ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
※今回短めなのでいつもより雑かもしれません、本気の駄文に注意でございまする。
「んー……」
「あれ、何やってんの?」
「占いだとよ。キングビョーゲン様の気持ちを射止めるか否かの」
「何それ……」
シンドイーネの睨みつける先には、黒のハートが小さく、と対称にそれが真っ二つに掛けた大きな絵の的が描かれていた。それをダーツの矢で標的を狙おうとしている。
ダーツと言えば、大昔は形の通り、狩猟の為に使用していた矢であった。
それが、中世で起こった戦争の最中、酒場に屯していた兵士達が、余興で樽の鏡目掛けて矢を何本も放ったことがきっかけで近代では射的競技の一つになっているそうです。
「ふーん……」
「……で、何で急にそんな豆知識を言い出したんだ」
「すみません。私は教師のように生徒に知識を叩き込ませたい性格なもので」
「そこうるさい!今練習してんだから、集中乱さないでくれる?」
「練習?占いの練習だなんて聞いたことがないぞ」
「あるんです~!いい結果を出す為には練習必須なんです~!!」
そう言いながらヤケクソ気味に放つも、外れの的のど真ん中に命中した。
……悔しそうに声を荒げているが、角度的に正解の方に当たる筈がないので私自身、惜しいなどと気遣えないでいた。
「……まあ、占いの練習というのは私も存じ上げませんが、努力することは大事なこと。『人事を尽くして天命を待つ』です」
「やれやれ、馬鹿馬鹿しい」
私の教えを面倒だと言うように聞き流したダルイゼンは、今日が自分の出番だと知り、トボトボとこの場を後にした。
──ー
「陸上してるちゆちゃんは、生きてるって感じがするよね」
「分かる〜!ハイジャンプの時は、めっちゃ生きてるって感じ!」
今日もネット越しでちゆの得意競技であるハイジャンプをメインに陸上部の練習風景を見学していた。
「それにしても、陸上部気合い入ってるよね」
「大会が近いとかじゃなかったか?」
その影響で、最近は部員がランニングやトレーニングをしている姿に気迫が伝わる。ほとんどの奴らはこの大会を目標にしているんだろう。
「けど、ホントに凄いよねちゆちゃん。県大会の記録をこの前越えたし、優勝できるんじゃないかな」
「安心するのはまだ早いかと」
別の声の主の方へ振り向くと、そこにはもう見たくもない程見慣れた人物が突っ立っていた。
「またお会いしましたね、すこc「またお会いしましたねじゃねえよ敏感ジャーナリスト」何でいつも割り込むんですか!あと敏腕です!!」
「安心するのは早いってどういうこと?」
「我がすこ中陸上部の永遠のライバル、西中陸上部。その実力を推し量るべく、この僕すこ中ジャーナル編集長自ら取材に赴いた訳ですが……」
そう言って益子は自分が身に着けていたカメラを僕達に渡した。
そのカメラの画面には、別の学校のユニフォームを着た生徒がハイジャンプをする姿が写っていた。
「ご覧下さい。コレは、県大会の最高記録を、そして沢泉さんの自己ベストを超えています」
写真を見ただけでは分からないが、確かにバーの高さがかなり上に置かれているのが捉えられた。
「沢泉さんの特集を考えていたのですが、雲行きが怪しくなりましたね」
益子の言葉に、二人の表情は暗くなってしまう。
相変わらずこうやって夢を見させずに現実を突きつけてくる態度は変わらないようだ。こいつには良心ってものがないのか?
「何見てるの?」
「「うわぁ!」」
不意に背後から声を掛けられ、慌てふためくのどかとひなた。その隙に僕はカメラの画面を遠ざける。
「ど、どうしたのちゆちー、休憩?」
「これはナイスタイミング!ぼくのスクープ写真を是hふぐあぁっ!?」
こいつには良心ってものがないのか?(二回目)
ちゆにまで現実を突きつけようとするデリカシーの欠片もない眼鏡に、僕は押し退ける感じで蹴り飛ばした。
「何でも無いよ!か、可愛いクラゲの写真を見てたの~……」
「そうそう!西中陸上部の写真とか全然見てないし!」
「おい」
「あっ……」
薄々嫌な予感は感じていたが、こんなに早くフラグを回収するとは思わなかった……。
流石に言い逃れ出来そうにもないと思ったので、仕方なくカメラ先程のカメラの画面を見せることに。
「気にならないと言えば嘘になるけど……」
「けど?」
「陸上は自分との戦い。私のライバルは私だから!」
周りの人達に勝つことではなく、自分の結果を塗り替えること。それが、ちゆ自身の率直な思いだろう。
彼女はそれだけを言い残して練習場所へと戻っていく。
気にならないと言えば嘘になる……その思いは、練習でも隠し切れないままでいた。
ちゆはハイジャンプにおいてはどんなハードルでもミスすることなく乗り越えて来たそうだ。しかし、この一回で彼女は初めてミスを犯してしまった。
当然、ちゆだって人間なんだから失敗の一つや二つすることもおかしくない。だからこそ、彼女や周りの部員も何があったかとかなり困惑していた。
まるで出来るのが当たり前だと思っていたことが、突然出来なくなったように……。
──ー
波の音、潮の匂い、頬を撫でるような生温かい風。
夜明けの海辺でこれらを感じ取ってみると、凄く心地が良い。
今日は何となく身体を動かしたい気分だったので、朝早くから砂浜までランニングをしていた。休憩がてら日陰で目を閉じてみると、体内や脳内が洗われるような感じがして心が癒される気分になる。自然の音というのは本当に恐ろしい。
「あれ、飛鳥くん?」
と、少しウトウトしていると、ほんの少し遠くから誰かが自分の名前を呼ぶ声がした。
「……やっぱ来たか」
「飛鳥もランニングしてたんだ」
「まあ、そうだな」
ちゆ、ひなた、のどかの順番にこちらに駆け寄ってくる。前二人はそれほど疲れを見せてはいなかったが、
取り敢えず、僕達は自然を感じ取りやすい場所で腰を下ろすことにする。
「ぷはーっ、ふっかーつ!」
少し前に買ったスポーツドリンクを、のどかはガブガブと飲んでいく。一気に約4分の1も飲んだ後、流れるようにちゆに尋ねた。
「いつもここ走ってるの?」
「時々ね。砂浜を走ると、普段は使わない筋肉に良い感じで負荷を掛けられるから」
「ふわぁ、陸上の選手ってそんなことにまで気を使って走ってるんだ~」
「本当のこと言うとそれだけじゃないんだけどね」
と、意味深な言葉を発し、ちゆは身体を縮こませて再度口を開く。
「小さい頃は泳ぐのが好きだったの。ある日、いつものように海に出て、夢中に泳いでたのね。気が付いたら、そこは青一色の世界だった。空と海が溶け合って一つになっていて、このまま海を越えて空まで行けそうな……空を泳いでみたいって思った。それがハイジャンプを始めたきっかけ」
青一色の世界、今僕達が目の前に映されている景色と合致したものだろう。
「自分の限界を感じた時、海を見てるとまた飛ぼうって思えるの。海と空が溶け合ったあの青い世界に近づく為に。でも、今日は海のおかげじゃなくて、皆のおかげね。ありがとう」
そう感謝の言葉を告げる彼女は、失敗を次に繋げようと、自分に限界なんてないんだと前向きに捉えていた。と言っても、これは僕がそう感じただけのことであって本当にそうなのかは定かではない。
人は互いに外面は捉えることが出来ても、内面を掴むというのは非常に難しい。
更に、心の奥底では苦しいと思っていても、他人に心配を掛けさせまいと強がってしまうのも人間の面倒な性質である。
だから、本当は辛いんじゃないかとか余計に考えてしまうために、感謝されてもやるせない気持ちでいた。
「ぅえ────ーっ!!!」
「どうしたの!?」
「……あ、もうすぐで学校始まる」
「「嘘!?」」
ひなたがまたもスマホを見るなりまたも叫び始め、そういえばと僕もポケットからスマホを取ってロック画面を見てみると、”7時45分”と時刻の画面が。あと少しでHRが始まるという時間にまで経っていた。
「もうちゆちー!何で教えてくれなかったの!!」
「え、私!?とにかく急ぐわよ!」
別に自宅から学校までの道のりはそれほど長くないので急ぐ必要はないというのは皆同じなのだが、それぞれ支度を終えていない。平光ひなたに関しては朝食すら取っていないせいで遅刻確定の危機に陥っていたのだ。
……飯食わないでランニングって体力お化けにも程があると思う。
──ー
その日も、ちゆは失敗ばかり続いていた。
それでも諦めようとはせず、ただひたすらに挑戦する。そういう彼女をネット越しから見ている僕達の感情は、揃って複雑だった。
「……イップスかもな」
「え?」
「それまで簡単に出来ていたことが突然出来なくなり、出来なくなったことが気になって更に出来なくなる精神的な運動症状。それで有名なスポーツ選手が引退したってケースもちらほら聞く」
野球選手に掛かることが多いらしいのだが、陸上選手も決して例外ではないだろう。
「……そのリップスってのにちゆちーはなっちゃったの?」
「リップスじゃなくてイップスだ、と言ってもその可能性があるってだけだ」
「じゃあ、無理しちゃダメって伝えに行った方が……」
「言っても聞かないと思うぞ」
「どうして……?」
……それくらい、あいつにとってこの大会が大事なんだよ。
──ー
去年もこういうやり取りはしていた。多分、ちゆと仲が深まり始めたのはそこからだろう。
「……はいこれ」
「……え、ありがとう」
部活が終わり、マットの上で仰向けになって黄昏れている彼女に一本のジュースを愛想なく渡す。
当時の僕は今みたいに誰かと共に行動することはおろか、話しかけることも一切してこなかったので、いつも珍しいことされると周りから驚かれていた。別のクラスであったちゆもその一人である。
「最近、調子が悪いって聞いた。あんたの事だから少し気になってな」
その頃は、今みたいな全く飛べないというわけではなかったものの、繰り返し失敗していたらしい。たまたま眺めていた所を益子道男に捕まった時に得た情報なのだが、まさか勉強面でも成績優秀で、部活の面でも『期待の新人』とか騒がれてた奴が、と思ってつい声を掛けてみたって感じだ。別に他人の事情なんてどうでもいいと思ってたけど、絡んで面倒な奴じゃなさそうだし、元々あいつに興味とか持ってたんだろうな。
「……もしかしたら、大会が近くなってきてるのに焦ってるのかも。イップス、なのかな」
周りからのプレッシャーによるものだと推測する。意外に思ったけど、あれだけ知名度が高かったら誰しもがそうなってしまうんだろう。
「……まあ、努力することも大事だけど、今は無理しない方が良いと思うぞ。それで怪我なんかしたら元も子もない」
努力してベストを尽くすことも無論、大事だ。
だが、まだ1年生の彼女がイップスになりかけているのは、この先の事を考えていると非常によろしくない状況だ。それに、今結果が出なくとも次の挑戦なんて幾らでもあるはずだ。ここで変に身体を壊すよりも……。
それでも、ちゆは首を横に振って否定していた。
「それでも私は跳びたいの。今は無理をしてでも、自分の限界を超えたい。そういうのって、もう古いのかな……」
意地でも自分の目指すものに気を抜くことはしたくないそうだ。
無理をしてでも自分の限界を越えたい……そんな重い言葉を笑顔で言われては、僕はもう何も言えなかった。
「何が正しいのかは分からない。だから、僕らが出来ることはあいつの背中を押してやることだと思う」
どんなに失敗しようとも彼女がやりたいと決めたことなら、応援するだけ。
じゃあどうやって応援しようか、その先のことを二人は考えていた。
「……じゃあ、皆で横断幕作ろう!」
「横断幕?」
途端にのどかが提案する。
「うん、応援に使う横断幕!ちゆちゃんには内緒で作って、精一杯応援するの!」
「良いじゃんそれ、のどかっちナイスアイディア!それじゃ今から材料買いにレッツゴー!」
まあ、それが一番無難だろうな。
皆が賛同したところで、ひなたとのどかは早速制作へと取り掛かりに足を運んでいった。
普段こういうのには参加しない派だけど、夢に向かって跳ぼうとする彼女の為だ。裁縫など僕には縁のないものであっても、今回ばかりは協力しよう。
この頃花粉症に弄ばれることが多くなり、すっかり春になったなと感じました。皆様も花粉症には是非お気をつけて…。