ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜   作:ゆぐゆぐ

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原作回20話の後半となります。
今回は戦闘描写に力をつけたと思っています…!また10000文字超えなので空いた時間にゆっくりとお読みいただければと思います。


第25節 時を経て繋ぐ二つの風

「見つけた!」

 

 到着すると、工場付近でソーラーパネルの姿をしたメガビョーゲンが両手から黒に染まった電撃を放って辺りを蝕んでいた。見るからに危険な攻撃だと感じ、これ以上成長する前に早急に浄化しなければと一同は変身の準備へと入った。

 

 

 

 

 

 

「「重なる二つの花!キュアグレース!!」」

 

 

 

 

 

「「交わる二つの流れ!キュアフォンテーヌ!!」」 

 

 

 

 

 

「「溶け合う二つの光!キュアスパークル!!」」

 

 

 

 

 

「絡み合う二つの毒、キュアラピウス」 

 

 

 

「「「地球をお手当!ヒーリングっど♡プリキュア!」」」

 

「さて、オペを始めようか」

 

 

 

 

 

「メガァ、ビョーゲン!」

 

 変身し、身構える僕達に気付いたメガビョーゲンは電撃を放つ。

 

「たああああっ!」

 

 実に単純な攻撃である故に、それぞれ空中に跳んで難なく回避する。その勢いそのままに、キュアフォンテーヌは踵落としを喰らわせる。しかし、メガビョーゲンは片腕で楽々と受け止めていた。

 

「メガアッ!」

 

「ああっ!?」

 

「フォンテーヌ!」

 

 攻撃を跳ね返され、宙に舞うフォンテーヌをグレースは腕を伸ばして援護する。

 

「「ぷにシールド!」」

 

 その隙を突いて追撃を仕掛けるメガビョーゲンをぷにシールドで弾き返し、今度は此方が隙を突く体制に入る。

 

「今だ!」

 

「「「はああああああっ!!!」」」

 

 援護したことで上手く体制を立て直したグレースとフォンテーヌ。そこに再び跳び上がったスパークルも加わったトリプルキックをお見舞いする。一見ソーラーパネルの姿をしているおかげで頑丈そうにも見えるが、流石に三人同時の蹴りには耐えきれず、体勢を崩して倒れていった。あとはキュアスキャンでエレメントさんを探ってとっとと浄化させるだけだ。

 

「ふん、あいつはまだか。とりま試してみるか……」

 

 その光景を、近くで見物していたバテテモーダは手に入れた例の欠片をメガビョーゲンの身体へと埋め込んでいく。

 

『メ、メガァァァァァ!?』

 

 刹那、メガビョーゲン自身に異常事態が起こり始める。奇妙な声音へと変化すると、邪悪なオーラと共に更なる巨体へと変わっていった。

 

『メガビョーゲェェェェェン!!』

 

 終いには一回りという言葉では済まされない程に巨大化したメガビョーゲンを目にして、絶句せざるを得なかった。そんな僕達を容赦なく一掃しようと怪物の身体が光り始める。放出する為のエネルギーを溜めているかのようだ。

 

『メガァ……ビョーゲンッッッッッ!!!』

 

 そして、次の一手でメガビョーゲンは右目からビームを発射させる。一瞬の隙も与えないとは正にこのことだろう。回避する暇を与えられない僕達は直撃し、地面へと叩きつけられる。パワーアップしたことで同時に辺りを蝕む程の威力を繰り出され、相当なダメージを負ってしまうこととなってしまった。

 

「どういうこと……!?」

 

「急にでっかくなったんだけど……!?」

 

「アッハハハッ!実験大成功~!どうですキングビョーゲン様!自分発見しちゃいました!簡単にメガビョーゲンを急成長させる方法を~!!」

 

 電気を纏った腕で、メガビョーゲンはプリキュアに向けて攻撃を仕掛ける。地面に叩きつければ辺り一面が放電するおまけ付きがあるだろう攻撃を、僕が召喚した大蛇の化身は既の所で尻尾で腕を絞めて受け止めた。

 

「アーハッハッハ!!さぁ来い来い!正体不明の紫プリキュアちゃん!今なら負ける気がしない!!」

 

「めんどくさいことしやがって、あんにゃろう……!」

 

 我ながら瞬時に対抗できたのは凄い事だと思う。まともに当たっていれば戦闘不能になりかねない程の膨大な威力の攻撃を見れば分かる。結局、化身は反撃の頭突きを喰らわせるもメガビョーゲンの精一杯に振りほどいた力によって消滅していった。

 

 とはいえ、強力な怪物と化して此方が劣勢となったことには変わりはない。苦しい戦いを強いられるのには逃れられないだろう。だが、それでも戦うしかないことは此処にいる誰もが分かりきっていた。

 

『葉っぱのエレメント!』

 

『雨のエレメント!』

 

『火のエレメント!』

 

 エレメントの力を使った、三人の一斉攻撃。

 それぞれのヒーリングステッキから放たれた三色の光線をメガビョーゲンは受け止めるも、合体技と言ってもいい強力な攻撃に耐えられず相殺し、後退るような動きで隙を見せた。それを逃すわけもなく、遠方からクロスボウを構えて標的を狙う。

 

「そんなに上手くは行かないんだなあ……!」

 

 刹那、呟いた声と共に横から素早い速度で何かが突進してくる。

 

『ぷにシールド!』

 

 ポポロンはすぐさまぷにシールドを展開するが、バテテモーダはそれを許してはくれない。長く鋭い両手の爪で盾を引き裂く。それも一度の強力な攻撃だけではなく、何度も何度も動きを止めることなくシールドがぶっ壊れるまで引き裂き続ける。

 

「「ぐぅ……!!」」

 

 やがて、最後の一発として拳を叩きつけられたことでパリンッと音を立てながら破られ、吹っ飛ばされてしまう。

 

「まだ終わらせるわけにいかないんすよ……!」

 

「ラピウス!」

 

「余所見してて良いんすかねえ!」

 

 此方の安否を心配しているグレース達の背後で体勢を立て直したメガビョーゲンが自慢の腕で薙ぎ払いに行く。それに気付いた時にはもう遅く、一掃されてしまう。

 

「さぁ、どうするプリキュア!フハハハハハ────」

 

 バテテモーダの高笑いと同時に、メガビョーゲンはソーラーパネルにエネルギーを溜めていく。普通のソーラーパネルと同じで太陽の光を発電させるのかは分からない。だが、先程のビームとは比べられないくらいの威力となるだろう。

 

 ──終わった。強くは思っていなくても、ほんの少しだけそんな一言が頭に過ったはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天穹の弓(タウロポロス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、打ち上げ花火のように地上から閃光が上空を駆け上がり、メガビョーゲンへと降り注いで命中する。『ドンッッッ!!!』という爆音が地面に鳴り響き、それと共にメガビョーゲンはガクンと膝をついて倒れていく。一斉攻撃の際はどうにかして踏ん張った末のものだったので、一瞬にして大ダメージを負ったことに流石に困惑せざるを得ない。

 

「矢……!?」

 

 怪物の右腕を凝視してみると、人間の平均身長と同じくらいの長さの矢が垂直に刺さっていた。降り注ぐ閃光の正体はこの矢であったのだ。

 

「お待ちなさい」

 

 直後、その声と共に空からゆっくりと地上に降り立つ者がいた。

 

 ラテを腕で抱える精霊であった。先程は家の二階から飛び降りて負傷するという失態をおかした彼女だが、今度は自身が持つ風のエレメントボトルの力で浮遊して地面にそっと足を置く形となった。

 

「ラテ、精霊さん!」

 

「もしかして、今の精霊さんが……!?」

 

 閃光の矢は精霊が放ったのかと、恐らくラテとの話し合いによって共に戦うことを決意したのであろう彼女に三人は期待の眼差しを込める。しかし、その問いとダメージを負ったメガビョーゲンに目を向けると、キョトンとした表情を浮かべた。

 

「いいえ、皆さんがやったのではないのですか?」

 

「「「え?」」」

 

 ──いいや、こいつじゃない。

 ここまで的確に標的を射抜けるのは、あの男しかいない。

 

「嗚呼、今のは私だ」

 

「貴方、は……!」

 

「げっ!?」

 

 突然の登場に精霊すらも目を見開く。僕達の間に入り、メガビョーゲンの方へと歩みを進める男こそ、獲物を弓矢で確実に仕留めて物理で喰らう狩人──キロンである。やがて怪物の元に辿り着くと、何故か彼に怯えている様子のバテテモーダを横目に腕の上へ立ち矢が刺さって傷が開いた箇所に手を突っ込み、何かを取り出そうとしていた。

 

「……とにかく参りましょう、ラテ様」

 

「ワン!」

 

 思わぬ対峙はあったが、精霊の覚悟を決めた表情とラテの一声が合わさり、変身の体制へと入る。

 

 

 

 

 

「「時を経て繋がる二つの風!キュアアース!!」」

 

 

 

 

 

 金色であった髪は薄紫色のロングヘアに変化。更に翼を模した飾りがある金色のティアラを装着。コスチュームは自身の髪色に似た左右非対称のロングスカートに肩を露出させた衣装。足元にはフラットシューズを履き、くるぶしには左右異なった黄金のリング。そして、肘辺りまでの長さの白い手袋を着けている。

 ──キュアアース。地球上の風のエレメントの力から生まれた彼女に最適な名前だ。

 

「……っ!」

 

 名乗りを上げ、周囲に薄紫の風を吹かせながらアースはラテをその場に下ろして、視線をメガビョーゲンらへと向ける。その姿を見て、あまり感情を表に出さないキロンは意外にも驚いた表情を露わにしていた。

 

「このキュアアース……ラテ様の想いを受け、お手当ていたします!」

 

 その言葉と共に、アースはメガビョーゲン兼キロンへと接近する。駆け足そのままに勢い良く跳び上がり、強烈なキックをお見舞いする。しかし、

 

「いや、それよりも……」

 

 呟き声を発してバテテモーダに視線を向けながら、キロンはメガビョーゲンの体内から取り出した物をすぐに懐に入れる。そして、繰り出された攻撃を軽々と避け、早急にその場を離れていった。だが、アースは動きを止めることなく、蹴り足を踏み足に変えて再び跳び上がり、工場の屋根を駆け抜けていく。

 

「はああああああっ!」

 

『メガァッ……!?』

 

 やがてメガビョーゲンの顔面付近まで接近すると、もう一度強烈なキックを放つ。怪物の顔面の広さが幸運となったか、直撃し倒れていった。

 

「チッ、あいつにバレる前にさっさとここから───」

 

「おや、バテテモーダ。もう降参ですか?」

 

「ひぃっ!」

 

 そそくさと逃げようとするのを止めるように目の前まで急接近するキロンに、バテテモーダは怯えた表情を見せる。

 

「あーいや、そういうわけじゃないっすよ。ただ急用を思い出したので~……」

 

「戦いの最中に急用ですか……まあそれは良いとして、一つお願いしたいことがあるのですが」

 

「な、何でしょう……?」

 

「持っていたアレ、返してくれませんか?」

 

「え、えっと、何の事でしょうかねぇ?キロン先生の取ったものなんて何m」

 

「うん?私はグアイワルが持っていたのを返して欲しいと言ったつもりなのですが……何か私の物に心当たりがあるのでしょうか」

 

「へっ!?」

 

 会話がいつの間にか揉め合いと化していないかと、メガビョーゲンに次々と攻撃を繰り出すキュアアースから視線を逸らして観察しながら思う。そんな二人の前に、風を吹かせながらアースは立ちはだかる。

 

「皆さんはメガビョーゲンを。『これら』は私が引き受けます」

 

 そう言って、アースは突っ込んでいく。バテテモーダはまだしも、あの男にも『これ』の部類に入れるのは中々に度胸があると言うべきか、単純に恐れを知らない奴と言うべきか。だが、攻撃を仕掛ける彼女にキロンは表情を変えずにバテテモーダの背後へと忍び寄る。

 

「はっ、『これら』呼ばわりとは言ってくれるじゃない───おわあああ!!!!!」

 

 長く鋭い両手の爪を光らせながら、アースに立ち向かおうとするバテテモーダ。しかし、それを許さんと背後にいた男は彼の尻尾を掴んで近くの木々へと吹っ飛ばした。

 

「話はまだ終わっていないぞ」

 

 頭や背部を強打して抑える奴の前に立ち塞がる。話を聞いた限りだとバテテモーダが何か罪を犯したと思われるが、罪から逃げようとする者あるいは自身の邪魔をした者を野放しにする訳にはいかないのだろう。

 

「隠した場所を教えろ。そうすれば、これ以上の危害を認めないものとしよう」

 

「わ、分かりました……でも!」

 

「っ!」

 

 しばらく口ごもっていたものの、少しして相手の顔を窺って返事をする。だが、そんな奴の両手は鋭い爪を伸ばしており、不意打ちをつくようにキロンの顔面を強く引っ掻いた。

 

「そう簡単に教えはしないっすよ。自分にも野望ってもんがあるんでねぇ……!!」

 

 腕や足ならばともかく、顔面は特に強烈な痛みを受けるはずだ。実際、彼の顔面は額から頬にかけて長い線状の傷跡が残されていて、次第に血が滲んできている。だが、傷跡を抑えるだけで痛みの感情を露わにすることもなく、彼が見る視線の先には抵抗し続けるバテテモーダただ一人であった。

 

「初めからあんたの顔はもっと傷つけたいくらい気に入らなくてねえ……だから、自分決めたんすよ。ここであんたをぶっ潰すって!!」

 

 バテテモーダは立ち上がると、勢い良く跳び上がって襲い掛かる。両手の鋭い爪での引っ掻きに蹴りなども加えて本気で倒そうという姿勢を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───たかが野望だけで勝てるわけないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわあああああああっ!!!!!」

 

 襲い掛かる相手の顔面に膝蹴り一発。一呼吸を入れて、全身にマシンガンで撃たれるような打撃。そして、遠くまで吹っ飛ばして衝撃を与える後ろ回し蹴りを一発。計三連撃がバテテモーダにお見舞いされ、瀕死状態となったメガビョーゲンの近くの工場の壁まで吹っ飛ばして叩きつける。更に弓を構えて4本の矢を同時に放ち、逃げることのないよう両手両足に一本ずつ拘束する。

 

「頭を冷やしたか?では、答えて貰おうか」

 

「びょ、ビョーゲンキングダムにある小さな洞窟。基本誰も気付かない所っすよ……これでいいでしょう?」

 

「……ああ、もう手出しはしない」

 

 そう言って背を向けると、今度はプリキュア側へと顔を向け、

 

「そいつらを始末しておけ。お前達の役目だろう?」

 

「「「えっ?」」」

 

「はっ……!?」

 

 冷たく言い放った。

 

「仲間じゃないの……?」

 

「……ふっ、仲間か。その言葉を耳にしたのは久方ぶりだ」

 

 掌で零れた笑みを隠すように、歩みを進めて森の奥へと姿を消していった。

 

 これまでの戦いから、彼はプリキュアを獲物と称して倒すというか『狩る』という戦い方が目立つ。だが、今回は遠距離から味方側であるはずのメガビョーゲンを捕らえていた。更に、アースが仕掛けた攻撃には興味を示さない様子で回避し、バテテモーダに尋問を始めていた。何が目的なのかは分からないが、今の言葉でほんの少しだけ分かったことがある。

 

 それは、キロンという男はビョーゲンズ側の者ではないということ。過去には一度だけメガビョーゲンを発現したりビョーゲンズらが一斉に攻めてきたことがあったが、どちらも自身の為であり先程の返してくれ云々も同等のものだろう。とはいえ、

 

「とにかく、終わらせるぞ」

 

 今目の前にいる厄介な敵を倒すチャンスが到来したのだから、すぐに片付ける他ない。アースも同じ考えのようだ。それぞれ僕はメガビョーゲンに、アースはバテテモーダに向けて必殺技を繰り出す体制に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倣薬・不要なる冥府の悲歎(リザレクション・フロートハデス)!』

 

 

 

 

 

「アースウィンディハープ!」

 

 一枚の羽が頭上に舞い落ちると、彼女の武器である『アースウィンディハープ』へと姿を変え、そこに風のエレメントボトルを装填する。

 

 

 

 

 

「エレメントチャージ!舞い上がれ、癒しの風!!」

 

 

 

 

 

『プリキュア・ヒーリングハリケーン!!!』

 

 

 

 

 

『ヒーリングッバイ……』

 

 

 

 

 

「お、俺の野望がァァァァァ!!!ヒーリングッバアアアアアアアイ!!!!!」

 

 

 

 

 

「お大事に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのバテテモーダを一瞬で……!」

 

「めっちゃ凄い……!」

 

 瀕死状態であったとはいえ、元々はメガビョーゲンを発現する主のような存在であったので、それを浄化したことに感服していた。

 

『ありがとうございます。皆さんのおかげで助かりました』

 

 メガビョーゲンの体内に取り込まれていた太陽のエレメントさんが此方に寄って感謝の言葉を述べる。ラテの体調も良くなり、やがてエレメントさんは元いた場所へと戻っていった。

 

「なあ、アースは何処行ったんだ?」

 

 現在、この場にアースの姿はおらずラテはのどかに抱えられている。音沙汰なく溺愛していたパートナーを置いて行くのは考えられない話なのだが。

 

 

 

 

 

「ぐうっ……!」

 

 すると突然、森の奥へと行方を晦ましたキロンが再び姿を現す。だが、その姿は彼らしくはなかった。腕を交差して、何かに襲撃されたのか ズザザッ!と足を引きずらせていて多少のダメージを負っているようだ。そして、その正体はアースが後に続いて姿を現したことで分かった。

 

「見逃してやるつもりだったのですがね」

 

「それを見過ごすとお思いですか?もっとも、貴方のような死神を」

 

 鋭い視線を浴びせる。以前まではラテを守るという使命の為に戦っていた彼女だったが、今に関しては何かの因縁があるように見える。

 

「死神……?」

 

「ええ。この男は私に似た先代のプリキュアに一度倒されています。どうやって再びこの地に舞い降りたのかは存じませんが、もう一度清めればいいだけの事」

 

「先代……そうか、お前も後継ぎの者か」

 

 何かを察したキロンに、アースは足を踏み込む。

 

「また背を向けたところでハエのように寄ってくるだけだろうし、早々に叩き潰した方が良さそうだ」

 

「皆さんはそこにいてください。この男は私が倒しますので」

 

 こうして、戦いの火蓋が切られることとなった。

 

「はあっ……!!」

 

 先手を打ったのはアースだ。地面を蹴って射程範囲まで距離を素早く詰めると、拳を握りしめて振るいかかる。

 

「───ふんっ!」

 

 彼が素早い攻撃に反応出来ない男ではないのはお分かりのはず。振るわれた拳を片手で軽々と掴み、腰を回して勢い良く宙に舞わせ、反対の手で拳を作って振るい返す。不利な状況でもその攻撃は見えたようで、アースも反対の掌で受け止めようとするも力でねじ伏せられ吹っ飛ばされてしまう。

 

「くっ……!」

 

 それでも彼女の動きは止まらない。空中で体制を立て直し、隙を見せずに再び急接近。今度は真正面からではなく側面や背後から攻撃を繰り出していく。だが、やはり何処から突こうにも動きは読まれていて、攻撃が届く前に弾き返されたり投げ飛ばされたりと中々通らないでいた。

 

 そんな二人に、僕達は少し離れた場所で見ていることしか出来ないでいた。僕に限っては奴と交渉してしまっているから、たとえ立ち向かったとしても見向きもされないだろう。

 

「アースでも攻撃が通じないなんて……!」

 

「……うん。それくらいめっちゃ強いんだよ、あいつ」

 

 ひなたが震えた声で反応する。というのも、ひなたも僕と同じようにキロンから与えられた痛みを体感した経験があるからだ。

 

 あいつが厄介なのは、バテテモーダとは違った強さを持っていること。後者は正にガン攻めと言える戦術を持っていたのに対し、防御も攻撃に変えてしまう戦術、加えてたった一撃で悶絶させる程の強大な力を持っている。現状、この中で奴に傷をつけられる奴はいないだろう。だがそんな中、ワンチャンスとなるものが1つある。

 

『風のエレメント!』

 

 アースは風のエレメントの力を身に纏って一呼吸を入れる。相手が弓を構えて5本の矢を放った瞬間、風を切る音と共に姿を消した。

 

「瞬発力を武器にしてきたか。だがそれだけでは意味が───」

 

 今度は背後から仕掛けてくると読み取ったのか、キロンは振り返って攻撃を受け止めようと掌を差し出す。

 

「───っ!」

 

 しかし、受け止めたのは風を切った感覚だけでアースの姿はなかった。確かに彼女の拳に触れたはずが掴めていなかったことに目を見開く。

 

「そこだっ───」

 

 再び背後から来ると予測するも、また同じ感覚のみが伝わる。アースは風のエレメントを使って一瞬のスピードで相手を翻弄しているのだ。側面、足払い、回り込んでまた足払い、真正面で拳を振るうなど目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り出していく。

 

 とはいえ、キロンもキロンで動き自体は読まれているのでまともにダメージを与えられてはいない。なので、此方側が劣勢なのに変わりはないだろう。だからこそ、相手が隙を見せるまで攻める姿勢を止めずに幾度も隙を与えずに繰り返していく。

 

「───なっ!?」

 

 次は背後から来る───そう察知して振り返った瞬間、アースは瞬時に回り込む。奇跡的に相手から隙を見つけることが出来た。

 

「やあっ!!!」

 

 その隙を一秒たりとも逃しはしない。真正面から顔面に蹴り上げ一発、更に腹部に拳を一発、そして後ろ回し蹴りの三連撃をお見舞いして見せた。先程、相手がバテテモーダに振るった攻撃の重い一撃版と言ってもいいかもしれない。まともに喰らったキロンは勢い良く吹っ飛ばされ、地面に転がっていった。

 

「ただの後継ぎの人間だと思っていたが、中々に強い……」

 

「人間ではなく、私は地球から生み出された精霊のような存在です。貴方にはもうどうだって良い話でしょうが」

 

「精霊……成る程。では尚更だな」

 

 再び弓矢を構える。攻守交代を宣言しているようでもあった。だがそれを許すまいとアースはもう一度攻め込んでいく。対して、今度は一斉に数本の矢を放つのではなく一本一本狙って討つスタイルへと変えている。この場合の彼の攻撃は百発百中だ。多少でも受けることは免れないなので、どうにかして払いのけていくしかない。

 

『風のエレメント!』

 

 何発か掠り傷を負ったものの当たる寸前のところで上手く直撃を回避し、やがて詰め寄ると足を強く踏み込む。

 

「っ!」

 

 刹那、相手の周りを薄紫の風が螺旋状に包み込んでいく。風のエレメントの力で翻弄させる攻撃に仕掛けの動きを読まれないよう惑わせる、言わば状態異常攻撃を加えた技を繰り出していた。確かに、これなら何処からでも反撃を喰らうことなく攻撃出来る。

 

「興味深い戦法だが、これならどうだ……!!」

 

 そう思っていたのも束の間、彼はそれに悩まされる程甘くはなかった。自身の持つ馬鹿力で拳を地面に叩きつけ、大地に衝撃を与えて地割れを起こす。辺りに吹き込む風は一掃され、彼の周りには大きな円状の穴が描かれていた。

 

「さっさとかかって来───」

 

「何処を見ているのですか」

 

「何───っ!?」

 

 真下の割れた地面に着地した時には、彼女は地面に体重をかけて目の前に潜り込んでいた。その声とその姿に気付くのが遅く、キロンが次の言葉を発する前に後ろ足を回して蹴り上げる。

 

「はああああぁぁぁっ!!!」

 

 地面を蹴り、そして空中を蹴りながら瞬発力を活かした無数の打撃を与えて相手を空高く上げていく。

 

「───ふっ!」

 

 更に空中を大きく蹴る。今度は相手よりも高く跳び上がり、右手に風のエレメントの力を纏わせてグッと拳を握る。最後の一撃として相手の背部に叩き込むつもりだろう。しかし、

 

「まだ……だっ!」

 

 このままやられるわけにはいかない。キロンは身体をぐるっとアースの方へ振り返らせて、すぐさま弓矢を投影する。

 

闇天の弓(タウロポロス)

 

「っ!?」

 

 黒に染まった一閃の矢が彼女を襲う。近距離での攻撃に思わず右拳で防いでしまい、見事に手の甲に命中する。風のエレメントの力で制御されたおかげか幸いにも貫通することはなく、ダメージも本来のものより軽減されていそうだ。

 

「くっ……!」

 

 とはいえ、かなり出血していて負傷していることには変わりはない。痛みを堪えようとするも、よろける仕草を見せる。それに対し、キロンはフッと笑みを溢すと彼女の右拳を掴みに掛かる。

 

「……いえ、まだです!」

 

 その瞬間、正に触れられるところで相手に衝撃が走る。アースは痛みの走る右手で相手の腕を掴んで引っ張り、反対の手───左手に同じように力を込めて彼の腹部に力一杯叩き込んだのだ。

 

「ぐああっ……!!」

 

 相手の身体は引っ張られるように円状の穴へと叩きつけられた。

 

「これで最後です……!」

 

 

 

 

 

『アースウィンディハープ!』

 

 

 

 

 

「やらせはしな───なっ、くそっ……!!」

 

 どうにかして対抗しようとするも、身体が深く叩き込まれたせいで地面に埋め込まれてしまっている。動きを封じられたキロンを倒す絶好のチャンスが到来した。

 

 

 

 

 

「エレメントチャージ!舞い上がれ、癒しの風!!」

 

 

 

 

 

『プリキュア・ヒーリングハリケーン!!!』

 

 

 

 

 

 アースウィンディハープから放たれた、無数の白い羽を纏った竜巻状の光線がキロンのいる穴へと命中。やがてその穴は元の地面へと戻り、そこに彼の姿はない。

 

「本当に倒しちゃった……」

 

「あんなに強敵だった相手を……!」

 

「凄いよ、アース最強じゃん!」

 

 三人がそれぞれ歓喜の言葉を述べ、それを見たアースは思わず笑みを溢す。

 

 ……だが、それは僕にとって作り笑いのようにも見えた。

 

「……いたた!」

 

 変身が解除され精霊の姿へと戻った瞬間、猛烈な痛みが彼女を襲う。先程の右手だろう。

 

「ありゃりゃ、相当無理したねぇこれ」

 

 ポポロンが手当てに向かうも、かなり深い傷を負っている。逆に目の前で禍々しい矢を喰らってこの程度の傷で済んだのはもはや奇跡的なものだと思うが、それでも血の色が痛々しいものへと変色しつつある。

 

「いつものじゃ完治出来るか怪しいなあ……じゃあこれ食べて」

 

 そう言って羊毛の中から銀のリンゴを取り出す。毛玉の中から出てきた上に無駄に輝いていて心底食べたくないが、精霊は嫌な顔一つせずに手に取って一齧りする。

 

「一概にも美味しいとは言えませんが、痛みが一瞬にして引いていくような……」

 

「そう、それは傷を癒す効果があるんだよ。と言っても、完治までには多少の時間は掛かるかもしれないけど」

 

「じゃあ、一応包帯でも巻いておくか」

 

「あっ……」

 

 僕はポーチから消毒液と包帯を取り出し、やや強引に精霊の手を取って手当てを始める。あんなことがあったからあんまり近寄りたくないというのが本音ではあるが、それとこれとは話が別だ。

 

「……なあ」

 

「はい」

 

「これからはどうするつもりなんだ?ラテと一緒に戦うのか?」

 

「はい、ラテ様が望む限りは」

 

「ワン!」

 

「マジ!?やった~!あたし達もう最強過ぎじゃん!!」

 

「アース、これからよろしくラビ!」

 

 皆がアースが正式に加入したことに喜ぶ中、僕は安堵した表情を見せる。それがラテとの話し合いで決めた答えなら素直に安心出来るからだ。

 

「……申し訳ありませんでした」

 

「あ?」

 

 傷の手当てを終え道具を片付ける時、突然アースがそう述べる。

 

「私の身勝手な行動で貴方を困らせてしまったこと、謝罪させてください。申し訳ありませんでした……!」

 

「……チッ」

 

 まさか面と向かって謝られるとは思わなかった。確かにあそこまで振り回されて許そうなんて感情は浮かびづらいが……ラテに叱られたんだろうか。調子が狂うというか、こっちが申し訳なくなるというか凄く変な気分になる。

 

「……馬鹿かお前は。散々な目に遭ったのはそうだけど、そんな顔して謝られる程恨んでないし別にラテと一緒に戦うならそれで良い」

 

「おいおい、唐突なツンデレやめろよ思わず尊さで鼻血出ちまうだろうがヨ」

 

「場の雰囲気壊すの止めて欲しいラビ」

 

 背後で駄羊が何かほざいているのはさておき、僕はアースに手を差し出す。

 

「っ!」

 

「神医飛鳥だ。これからよろしく頼む」

 

「……はい。よろしくお願い致します、飛鳥」

 

 こうして互いに握手を交わして正式に和解することとなった。だがそんな中でどうしても引っ掛かるような、ある疑問を抱く。

 

「この姿でプリキュアの名前で呼ぶのってどうなんだ?」

 

「確かに、少し変な感じするわね」

 

「そうですか?では、皆さんで名前を付けて頂けますか?」

 

 まさか僕達が名付け親にされるとは思わず固まってしまう。とはいえ、ラテに決めさせるわけにもいかないし生まれたばかりの彼女自身に決めさせるわけにもいかない。頭を悩ます中、ひなたは一番に提案する。

 

「んー、じゃあア───」

 

「アースっちとか言うんじゃないだろうな」

 

「えっ、何で分かったの!?超能力者!?」

 

「いや、俺でも分かるぞそれ」

 

 取り敢えずひなたのは却下として、出来れば"アース"に因んで付けたい。責めて"あ"のついた名前にはするべきだろう。

 

「直感だけど、"歩美"ってのはどうだ?一歩ずつ進んで美しい女性になれるように……みたいな」

 

「おー良いじゃんアユミン!」

 

「お前はいちいちあだ名に変換するな……」

 

「でも良いわね、由来もしっかりしてるし」

 

「成る程、歩美ですか。ラテ様が宜しいのでしたらそれで」

 

「うーん。"アスミ"ちゃんも良いかなって思ったけど、歩美ちゃんの方が良いかもだね」

 

「よしじゃあアスミにしよう」

 

「「「えっ」」」

 

 のどかの案に賛同しただけなのに、何故か驚かれてしまう。

 

「何がえっ、だ。アスミにしようと言っただけだぞ」

 

「えっ、でも、歩美ちゃんにするんじゃ」

 

「歩美なんて奴は知らん。こいつは元からアスミだろうが」

 

「あ、うん、皆がアスミちゃんで良いなら……」

 

「良し決めた今日からお前はアスミだからな。良いな絶対歩美と間違えるなよ、良いな!?」

 

「は、はい。ラテ様が宜しいのなら……」

 

 アスミ(仮)の言葉に対し、ラテは少し引き気味なのかぎこちなく賛成の声を上げる。

 

「最近のあっくん、たまに変なスイッチ入るよね……」

 

「なんか、人が変わるというか……」

 

「と、取り敢えず!これからよろしくね、アスミちゃん!」

 

 のどかが決定の意思表示をするように、アスミに挨拶の言葉を投げかける。二人もそれに続いていった。

 

「よろしくね、アスミ!」

 

「よろしく、アスミン!」

 

「アスミちゃん、アスミ、アスミン……どれが私の名前でしょう?」

 

「えっ!?え~っと、アスミ!アスミが基本でね……!」

 

 まだ生まれたばかりの彼女には知らないことが沢山ある。地球で生きていく為にも僕達が色々教えてサポートしていかなければならない。これからの賑やかで平和な日常を送ってくれることを願って……。

 

 

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