ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜   作:ゆぐゆぐ

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タイトルを変えることにしました。
原作沿いだとちゃんと前編と後編に分けているのですが、内容が想像より膨大なものになってしまった為です。


第30節 繋がり

 翌朝

 

『おしごとにいってきます きょうははやくかえるからね』

 

 リビングのテーブルに置かれていたのは、母親からの1枚の手紙。

 僕が目を覚ましてリビングに入った時には、りりもぺギタンも既に起きていてその手紙を寂しげに見つめていた。

 

「あ、おはよう……ジョセフィーヌ、どうしたの?眠れなかった?」

 

 ぺギタンの顔を見て、唐突にりりが問いかけたので僕も顔を窺ってみる。顔色は何ともないけど、それよりも目の下に黒く塗られたような模様────隈が出来ているのが気になった。

 

「(何で寝てないんだよ)」

 

「(慣れない環境で眠れる方が凄いペエ……)」

 

 それから朝食を食べ終わると、りりが学校へ行く支度を整えて登校するのを見送りに向かう。

 

「早く帰ってくるからね!行ってきまーす!」

 

 元気よく挨拶をして、玄関を出て扉の鍵を閉めて学校へと向かって行った。

 さて───早く帰って来てくれるのは良いんだけど、残念ながらその時には僕達はもういない。一泊してから皆の元に戻る予定だからね。一息ついて、いざパートナーの元へ出発とする。

 

「あ、お昼はあそこだから!仲良く食べてね!」

 

 ……唐突に鍵を開けて伝えに戻って来ることもあるから油断は禁物ってことで。

 

「ってか、お昼ご飯作ってくれたんだ」

 

 何となく、テーブルの上に置かれた弁当箱に視線を送る。

 開けてみると海苔でそれぞれ僕達の顔を分けられて描いたご飯、俗に言うキャラ弁って奴だろうか。おかずは魚肉ソーセージにししゃも、更にはキャベツやレタスがメインのサラダが入っていた。成る程、ぺギタンの顔からして魚が好物だと思ったのだろう。対して、僕の場合は草が好物だと思われてこうなったと。

 

「だからってしけてんなあ……」

 

「せっかく愛情持って作ってくれたんだから、そういうこと言っちゃいけないペエ!」

 

 まあ、お母さんからの手紙入れられるよりは全然マシだ。

 それにしても予定が狂った。小学生の女の子が、昨日拾ったばかりの僕達にまさか昼食まで作ってくれるとは思いもしなかったからだ。このまま食べずに立ち去ろうとするのは流石に申し訳ない。それに、ぺギタンに至っては頬を緩めて魅了されているのだからそういう話ではなくなっている。

 

「ふふふ……はっ!愛情弁当にハートをヒーリングされてる場合じゃないペエ!このままりりちゃんを1人ぼっちにしてはいけないペエ!僕、どうすれば良いペエェェェ!」

 

「うるさいよ落ち着け近所迷惑」

 

 帰ろうにも帰れないという気持ちは分かるが、どの道ヒーリングアニマルとしてパートナーと共にお手当てしなければならないのだから致し方ない。

 取り敢えず、皆は学校にいるだろうし一先ず昼食を取ってから後先を考えることにした。

 

 

 

 

 

 そして、時刻は午後を差し掛かった。

 昼食を取った後、結局りりのいない時に帰ることに決めた。玄関から扉を開けて外へと出ると、付近に置いてあった鍵を使って施錠する。

 

「僕のパートナーはちゆ。りりちゃんじゃないペエ。だからお家に帰るペエ」

 

「……ごちそうさま」

 

 確かな心残りはあるが、彼女と僕達は結局は赤の他人なのだから其方の事情にあまり首を突っ込むものじゃない。手助けになりたいけど、悩みなんて人生において必要不可欠の存在だ。周りには沢山の人達がいるし、友達も自然と作れるようになるだろう。

 最後にお昼ご飯を作ってくれたことに扉越し感謝の言葉を告げると、扉から背を向けて僕達は飛び立つ。真っ先にパートナーの元へと戻りに行く為に。

 

 

 

 キンコンカンコン。

 突然、学校のチャイムのような音が周辺に鳴り響く。その音の咆哮を辿るに小学校があり、子供達がグラウンドで遊ぶ姿が見受けられた。

 

「りりちゃん……」

 

 位置的に、あそこにはりりも通っているはず。そのまま通り過ぎようとしたが、ぺギタンが動こうともせずにその一点だけを見つめている。余程気になっているらしい。仕方なく覗く程度に様子を伺うことにした。

 

「ねえ、がっつり学校の中入ってるんだけど」

 

「すぐに逃げれば大丈夫ペエ」

 

 りりのいる教室を見つけ、わざわざ校舎の中に入って扉の窓越しから覗くことになった。変な悪ガキに襲われそうで凄く落ち着かないけど、時々廊下の周囲を見渡しながらその様子を確かめる。

 

「ね、ねえ!」

 

「うん?何?」

 

「あ……ううん、何でもない」

 

 席に座りながら、楽しく談笑するクラスの女子グループに話しかけようとするも中々声を掛けられず、仮に声を掛けれたとしてもその先は中々勇気が出ずに身を引っ込めてしまう。

 

「……僕と同じペエ」

 

 "勇気を出して頑張れ"と応援するように呟くぺギタンだが、それには自分と重なるところがあるからだそうだ。だからといって、僕達がどうにかしてサポートしてあげようとしたところで彼女の成長には繋がらない。心を鬼にして、自ら動けるよう我慢して見守るしかないのだ。

 

「ん~?」

 

「……何か視線───あ、やべっ」

 

 突如、背後から気配を感じたので思わず振り向いた瞬間に二人の男子にぺギタンも同時にを持ち上げられてしまう。

 

「ペンギンに……羊かこれ?何で?」

 

「ぺ、ペエェ~!」

 

 ぺギタンは叫び声を上げながら、僕は暴れて必死に抵抗するも中々剥がれない。

 

「ジョセフィーヌ!?クリスチャン!?」

 

 すると、それに気付いたりりが席から立ち上がって男子共の方へと近づく。

 

「あ、あの!」

 

「何だよ。っていうか、こいつら喋ってなかった?こっちの羊なんか"やべっ"って思いっきり言ってたぞ?」

 

「マジかよ。おい、何か言ってみろよ~」

 

 二人はりりの言葉に反応したものの、彼女の顔を見向きもしないまますぐに話題を変えて弄り回す。1人はぺギタンの頬を突き始め、もう1人に至っては僕の頭を掴んで振り回していた。飛鳥よりも強引にやってくるから流石に吐きそうになる。

 

「やめて、私のなの!苦しそうにしてるでしょ!?離してあげて!」

 

「何だよいきなり!」

 

「転校生のくせに生意気だぞ!」

 

 勇気を振り絞ってやめて欲しいと懇願するりりに、男子共は容赦なく言い返して僕達を弄り倒していく。

 

 ……こういうの、一度ビビらせておかなきゃな。

 

 

 

 

 

「ってぇなァ。家族ごと呪うぞコラ……!!」

 

 

 

 

 

「ひっ、やばい!逃げろ~!」

 

 男子共の表情が一気に青ざめていき、ポイッと投げ捨てるように離してその場から逃げ出して行った。

 全く、いくら可愛いマスコットキャラみたいな顔していたとしてもいじめたら天罰が下るんだからね!

 

「怖かったでしょ?大丈夫?」

 

 そう言って、りりが心配して優しく撫でてくれる。まああんな仕打ちは人間界に来てからは日常茶飯事だったし、これ以上心配を掛けさせまいとぺギタン同様笑顔を作って元気づける。

 

「可愛いね、その子達!」

 

「何処で買ったの?」

 

「え?えっと……」

 

「撫でても良い?」

 

 そこに、後ろで見ていた女子達が次々に話しかけてきたので、思わず困惑してしまったことで此方にアイコンタクトを送ってきた。

 

 当然、答えは肯定の一言であると力強く頷いた。

 

「……うん!」

 

 それがちゃんと伝わり、元気よく答えてバトンタッチで渡すと、更に数人の女子達が集まって来て僕達をわしゃわしゃと撫でまくっていた。

 

 ───なんだよ、ちゃんと友達出来るじゃんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お友達、いっぱい出来ちゃった!」

 

 今日の授業が終わり、帰宅時間となったりりは僕達を連れて公園のベンチに腰を下ろしていた。僕達が初めて出会った場所だ。初めは彼女を誘拐犯だなんだと騒いでいたが、徐々に関係が深まるにつれていつの間にか見守る立場になっていた。

 結局、彼女を手助けする形になってしまったが自分から声を大にして"やめてあげて"と主張したのは大健闘ではないだろうか。そのおかげで周囲から目立つ存在となったのだから喜ばしいことだと思う。

 

 

 

 ザッ……

 

 

 

「私ね。勇気が無くてここに引っ越してからずっと誰にも話しかけられなかったんだ。お家でもずっと寂しかったんだ……」

 

 寂し気な表情で、自身のこれまでの事を話した後、顔を上げて此方に笑顔を向ける。

 

 

 

 ザッ……ザッ……

 

 

 

「ありがとう。これからもずっと一緒にいようね!」

 

 だが、その笑顔は場合によっては誰かの心を抉る兼自身の心を抉ることにもなりかねない。現にぺギタンはその言葉に顔を俯かせている。

 こいつだってずっと一緒にいたいっていう気持ちは強いし変わらないと思う。僕だってそうではないわけではない。しかし、そんな中で自分達を待っているパートナーがいる。ビョーゲンズを倒して地球をお手当てするというヒーリングアニマルとしての使命があるが故に、その思いには答えられない。

 

「そういえば、クリスチャンって喋れたんだね!今まで喋らなかったのって、恥ずかしがり屋さんだったから?」

 

「え、ま、まあそんなところかな。あと、僕って人語を喋れる羊の希少種みたいなもんだからあまり公にして欲しくないっていうか……」

 

 しんみりした雰囲気から唐突に話題を変えられたのでつい驚いてしまった。小声で喋ったつもりなのに普通にバレてたの何か複雑だな。

 

「(何で普通に喋ってるペエ!?)」

 

「(バレたんだからしょうがないじゃん!希少種って言えば何とかなるでしょうよ!)」

 

 それに、もうこの際だから伝えておくべきだ。ぺギタンにはちゆちゃん、僕には飛鳥と大事な人がいるからずっと一緒にはいられないって。心の中でそう決めた僕は、りりの目の高さと同じ位置まで浮遊する────。

 

 

 

 ザッ……ザッ……ザッ……

 

 

 

 ────先程から森の奥から聞こえていた物音が段々近づいてきている。いや、迫ってきていると言うべきか。同時に、徐々に嫌な気配が脳と肌を感じさせていく。

 

「……クリスチャン?」

 

 不思議そうに僕の名を呼んで見つめる彼女を後目に見た後、冷や汗をかきながらそっと後ろを振り返る。

 

 

 

 

 

「ふひひ」

 

「うん?」

 

 そこに身を潜めるは、少女────身長やら見た目はりりと然程変わらないくらいの少女であった。

 紫髪で子供にはあまり見受けられない大人びた髪型のセミロング。黒のローブを羽織っていてその下には軽装の鎧のような服を纏っているという服装で、目元はフードを深くかぶっているおかげで良く見えない。それでも"可憐"とも言える外観をしている。

 そんな少女は此方と視線が合わさると、不敵な笑いを溢す。何かを企んでいるかのように口角を上げる様を見て、思わず身体を強張らせる。そのままゆっくりと進みながら右手を後ろに回し、背負っている鎖のついた鎌のような武器を手に取る。不思議に思ったりりとぺギタンが僕の視線を追って少女の方へと顔を向けた瞬間────

 

 

 

 

 

 ただならぬ邪気と殺気を感じた。

 

 

 

 

 

「危ない!」

 

「っ!?」

 

「ペエッ!?」

 

 その声と共に、りりに体当たりしてベンチから強引に引き剥がす。

 同時に、少女は視線が合った僕達に飛び掛かり、武器を縦に振るってみせる。僕達は間一髪のところで回避したので、武器は思いっきりベンチに刺さることとなった。しかし、すぐさま力を入れて引き離すとベンチは軽々と真っ二つに破壊された。

 

「ふん、勘付かれたか。やはり隠密に動くなんて苦手なことはするものではないな」

 

「僕の勘が良いからかもよ?並大抵の動物とは違うからね」

 

 などと力強く言ってみせたけど、あと数秒ほど遅かったらどうなっていたことやら。気配を殺すのは得手ではないと自己申告しているが、実際は草むらによる足音がなければ気付かなかったと言えるくらいだった。

 

「ぅ……ぁ……!」

 

 恐怖で腰を抜かしてしまうほど怯えているりりを見て、少女は再び口角を上げて笑みを溢す。

 

「痛めつけようとは思っていないのだから、そう怯えるでない。久々に人間の味を堪能してみたくなった故、すぐ楽にして戴くつもりだ」

 

「それってもう完全に殺す気じゃんかよ……!」

 

 僕の言葉も虚しく、少女は右脚を前に出して重心を掛けるとりりの首元目掛けて鎌を振るう。彼女の言った通り、即死を狙うつもりだ。

 この際、手をつけられない事態になろうと知ったことか。

 

『ぷにシールド!』

 

 りりの目の前に仁王立ちするようにして展開したのは色彩の盾。少しだけ前のめりになって鎌の刃先を押さえつけ、弾き返す。力んで振るったおかげで力を武器に持っていかれた少女は数歩か後ろへ後退る。

 

「あまりに奇形な奴だと思っていたが……貴様、あの類か」

 

 ならば、と続けて呟くと、再び前進する。

 次の標的は恐らくりりじゃなく────僕だ。

 

「ぺギ……ジョセフィーヌ何してんの!りりちゃんを安全な場所に連れて行って!」

 

「ペエ!?(む、無理ペエ!そんなことしたらポポロンが危ないペエ!)」

 

 などと言うが、所詮こいつみたいな新米ヒーリングアニマルはパートナーがいないと何も出来ない。だから、せめてりりを危険な目に遭わせない為に責務を全うしろ。僕は声を枯らして仲間にそう言い放った。

 

「それに、君みたいな弱虫と違って僕は簡単に死なないし死んでたまるかって────っ!?」

 

 だが、いつの間にかシールドは相手から繰り出される斬撃によってクロスを描いて切り刻まれていた。当然、耐久性も脆くなりこのままだと壊されるのも時間の問題だ。

 

「いつまで無駄口を叩くつもりだ」

 

 冷たく言い放つと、トンと武器を上に掲げながら跳び上がり勢い良く振り下ろす。重力も相まって凄まじい威力によってパリンと音を立ててシールドが破壊された。その反動でりり達の元へと吹っ飛ばされてしまう。

 

「クリスチャン!」

 

 りりにキャッチして抱き抱えてくれたおかげで地面に叩きつけられることなく済んだが、一瞬の隙も与えることなく少女は此方に急接近する。ぷにシールドが破られた今、無防備な状態であるが故に────殺される。

 

 

 

 

 

 救世主が、来ない限りはね。

 

 

 

 

 

『実りのエレメント!』

 

 その時、公園の外から放たれたのはエレメントの力で強化された光線。エレメントさんが直接渡してくれたものというのもあって、その威力は通常の光線とは桁違いなのだ。

 

「ぐっ……!」

 

 少女はその攻撃をまともに喰らい、木に勢いよく叩きつけられた。

 さて、間一髪のところで危機から逃がしてくれたのは三人の"救世主"(プリキュア)だった。

 

「宝石のエレメントさんは攫っていくし、やーっと追いついたと思ったら女の子一人に武器振り回すとかありえないんだけど!」

 

「大丈夫?怪我はない────って」

 

 グレースはその場で蹲って身体を震わせるりりに背中を擦って声を掛ける。恐る恐る身体を起こして顔を見合わせた時、不意に僕達とも目が合った。

 

「えぇ!?ぺギタンにポポロン!?」

 

「あはは、ご無沙汰でございます~」

 

「やはり、テレビドラマで刑事長さんが言っていた『ホシは必ず現場に戻ってくる』は本当だったのですね」

 

「……あの精霊何言ってんの?」

 

 僕達を見つけ出す為のヒントとして色々調べてくれたんだろうけど……嬉しいけど何か腹立つなあ。

 

「じゃあ、こんなチビッ子が犯人ってこと?全く、最近の若者は~……」

 

「君も若者だよ?」

 

 ……え、何この空気。僕もご無沙汰してます~って変な雰囲気出しちゃったけど、それでもさっきのと繋げて良い空気じゃないでしょうよ。りりちゃんめちゃくちゃ混乱してるよ?当の敵さんめちゃくちゃ怒りの感情露わにしてるよ?

 

(ワタシ)の邪魔をした上、茶番を演じるとは……覚悟は出来ていような?」

 

「覚悟など必要ありません。これから消え行く"悪"は速やかに浄化致しますので」

 

 アースは地球から生まれた精霊として地球を守る為に悪を断つ。対して、少女は自らを妨害したことへの鉄槌を下す。

 

「さあ、今の内に」

 

 互いに睨み合い、宣戦布告と共に拳と刃を交える中でグレースはりりを安全な場所へと逃がそうとする。少ししてコクッと頭を縦に振るとランドセルを持って公園の外へと走り去って行く。

 

「ペエッ!?」

 

「ふみゅっ!」

 

 ────僕達をガッシリと抱き抱えながら。

 

「うえぇ!?連れて行っちゃったけど!?」

 

「ぺギタン……!?」

 

「ようやく見つけた……!」

 

 その先で、聞き覚えのある声で隣の奴の名前を呼んでいるのが聞こえた。その子の後に続くように、一人の少年も公園の入り口で足を止めた。

 

「良かった。無事だったのね……!」

 

「ジョセフィーヌとクリスチャンの、本当の飼い主さん……!?」

 

「ペエ!ペエ!!」

 

 その正体は正真正銘、ちゆと飛鳥だった。

 ぺギタンが無事であったことの安堵からちゆは少しだけ涙を浮かんでいて、飛鳥も僕の顔を見て疲れたように溜め息を一つ溢しながら空を見上げていた。

 その一方で、りりは二人が自分が抱えている二匹の本当の飼い主であると悟ったことで動揺によるものなのか、呼吸が乱れつつありながら再度膝をついてしまう。

 

「こいつらを連れて行ったのはお前か。返してもらうぞ」

 

「もう……よぉ……」

 

「あ……?」

 

 

 

 

 

「もうどうすれば良いのか分かんないよお!!!」

 

 

 

 

 

 そう叫んだ瞬間、ただひたすらに泣きじゃくった。これまでの抱えていた思いが今ここで爆発したかのようだ。溢れ出る涙を必死に拭っていた。

 

「い、いきなり泣かれてもな……」

 

「相当酷い目に遭わされたんでしょう。それに多分、ぺギタン達を連れて行ったことも何か事情があるんだと思う」

 

 このような事態でも冷静に真相を探ろうとしている。鋭い洞察力だ。

 ちゆの言う通り、りりはこのすこやか市に引っ越して来てから新しい学校生活にあまり馴染めておらず、友達作りも上手く行かず苦しんでいた。家でも仕事で忙しい母に相談することが出来ず寂しく思っていたところに、この公園で僕達と出会った。最初はぬいぐるみだと思っていたが、僕がやらかしたことで本物のペンギンと羊であったと大喜びし、友達が出来たのだ。

 

 だが、そこで思わぬ事態が起こった。下校時に公園に寄り道して談笑しているところに、あの少女が襲い掛かってきたのだ。ぷにシールドで抵抗するも凄まじい身体能力と武器の殺傷能力に圧倒されてしまい絶体絶命となる。そこに、グレース達がやってきて少女との距離を引き剥がした。どうにかしてこの場から逃げようとしたところにちゆと飛鳥がやってきたというわけだ。ぺギタンはこれを洗いざらい説明した。

 

 恐らく、少女による恐怖と混乱、本当の飼い主に返せと言われたけど返したら一緒にいられなくなって独りぼっちになってしまう。でも返さなかったら本当の飼い主は悲しんでしまう。そんな不安といった何もかもが全部重なって思考が錯乱してしまったのだろう。

 

「そうだったのね……」

 

 それを聞いたちゆは頭を悩ませながらそう呟く。こんなの子供が詰め込んでいいものじゃないわけで、それでもどうにかしてこの状況を打開しないといけない。

 

「って言っても、もう君は独りぼっちじゃないじゃん」

 

「そうペエ。それに、僕達を助けてくれたあの勇気があればもう何だって出来るペエ」

 

「……でも、やっぱり離れ離れになるのは────あぅ」

 

 そうすすり泣いて顔を俯かせるりりの頭を、僕は軽く頭突きする。

 

「離れ離れとかお別れとか、そんな悲しいこと言うなよ。別に会おうと思えばいくらでも会えるんだから。ま、うちのパートナーと仲良くなってくれたらの話だけどね。どう?なってくれる?」

 

 少ししてちゆと飛鳥の顔を見上げると、小さく頭を縦に振った。

 

「よしじゃあ、握手しよっか。仲良くなる証って奴だよ」

 

 僕の言葉に"うん"と返事をして、それぞれ本当の飼い主に返してからまずぺギタンとちゆに握手を交わす。

 

「……いや、僕までやる必要はないだろ」

 

「やーるーの!」

 

「分かったよ、ったく……」

 

 そう言って、飛鳥も渋々握手を交わした。必要性云々考えるよりもサッとした方が効率が良いってことよ。

 

「うぅ……!」

 

「もう、すばしっこすぎ……!」

 

 と、こうしている間にグレース、スパークル、アースの三人は少女と戦っていてかなり苦戦しているようだ。小柄な体格ながらも戦闘能力は優れているってことらしい。

 

「さあ、今の内に早く」

 

「……っ!」

 

 去り際に、僕達の方へ振り返る。少し寂しさの残る表情をしていたが、勇気を振り絞ってこの場から走り去って行ったのだった。

 

「すぐに変身するペエ!」

 

「ええ!」

 

 ちゆはヒーリングステッキを、僕は杖を即座に手に取って変身の準備へと移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「溶け合う二つの流れ!キュアフォンテーヌ!!」」

 

 

 

 

 

『絡み合う二つの毒、キュアラピウス』

 

 

 

 

 

「さて、オペを始めようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『氷のエレメント!』

 

 変身した直後、フォンテーヌは即座にヒーリングステッキに氷のエレメントボトルを装着し、空中戦でアースを突き飛ばした少女に向けて光線を放つ。標的を凍結させる程の力を持つ技は、素早い速度で接近し相手を翻弄していく。

 

「嘘!?」

 

 ように思えたのも束の間、相手は空中を蹴り上げて全身を回転させ、絶妙に掠らない位置まで回避する。その回転力を活かして手に持つ大鎌で光線を切り裂いてフォンテーヌへと接近する。光線を切り裂くなんておかしな話だが、物質だけでなく空間をも押し殺すのだと思うのが無難だろう。やがて目の前まで接近するとフォンテーヌの頭上から縦に振っていく。

 

『ぷにシールド!』

 

 辛うじてシールドを展開する隙を見つけ、防御する。

 

「……ふっ!」

 

「きゃあ!」

 

 しかし、相手の攻撃は止まることはない。見事に弾いたものの、付属する鎖分銅を振り回して打撃を繰り出す。シールドを壊すよりかは、それごと押し出して地面に叩きつける形で反撃を喰らってしまう。

 

「させるか……!」

 

「っ!」

 

 追撃に鎖で拘束するつもりなのだろうが、それを見過ごすわけにはいかない。蛇の化身を数体召喚し、束となって少女の左脚に巻き付けて逆に此方が拘束する。そのまま地上に引きずり込み、同じく地面へ叩きつける。

 

「この……!」

 

「はあぁっ!」

 

「かぁっ……!?」

 

 蛇を引き剥がそうとしている間に、アースが追い打ちに一発蹴り上げる。腹部に命中し、空気を強く吐き出された声を上げて吹っ飛んでいくも巻き付いていた蛇が再び少女を引きずり出そうとする。しかし、二度もやられまいと今度は大鎌の刃先を地面に刺して落下を和らげる。

 

「頭に乗るなよ……貴様ら!」

 

 蛇を切り裂いて消滅させて言い放つと、アースの仕掛ける後ろ回し蹴りを難なく避けて鎖でその足を拘束する。

 

「「やあああ!!」」

 

「なっ……!?」

 

 その背後で、スパークルとグレースが攻撃を仕掛けたのを見計らってアースをスパークルの方に寄せて衝突させる。

 

「アース!スパークル!」

 

「いったぁ……アース大じょ────うえぇ!?」

 

 二人同時に倒れ込み、スパークルが起き上がってアースの無事を確認しようとした時、いつしか鎖が自分の足にも絡まっていたことに気が付く。一度解いてすぐさま再度拘束したようだ。アースの左脚とスパークルの右脚が一つの鎖に縛られていた。

 

 少女は動きを止めることなく今度はグレースに接近する。再び蛇を召喚し、今度は背後からその身体ごと持っていこうとする。

 

「ふん、二度も効かぬわ」

 

「っ!?」

 

 しかし、臆することなく蛇の尻尾を掴む。グレースの繰り出した攻撃をするりと躱すとアース達のいる位置に向けて勢い良く蹴り飛ばし、即座に蛇をグレースに巻き付かせる。

 

「離れない……!?」

 

「当然だ。こいつは(ワタシ)の魔力で支配されているからな」

 

「ぐぁ……!!」

 

 自分の物にした蛇の縛る力を強めてグレースを苦しませる。魔力を無理やり流し込まれては、正直どうすることも出来ない。

 

「さて……殺すのは一人ずつだ。安心しろ、優しくじっくりと殺して────っ!」

 

 自由に動けないでいるアースの顔を伺った途端、少女の足が止まる。

 

「いや、まさかあいつなわけが……!」

 

 先程まで冷酷な雰囲気を漂わせていた少女がここまで動揺しているのを見ると此方まで困惑を隠し切れないが、隙をデカくした今がチャンスだ。

 

「ぐっ、うぅ……!」

 

 他の蛇の化身を数体召喚。少女に支配された蛇は手からするりと落下し、その両手両足を拘束する。残りの何体かはグレース達の拘束を解いて魔力でやられた蛇を消滅させた。

 

「フォンテーヌ、今だ」

 

「ええ!」

 

 僕の言葉にフォンテーヌは頷き、必殺技の体制に入る。

 

 

 

 

 

『プリキュア・ヒーリングストリーム!!!』

 

 ヒーリングステッキから放たれるは浄化の力を宿した螺旋状の光線。そのまま勢いを増して一閃の矢となり、少女の周りを青一色に包み込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……言ったはずだ、頭に乗るなと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その指は鉄。

 

 

 

 

 

 その髪は檻。

 

 

 

 

 

 その囁きは甘き毒。

 

 

 

 

 

 朽ち果てろ。 

 

 

 

 

 

『女神の抱擁』

 

 

 

 

 

 刹那、空気が一変する。

 吐き気を催す程の不穏な空気で、それによって数体の蛇の化身が一気に消滅していく。以前、おおらか市の湖で感じたようなやつに似ている気がする。

 同時に、青一色に包んでいたヒーリングストリームが突然紫色に輝き出すと、辺り一面に爆散した。それらは雨となって公園の地面を、そしてこの場の全ての物を濡らしていく。

 

「そんな……!」

 

「ハァ、ハァ、ハァ……」

 

 一同が酷く困惑する一方、当の少女は浄化されることなく膝をついて息を切らしている。恐らく、彼女が技で対抗したのだろう。被っていたフードもいつしか脱げており、素顔を露わにしていた。

 

「おのれ、宝具を使わせるとは……この身体ではこれが精一杯か」

 

「では、私が浄化してあげましょう」

 

 敵意と憎悪を剥き出しにしながら僕達を睨み付ける中、そんな必死の抵抗にも虚しく今度はアースが浄化へと(いざな)う。

 

「……っ!」

 

 すると、少女は立ち上がって体内に潜めていた何かを取り出し、此方に投げつけてきた。

 

「宝石のエレメントさん!?」

 

 それは、僕とちゆがパートナーを捜索している一方でグレース達がビョーゲンズから救出しようとしていた宝石のエレメントさんだった。浄化する直前にメガビョーゲンの体内からメガパーツと一緒に横取りして森の中へ逃げていったという。

 

「そいつが目当てだったのだろう……?栄養にする予定だったが、くれてやる」

 

「それで逃れようとしているのでしょうが、そうはさせません。大人しくこの世界から消え行きなさい」

 

「……逃れようとしている、だと?」

 

 瞬間、少女の声音が怒声に変わる。

『ふざけたことを』と、こめかみに血管が浮き上がる程に怒りの感情を露わにしていた。

 

「私は復讐者だ。この恨みや痛み、次に会う時を楽しみにするとしよう……!」

 

 最後に、邪悪な笑みを溢しながら吐き捨てると影の中へ姿を消してこの場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局は彼女を倒し損ねたので複雑な感情は残ってしまうが、見事に宝石のエレメントさんを救出することに成功した。

 

「エレメントさん、お加減如何ですか?」

 

『彼女の力は膨大でしたから、完全に調子を取り戻せるのは少し時間は掛かると思いますが、すぐに戻ると思います。どうもありがとうございました!』

 

「ラテ様も元気になって良かったラビ!」

 

 思わぬ乱入で少しお手当てに時間は掛かってしまったが、メガビョーゲンは1体だけだったおかげで早めに回復することが出来たのだろう。そんな中、エレメントさんがとある助言を伝えようとしていた。

 

『それと、彼女にはくれぐれもお気をつけてください。一歩間違えるとこの世界に良くないことが起こるかもしれないので……』

 

「なあ、あいつってビョーゲンズなのか?なんかそんな感じじゃなさそうじゃねーか?」

 

『ビョーゲンズではないのは確かです。ですが、彼女が何者なのかは私にも分かりません。何処かで見たような気がするのですが……』

 

 とはいえ、奴は浄化技をも掻き消したのだ。最後に吐き捨てた言葉的にまだ何かを隠し持っているに違いない。次に戦うことになった時は慎重に倒す必要がありそうだ。

 

「はあ、今日は走り回ったり戦ったりしてめっちゃ疲れた~……」

 

「全くだ。ったく、世話かけさせやがって」

 

「えへへ、すんませぇーん」

 

 ここ二日で色々苦悩はあったが、一先ずの抱えていた大きな問題は一件落着したので、後はパートナーに迷惑をかけたこの駄目羊には帰った後に僕の愚痴壺になってもらわねばならない。

 

「それとお前、人ん家の子供泣かせたんだから明日にでも頭下げにいくからな」

 

「うーん。それは良いんだけど、どっちかっていうと泣かせたのは飛鳥クンの方だと思うのですよ僕は」

 

「……謝っておくか」

 

「え、嘘、僕に初めて素直になったんだけど。マジ!?ラッキー!はい論破ァ!」

 

「よし、今日は愚痴壺だけじゃなくストレス解消道具にもなってもらうとしよう」

 

「訂正しますゴメンナサイ」

 

 素直に訂正する姿に、まあ良いだろうと僕は鼻を鳴らす。

 そんな僕に、心なしかポポロンがいつもより嬉しそうに微笑んでいる気がした。

 

 




如何でしたでしょうか?

次回は原作回ではありますが、今後のことを考えると次回からがオリストの範囲に入るかなと思います。個人的にはここから本格的に力を入れていかなければならない場面なのでいつものように更新は長くなるかと思いますが頑張りたいと思います!

是非ともお気に入り、高評価、感想、誤字脱字の指摘などよろしくお願いします!
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