ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
どうでもいいんですけど、夏イベはアスクレピオスとイアソンのくだりで悶絶してました。てぇてぇ
突然だが、中学生の時点で将来なりたい職業を明確にしておけと指示されたらどう思うだろうか。
大半の人はこれを無茶だと口にするだろう。大方その通りだ。長い人生の内の13、4年しか生きていない人間に今後の人生を定めろと言っているようなもの。野暮な話である。
だが、長い人生だからこそ若い内から様々な仕事を体験していくべきなのだ。ひょっとしたら、そこで夢を見つけることが出来るのかもしれないのだから。
「ふわぁ~!」
「こういうの着るとテンション上がるね!」
「この服着たら気持ちがシャキって引き締まる気がするね!」
「最近色々あったし、温泉でまったりって思ってたんだけどねぇ……」
ということで今日、僕はのどかとひなた、そしてクラスメイトの2人で旅館沢泉へと職業体験にやってきていた。
女子達に旅館の制服を着替え終わったかの確認を取った後、カメラを持って一室に入る。思い出作りに写真を多く撮っておけと学校側に指示されたからだ。
「写真撮るぞ」
「ありがとう!」
「あっくんも混ざれば良かったのに~」
「別に良い。撮られるのは好きじゃないんでな」
「いけませんよ飛鳥。カメラは私が持ちますから、お仕事に専念してください」
「……ふん」
そう言われ、アスミからカメラを取られてしまう。そもそも何で学校行事にこいつがいるんだ、何でちゆ達はそれを受け入れたんだと突っ込みたくなるのを我慢する。
「お待たせしました」
談笑していると、礼儀正しい言葉遣いと共に戸が開く音が聞こえて来る。視線を送ると、ちゆとその家族の計4名が軽く頭を下げて挨拶をしていた。
「あっ、ちゆちー……いてっ」
「馬鹿。遊びに来たんじゃないんだぞ」
声を掛けながら振ろうとしていたひなたの腕を抓って制止する。現場の方との挨拶から仕事は始まるのだから、生徒であれど軽々しい行動は許されない。
「学校の職業体験ということで、今日はこの沢泉の仕事を見て頂きます。皆さんには、主に旅館の裏方の仕事を体験してもらいます。その際、お客様の前では常に笑顔でお願いしますね」
「一応私も見ますが、細かいやり方などは娘のちゆがお教えします」
「分からないことがあれば何でも聞いてください。今日一日、一緒に頑張って行きましょう」
一応、ちゆも職業体験のメンバーとして扱われている。だが、普段から旅館の仕事に触れているためか今回は教える側の人間という逆の立場で体験をするとのことだそうだ。
「息子のとうじも、皆さんと一緒に旅館の仕事について勉強させてもらいますので」
「あ、あの!弟のとうじです。宜しくお願いします!」
かなり緊張した様子で頭を下げる。僕達より年下の少年がお手伝いではなく本来の仕事について学んでいくのだから無理もない。
「ではまず、お客様がお部屋から見た時に気になるところがないかを注意して掃除してみてください」
「お客様から見て綺麗に、か……」
「やってみるね!」
「飛鳥達は客間をお願いします。お客様がくつろぐ大切なスペースですから、小さな汚れや埃を見逃さないよう気をつけてください」
テキパキと、ちゆはそれぞれに指示を出して行動を促していく。5人一斉に何をさせるべきか、それほど簡単な所業ではないはずなのだが中々に手慣れている。
そんなちゆの姿を見ていると、ひなたが真っ先に掃除機を取り出してきた。
「よーし、じゃんじゃん吸い込んじゃうよ!」
「待て。まずはこいつで埃を落としてから、掃除機はその後だ」
「なるほど、かしこまり!」
僕は借りてきたハタキをひなたに渡し手本を見せる。確かに掃除機を使えば手間は省けるが、掃除は上から下へが基本となる。より綺麗にするためには順序が大切なのだ。
「じゃあ僕はこれを干してきますね」
「ああ……少し積み上げ過ぎじゃないか?」
「これくらい大丈夫ですよ!」
などと、とうじは平気そうな顔で座布団を持ち上げて部屋を出ていった。高さ的に恐らく客間に置いてあったのを全部重ねたのだろう。
「とうじ君が気になるの?」
「危険極まりなくて見てられない……少し席を外す」
瞬くして僕も部屋を出ていく。足取りからして少々早歩きで目的地へと向かっている。更に不安は募るばかりだ。
「おい、座布団少し分けろ。碌に前も見れていないだろそれ」
「もうすぐそこですし、これで終わるから大丈夫ですって……うわっ!?」
僕を安心させようとしたのも束の間、足を滑らせて後頭部から転倒する。同時に積んでいた座布団も散らばる始末だ。
「とうじ!?」
その音に反応したのだろうか。通りかかったちゆが慌てた表情でこちらへ駆け寄ってくる。
「言わんこっちゃない……この量、2部屋分いっぺんに運ぼうとしただろ」
「その方が早く終わると思って……」
「はりきるのは構わないが、それで怪我でもしたら元も子もない」
「そうね、少しずつ分けて運んだ方が良いわ。そうでなくても客間の座布団は大きめだから」
「そういうことだから、少しでも僕や誰かを頼ってくれ」
「はい……」
3人で散らばった座布団を拾い上げ、3枚程度に分けて目的地へと再度運んでいく。
僕とちゆに注意を受けたとうじは落ち込んだ表情を見せていた。次の仕事のモチベーションに影響を受けなければ良いが。
「お風呂掃除で挽回しなきゃ……!」
こうして場所は変わり、今度は温泉の掃除。主に床をデッキブラシで磨くことを任された。
つい先程まで落ち込んでいたのとは違い、とうじは熱意のこもった顔立ちでブラシを強く握りしめていた。
「僕達は大浴場を掃除するから、足湯場を頼む」
「はい!」
「凄いね飛鳥くん、すっかりとうじくんのお兄ちゃんだ」
ちゆが別件で離れなければならない中、この場で指示を出せるのは僕くらいだ。広い大浴場に対して、足湯場は1人でも十分なほど範囲が限られている。同じように床を磨くだけなので流石にアクシデントは起こりづらいだろう。
「うわっ、ダメだってぇ!?」
そんなことはなかった。
バシャンッと激しい水音を立たせて、足を滑らせたにしても何処まで重点に磨いたんだ。僕達はその音の主へと駆け寄る。ちゆも同じように駆けつけた。
「どうしたの!?」
「うわ、ずぶ濡れじゃん!」
足湯場といっても湯舟は何人も浸かれるくらいには大きい。故に、そこにダイブしたとうじの半身はかなりびしょびしょに濡れていた。
「あの……」
「大丈夫よとうじ。ここは任せて濡れた服を着替えてきて」
「ごめんなさい……」
再びちゆに指摘され、とうじは落ち込んだ様子でこの場を後にする。先程の繰り返しだ。
決して悪意があって失敗しているわけではない。それだけに何とも言えない思いで、僕はその哀愁漂った背中を目で追っていた。
────ー
「これ以上、負けてたまるもんですか……!」
旅館沢泉近くの木陰から、シンドイーネが姿を現す。遊園地を訪れた時から今に至るまでビョーゲンキングダムには戻らず、ずっと地球上に滞在していた。意図的にではなく本人が気付かない内にそれほどの時間が経っていたのだ。
その期間、彼女は葛藤に苦しんでいた。グアイワルやダルイゼンを超え、主に興味を示してもらえるようなメガパーツの使い方を導くために。
『その力を自らのものにすれば良いのでは?』
不意に告げられた裏切り者の声が頭から離れてくれず、苛立ちが込み上げて来る。
だが、妙に胡散臭い言葉ではあったもののそれほど悪い案ではなかった。メガビョーゲンに使って強化させたように、対象をテラビョーゲンとして生み出したように自らに取り込むのはメガパーツの使い方として妥当だ。
ここまでならば自分にとってかなり得のある話なのだが、問題はこの後だ。
『仮に代償として自分を殺してしまったとて私は保証できませんから』
別の言葉に言い換えれば、自分の身体が失ってしまう可能性がある。確かに強くなりたいけれど、自分自身が消えてしまうのは流石に嫌だ。でも他に方法もないし脅しの可能性だってある。よって、もう覚悟を決めるしかない。
「何が起こるか分かんないけど、キングビョーゲン様の為なら構わない。あたしが一番になるのよ!キングビョーゲン様の一番、に……!」
両手でメガパーツを掲げ、勢いそのままに胸元に押し当て自分の体内に取り込ませた。
「ああああああああっ!!」
喉を破壊しきれんばかりの悲痛な叫びと共に禍々しいオーラが体内から放出され、シンドイーネの全身を包み込んでいった。
────ー
「ふわぁ、美味しい!」
「甘いのが染みるって感じ!」
客室や大浴場、広範囲に及ぶ清掃を終えた僕達は一度休憩がてらすこやかまんじゅうを召し上がっている。のどか達は3個戴いて味を堪能していたのに対し、僕は我儘を言ったことでその倍の数を貰って食べていた。3個で満足するほど僕は甘い人間ではない。
「はぁ……」
「ね、一緒に食べようよ!めちゃうまだよ~?」
「いいです……」
その隣で、さっきの失敗を気にしているのかとうじが饅頭を口にもせずに顔を俯かせていた。
「僕、失敗ばかりな上に全部お姉ちゃんに助けてもらって。同じ姉弟なのに、どうしてうまくできないんだろう……」
「そんなこと……」
「分かるそれ!すっごい出来る兄妹いると、なんか焦るの!めっちゃ分かる!」
僕には兄弟が存在しないので感覚こそ分からないが、似た立場の者にはその重みが感じられるのかもしれない。
「でも、焦らなくてもいいと思うよ」
のどかに笑顔ですこやかまんじゅうを差し出して励まされたとうじも、僅かに笑みを浮かべて受け取る。
外面で建前だと分かるような笑顔。どうにも失敗を気にしてしまうという本心が表れているようだった。
「……ちょっと外の空気を吸ってきますね」
重い腰を上げて、とうじはこの場を後にする。その背中は何とも言えない哀愁を漂わせていたのと同時に、そこに悪魔が憑りついているようだった。そしてその悪魔はこちらに問いかける。この少年を野放しにしたらどうなることか、と。そんな感覚が脳裏に伝わってくる。
「飛鳥くん……?」
少しして、重い腰を上げて扉へと手を伸ばす僕に気付いたのどかは疑問を抱きながら声をかける。こっそりと席を外すつもりだったのだがな。
「僕もそこら辺をふらついてくる。ついでに饅頭も追加で貰って来るか」
そう言って部屋を出て扉を閉めると、やや早歩きでとうじの元へと向かう。外の空気を吸ってくるとは言っていたが、流石に旅館の外へは出ていないはずだ。となれば、旅館内で外に出る場所は1つしかない。
「とうじ」
「飛鳥さん……?」
客のいない足湯場近くのベンチで1人落ち込んでいたとうじは僕の声で顔を上げ、不思議そうにこちらを見据える。僕はそれには目もくれずに隣に座り、1つ深呼吸をした。
「まだ失敗を気にしているのか?」
「……お姉ちゃんはあんなに出来るのに、僕は何も出来ない。僕ってどうしてこんなにダメなんでしょうね」
自分を更に卑下する。あまり責められても身体に毒だしこっちも気分が沈む思いだ。
とはいえ、確かひなたも同じことで悩んでいた。兄や姉の真似事をしても上手くいかず、続かなくなってしまう。そんな悩みがプリキュアに変身して戦うことへの価値観へと繋がってしまっていたのを思い出すと、兄弟がいる者にとって避けては通れない困難なのだと理解する。
だがそれでも、このままでは以前のひなたの二の舞になるのは目に見えている。一喝入れてやるか。
「言っておくが、長所がない人間なんて何処にもいないぞ」
「え……?」
「逆に言えば、短所しかない人間もいない。つまり完璧な人間なんていないんだよ。お前の姉だってそうだ。あいつも何でも出来るように見えて、悩んだり躓いたりした時もあった」
ハイジャンプに対するイップスや客へのもてなしに悩んでいたこと。どれも彼女の真面目さが故に直面したものだったが、瞬く間にそれを乗り越えた。
それは何故か──1人で抱え込まず、僕達を頼ったからだ。そして僕達は頼られたからこそ彼女を支えた。こうして困難の壁を乗り越えたのだ。
「真面目という面でならとうじ、お前も同じだ。確かにお前は不器用でどんくさい面がある。でもずぶ濡れになった時、理由があってそうなったんだろ?」
「え、何でそれを……?」
「目撃者がいたらしくてな。とっても一生懸命で優しい子だったと言っていた」
「そんな人が……」
「他の誰かと比較して結果を求めがちなのは人間の性みたいなものだ。けど、だからといってそうする必要もない。自分のやりたいようにやればいいんだ。努力している姿はちゃんと周りに見えているからな」
自分をそんな風に見てくれている人がいるんだ、と先程の俯き顔から打って変わってとうじの表情が明るくなっていく。すっかりと元気を取り戻したようだった。
休憩時間の終わりが差し掛かった時間帯、とうじは両手に握り拳を作って気合を入れてこの場を後にした。上手く説得できたか自分では評価しづらいが、本人が納得したならいいかと一呼吸入れる。
そこにパシャリ、と横からカメラのシャッター音が聞こえてきた。
「ふむ。これは良い一枚が撮れました」
「……仕事している姿以外は許可してないぞ」
「今の飛鳥、とても良かったですよ。あれが男前というものなのでしょうか」
「人の話聞け」
僕の注意に聞く耳を持たず、興味津々でこちらを見るアスミ。後でこっそり消去しておけばいいか。
「ありがとう飛鳥」
「ありがとうペエ」
すると、上機嫌な様子でちゆとぺギタンがこちらに歩み寄ってくる。
「お礼を言われるようなことはしてない。あんな些細なことで勝手に落ち込んで仕事に支障をきたされるのは御免だから一喝言ってやっただけだ」
「いいえ。私はさっきあの子を強く叱ってしまって、ぺギタンからとうじがあんな風に思ってたのを知ったから。もっと気を配れるよう精進しなきゃ」
ぺギタンの方へ視線を送る。成程、その小さな身体を活かしてとうじの後をつけていたというわけか。
彼の数々の失敗を見届けて、その後自分がどういう感情を抱くのかは人それぞれだが、こいつの場合その失敗を嘲笑うことはせず、もっととうじのことを知ろうとしていた。それ故、心配で仕方なかったのだろう。そのことを姉であるちゆに知らせたおかげで、彼女は知らなかったことを知ることが出来た。見事である。
時計を見るにそろそろ後半の仕事が始まる。元居た場所へと待機しなければならないので急いで戻ろうとする。
「……くちゅん!」
「ラテ……!?」
直後、突然ラテの体調が悪くなりヒーリングルームバッグから聴診器を取り出して心の声を聴く。ビョーゲンズが現れたと察するが、何とも絶妙なタイミングで来てくれたものだ。
『近くで黄色い服のお兄さんが泣いてるラテ……』
「ん、人だと……?」
「黄色い服の……もしかして!」
「とにかく行きましょう!」
異例の事態に困惑を隠せない。ちゆに思い当たる節があるということは、旅館客だろうか。取り敢えずアスミの言った通りにその場所へと移動し、のどか達と合流する。
「メガビョーゲン……にしてはやけに人型じゃない?」
「それに、蝕む範囲も広すぎるペエ!」
確かに、巨躯な腕で一振りしただけで旅館付近全体を汚染していた。少なくとも、今まで戦ったメガビョーゲンとは違うと認識すべきだ。
「だったら、早急に止めるぞ」
僕の指示に四人は頷き、目立たない場所へと移動し変身の準備へと入る。
「お姉ちゃん何処行くの!?」
「……っ!?」
その姿を運悪くとうじに見つかってしまう。無視したところで逆に怪しまれるというリスクを受け取ってしまった厄介な状況だ。
「えっとその、あっちにお客様が居ないか見て来るわ!お母さん達を手伝ってて!」
「分かった!」
家族と仕事をしているからこそ出てきたであろうちゆの賢明な誤魔化しによって、とうじはすんなりとこの場から離れていく。周囲に人がいないかを確認した上で、再び目立たぬ場所へ隠れて変身を開始する。
「「重なる二つの花!キュアグレース!!」」
「「交わる二つの流れ!キュアフォンテーヌ!!」」
「「溶け合う二つの光!キュアスパークル!!」」
「「時を経て繋がる二つの風!キュアアース!!」」
「絡み合う二つの毒、キュアラピウス」
『地球をお手当!ヒーリングっど♡プリキュア!』
『これより、オペを開始する──!』
「オーホッホッホッ!来たわねプリキュア!」
「シンドイーネ……!?」
僕達の姿が見えるなり高らかに笑うシンドイーネ。
ただ、いつもと見た目が違う。以前までは見受けられなかったティアラを装備しており、より高貴な女王を漂わせる。また、目元には水色の涙のような模様もある。それは、のどかの体内に埋め込まれたメガパーツがケダリーというテラビョーゲンに進化したのと同じようにも見える。彼女も同じく進化を遂げたということか。
そう仮定したとして、もう1つ気になるのはあの怪物だ。僕達が変身している間にも、奴はいつも以上に活発に暴れ続けている。
「どうプリキュア?この私が生み出した新種のビョーゲンズ、『ギガビョーゲン』の力は!」
「ギガビョーゲン!?メガビョーゲンじゃないペエ!?」
「そう。私はね、この体にメガパーツを取り込むことによって進化したの。それによって、私は地球上の生き物を使って、ギガビョーゲンを生み出せるようになったのよ!」
「ニャンだとぉ!?」
「めんどくさいことしてくれるじゃんね……!」
自分自身の犠牲を振り払ったというわけか。その結果、自分の力だけでなくメガビョーゲンの上を行く存在を召喚する力をも手に入れた。かなり余計なことをしてくれたものだな。
『キュアスキャン!』
フォンテーヌがキュアスキャンでギガビョーゲンの体内を覗く。そこに映し出されたのは、黄色い服を着た筋肉質の"男性"、人間だった。
「力様!?」
見知った人物に驚きの表情を見せるフォンテーヌ。様呼びということは旅館客か。
スパークルがメガビョーゲンにしてはやけに人型じゃないかと言っていたが、本当に人間から生み出された怪物だったとは……。
「もうあんたらとは違うのよ。この身体もキングビョーゲン様への愛も……。さぁギガビョーゲン、お前の力を見せつけてやりなさい!」
『ギガアァァァァッ!』
先制攻撃はシンドイーネの声によって定められ、ギガビョーゲンは口から光線を放つ。いきなり大技とも呼べる攻撃だ。
『ぷにシールド!』
グレース、フォンテーヌ、スパークル、ポポロンの4人で一斉にシールドを張って防御に入る。だがその威力は以前とは桁違いで、シールドが破れるまでは行かないものの徐々に端から削れていく。このまま防御を続けていたら、いずれは漏れて付近が蝕まれてしまうだろう。
だったら、
「『
『ギガァッ!?ビョー、ゲン……』
口元に閃光の矢が命中したこととその衝撃波によって、ギガビョーゲンは背中から仰向けに倒れていった。蝕まれていた付近が僅かながら自然と晴れていくのを見て、かなりの急所を狙えたのだと悟る。
さてと、あとは体勢が戻る前に浄化しに攻めていく──。
「ワン!ワン!」
「うわ、ワンちゃん!?」
突然の乱入。
旅館の近くに潜んでいたのか、野生の子犬が顔を出してギガビョーゲンの元へと走り出した。
「危ない!そっちへ行っちゃダメだ!」
「とうじ!?」
それを追いかけていたのか、とうじも顔を出して子犬を捕まえに行く。
どちらも危険な場所へと突っ込んでいて見てられない。僕とフォンテーヌは止めるためにそっちへ向かう。
「……ちょっと、いつまで倒れてんのよ。ていうか一発喰らっただけでぶっ倒れないでよ!そんなんじゃあいつらに『フッ、進化したとかカッコつけていた割には口ほどでもなかったな』とか言われちゃうじゃない!」
「良く分かったな。あながち間違いではない」
「あんたには言ってないわよ黙ってなさいよ!」
僕の口調を真似ていたから答えただけなんだが。進化した姿とはいえ、性格までは変化していないらしい。
『ギッガー!』
そうこうしているうちに、シンドイーネに喝を貰ったギガビョーゲンはすぐさま身体を起こし、こちらを目掛けて再び光線を放つためにエネルギーをチャージし始める。
「させるか……!」
『風のエレメント!』
『雷のエレメント!』
『実りのエレメント!』
『ギガ……!』
エレルギーが最大になる前に、アース、グレース 、スパークルが双方からそれぞれエレメントの力を使った光線を放ち、僕は真正面から打撃で対抗する。チャージ状態では何も行動できないギガビョーゲンにまともに命中し、再び地面へと倒れていく。子犬が襲われるという最悪の事態は免れたように見えた。
『ギッガー!ギッ、ガッ!』
「こいつ……!」
しかし、ギガビョーゲンは倒れたその状態から手足を大きく振り回してカウンター攻撃を始めた。
ジタバタと暴れる度に地面が揺れ、近距離にいたアースとスパークルは殴られ兼蹴飛ばされ吹き飛ばされてしまう。素早く遠距離でバックステップを取っていた僕は、蛇の化身を数体召喚して怪物の動きを止めていく。
「あっ……!」
その際、ギガビョーゲンが暴れたことによって折れた一本の大木が子犬ととうじの方へと倒れてくる。それに気づいたフォンテーヌは瞬時にシールドで防御し、大木は近くの川へと水音を立てて落ちていった。
「大丈夫?」
「は、はい!子犬も無事です!」
「良くワンちゃんを守ったわね。怖かったでしょ?」
「うん……でも、大切なお客様だから!」
「そう、後は私達に任せて。必ず守ってみせるから!」
「お願いします!」
とうじ達が無事であることを確認した後、フォンテーヌは彼らに背を向けて僕達と合流する。
『ギガアァッ!』
拘束していた蛇達を強引に引き千切るギガビョーゲン。怪物でも対抗出来るくらいキツく縛り上げたつもりなのだが、見た目以上の相当な馬鹿力を持っている。
「フォンテーヌ、雨のエレメントボトルを使うペエ!」
「えぇ……!」
『雨のエレメント!』
フォンテーヌはヒーリングステッキに雨のエレメントボトルを装填し、ギガビョーゲン目掛けて強力な光線を放った。
『ギガッ!』
対して、怪物も口から光線を放って鍔迫り合いが始まる。
だが、雨のエレメントは言わば水のエレメントの上位互換だ。たとえ強敵であったとしても打ち勝てると絶対の自信を持っても良い。
「沢泉は、私が守る!」
フォンテーヌはヒーリングステッキを握る両手の力を更に入れ、光線の威力を上げていく。
「凄い……!強い思いがフォンテーヌの力になってる!」
「ならば私も……!」
『空気のエレメント!』
『ギガァ!?』
アースはウィンディハープに空気のエレメントを装填し、弦を弾いて生成された空気の弾丸を放出する。追い打ちをかけるようなその攻撃は、ギガビョーゲンを後方へ吹き飛ばして行った。
「嘘でしょぉ!?」
「……フッ、進化したとか言っていた割には口ほどでもなかったな」
「なっ……!」
「確かに今までの奴らと比べるとかなり手こずった。けどな、強くなったのはお前達だけじゃなく僕達も同じだ。そして、これからも進化していくぞ……!」
──シアを止めた僕達が、こんな奴に負けるわけないだろ。
「……行くぞ」
「うん!」
「「「「ヒーリングアニマルパワー全開!」」」」
4人は一斉に、ヒーリングっどアローにスペシャル・ヒーリングっどボトルを装填する。付属されたダイヤルが回り始め、彼女らの姿を新たに変化させる。
それぞれが髪のボリュームアップや髪飾り等の形が変化、また衣装の丈も伸びて白衣やドレスのデザインへと変化を遂げていく。
「「「「アメイジングお手当て準備OK!」」」」
ヒーリングっどアローの引き金を引くことで癒しのパワーを溜め込む。段々と、七色のエナジーが上昇していく。
対して、僕は距離にしておよそ50メートルにまで詰める。それほどの助走を以て跳びかかるわけではなく、身体を地面に沈めて上空へと高く跳躍する。
『──我が宿命、月女神及び太陽神に請い願う』
体を宙に舞わせる中、そう呟きながら左腕を天に掲げた途端、ぎしりと空間が軋みを上げる。
『月女神には愛の精神を、太陽神には輝かしき一矢を、そして双方に我が運命を定めよう……次なる運命に幸あれ』
紡がれる言葉に、闇に染まった暗雲の隙間から一筋の光が呼応する。それはキュアラピウスを中心に照らし、かざした掌から白銀の玉を生成した。
「「「「プリキュア・ファイナルヒーリングっどシャワー!!」」」」
『
そして、スペシャルヒーリングっどスタイルとなった者達は"OK"というパートナーの掛け声で引き金を押し、一斉の掛け声で螺旋状の光線を放った。
そして、僕はそれを怪物目掛けて上体を反らし、怒号と共に、その一手を振り下ろした。
『ヒーリングッバイ……』
『お大事に」
ギガビョーゲンの身体は跡形もなく消え去り、浄化されていったのだった。
「あんなに蝕んだのに~!もう!」
ギガビョーゲンも周囲も浄化されたことに、シンドイーネは悔しそうに足をジタバタと悔しそうに声を上げたまま姿を消した。
「飛鳥さん、さっきはありがとうございました!おかげで自分に自信が持てました!」
「礼を言われるようなことはしていないって言ってるだろ。自信が持てたのは周りが支えてくれてるってことに気付けたからだ」
「でも、気付かせてくれたのは飛鳥さんじゃないですか」
妙に痛いところを突かれる。
お礼を言われまくっている立場のはずなのに、ぐうの音も出ない複雑な気分になっているのはどうしてだろう。
「照れ隠ししなくてもいーじゃん。お礼言われて悪い気しないっしょ?」
「……チッ」
横槍を入れるようにひなたが僕の腕を肘で突いてちょっかいを掛けて来る。鼻抓んでやろうかこいつ。
「でも、お客様の笑顔を見るのって嬉しいんだね」
とうじがふとそんな言葉を吐く。
というのも、先程とうじが追いかけていた子犬は襲われていた旅館客の飼い犬だったようで、子犬を守ってくれたことに礼を言われていた。それ故、今の彼はかなり上機嫌な様子で旅館へと足を運んでいた。
「えぇ。私もとうじに負けないように、もっと頑張らなくちゃ」
「……もしかして僕の事ずっと見ててくれてたの、お姉ちゃん?」
「ふふっ、さあね」
そんな何気ない会話を交わす姉弟の背中を見守りながら、僕達も続いて歩いたのだった。
──今の不出来を恐れる必要もない。
──他人を評価して自身を卑下する必要もない。
──常に進化を続けるものは、未来より常に不出来だとも言えるのだから。
……夢の中にいた人物の言葉を借りるなら、こんなところだろうな。
ギガビョーゲンさんオーバーキルされてますねこれ…。
さて、次回はこのまま行くなら、のどかがお世話になった病院の先生と再開する回なのですが、諸事情でその次のちゆのハイジャン回と入れ替えます。その為、次回は後者の回となりますのでご注意ください。
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