ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
「今日は疲れたね~」
「1日に2度もお手当てしたんだもの……」
「しかも全部鬼ハードだったし。はあぁ、明日日曜で良かった~……」
「明日は一日ダラダラしようぜ~」
「ちゃんと休息をとるのも大事なことペエ」
長きにわたるお手当てを終え、僕達は帰路に着く。太陽が次第に沈んでいて、流石に帰らなければ親御さんも心配するだろう。
「じゃあ私こっちだから」
「うん。また学校で」
「またね~!」
「ん」
僕の家はのどかの家とそれなりに近いので、のどかとは同じ道に進むことになる。他の二人はそれぞれ別の道に別れを告げながら歩いていく。
「頭痛くなってきた……」
「大丈夫?」
恐らく疲労によるものだろう。何せ嫌なことを思い出すわ急に意識途絶えるわ、はたまた出会ったばかりのアスミに色々振り回されるわで今日は実に散々だったのだから、明日は何もせずに1日過ごした方が良さそうだ。そんなことを考えながら、十字路へと辿り着く。
───アスミ?
「「「「あっ」」」」
その名前を思い出した瞬間、全員の足がぴたりと止まる。振り返ると、十字路のど真ん中でにこやかな表情で突っ立っているアスミの姿があった。
「待って待って待って!!」
「アスミは何処に帰るの?」
「帰りません。ヒーリングガーデンには帰らない事になりましたので」
「そうじゃない。お前の家は何処だと聞いてるんだ」
「私に家はありません。強いて言えば地球全体でしょうか」
「スケールでかっ!?」
よくよく考えれば、生まれたばかりの精霊に自宅は何処だなんて聞くのが間違いだった。質問の仕方を変えて改めて尋ねてみる。
「じゃあ、何処で寝るつもりなんだ……?」
「お風呂は!?」
「ご飯は!?」
「私はラテ様のお傍にいられれば、他に何もいりません。休む場所ならここで……」
「「「「はっ!?」」」」
アスミはそう答えながら、その場で腰を下ろして横になろうとする。肩が、髪が地面につく前に僕は彼女の両脇を掴んで立たせると、彼女は困り顔で此方を振り返ってくる。
「駄目なのですか?」
「駄目に決まってるだろ死ぬぞお前!」
「そうなのですか。人間界とは物騒な場所なのですね」
「いや、こんな道路で寝ようとする君の方が物騒だよ」
とてつもなく厄介な事態である。人間界に生まれたことである程度の常識は叩き込まれていると思っていたが、実際は壊滅的にないという。大人びた見た目とは真逆の奇行に誰もが絶句せざるを得ない現状であり、このままだと面倒事に巻き込まれかねない。
「……どうするんだこれ」
「うーん……打開するには、この中の誰かの家に居候させる他ないんじゃない?」
ポポロンがそう提案するも、誰も中々手を挙げられないでいる。
「あたしん家はちょっと厳しいかな~。空き部屋とか多分ないし……」
「私の家も宿泊施設だから、多方面に迷惑掛けるかもしれないから……」
出来ないことはないけれど、どうにも難しいってところだろう。
「こっちはそもそも無理だ。知らない異性の人連れ込んだら、絶対母さんに殺される」
「殺されるって……」
冗談ではなく、本気で殺されかねないのだ。母さんはそういうのに相当敏感だし、たとえそっち系の目的でなくとも尋問を越えた拷問になることは容易に想像出来る。最悪肉の塊すらも残るか否か……というわけで僕も手を引くことになり、残るはのどかだけとなった。
「考えてみれば、ラテを住まわせてるのどかがこの中じゃ適任なんだよね。どうかな、頼めるかい?」
「う、うん……!頑張ってみる!」
よって、話し合いは成立となった。
アスミを見守るのに新米ヒーリングアニマル達では心細いようで、ポポロンはしばらくのどかの家に泊まることになった。寝静まった夜を過ごせそうで思わず表情を和らいだのはここだけの話である。
────ー
それから2日経った日の休み時間のこと。
「アスミちゃん、今朝は嬉しそうだったな~」
のどかは今朝起こった出来事を思い出し、耽っていた。その内容として、アスミが花寺家に住むようになったことでラテと過ごす為の個人部屋を提供してくれたそうだ。ラテの飼い主兼海外からのバックパッカーと称して誤魔化したらしく、家族が留守の間は彼女がラテの世話をすることになったとのこと。その時に『アスミ』だけだとおかしいと苗字を考えていて、家に飾られた風鈴を見ていたので『風鈴アスミ』と名付けたと言っていた。
因みに、今日に至るまでやはりアスミの不慣れな生活に苦戦していたらしい。箸が使えなかったのは外国人観光客あるあるなので、まあ許容範囲である。だが、風呂のシャワーを上手く使えなかったり食事の際にとんでもないことを言いかけたり、更には信号に気付かず轢かれそうになったりとかなり世話を焼かれていたようだ。
「そりゃあそうでしょ~!あたしも自分の部屋貰えた時めっちゃ嬉しかったし!」
「だね!」
「でも、家にアスミ一人で大丈夫かしら……?」
「まあ言われてみると……」
彼女が生まれてから2日は経ったものの、日常生活はまだ慣れていないだろうし変な事態に直面していないか確かに心配になってくる。
「大丈夫だよ、ラテもラビリンもポポロンもいるんだし。心配ないない!」
「まあ、それもそうね」
そうして二人がのどかを励ますも、のどかは心配そうに窓の外を見つめていた。
────ー
「のどかっち、慌てて帰っちゃったね」
本日の授業が終わり、余程アスミが心配だったのかのどかが先に帰っていったので、ひなたとちゆと共に下校することに。
「私、余計なこと言っちゃったかしら……」
「別に、のどかだって心の片隅で同じこと思ってたと思うが」
「だと良いんだけど……」
自分なりにフォローしたつもりだったのだが、ちゆの表情は曇らせるばかり。その時、二人組の女性とすれ違う。
「あの子、何?」
「もしかして幽霊……?」
と、そんな会話を耳にし彼女らの視線は僕らの通学路の方を向いている。
「何だあれ……はっ」
その視線の先には、男性二人が身体が透けている女性の姿を見て驚いている光景だった。しかも、その女性は凄く見覚えのある人物だった。
「アスミ!?」
青緑のノースリーブワンピースを着用し首元には白いスカーフ、そして髪型はひとまとめに括っている。初めて出会った時とはかなり雰囲気が変わっているが、透明になっても目立つ金髪ですぐに分かった。
「なっ、あれどういうこと!?」
「ひなたと飛鳥は周りの人を引き付けて!私はアスミを連れていくから!」
「えっ!?あっ、お、オッケー!!」
ちゆの指示通り、ひなたはアスミを囲む人混みに割り込んでいく。
「うぇっ!うそうそ~!すっごい美少女発見~!」
少々オーバーに周りの人達を誤魔化して引き付けていた。本気でそのスタイルで通すつもりなのか……。
「ほら、透明感!透明感!!とうめいか〜〜ん!!!」
「……やっぱり僕も行く。そっちは頼んだ」
「えええっ!?」
流石にあんなのは御免だ。その隙に、ちゆがアスミの手を取ってその場を走って後にするのについて行った。
────ー
「んで、何だその身体」
ちゆの家である沢泉旅館に到着し、アスミと共にちゆの部屋へお邪魔する。留守番をしていたペギタンも加入しアスミの身体が透けている事情について尋ねてみる。
「実は私、ラテに避けられているようなのです。もうどうして良いか分かりません……」
「それが原因で身体が消えちゃいそうペエ」
「そういうことなの……地球の神秘ね」
「私はもう本当にこのまま消えてしまいたい……」
透明感が更に強くなる。もはや姿形も見えないに等しいくらいだ。ラテの言葉に耳を傾けるようにはなったが、過保護で心配性なところは変わらないらしい。そのせいでラテに距離を置かれてしまい、彼女は思い詰めてしまっていた。
「そんなに悲しいのね、アスミは」
「悲しい?」
「そう、その気持ちを悲しいっていうのよ」
「そう、ですか……」
表情を俯かせる。余程距離を置かれたことがショックだったのだろう。これでは励ましの言葉でどうにかなるかどうか……。
「お姉ちゃ~ん!」
「っ!」
その時、部屋の向こうからちゆの弟のとうじの声が聞こえ、その声にちゆは慌てた表情を見せる。
「お母さんがおやつどうぞだって~!」
御家族から提供してくれたおやつを持ってきてくれたようだ。しかし、この部屋には身体が半透明になっているアスミがいる為、とうじを部屋に招き入れるわけにもいかない。
「うおっ!?」
ちゆは立ち上がると、自分の身体の幅だけ襖を開けて相手に部屋の中を見られないよう視界を塞ぐ。普段は優しい姉の謎の圧力に弟は圧倒され、一歩後退ってしまうも彼女は構わず彼の持つお盆を受け取る。
「あっ、飛鳥さん来てた───」
「今大事な話してるから。あとおやつありがとう」
とうじの言葉を遮るように声音を低くして言い切ると、やや強く襖を閉じる。真面目な性格の彼女が圧を掛ける一面は珍しいことである。受け取ったお盆に乗っていたのはちゃんと人数分あるお茶の入った湯飲みといくつものすこやか饅頭だ。
「これは?」
「おやつのすこやか饅頭よ。どうぞ召し上がれ!」
初見の食べ物にアスミは戸惑いながらもすこやか饅頭を手に取って口に運ぶ……包み紙ごと食べる気か!?
「おいちょっと待て!」
「……っ!」
思わずアスミの腕を掴んで止める。対して、アスミは頭上に『?』を浮かべた表情をしていた。
「その周りの包みは取ってから食べるの」
ちゆが手本として見せたのをアスミは真似しながら包み紙を取ってすこやか饅頭を口に運んでいく。
「……美味しい」
そう口に出した時、次第に透けていた身体が元通りになっていく。
「たくさん食べるペエ」
ペギタンの言葉に、アスミはお構いなしにお盆に置かれたすこやか饅頭を次々に手に取って包み紙を剥がして食べていく。おかげで透けていた身体もほとんど元通りになっていた。
「あっ……」
僕はほんの数個、ちゆとペギタンに至ってはまだ一個だというのに残っていたものは全てアスミが食べ終えてしまった。こっちは全然足りないというのに食べ過ぎだろ。ついつい彼女を睨みつける僕に、ちゆは苦笑を浮かべていた。
「良かった。アスミは甘いものが好きなのね」
「好き?美味しいものを好きというのですか?」
「好きはそれだけじゃないわ。そうね、例えば……」
そう言って、ちゆはアスミを連れて足湯へと招き入れる。僕も同じくそれに続く。
「温かい……」
「心もポカポカするペエ」
「これもまた私は好きよ」
「美味しくて温かいもの。好きというのは良いものですね」
「別に良いものだけじゃない。苦痛なことだってある。それでも止められないのが好きって奴だ」
身体が動かすのが好きでも、運動神経が悪い。人と話すのが好きでも、上手く会話が弾まない。跳ぶことが好きでも、目標には中々到達出来ない。好きの中にはそんな現実という苦痛が隠されている。それでも好きなことなのだから、止めようにも止められないのだ。
「それは、随分難しいですね……」
ただ、苦痛が続くといつしか好きでなくなってしまう。止めるのは簡単でも続けられるのは難しい。そう考えると、好きというのはかなり難しいものだ。
「そうだ。良かったら今度、私のハイジャンプの練習を見に来て」
自分の他にもある好きなことを見て欲しい、そんな思いからちゆはアスミを誘うことにしたのだった。
────ー
次の放課後、それぞれ練習に励む陸上部の様子を僕達は木陰から見学していた。
「次、ちゆちゃんだよ」
「……バーの位置、高いな」
「チャレンジチャレンジだね!」
元々比較的高く設定している彼女だが、今回はそれよりも高く設定されているバーを跳び越えるつもりだ。
「……っ!」
一呼吸整えると駆け出し、跳躍してバーを跳び越えてみせる。しかし、いつもより高く設定されたバーは簡単には跳び越えさせてはくれなかった。一度だけでは諦めず、2度3度と繰り返して跳躍するも結果は変わらなかった。
「うわ~!今のギリOKじゃない!?」
「バーが落ちたんだからOKも何もないだろ」
「どうして……」
そうやって談笑する中、アスミは失敗しても諦めずに挑戦し続けるちゆが分からず呟いていた。しばらくして休憩に入るとちゆは此方に歩み寄ってくる。
「お疲れ様、ちゆちゃん」
「ありがとう」
のどかから渡されたタオルを礼を言って受け取り額から零れる汗を拭っていると、アスミが尋ねてくる。
「ちゆは何故失敗してばかりなのにそんなに何度も跳ぶのですか?」
「それは私がハイジャンプを好きだから」
「好き?美味しくも温かくもないのにですか?」
「ええ、練習はハードだし緊張もするけど……でも、私はハイジャンプが好き」
好きであるが故に失敗しても夢中になれる。逆に、最初から好きで出来ることだけやってもいつしかつまらなくなってしまうだろう。好きなことで挑戦するからこそ成功したことの達成感は凄まじく、本来の好きがもっと好きになるかもしれない。ちゆもまた、好きなハイジャンプで高みを目指す為に跳び続けるのだ。
「この気持ちは止めようと思っても止められない。好きってきっとそういうものよ」
「そのことばかり考える、止まらない気持ち……」
「うん。アスミの気持ちにもあるんじゃないかしら?そんな好きの気持ちが」
アスミは顔を俯き、表情を曇らせながら深く考え込む。その時、背後から気配と何かが僕の背中に引っ付いているのを感じる。
「んんんんんン~。やっぱりここの居心地は最高だねえ」
「っ!?」
「ニョワアアア!!!」
思わず掴んで投げ飛ばしてしまった。だがまあ、それの正体は既に分かっていたので良しとする。
「ポポロン!?」
「俺達もいるぜ!」
「お散歩の途中で寄ったラビ~」
同時に、茂みからヒーリングアニマル御一行が飛び出してきた。当然、ラテの姿もそこにあった。
「ワン……!」
「ラテ……」
アスミと目が合うにラテは怯えるようにして距離を取る。どういう事情があって避けているのか、ラテに聞いてみたいとする一方でアスミは再び俯き、またも身体が透けていっていた。
「あああ!アスミン駄目駄目~!!えっと~……そうだ、ニャトラン踊って!!」
「ええっ!?無茶ぶりするなよ~!」
「くちゅん!」
そんなアスミを喜ばせようとひなたは責任をニャトランに押し付けているところに、ラテがくしゃみをする。ビョーゲンズがまた現れたのだ。同時に悲鳴が校舎裏から聞こえてくる。だが、こういう現状なのでアスミとラテは変身することが出来ない。
「一先ずは僕達で何とかするぞ」
「「「うん!」」」
こうして僕達はアスミとラテを残して、メガビョーゲンのいる場所へと向かった。
『メガ!メガ!』
「その調子よ、メガビョーゲン」
今回も蛇口の姿をした、特に両腕を自慢の武器としており、禍々しい水を噴射して辺りを蝕んでいる。その頭上でシンドイーネは様子を見下ろしていた。
「すぐに片付ける……!」
それぞれのパートナーと共に、一斉に変身の体制へと入っていく。
「「重なる二つの花!キュアグレース!!」」
「「交わる二つの流れ!キュアフォンテーヌ!!」」
「「溶け合う二つの光!キュアスパークル!!」」
「絡み合う二つの毒、キュアラピウス」
「「「地球をお手当!ヒーリングっど♡プリキュア!」」」
「さて、オペを始めようか」
「「「はあああああっ!!!」」」
『メガッ!』
変身直後、キュアグレース、キュアフォンテーヌ、キュアスパークルの3人はすぐさま跳び上がってメガビョーゲンへと向かっていく。対して、敵は両腕から水を発射して接近を阻止しようとする。しかし、そうはさせないと此方は蛇の化身を召喚させ光線を放って対抗する。
「「「たあああああっ!!!」」」
その隙に、フォンテーヌ、グレース、スパークルの順でメガビョーゲンの頭上に踵落としを仕掛ける。3人同時攻撃で耐えきれない程の衝撃が迸り、メガビョーゲンは勢い良く地面へと叩きつけられた。
「ふん、こっちにはこれがあるのよ!」
その言葉と共に、シンドイーネは自身の懐から結晶のようなものを取り出す。以前、バテテモーダが持っていたとされる欠片をメガビョーゲンへと投げつけた。
「あれは……!」
『メガメガメガメガァ……ビョーゲン!!!』
欠片がメガビョーゲンの体内へと埋め込まれていくと、奴に異変が生じ次第に巨大化していく。そんな強化の過程を拝見したシンドイーネは感激の声を上げていた。
「やだ~!本当に成長したじゃない!使えるわ、メガパーツ!」
「あー……あの欠片ってそんなクソダサネームだったのね。把握把握」
「クソダサって言うんじゃないわよちっこいの!!っていうか、名前付けたの私じゃなくてグアイワルだから!!」
「分かったからそんな怒んないで───って、『ちっこいの』って言うなコラァ!!せめて『羊ちゃん』って言えやぁ!!!」
「くだらない挑発に乗るな馬鹿」
もはや挑発でもないんだが、と逆ギレするポポロンの頭を軽く叩いて冷ませる。そんなことをしている内に、パワーアップしたメガビョーゲンは立ち上がると力を発揮しようとする。
『メガァ!!!』
両腕に存分に力を溜めて水を放出する。先程とは打って変わって凄まじい速度の水が此方を襲って来るも、辛うじて全員回避していく。だが、避けたことでその周りが弾けるように蝕まれていっていた。加えて、メガビョーゲンは更に巻き散らすように水を放出させてグラウンドやテニスコートまでをも蝕んでいた。
『メガビョーゲン!!』
「「「きゃあああっ!」」」
これ以上は許さないと再び飛び掛かっていく3人だったが、メガビョーゲンの容赦ない攻撃によってすぐさま吹き飛ばされてしまう。かなり至近距離での直撃であったため、ダメージは大きいだろう。
「チッ……!」
実のところ、初めてメガパーツによって強化されたメガビョーゲンと戦った前回からかなり圧倒されている。浄化出来たのもキュアアース……そしてあの男がいたからこそである。故に、現状では奴を倒す力には足りていないということになる。
『メガ、ビョーゲン!!』
『ぷにシールド!』
次の標的は僕に定められ、隙を見せる暇も与えずに攻撃を放ってくる。ポポロンはそれをぷにシールドを張って防御に図るが、
「ぐぅっ……!」
あまりの力にバリアはすぐに剥がされ、ダメージを受けることとなってしまった。その衝撃によって、転がっていたサッカーボールが勢いよく跳ねて木の裏で隠れているラテの方へと飛んでいく。
「ラテ……!?」
一人戦いに応戦出来ずにただ見守っていたアスミはサッカーボールからラテを守る為に走り出す。ボールから背を向けて盾になるも、運よくラテにも彼女にも当たらずに済んだ。
「お怪我はありませんか?」
「くぅ~ん……」
「良かった……」
ラテが無事であったことに安堵する。その時、アスミの脳裏にある言葉を思い出す。
『アスミの気持ちにもあるんじゃないかしら?そんな好きの気持ちが』
「そのことばかり考える、止まらない気持ち……」
先程のちゆの言葉───『好き』という言葉の意味を、ラテをあんなにも溺愛していたのは、ラテのことが好きだからだと気付いたアスミは身を持ってようやく理解する。
「ラテ、私はラテのことが好き。いえ、大好きなのです。だから、少々心配し過ぎてしまったようです。これからはラテの気持ちを第一に考えてお傍にいたいと思います」
「……ワンッ!」
アスミの言葉、そして腕を広げたその行動にラテは笑顔で飛び込む。和解は出来たようで彼女の透けていた身体が次第に元通りになっていき、視線を暴走の止まらないメガビョーゲンへと向ける。
「参りましょう、ラテ」
「ワン!」
今度こそ変身が可能となった彼女たちはすぐさま変身の体制へと入る。
「「時を経て繋がる二つの風!キュアアース!!」」
「あんたが新しいプリキュアね?良いわ、何人増えようともコテンパンに……えっ?」
初対面となるキュアアースが姿を現し、シンドイーネは挑戦的な態度で言い放つ。しかし、瞬きをする一瞬の間にアースはその場から姿を消した。
「ど、どこ行ったの!?」
そう言って辺りを見回すと、彼女はメガビョーゲンの頭の上にあるハンドル状のものの上に立っていた。そこから浮遊して降りていくのと同時にハンドルを勢いよく蹴ってメガビョーゲンの全身を回転させる。
『メガッ!?』
それによって、敵は目を回してバランスを崩して動きが止まることとなる。この瞬間が浄化のチャンスとなった。
『キュアスキャン!』
グレースはキュアスキャンでメガビョーゲンの体内にいる水のエレメントさんを見つける。再び我に返る前に戦闘不能に陥れなければ。
システム起動!トロイアスバレル、チェック!サンライトオーバー、3!2!1!
『
弾丸の如く素早い光速の矢が、メガビョーゲンの急所へと命中する。あとは派手に浄化させるだけだ。
「もう~!私は大好きなキングビョーゲン様にお会いしたいだけなのに~!!」
「大好き?」
「そうよ、大好きよ!悪い!?」
「いいえ、大好きは悪くありません」
ほぼ八つ当たりと言わんばかりに、シンドイーネは浮遊して降り立つアースにそう言い放つのに対して、アースは敵であれど大好きという気持ちを否定しなかった。
「ですが、貴女の大好きの為に私……そして、皆さんの大好きを傷つけることは許しません!」
『アースウィンディハープ!』
「エレメントチャージ!舞い上がれ、癒しの風!!」
『プリキュア・ヒーリングハリケーン!!!』
アースウィンディハープから放たれた、無数の白い羽を纏った竜巻状の光線がメガビョーゲンへと直撃し間もなく浄化されていく。
『ヒーリングッバイ……』
「お大事に」
────ー
水のエレメントさんを助け出し、ラテの体調も良くなったことで事は解決し僕達は帰路に着く。
「ラテ様はアスミに怒られちゃうと思っていたラビ」
「そうなのですね」
「私も病気の時お母さんに凄く心配されていたけど、それだけ大切に思ってくれていたってことだよね」
「それってつまり……」
「好き、ということよ」
「好き……あっ」
アスミはようやく気が付いた。アスミとラテ、お互いに好きという気持ちがあったということを。今回は偶然それがすれ違ってしまったが故に問題となってしまったのだ。とはいえ、一人一人の感情を読み取るなんて物凄い超能力者でない限りは不可能なのだから、こうなってしまうのも仕方がない。
「この世界、そして私の心の中にもまだまだ知らないことが沢山ありそうですね」
こうして歩いている内に、真っ赤に輝く夕陽が辺りを照らす。
それは、この世界に生まれ知らないことを知っていくアスミを見守っているようにも見えた。