ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜   作:ゆぐゆぐ

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今回はポポロン視点がメインとなっています。飛鳥くん視点の描写も変わらずあります!
また、今回も前編後編に分けさせていただきました。


第29節 囚われのぬいぐるみ

「何だよ何だよ、何だってんだよもう!」

 

 さて、現在僕ことポポロンは何故こんなカンカンに怒っているのだろうか。

 それは、遡ること数分前。

 

 

 

 

 

 帰り道。

 

「ねえねえ飛鳥クン、僕疲れたよ~。早く帰って一緒に寝ようよ~ねえねえねえ」

 

「買い物頼まれてるからまだ帰らない。疲れたなら黙って背中に張り付いてろ」

 

 

 

 

 

 スーパーにて。

 

「ねえまだ~?まだ買い物終わらないの~?すりすり」

 

「どれだけの量があると思ってんだ。あと背中擦るの止めろこそばゆい」

 

 

 

 

 

 レジでの会計にて。

 

「すりすりすりすりすり」

 

「いい加減にしろ!あっ、いえ、すいません何でもありませんカード払いで良いですか?」

 

 

 

 

 

「待ちも出来ないのかお前は……!」

 

「飛鳥が早く済まさないからでしょ~?」

 

 ようやく帰宅することとなり、はち切れるくらいにパンパンの買い物袋を両手に持つ飛鳥はかなりイライラしている様子で足を運んでいた。

 

「だったら先に帰れば良いだろうが」

 

「だって君と帰りたいんだもん!そんなに僕のこと嫌いか!!」

 

「嫌い以外何があるって言うんだ」

 

「……」

 

 淡々と答えられるとは思わず、絶句してしまう。

 いつもぶん投げられたり蹴り飛ばされたりと雑な扱いを度々受けてきたわけだが、単に愛があるものだと思っていた。しかし、今の一言で飛鳥には僕に対して愛は無く、ただパートナーとして共に行動しているだけで本音は鬱陶しいと思われているんだと悟った。

 

「……じゃあ、僕が家出して二度と帰って来なくても良いって訳なんだ」

 

「いや、早く帰りたいんじゃないのかよ」

 

「うるさいなあ揚げ足取るんじゃないよ!あんたなんてパートナーってだけで友達でも何でもないんだから!!ふんだ!!!」

 

「……何だあいつ」

 

 

 

 

 

 というわけで、僕は見事に家出することになったのだ。

 今は何処へ向かうという目的もなく、ただゆらゆらと宛を探している。周りに誰もおらず独りぼっちというのは久々というべきか、それとも初めてだろうか。

 そんなことを考えながら、やがて辿り着いたのは小さな公園。今は日が暮れる時間帯である故に子供が誰一人としておらず、照らす夕陽も相まって静寂な雰囲気を漂わせている。

 ……いや、嘘ついた。見覚えのある奴がベンチに座っていた。

 

「はあ、いつまで経っても僕は弱虫のままペエ。やっぱり、可愛いじゃなくてカッコいいって言われたいペエ!」

 

「いや鏡見てから言え弱虫」

 

 そこにいたのはぺギタンである。

 僕は男の子がとてつもなく好きでめちゃくちゃ可愛いと思っている。だが、正にショタって感じの人間の男の子が好きなのであってヒーリングアニマルの男の子はあまり好かない。特にこいつはヒーリングガーデンにいた頃から泣き虫で弱虫で、いつまで経ってもビビり散らかしているので正直うざったい。だから、僕は普段当たり強く接しているのだ。そんなぺギタンは僕を見るなり驚いた表情を見せていた。

 

「ポポロン!?何でいるペエ!?」

 

「別に、家出しただけだよ。そっちは何、まさかちゆちゃんと喧嘩したの?」

 

「ち、違うペエ!実は……」

 

 ぺギタンが言うには、家でちゆと一緒にアクションホラー映画(内容的にジャンルはこの辺りと推測する)を鑑賞していて、怖くないと言ったはずなのに可愛いとからかわれたのがショックで抜け出してきたのだという。沢泉家を抜け出すなんて流石にくだらないことではないだろう、というか思いたくないので願っていたのだが案の定くだらなかった。

 

「だから、僕はちゆにカッコいいって思われたいペエ!」

 

「あっ、うん、そうなんだ……まあ精々頑張って」

 

 願望を抱き、実現したことを想像してニヤニヤと笑みを浮かべているのを見て、自分も言えたことではないけど流石に気味悪いと思えてしまう。ぶっきらぼうに応援の言葉を投げかけ、即座にこの場から離れようと浮遊する。

 

「じぃ──ー」

 

 ベンチの向こう側から感じる鋭い視線に、ポスンと音を立ててベンチに座り込む。

 見ると、そこには買い物袋を片手に持った少女の姿がこちらを凝視している。ぺギタンも気付いたようで、同じく微動だにせず固まっている。ぬいぐるみ状態というやつだ。

 

 だが、これは逆効果だったかもしれない。少女はじっと凝視した後にスタスタと目の前まで近づいてくると、僕達と同じ目線に立って更に凝視する。

 

「(ねえ、この子何すか。めっちゃ見てくるんですケド。もしかして、10分後に食われるやつかなこれ?)」

 

「(し、知らないペエ。とにかく、あっち行ってペエ!)」

 

 何も手出し出来ない僕達は、危害を加えられないよう祈るしかなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから10分位が経っただろうか。

 さて、今いるのはベッドとか玩具などTHE・子供部屋とも言える一室であるわけなんだが……。

 

「(お、お持ち帰りされちゃったペエ!)」

 

「(お持ち帰りとか言うんじゃないよ卑しい)」

 

 あれからしばらく睨めっこが続き、ようやくぬいぐるみだと思って貰えたのは一先ず良かった。けれど、捨てられたぬいぐるみだと思われたことは流石に誤算だった。っていうか、どっちも連れてくとかあの子強欲過ぎない?

 まあこんな感じで、見事に連行されてしまった僕達はこれから如何にして脱出しようか策を考えていると、買い物袋に入った荷物を整理し終えた少女は自室に入って来て、再び此方を凝視する。

 

「……ジョセフィーヌに、クリスチャン」

 

 突然、ポツリと呟く。

 

「今日からペンギンの貴方がジョセフィーヌで、羊の貴方がクリスチャンだよ。私はりり、よろしくね!」

 

「(あっ……)」

 

「(ペエエェェェ!?)」

 

 というわけで、りりの物にされた僕達はそれぞれ改名されたのでしたとさ。まだ終わらないけど。

 

 それから僕達は服を着せ替えられ、ド派手な化粧をさせられたりと完全な着せ替え人形にされていた。

 

「可愛い!」

 

 満面の笑みではしゃいでお人形さんごっこを楽しんでいる中、逃げ出すことへの最善案を考えているばかりだった。

 

「(ねえ、これどうすんの?どのみち逃げ出さないといけない訳だけど)」

 

「(隙を見て逃げ出す為には、このままぬいぐるみだと思われていた方が良いペエ……!)」

 

 首を動かしてアイコンタクトを取ることが出来ず、ヒーリングアニマル特有の以心伝心で策を練る。その結果、りりの気が済むまで、このままバレないようにぬいぐるみのフリを続けるしかないという結論が出た。

 バレないように、絶対に、絶ッ対に、バレないように……。

 

 

 

 

 

「……あ、やべ」

 

 その時、何処からか低い音が鳴り響き出すと共にそう呟いてしまう。

 その低い音とは、空腹で飢餓状態になった際に適度なタイミングで鳴ってしまうものだ。"腹の虫が鳴る"とも言われているわけだが、僕が咄嗟に出た声でその正体はお分かりだろう。

 

「(おおらか市の湖に行く前から何も食べてないんだった。てへっ!)」

 

「(何やってるペエエエエ!)」

 

「えぇっ!?」

 

 当然、目の前にいるりりは聞き逃しはしておらず驚きを隠せないでいる。慎重に策を練っていたのも虚しくバレてしまったことに、ぺギタンは目を見開いてダラダラと冷や汗を垂らしていた。

 とはいえ、ぬいぐるみではないと見破られてしまっているのだから、これ以上黙り込んでいても仕方がない。強行ではあるが、ここは潔く正体をバラすしか────。

 

「……どっちも本物?」

 

「「(へ?)」」

 

「野生かな?それとも迷子?どっちでも良いけど凄い!本物のペンギンさんと羊さんだ!あれ、羊さんってこんなに真ん丸だったっけ?どっちも赤ちゃんなのかな?まあ可愛いからいっか!」

 

 今時の女児とはこんな感じなのか、あまりそう思えない程の素早いマシンガントークを放つと、ぎゅ──ーっと二匹の動物を両腕で抱き締めながらクルクルと回って踊り始める。

 少し予想の斜め上を行ったが、ヒーリングアニマルとバレなかったことだけ良しとするべきだろう。ぺギタンとアイコンタクトを取って結論付けるのだった。

 

 

 

 

 

 それから僕達は、風呂で化粧を落とされたりして部屋のベッドに佇んでいる。一方で、りりは台所に一人で夕飯の支度をしていた。まだ幼いのにしっかり者だなあと扉の影からじっと眺めていると、ぺギタンが僕の頭を小突いて窓の方へと振り向く。

 

「ポポロン、チャンスペエ」

 

 そうだ。こんなことをしている場合じゃなかった。僕はそっと扉を閉め、開いた窓から脱出することを試みる。

 

「ジョセフィーヌ、クリスチャン。ご飯もうすぐ出来るから待っててね~!」

 

「……許せ、りりよ。地球のお手当ての為という身勝手な行為を許してくれ。おお、神よ!彼女に聖なるご加護の」

 

「何を言ってるペエ!早くしないとチャンス逃しちゃうペエ!」

 

 別にそんな焦らんでも……。

 窓を全開にして文句を言うぺギタンに素っ気なく返事をして、いよいよ外の世界という名の天国へと脱出しようとする。

 本当にマジで短い時間だったけど、こんなぬいぐるみサイズの動物を介抱してくれて有難う。先程の続きになってしまうが、言わせて欲しい。

 

「おお、神よ!彼女に聖なるご加護のあらんことを」

 

 

 

 

 

 窓の外から身体が半分出た瞬間、想定もしてない事態が起こった。

 この世界に生きている以上、幸せなこともあれば不運なことも沢山だ。人間も動物も、全ての者が幸運な方向へ向くとは限らない。世の中とは、割と適当でいい加減なものなのだ。

 

「グルルルル……」

 

 僕達が飛び立つ場所の真下、一階にある庭に待ち受けるは約3匹の大型犬。まるで野生の本能が働いているかのような鋭い眼と此方のつぶらな瞳が合わさり、全身が硬直する。

 

「ウワンッ!!!」

 

 獲物と認識したのだろうか。その場にいた大型犬全員が一斉に吠えたのだ。お互いが気付いた時間など短いというのにこの凄まじい威圧感。それには恐怖を隠し切れず、瞬時に部屋に戻って窓を閉めたのだった。

 

「……おい、何だあれ。外の世界ってもしかして地獄?あいつらって地獄の門番?ケルベロスか?」

 

「お、おお、おおお、落ち着くペエ。絶対違うペエ……た、多分」

 

「いやお前が落ち着けよ。絶対と多分って矛盾してんじゃねーかよバカちんがぁ……!」

 

 はあ、はあ、とお互いに息を切らす僕達を見て、ご飯の支度を済ませて部屋へ戻ってきたりりは首を傾げて困惑していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日が沈み始め、空が真っ暗になりかけている時間帯。

 普段なら家に帰っている時間だが、今は帰るどころか外に飛び出してあちこちを探し回っていた。というのも、事態は1通のメールから始まった。

 

『皆、ぺギタン来てない?いなくなっちゃったの!』

 

 そんなちゆの一言によって5人全員が集まることとなり、一斉にぺギタンを探し回っている。

 のどかと僕で自販機の下やゴミ箱の中など、意外と隠れていそうな箇所を手当たり次第に見て行ったが気配すらも感じられない。

 

「ペギタン~!ペ~ギ~タ~ン~!!」

 

 ひなたが雑誌をメガホンみたいに巻いて大声で呼びかけるも結果は同じ。やまびこすらも届かない程に虚しいものとなった。

 

 そうして捜索している一方、ちゆは顔を俯かせながら両手を前に組んで肩を落としている。その表情は、何処に行ってしまったのかという不安や腹を空かせてはいないだろうかという心配よりかは"罪悪感"に近い感情を持っているように伺える。

 

「ったく、パートナーに心配かけて何やってんだ、ペギタンの奴」

 

「ううん、私が悪いの……」

 

 罪悪感を抱いていたことにはどうやら的中したようだ。というか、事情は聞いていたから何となく想像出来た。自分の身勝手な言動でぺギタンを嫌な気持ちにさせたのかもしれない、と酷く落ち込む姿を見てその心に入ろうなどとは誰も思わなかった。

 

「ただいま戻りました」

 

 気まずくなってしまった空気の中、離れた場所で探し回っていたアスミが丁度良いタイミングでラテを抱えて戻って来た。

 

「手掛かりは掴めたか?」

 

「一応は。ですが……」

 

 手掛かりを掴めた割には、その表情は今一つ。決して良い手掛かりを掴めた訳ではないのだろうか。

 

 とにかく、一同はラテの案内について行くことにした。やがて到着したその場所は公園のベンチであった。

 

『ここで匂いが無くなってるラテ。きっと誰かに連れて行かれちゃったラテ』

 

 ポポロンが人間界とヒーリングガーデンを行き来出来るように、他のヒーリングアニマルもそれは可能なのかもしれない。しかし、ラテはその可能性はないものとした。決してそんなことをする奴じゃないと信頼しているからだろう。とはいえ、誘拐されているという選択肢は拭い切れず、ちゆは表情を曇らせ続けている。

 

『あと、ポポロンの匂いもここで無くなってるラテ』

 

「「「え?」」」

 

 今のラテの言葉は、僕の想像を斜め上に遥か彼方まで突き上げていた。まさかあいつまで連れて行かれたとはあまり信じられない。でもその方が色々と辻褄が合うので仮定しておくとして。

 

「……そうか」

 

「何か、あんまり心配してなさそうだな」

 

「実際そうだからな。逆に安心している」

 

 僕の素っ気ない答えに、ニャトランは感情的ではないことを指摘する。

 別にどうでも良いとかは思っていない。寧ろ、いてくれないと進化の反動やらで上手く戦えることが出来ないくらいの重要な存在だ。

 

「あいつはいつも鬱陶しくて仕方ないが、誰かを守る意思に関しては強い。時々身勝手なこともあるが、誰かを見捨てたりは絶対しないと思っている」

 

 普段はあんなのだが、パートナーのことは当然ながら以前ドッグラン会場で戦った時は、周囲の人々を避難させようと防御したり仲間に的確に指示していた。誰かを思いやったり守ろうとする意志は強いはずだ。

 

「ポポロンはいつも態度悪くて生意気だけど、幼いヒーリングアニマルには面倒見が良いラビ。一時、ラビリン達もお世話になってたラビ」

 

「そういうことだ。だから、戻ってくるなら一緒のはず。心配はいらないって僕は思ってる」

 

 とは言って見せたが、ちゆの浮かない表情は続くばかり。確かに、現段階の情報のみでは奴らにはまだ辿り着けないだろう。また、その内心には言動云々があるかもしれないが、そこら辺は当人が片付けることなのでこれ以上首を突っ込もうとはしない。

 

 そうこうしている内に辺りを照らしていた日差しもいなくなり、真っ暗な夜の時間へと差し掛かっていた。それぞれ門限もあるだろうし、此方もそろそろ両親が帰ってくる時間になっている。明日は平日で学校もあるので捜索はここで中断しなければならない。

 

「そうね……今日はもう遅いし、解散しましょう」

 

「うん。学校が終わったら、また探しに行こうよ」

 

 満場一致。こうして一同は帰宅することにした。

 

「……大丈夫か?余計に心配になってたら、すまない」

 

「ええ、大丈夫よ。少しだけ元気になれたから。皆もありがとう」

 

 薄く笑みを浮かべながら感謝の言葉を告げるちゆだが、やはりいつもと比べて歩幅が小さい。心配はいらないとは言うものの、もし自分のせいで仲間がいなくなったと思うと心配や不安になってしまうのは当然のことだ。

 ……相変わらず、人を励ますのは下手だなと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方、日が完全に沈んで辺りが暗闇に包まれた静寂の夜。

 時計は10時の針を過ぎている。幼い子供であるりりは既に就寝、熟睡している。今、この家にはりり以外に脱出を拒む者はいない。ぺギタンと共に実行する頃合いは正にこの時なのだ。

 

「ジョセフィーヌ……クリスチャン……」

 

「「っ!」」

 

 バレないよう、そっと音を立てず窓を開けた瞬間、眠っているはずのりりが僕達に名付けた名前を口にする。まさか、目を覚ましてしまったのだろうか。即座にぬいぐるみ状態となってその場に固まって彼女に視線を送ってみる。

 

「……寝言かい」

 

 瞳を閉じながら、再び名前を呼んでいる。僕達と遊び回る夢でも見ているのだろうか。取り敢えず、彼女の睡眠の邪魔をしていなかったことと脱走するのを目撃されることを免れたことに安堵の表情を浮かべた。

 

「ただいま~」

 

 しかし、この部屋の奥────玄関の向こうから鍵を開ける音と共に女性の声が聞こえてくる。

 彼女の母親が帰宅したんだろう。なら、何も知らない僕達がここにいるのはかなり不味いと思い、咄嗟にベッドの下へと隠れる。

 

 開いた扉から見える明るいリビングの向こうを覗くと、女性がテーブルに置かれているラップに巻かれた夕食を眺めていた。少しして、彼女はりりの部屋に入ってくる。

 

「りり、ごめんね?もっと一緒にいてあげたいんだけど……」

 

 何となく察した。彼女らはこのすこやか市に最近引っ越して来たんだということ。そして、母は仕事が忙しくて上手く娘と触れ合えていないということを。

 

「新しい学校、慣れた?お友達、早く出来ると良いね……」

 

 眠り続けるりりにそう声を掛けながら、その頭を優しく撫でると夕飯を食べにリビングへと戻っていった。

 

 母の乱入に少々焦ったものの、すぐに眠る少女しかいない空間へと戻っていく。だが、僕達は再度脱出を試みてはいなかった。どちらかと言うと、しないよりかは出来ないに近い。ほんの僅かな時間で、心の振れ幅が大きく揺れ動いた気がしたからだ。

 

「りりちゃんのお母さんは仕事が忙しくて遅くに帰ってくるから、りりちゃんはいつも独りぼっちペエ。だから、ぬいぐるみ────僕達みたいなお友達が欲しかったんだ、仲良くなりたかったんだペエ」

 

 親の仕事の影響で一人で家にいるしかなくて寂しさを感じていた。りりのことを知って、何となく何処かの誰かさんと類似しているような気がした。

 

「なんか……飛鳥に似てるね」

 

 神医飛鳥────彼もまた、両親の仕事の影響で夜遅くまで一人でいることが多いのだ。そして、りりと同じように家事も洗濯も食事の支度も、家のことは全て任されている。

 

 ただ、飛鳥は中学生とは思えぬほど、普段は真面目で物事にも冷静に対処出来る。両親がいなくとも家にはペットのレピオスもいるし、僕だって多少なりとも彼の力にはなってると思っている。それに、友達ともスマホがあれば接することが出来るので心の負担なんてないだろう。

 

 それに比べて、りりはまだ小学生だ。瞬時に物事を対処出来る年代でもないし、友達作りにも苦しんでいるらしいから、たとえ携帯電話を持っていたとしてもやり取り出来ないだろう。ぺギタンの言うように、独りぼっちだから誰か仲良くなれるような友達が欲しかったんだと思う。

 

 ……あれ、色々と考えてたらここで戻ろうとする僕達が鬼畜な気がしてきたぞ?その思いは、隣にいる奴も同じらしく何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「……一度、泊まっていこうか。パートナーの説教なら幾らでも聞くってことで」

 

 ぺギタンがゆっくりと頷いたことで案は決まった。別にビョーゲンズが現れない限りは急ぎって程でもないし、少しでもりりには元気に登校して貰いたいからね。

 

 僕達は先程の窓際の定位置へと戻り、その場で瞳を閉じて眠りについた。

 

 

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