ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
「えぇ!?森林公園にも怪物出たの!?」
始業式から数日後、クラスではメガビョーゲンについてしばらく話題になっていた。
学校にも市内の公園にも現れたのだから話題になるのは当たり前なのだが、その両方とも僕が関わっているが為に聞かないふりをしていてもどうも気まずい。
因みに、大蛇のような物体が出現したという話は誰もしていなかった。メガビョーゲン並みに大きかった気がするが……。
「あっ、のどかっちおはー」
そんな雰囲気で何とか本の世界にのめり込もうと机に頬をつけながら黄昏れていると、のどかという救世主が教室に入ってくる。
「おはようひなたちゃん」
そう満面の笑みで挨拶を交わすと、自分の席へと足を運んでいく。
「おはよう飛鳥く……目死んでるけど大丈夫?」
「大丈夫な訳ないだろ、あの数秒お前が来るの遅かったら胃が爆発するところだった……」
ひなたとその仲間達に質問攻めや話題攻めをされるということはいつものことなのだが、先日のどかやラビリン達と下校するところをちゆに見られて以降、休み時間などで視線を送られることが多くなった。その為に、毎回逃げるように図書室へと足を運ぶのだが、この生活もついに罪悪感などを感じるようになって苦しくなってきた。
「ねーねー、のどかっちは学校の怪物見たー?」
「えっ、えーっと……」
怪物を見たどころか倒してしまった当人にとっては、バラしてはいけないためにどう返していいか分からず混乱してしまうだろう。
「み、見てない……かな」
……困惑の末、言い訳苦しい方へ選択してしまうのどか。
「花寺さんも飛鳥も、見たんじゃない?」
「「へっ!?」」
メガビョーゲンの話題をしている場の中に、僕にとって最悪のタイミングでちゆ教室に入ってくる。
やっと私がしたかった質問を話せると思っているのか、それでも真面目な表情でちゆは僕達に問いかけてくる。
「あの日の帰りに何か変なのと……」
「見間違いだろ、僕達はあの後回り道して逃げた。それ以外特に何もない」
「そう……なの?」
「み、ま、ち、が、い、だ」
「……そう」
よし、何とか気合で乗り切った。
少し可哀想だとは思うが、秘密をバラさないためにもやむを得ない事態なのだ。
そうして、時というものは流れるのが早く、教師の解説を聞き流している内にすぐに午前の授業が終わり、昼休みの時間へと流れていった。
のどかはいつでもメガビョーゲンが現れても良い様に常時ラビリンを学校に連れてきているらしい。
「花寺さんも飛鳥も、ここにいたのね」
僕とのどか(一応ラビリンも)と共に昼食を取っていると、ちゆが見慣れた動物を抱えながらこちらに向かってくる。
「この子、花寺さんのお家の子でしょ?」
「ラテ!?」
何がどうなったら子犬が脱走するんだ。というか、それで何故学校まで辿り着けたんだ。
ツッコミどころは多々あるが、そんなこと言ってたらキリがないと思い、じっと我慢する。
「校庭にいたから、びっくりしちゃった」
「もしかしてついてきちゃったのかな……ありがとう沢泉さん。でもどうしてうちの子って分かったの?」
「怪物がいなくなった後、学校で見かけたから」
「そっかぁ……ふぇっ!?」
のどかは近くにちゆがいたことに気づかなかったのか。えげつないメンタルの持ち主だなと思ったが、それなら平気な顔で生活できるな。
一方、ラビリンは「見られてたラビ~……」と物陰に隠れてあわあわと困惑していた。
「ねえ、さっきはどうして見てないなんて言ったの?」
完全に疑ってるのも無理はない。僕達の秘密をしっかりその目で見てしまったのだから。
「あの時一緒にいた不思議なうさぎやペンギンと関係ある?」
「あ、あれはね……か、飼ってるの!ちょっと珍しいうさぎやペンギンも!あの時もこの子が逃げちゃったの探しに来て、勝手に学校に入ってきちゃったから怒られるかなぁって、あの〜その〜……」
ゴニョゴニョゴニョ……と苦しい言い訳の末、口籠ってしまうのどか。
あんな知性のある珍種のうさぎやペンギンがいるかって普通の人なら突っ込むと思うが。
「……そうなの、飛鳥?」
「いちいち僕に振るんじゃない……まあ、そうなんじゃないの」
とりあえず軽く返答する。
のどかが普段どんな生活をしているかなんて別に知らないし、それでそうなんだよーと返しても変に思われるだけだからな。
「ラテちゃん、すぐ抜け出すの?」
「そうなの……!」
「もう、しょうがない子ね」
そう言って、キョトンとしている可愛らしいラテの頭をちゆは優しく撫でる。
ラビリンはどうにか秘密をバレずに済んだと安堵の表情だった。
「授業中は職員室に預けるもらうように、先生にお願いした方がいいわね。私も一緒に行くから」
「ありがとう、いつも優しくしてくれて」
「大したことはしてないわ。気になったことが放っておけないだけ。だから、いつか珍しいうさぎさん達にも会わせてね」
……会わせたらダメじゃないか?少しでもやらかしたら知られそうな気がするんだが。
「そうだ、その時は家に来て!きっと喜んで貰えると思うの」
────ー
「え〜!?この旅館って沢泉さんのだったんだ!」
「通ったことあるのか?」
「散歩してた時に通りかかったの。やっぱり素敵だな〜」
まあこの旅館、市内ではかなり有名だから引っ越したばかりののどかでも流石に知ってるか。
のどかの言葉にちゆは喜ばしく感謝しながら、旅館の中へと入る。
入り口では、女将さんでありちゆの母親でもある沢泉なおさんが客を待っていたかのように出迎えていた。
「あら、飛鳥くんいらっしゃい。隣の子もお友達?」
「花寺のどかです!」
少し緊張しながら挨拶するのどかに、女将さんは笑顔で出迎えてくれた。
その後、ちゆは早速のどかに旅館内を案内する。
中庭、大浴場、ペット用の温泉や足湯など、次々と巡っていく。その度にのどかは「ふわぁ〜」とモコモコの小動物みたいな鳴き声を出しているのだが、これでもだいぶ感心しているのだろう。
「沢泉さんは自分の家が好きなんだね」
「え?」
「凄く楽しそうに教えてくれるから」
「……そうね、大好きで大切な所よ」
自分の家が名所にもなっていたら、誰かに自慢したがる気持ちというのは非常に共感できる。
ちゆは着替えてくるとこの場を後にしたので、のどかと足湯でも入りながら休むことにする。
「ラテ、入ってみる?」
「ラテ様はお水が怖いラビ」
……お水じゃなくてお湯なんだけどな、という屁理屈なことを考えていたのはここだけの話。
「まだ小さいからな……お前達も入れば?」
「良いラビ!?」
「まあちょっとだけだけどね。沢泉さんも喜んでくれると思うし……言えないけど」
そんなに温泉に入りたかったのか、ラビリンは上機嫌にダイブするように入っていった。
一方、ぺギタンは逆に元気がないようだが、どこか具合でも悪いのだろうか。
「ペギタンどうしたラビ?お風呂大好きなのに、全然嬉しそうじゃないラビ」
……ペンギンって水の方が好きなんじゃないか?と珍種相手に疑問を浮かべたのはここだけの話。
「僕はパートナーも探しに行けないし、ラテ様のお世話もちゃんとしてあげれてないペエ」
「もう、そうやって落ち込むところがペギタンの良くないところラビ」
「でも、僕もラビリンみたいにお手当て出来るようになりたいペエ。皆を助けたいペエ」
……パートナーを探しにいけないって、こいつらにとっては致命的なことなんじゃないか?
性格を直すというのは難しいことではあるかもしれないが、立ち止まって悩んでいるのも違うのではないだろうか。
「ねえ、今の声は……?」
ぺギタンの自信なさげな声、良く聞こえたな……。
ちゆのノックする音と声に、小動物達は急いで隠れようと湯舟の中へと潜り込んだ……何で隠れることに命懸けてんだよ。
「声?あー、ラテと話してるの聞こえちゃったかな」
どうにか打倒な言い訳を述べるのどかに、「……そう」と納得して流すちゆ。何だかんだで疑わないんだな、無理に警戒しすぎたかもしれない。
「くちゅん!」
そんなことを考えていると、ラテの顔色が悪くなり始めた。
急に体調が悪くなるのは、大体の確立でメガビョーゲンが現れたというサインらしい。
「大変、冷えちゃったかしら」
「少し温まれば何とかなるだろ。それよりちゆ、そろそろ上がるからタオル貸してくれ」
「じ、じゃあ私はお先にお邪魔しました!」
湯舟にいる奴らをそろそろ救出しないと。僕はのどかを先に行かせ、そそくさと渡されたタオルを貰う。
「……もういいぞ」
「た、助かったラビ~」
「アイスみたいに溶けてる暇はないぞ。いや、それよりも溶けてるなこれは」
そんなくだらないことを呟きながら、旅館の外にいるのどかと合流する。
のどかは聴診器を使って、ラテの言葉を頼りにメガビョーゲンの居場所を確認する。
『あっちで温かいお水が泣いてるラテ……』
ラテが指す手の方向に、僕達は走り出す。
「いた!」
「のどか、大丈夫ラビ?」
「うん、行こう!」
そう決意すると、のどかとラビリンは即座に変身する。
「ね、ねえ、あれって……」
「あ?今それどころじゃ……あっ」
いつものようにラテを抱えて避難する僕。グレースが戦う光景と共に多少困惑するちゆに、とうとうばれてしまったと気づいた。
「あんたが噂のプリキュア?」
「誰っ!?」
対して、グレースの前にメガビョーゲンと挟むように立ち塞がる召喚主らしき人物の姿が。
「……あれ、おかしいな。以前会った時は僕達と同年代っぽい少年だったはずだけど。あんなおばさんもいるのか」
「おば……失礼ね!私にはシンドイーネってちゃんと名前があるんです~!」
……気づかない内に怒らせてしまったようだ。別に呟いただけなんだが。
「ってそうじゃなくて!……キングビョーゲン様の因縁の相手、お手並み拝見と行こうじゃない。やっちゃいなさい、メガビョーゲン!」
シンドイーネがそう命令すると、怪物は背後からグレースに襲い掛かった。
「はあぁっ!」
が、いとも簡単に避け、顔面へと蹴りを一発かました。
「グレース、良い感じラビ!」
「あのうさぎさんの達、やっぱり本物じゃなかったのね……!」
……もう隠す必要もないか。
「そして、学校に出てきた怪物を倒したのものどかだ。ああやって変身してるからなんだけど、運動神経がまるで別人だよな」
「凄い……!」
と言っても、僕もちゃんとグレースが戦っているのはこれが初めてなんだが。
学校の時は必殺技でワンパンだったから、メガビョーゲンの攻撃を避けたり反撃したりするグレースの姿に圧倒してしまう。
「あっ……!」
その時、メガビョーゲンの攻撃によって折れた大木がこちらへと迫ってくる。
あまりに唐突な事態に、僕とちゆは逃げることが出来ず、己の身を腕で伏せることしか出来なかった。
『シャアアァァァァッッッ!!!!!』
「また……!?」
大木に生えている葉が腕に触れた瞬間、その存在がなかったかのように消滅した。同時に、大蛇の影が雄叫びを上げながら大木をガリッガリッと噛み砕いていく。
先日も出現したあのドス黒い影だ。僕にしか見えていないのだろうか、ちゆやシンドイーネの場合は大木が無くなったことに驚きを隠せていないようだった。
「え、何今の。聞いてないんですけど!?」
「……あ、飛鳥大丈夫!?}
「痛っ……まあ何とか」
葉の先端が腕に刺さって少々痛みはあるが、数分経てば消えるだろう。
僕達が心配だったのか、グレースがこちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫!?飛鳥く……あれ、沢泉さん?」
「……ごめんね、後でちゃんと話すね」
「花寺さん……」
そうしてグレースは再度戦いへと向かっていった。
その後はやはり簡単に事が運べるわけもなく、メガビョーゲンの次々と放ってくる弾幕に制御することが出来ず苦戦していた。
「どうしたらいいペエ、僕には何も出来ないペエ……」
「私に出来ることはないの……?」
ぺギタンの悩何も出来ないという悩みと、ちゆの何か出来ることをしたいという思い。
僕にとってそれは、対照的であると感じた。
「……おい、ペギ小僧」
「な、何ペエ……?」
「お前もちびうさみたいに変身出来るんだろ?」
パートナーを探しに行けないなら、一緒に探してやればいい。出来ることが見つからないなら、一緒に探してやればいい。
そんな、ただ素朴な考えを思いついた僕は、両者にも聞こえるように問いかけた。
「変身……本当に、ペンギンさん!?」
僕の問いの意図に、ちゆはすぐに察してくれた。
「じゃあ、私にも手伝わせて!」
「む、無理ぺエ!」
「どうして?」
「自信がないペエ。ラビリンでも苦戦してるのに、こんな僕の力じゃ君を危険な目に合わせるだけペエ……」
「でも、あなたも皆を助けたいんでしょ?」
「ペエ!?何でそれを!?」
どうやらペット用の浴場で聞いていたらしい。真面目な性格故に、知りたいことはとことん追及するような奴なので仕方ない。
「……怪物は私も怖いわ。でもそれ以上に、大切なものを守りたいの!あなたは?」
「……守りたいペエ」
「私は貴方より大きいから、少しは力になれると思う。もし勇気が足りないなら、私のを分けてあげる」
ちゆは俯くぺギタンに手を差し伸べる。彼女の悪に立ち向かいたいという気持ちは、必ずしも本物だろう。
「大丈夫、私がいるわ」
すると、ぺギタンの両足の肉球からのラビリンとのどかがパートナーになった時と同じように、光が放たれた。
うさぎに肉球がある時点で疑問を浮かべるべきだったがこいつは何で足なんだ、それくらい統一しろ。
「私はちゆ。貴方は?」
「僕はぺギタン。ちゆ、このエレメントボトルをこのヒーリングステッキにセットするペエ!」
「分かったわ……!」
ちゆはその指示に従うと、徐々に姿を変えていく。どうやら、彼女もプリキュアに変身するようだ。
「「交わる二つの流れ、キュアフォンテーヌ!!」」
「ちょっと、プリキュアって一人じゃないの!?」
「行くわよ、ぺギタン!」
フォンテーヌはメガビョーゲン目掛けて一心不乱に走り出した。
プリキュアに変身すると身体能力が上がっていくようだが、フォンテーヌ自身の運動神経のおかげで、グレース以上の瞬発力と攻撃の威力というのは流石の物だった。
「フォンテーヌ、肉球にタッチするペエ」
「「キュアスキャン!!」」
「あそこに閉じ込められてる水のエレメントさんを助けるペエ!」
水のエレメントさんはメガビョーゲンの胸部辺りにいるらしい。フォンテーヌはその場所へ直接救出しに行く。
が、そう簡単に助け出させてはくれず、メガビョーゲンは大量の弾幕で妨害していく。そいつの足部をグレースが転ばせるように掬った。
「今だよ、フォンテーヌ!」
「メガビョーゲンを浄化するペエ!」
『プリキュア・ヒーリングストリーム!!!』
ヒーリングステッキからグレースとは違い、青い矢のような光線を浴びせ、水のエレメントさんを救うと同時に怪物は消えていく。
『ヒーリングッバイ……』
「「お大事に」」
……そのセリフはお約束なのな。
「ふーん、まあまあね。でも、キングビョーゲン様には敵わないんだから」
召喚獣を失ったシンドイーネは負け惜しみのような捨てセリフを置いてこの場を去っていった。
あいつらの他に敵が何人もいるのだろうか、だとしたらかなりの面倒事だな……。
────ー
また一つ、事を成し遂げた僕達は見晴らしの良い高台で夕日が沈む光景を眺めていた。
「ありがとうぺギタン。私の大切な物を守れたのは、貴方のおかげよ」
「僕の方こそ、ちゆがいたから頑張れたペエ。だから、その……これからも、僕と一緒にお手当てして欲しいぺエ」
「もちろん!助けて貰ってあとは放り出すなんて出来ないわ」
その代わり、かなりの責任という重荷を背負うことになってしまうが、それも覚悟の上だろう。
「ねえ、ぺギタン。良かったら私の家に住まない?」
「え、良いのペエ!?」
「のどかもたくさん匿うの大変でしょ?」
「え、今のどかって……」
「飛鳥もそう呼んでるから私も良いかなって……ダメだったかしら?」
「え、そうなの!?」
そういえばのどかに対しては本人の前では呼んでなかったな。
普段は特にためらいもないのに、改めて思うと何処か照れくさくなるのは何故なのだろうか。
「いや、のどかも僕のこと名前で呼んでるから良いかなって。それに、そっちの方が呼びやすいし」
「……あ、そういえば飛鳥くんって名前で呼んでた!」
ちゆには苗字で何で僕には名前なんだろうと思ったけど、特に何の意味もないらしい。そういう天然なところものどからしいな。
「じゃあ、これからよろしくね!ちゆちゃん、飛鳥くん!」
これで敵と戦うことに多少楽になれるかもしれない。
それよりも、あの大蛇は僕にしか見えていないものなのか……?奴は僕に何か伝えようとしているのか……?何も分からない状態では、答えを導き出すことなんて出来るはずもなかった。
「あれ、小虎だ」
そうこう考えていると、ここ最近ずっと見ていなかったニャトランが疲れた表情をしながらこちらに寄ってくる。
「今までどこ行ってたラビ!?」
「決まってんだろ、パートナー探しだよ。でも残念、今日も収穫なしだ」
「ニャトラン、紹介するペエ。僕のパートナーのちゆだペエ」
「へえ、パートナ……えぇぇぇ、いつの間にぃぃぃ!!??」
そういやこいつ、パートナーがいること凄い羨ましがってたな。少しくらい僕も手伝ってやらないことはないが……
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「ねえ見て見て!今そこにめっちゃ可愛くて喋る猫発見したの!!」
「うわぁ~プリキュアめっちゃ可愛い!皆に自慢しよ!!」
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……うん、やめておこう。
「……くしゅん!あれ、何でくしゃみなんて出たんだろ」
眠気で文章がめちゃくちゃになってしまいました。お許しください!