でのことは例の三人に伝わり、一夏がどうなったかは語る必要はないだろう。

 

 

 

 

 

 

 





お久しぶりです。
お待たせしまい申し訳ありません(泣)
詳しい説明は活動報告で……。

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