ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜   作:ゆぐゆぐ

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第20節 永遠の誓い

『永遠の大樹』

 

 その木の下で友情を誓い合った友達は永遠でいられるという伝説がある。

 

「そんな伝説があるなら、もっと早く教えてくれれば良かったのに」

 

「伝説というか、噂だろ」

 

「まあそうね。私も小さい頃に一度行ったきりだし」

 

「それに、今更誓い合わなくてもあたし達とっくに親友だし?仲間だし?」

 

「それはそうだけど、大樹に誓うなんて絶対にやってみたいよ!」

 

 学校で話してから、のどかはずっとこんな調子だ。確かに他から来た人が永遠の大樹なんて耳にしたらなんじゃそりゃとなるのは分からなくもないが、ここまで興味を示すとは思わなかった。

 ルンルンと気分よく歩くのどかを先頭に進んでいくと、やがて見える永遠の大樹。

 

「これが永遠の大樹?」

 

 しかし想像していた物とは全く違い、木の幹から上が切断されている。『大樹』という名称の輝きは失われ、正に虚しい物と化していた。

 

「そいつはもう寿命なのさ」

 

 一人の男がそう言いながら此方に歩いてくる。彼が言うには、先日の暴風雨で枝の部分が見事にへし折られたという。『とどめを刺された』と言っていた辺り、いつやられてもおかしくない程に衰弱していたのだろう。

 

「近い内に役所の連中が切り倒しに来るそうだ。永遠の友情を誓いに来たのか?」

 

「はい」

 

「無駄足だったな。ご覧の通り、この木は終わりかけのつまらん木だ」

 

 そうして男はこの場を立ち去る。

 

「永遠なんて信じるな」

 

 人生の先輩としての一言を吐き捨てながら。

 

「何か感じ悪〜」

 

「どうする?友情の誓いする?」

 

 ちゆが尋ねるが反応がない。ただただ、ぼうっと大樹を眺めていた。

 

「どうした?」

 

「あのお爺さん、凄く哀しい目をして大樹を見てた。この木に何か思い入れがあるんじゃないかな?」

 

「それなら、エレメントさんが何か知ってるかも知れないラビ」

 

 三人は一斉に聴診器を使って大樹へと向ける。一方で、僕は聴診器代わりに杖の先端を向ける。やがて大樹の幹から一匹の木のエレメントさんが現れた。

 

「聞きたい事があるんだニャ」

 

「さっきのお爺さんの事何だけど」

 

『皆さん、わたしのお願いを聞いては貰えませんか?』

 

「ラビ?」

 

 次々と頼みを告げようとすると、今度は木のエレメントさん側から頼みを告げられる。

 昔,数十年も前に男性2人と女性1人の3人組が僕達のように永遠の友情を誓いに訪れたという。しかし、ある日を堺にいつしかこの大樹に訪れる人物はたった一人の老人のみとなってしまった。それが、先程僕らを追っ払おうとしていた哲也と言う人物だそうだ。

 

『日出夫さんと史さんを探して、此処に連れて来て欲しいのです。この木はもうすぐ切り倒されてしまいます。この機会を逃したら、あの3人はきっと2度と……』

 

「いや、連れてこいと言われてもな……」

 

『手掛かりならあります。あの頃3人は、純と言う名前の喫茶店によく通っていたそうです』

 

「分かった。私探してみる!」

 

 などと、のどかはすぐさま行動に移そうとしていたが、僕はそれには反対の意を示した。

 

「探すなんてそんな簡単な話じゃないし、そもそも部外者が入り込んでいい事じゃないだろ。ただその人達の迷惑になるだけだ」

 

「でも、永遠を誓い合った友達がバラバラになっちゃうなんて悲し過ぎるよ!でしょ?」

 

「そうね……ひなた、何か分かる?」

 

「待ってね~……あった!」

 

 しかし、のどかの意見にちゆもひなたも好意的だった。

 ちゆはひなたに例の喫茶店の情報を求め、ひなたはスマホを取り出して調べていく。別に彼らを思っての行動なのは悪くはないことなのだが、それは随分前の出来事のはずだ。それを他者が首を突っ込むのは如何程かと思ってしまう。それでも木のエレメントさんもあって見過ごせないお人好しな三人の姿に、僕は思わず溜め息を一つ吐いた。

 

「……後で怒られても知らないからな」

 

 そんなことを言いながらも、結局後を追おうとしている自分も十分なお人好しなんだろうな……。

 

 

 

 

 

 ──────────ー

 

 

 

 

 

 しばらくして、『喫茶 純』を発見するとすぐに中へと入っていく。店内には客は入っておらず、一人の女性店員がテーブルの掃除をしていた。

 

 それぞれ席に腰掛けると、メニューを手に取って注文する。ひなただけ謎に詰まったものの揃って注文した飲み物がやってくると、ちゆが本題に入ろうと店員に尋ねた。

 

「お仕事中にすみません。ちょっと伺いたい事があるんです。日出夫さんと史さんと言う方をご存知ありませんか?」

 

「3人組で50年前良くこのお店に通っていた人達なんですけど……いつ頃まで来ていたとか、そういうちょっとした情報でも良いんです」

 

「50年前か、それって先代のマスターの時代だし……」

 

 加えてのどかも尋ねるも、流石に大昔の話では情報は得られそうにもなかった。女性店員は大人びた雰囲気を出しているが、20代ほどの若々しい顔立ちをしているので、そんな人が50年前のことなど知る由も無いだろう。のどか達もそこには現実を見たようで落胆している。

 

「でも、そのお二人なら」

 

 と、店員が何かを言いかけた瞬間に『チリンチリン』と扉の開く音と共に店内のベルの音が鳴り響く。来店してきたのは眼鏡の男性と長髪の女性の二人。

 

「日出夫さん、史さん、毎度」

 

「「「えーっ!?」」」

 

 その人達がちょうど探し人であったことに三人は思わず驚きの声を上げる。50年経った今でもこの喫茶店に訪れているのだから無理もない。しばらく唖然としていたものの、そうしている訳にもいかないとのどかはすぐに二人に事情を洗いざらい伝える。

 

「彼があの樹の下で私達を?」

 

「はい!」

 

「哲也に頼まれて来たんだね?」

 

「へ?あっ、え~と……」

 

「そこはまぁ色々複雑があって~、あはは……」

 

『木のエレメントさんからの頼み』だなんて言えるわけもいかず、言葉を詰まらせるのどかをひなたが適当に誤魔化してフォローを入れる。

 

「あの、大樹まで行って貰えませんか?」

 

 そして、のどかが頼みの言葉を告げるも2人は何も応えずに黙ったまま俯くだけであった。

 その姿を何気なく凝視していると、思わず驚愕した。史さんの左手の薬指に指輪がはめられているのが見えたからだ。一方で、日出夫さんにも同じ物且つ同じ位置にあった。ちゆもそれに気付き驚いていたが、そんな表情を不意に史さんに見られたのですぐに僕は目を逸らしてしまう。やがて、ちゆが史さんに会釈をして謝罪しているのに続いて頭を下げた。

 

「今になって思えば、実にちっぽけな事が原因だった。でも、あの頃の私達にとっては本当に、本当に深刻な問題だった……」

 

「何で!?大昔の話じゃん!」

 

「生きるという事は変わっていく事なの。今更顔を合わせても、私達もう話す事なんて何も無いわ」

 

 実に大人としての意見というか、またも人生の先輩に助言を貰ったみたいで何も言えなかった。

 

 

 

 こうして二人を連れて行くことに失敗した僕達は再び大樹へと足を運ぶ。すると、そこには一人の老人────哲也さんの姿があった。見つけたのどかは彼の方へと詰め寄っていく。

 

「お嬢ちゃん?」

 

「2人は喫茶純に居ます!2時頃にいつも来てるんです!だから!」

 

「……藪から棒に何を?」

 

「だから会いに行って下さい!そうすれば、そうすればきっと……!」

 

 などと、必死に説得するもやはり哲也さんには届かない。

 

「40年ぶりにこの街へ帰って来た。時期にまた街を出る。此処にはもう戻らん。だからいいんだ、終わったことだ」

 

「だったら!どうして毎日此処に来てるんですか!約束を信じてたからでしょ?永遠の友情を信じているからでしょ?」

 

 そして哲也さんは何も理由を述べることなくこの場を去って行った。だが、以前のような不機嫌な表情ではなく何処か悲しい目をしているようにも見えた。

 

「私怖いんだ。いつか私達も友達でいられなくなっちゃう日が来るんじゃないかって。私、皆と友達じゃなくなるの、辛くて……」

 

 俯きながら声を震わせて放った言葉は、実に彼女らしくないものだった。それも、哲也さん達に受け入れてくれないことによるものなのか。あるいは『あの時』の僕の発言も相まってのものだろうか。

 

 

 

 

 

 ~~~~~

 

 

 

 

 

『あいつは、僕の親友を死なせた人殺しのクズだ』

 

 先日、僕はそんな言葉をのどかにぶつけた。

 初めてのことだった。今まで知り合いの誰一人として話したことがなかったので、多少の抵抗はあった。しかし、のどかに問いかけられた時点で頃合いはここしかないと思った。

 

「それってどういう……」

 

「小5の頃、僕の親友がトラックに跳ねられてな。急いで救急車を呼んで、迎えが来る間に意識を失ったあいつに心臓マッサージを繰り返した。だがいつになっても来なかった。やがてようやく来たと思ったら、命を助けようとする素振りすら見せずに彼は死んだと断言した。もし早く来て入れば、助かる余地はあったというのに……!」

 

『経緯がどうであれ、どの道彼は亡くなっていた』

 

 そんなことを易々と言われた瞬間、とてつもない憎しみと怒りが押し寄せていた。誰かの命を助けることが仕事であるはずの医師の行動が、僕には理解出来なかった。それから、僕と父親は口を利かなくなった。もう一つ大きな原因があったが、これは別に言う必要もない。

 

 ついでに、今まで仲の良かった友人達とも縁を切った。再び誰かがいなくなるかもしれないという恐怖でいたたまれなかったからだ。別に友人なんかいなくてもどうにかなると思っていた。

 

「でも安心しろ。別にお前達は例外。プリキュアになってからはほんの少しだけ気が変わった」

 

「飛鳥くん……」

 

「……まあ、いつまで続くかは分からないがな」

 

 そう言って微笑みを溢す。のどかからは僕の表情はどう見えているのだろうか。その後、「それじゃ」と言葉を残してこの場を去った。

 

 

 

 

 

 ~~~~~

 

 

 

 

 

「じゃあさ!誓おうよ!」

 

 先日のことを思い出していると、唐突にひなたが言った。ちゆもそれに同意すると、二人で手を差し出して重ねる。初めはほんの少しだけ戸惑っていたのどかだったが、次第に笑みを浮かべ同じように手を重ねた。

 僕も同じく……なんてことは出来なかった。

 

「……僕は良い。お前達で勝手にやってろ」

 

 そう言って三人から視線を逸らし、僕を置いてやるように促す。

 誓ったところで本当に実現出来るなら、とっくに何度でも誓っている。僕も哲也さんと同じ、永遠を信じない側の人間なんだろう。

 

「えっ」

 

 だがその時、思わず変な声が漏れる。

 のどかは此方に寄り添うと、何も言わずに僕の手を両手で優しく包み込むように握った。

 どういう意図での行動かは分からない。けど、そこにはどうしても四人で誓いたいという思いが僅かに感じられた。

 

「飛鳥くんも、一緒に誓おう?」

 

「……分かったよ」

 

 彼女の微笑みにすんなりと分からされてしまう。押しに弱い僕も大概だけど、グイグイ押してくるのにはどうにかして欲しいものだ。自身の手を二人の手の上に置き、その上にのどかが手を置いた。

 

「わたし、花寺のどかは大樹に誓います」

 

「沢泉ちゆは誓います」

 

「平光ひなたは誓います」

 

「……誓います。神医飛鳥は」

 

 

 

「「「「「永遠に友達でいる事を」」」」」 

 

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

 寂しさを感じる程に涼しい夜の時間。

 もはや死にかけである大樹に寄りかかっていると、その近くには一人の男が立っていた。

 

「くっ……!」

 

 哲也という人物だった。朝も昼も夜も、時間があれば何度も大樹を見にやってきている。

 それも、自身の気を和らげる為に。先日、過去の友人がここに来ていると伝えられてからは、いつもより立ち寄る回数が多くなっていた。

 

「いや、もう終わったことだ。終わったことなんだ……!」

 

「では、本当に終わらせてあげましょうか?」

 

「っ!?」

 

 何処か納得出来ない様子の哲也に、私は声を掛けて近寄っていく。

 

「誰だ……!」

 

「おっと、そこまで警戒なさらずに。私は貴方を導くものなんですから」

 

「俺を、導く……?」

 

「ええ、例えばこんな風に……」

 

 

 

「進化しなさい、ナノビョーゲン」

 

 

 

 

「なっ!おい待て、何する気だ!?」

 

 大樹に向けてナノビョーゲンを放とうとする私を、哲也は必死に呼び止める。

 

「大樹に新たな生命を宿らせようとしているんです。こんなの、もはや死んでいるでしょう?」

 

「やめろ!その大樹に手を出すんじゃない!」

 

「……ほう」

 

「っ!」

 

 ナノビョーゲンを放とうとかざした手を下ろす。すると、禍々しい結晶を取り出して哲也の方へと向ける。

 

「何が何でも好き勝手させはしない、と。余程好んでいるんですね。貴方は面白い人だ」

 

「止めてください!」

 

 刹那、甲高い声が脳内に響き渡る。

 

「木のエレメント……」

 

 それは、大樹の中で眠っていた木のエレメントだった。

 怒りの表情を浮かべながら、私の瞳をジッと見つめている。

 

『今すぐその手を下ろしてください。無抵抗な人間を襲うものなら、私は許しません。貴方はそんなことをする人じゃなかったはずです』

 

「お前……私の何を知っている」

 

『ええ知っていますとも、"キロン様"。私は貴方のことを、ずっと見てきているのですから』

 

 自身の名を呼ばれた瞬間、私は思わず目を見開いてしまう。

 

 私をずっと見てきた者、ということは私が何者なのかは存じているはず。となれば、早急に排除する他ない。そう思い、結晶を持つ手と反対の手でナノビョーゲンを放とうとかざす。

 

 だが、どういうわけか私の手は小刻みに震えていた。怖がっても、恐れてもいないはずなのに何故戸惑っている。何を戸惑っているのか分からない。だが、私の手は今から起こす行動を拒んでいる。ナノビョーゲンを放とうにも出来ないのであった。

 

「……失礼。急用を思い出したので、私はこれで」

 

 これ以上、無理に力を使うのは良くない。

 そう決心した私は手を下ろすと、哲也に挨拶をしてこの場から立ち去ることにした。

 

「な、何だったんだ。あいつは……」

 

 ……思い違いだろうか。この世界に訪れてから、何かがおかしくなってきているようでならない。まるで私が私でなくなってきているような感覚だ。

 

 哲也の言う通り、私は一体何なのでしょうね。

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

「永遠の大樹をありがとうフェス?」

 

 翌日の昼休み、ひなたから渡された紙に大きく記されていた。

 

「すこやか市の永遠の大樹を見守り続けてきた大樹に、町の皆でありがとうとさようならを伝えるイベントをやろって話になってね!」

 

 担任からはこの企画を了承を得たとのこと。大変な作業になるかもしれないと言われたが、そこはちゃんと理解しているようだ。

 

「あの人達の為にか」

 

「うん。やっぱり会わせてあげたいから」

 

 やはりまだ諦めきれていないようだ。先日、あれだけ哲也さんに永遠であること、友情を持つこと故の現実を突き詰められたはずなのに。

 

「それで、僕は何をすればいい」

 

「えっ、手伝ってくれるの!?」

 

「いや、普通に考えて三人でやっていける作業量じゃないだろ」

 

 決して学校のイベントなんかではなく、市内全体で行うイベントだ。三桁もままならないであろう程のチラシの印刷。加えて、それを学校や町中に貼り付ける作業なんかもしなきゃいけない。とても三人で熟せるとは思えない。

 

「それに……」

 

「それに?」

 

「いや何でもない!それより僕は何を手伝えば良いんだ!」

 

 永遠の誓いもさせられたからな、なんて面と向かって言えるはずもなかった。

 そんな羞恥心を紛らわす為に、やや早口で僕は三人に強く問いただすのであった。

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 そして、開かれたフェスの当日。

 

 永遠の大樹周辺の丘では、沢山の人達で賑わっていた。

 家族連れや友人達と集まっている人達、急遽イベントに参加してくれた吹奏楽部などが存分にこの時間を楽しんでいた。しかし、肝心のあの人らがいない。

 

「いた?」

 

「いない……」

 

「もう!いい歳して意地張るなし!」

 

 僕達は皆が賑わう中で辺りを見渡してみるが、姿が見当たらなかった。

 そこで、不意に振り返ると、

 

「見つけた。けど……!」

 

 大樹から少し離れたところに哲也さんが一人でいるところを発見した。だが、見つけた時には背中を向けて帰ろうとしているところだった。

 

「どうしよう、哲也さんが帰っちゃう!」

 

「くしゅん!」

 

「「えっ!?」」

 

 哲也さんを呼び止めようとしたものの、タイミング悪くラテがくしゃみをした。ビョーゲンズのバテテモーダがメガビョーゲンと共に現れたのだ

 

「メガ、メガ、メガビョーゲン!」

 

「大樹が大変なことになってるペエ!」

 

「みんな、こっち!」

 

 人目のない森の茂みへと僕達は急いで向かう。

 

 一方、少し離れた場所でメガビョーゲンに声を上げる人物がいた。

 

「出て行け!此処は……この木は、俺達の場所だ!」

 

 哲也さんだった。更に、いつの間にかやって来ていた日出夫さんと史さんもそこに駆け寄る。

 

「お前ら、来てくれたのか」

 

「ビョ、ビョ、メガァ!」

 

 メガビョーゲンは3人に攻撃をしようと、自身の武器である腕を振り下ろす。

 

「余所見すんな馬鹿!」

 

 その攻撃を、瞬時に変身したキュアラピウスが力一杯に蹴り飛ばす。

 

「早く逃げろ」

 

「君は一体……!?」

 

 キュアグレース、キュアフォンテーヌ、キュアスパークルも後に続いて追撃をかましていく。

 

「大樹は私達に任せて!」

 

「さあ!」

 

 現状に困惑するばかりの哲也さんだったが、日出夫さんが手を取ったことで三人で急いでこの場から走り去っていった。

 そんな彼らの盾になるように、グレース達はぷにシールドで防御する。

 

「哲也さん達、3人でまた会えたね」

 

「それじゃあ今度は!」

 

「「「私達4人の友情を見せる番!」」」

 

 グレース達は揃ってぷにシールドに力を込めるが、それでもメガビョーゲンの力に比べて劣勢状態だ。

 

「力比べはBADなチョイス♪押し切れやしない、勝ち目などない♪それは何故かと問うならば♪今回のこいつはマジビョーゲン♪」

 

 徐々に押され始めている。このままではぷにシールドが破られるのも時間の問題だ。

 

「悪い、少し体重を掛けるぞ」

 

 どうにか引き付けている間に、僕はぷにシールドを踏み台にして空高く跳び上がる。

 攻撃の最中ではどうしても隙は出来てしまうものだ。そこを誰か一人でも狙えば浄化への道筋は出来るだろう。

 

「ええっ!?そんなのあり!?」

 

「こうでもしないと倒せそうもないしな。大人しく浄化されてしまえ」

 

 

 

 

 

「『輝かしき終点の一矢(トロイア・ヴェロス)』、発sy────」

 

 ジリリリリッ!

 

「ッ!?」

 

 標的を打ち抜こうとしたその瞬間、全身にとてつもない電撃が迸る。経験したことはないが、まるで落雷を浴びたかのような、そんな感覚だ。突然の衝動、そしてあまりの身体中の痺れに的が上手く定まらないでいた。

 

「ぅぁあああっ!!!」

 

 それでも絶対に打ち抜いてやる一心で、かなりヤケクソ気味に矢を発射させる。狙っていた部位と違う箇所に向かっていったものの、どうにかメガビョーゲンに命中させることが出来た。

 

「ぐっ……!」

 

「ちょっ、ラピウス大丈夫!?」

 

 力が抜けてそのまま落下する僕を、スパークルが即座に抱きかかえる。三人には伝わっているようで、メガビョーゲンの攻撃は抑えられた代わりに僕の身に起こったことに心配しているようだ。しかし、奴は瀕死状態になっただけで浄化はされていない。

 

「僕のことは良いから、早くそいつを倒せ……!」

 

「う、うん!」

 

「「キュアスキャン!!」」

 

 グレース達はキュアスキャンでメガビョーゲンの右肩に潜む木のエレメントさんを捉える。輝かしき終点の一矢が命中したとなれば、あとは三人の必殺技を当てるのみだ。

 

 

 

「「「トリプルハートチャージ!」」」

 

 

 

「「「届け!癒しの!パワー!」」」

 

 

 

「「「プリキュア !ヒーリングオアシス!」」」

 

 

 

 

 

「ヒーリングッバ〜イ」

 

 

 

「「「お大事に」」」

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 メガビョーゲンの浄化が完了すると、バテテモーダはすぐに退散していった。

 

「よいしょっと……」

 

「あんまり無理しないで」

 

「いや、問題ない。今は動ける」

 

 一方で、大樹に背を向けて座り込んでいた僕だったが、しばらく経つといつもみたいにちゃんと動ける身体になっていた。

 全身の痺れは変身を解いても感じる程に強烈なものだった。あのような出来事は当然初めてだったので、呼吸が荒れる位には悶え苦しんでいた。

 

 しかも、ヒーリングアニマル達も見聞きしたことのない現象らしい。近くにあの毛玉がいるなら詳しい事が聞けそうなのだが、いない以上は仕方ない。再び起こった時には流石にやって来るだろうと思いながら、今はビョーゲンズから救出した木のエレメントさんに話しかけることにする。しかし、

 

「あれ、エレメントさん……?エレメントさん!?」

 

 のどかが必死に呼びかけるが、一言も返事が返ってこない上に姿をも現さなかった。

 

「まさか……」

 

「嘘でしょ……?」

 

「メガビョーゲンに蝕まれて、寿命が尽きちゃったラビ……」

 

「間に合わなかったか……」

 

 大樹は縦に真っ二つに割れていて、悲惨な姿を見せていた。

 とはいえ、元々寿命が短かかった大樹なのだから襲撃されて尽きてしまったのも合点がいく。ただ、ここまで儚い終わり方だと何とも言えなくなる。

 

「そんな……返事をして、エレメントさん!」

 

 それでも諦めずに声を掛け続けるも、やはり返事は返って来ない。

 

「君達、まだ残っていたのか」

 

 そこへ、先程まで避難していた哲也さん達が戻ってきた。

 

「怪我はないか?」

 

「はい。でも大樹が……」

 

「これは酷いなあ……」

 

「ったく、ありがとうとさようならを言う前にいっちまった」

 

「……お嬢さん達、ご覧なさい」

 

 皆が悲しむ中、史さんは何かを見つけたようで微笑みながら呼び掛ける。

 

「これは……」

 

 割れた大樹の幹の中を覗いて見ると、その中から植物の芽が生えていた。

 

「枯れた大樹から新しい生命が!」

 

「永遠の大樹は本当に永遠なんだね!」

 

「自然の力って、凄い!」

 

 最期まで見守り続けた結果がこういうことなのだろう。永遠の大樹とやらも、時には粋なことをするんだな……。

 

「なあ。久しぶりに、純のコーヒーが飲みたくなったんじゃないか?」

 

「……ああ、そうだな。お嬢さん達も一緒にどうだ?」

 

「お礼にご馳走しなくちゃね。あの喫茶店、パフェがおすすめなのよ?」

 

「「「はい!」」」

 

「……お言葉に甘えて」

 

 数十年の時を経て和解した方々の誘いなんて断れるわけもなく、永遠の大樹を背に喫茶店へと足を運んでいった。

 

『あの……!』

 

 背後から声が聞こえてきた。声音からしてエレメントさんだろうか。

 

『皆様方の友情の誓いが、永遠になりますように。そして、どうか"あの人"を救ってあげてください』

 

「あの人……?」

 

 どうにも引っかかる箇所はあったものの、永遠を見届けてくれる者に笑みを溢しながら、その場を去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 ~ヒーリングガーデン~

 

「はううううううっ!?」

 

 キュアラピウスの身体から異変が生じていた頃、宙に浮きながらずっと昼寝をしていたポポロンの身体からも強烈な電撃が襲う。あまりに突然の出来事だった為か、大きく目を見開いたまま辺りをキョロキョロと見回して酷く困惑していた。

 

「どうかなさったのですか?」

 

 そこに、ヒーリングガーデンの女王様であるテアティーヌに声を掛けられ、そこでふと我に返った。

 

「あ~、いや、何もなかったってことはないんだけど~。でも大したことじゃないからテアティーヌ様は気にしなくて良いよ~あはは~」

 

 思いっきり騒いでしまったことが後からじわじわ来て恥ずかしくなってしまい、照れ隠しかつ誤魔化しを入れながらテアティーヌに告げるポポロン。

 

 当然、何もなかったなんてことは全くないし、ポポロン自身にとっては十分大したことだと推測する。パートナーの事を考えると思い当たる節がいくつかあるからだ。

 

「……もう頃合いかもなあ。仕方ない、ちょっくら行ってきますかねえ」

 

 そうけだるげな声を出すと、やや急ぎ気味に人間界へと足を運んでいった。

 

 

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