ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜   作:ゆぐゆぐ

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年末にはどうにか、と思っていましたが、何とか間に合いました。


第45節 恩師の真実

 

『飛鳥。明日の放課後、予定はあるか?』

 

『いいえ、ありませんけど』

 

『なら明日、私と母さん、花寺さん御家族が参加する沢泉での食事会に、お前も参加しなさい』

 

『はあ……でも何でまた』

 

『花寺さんが以前お世話になられた医院の院長が来られるんだ。社会勉強の一環として、なるべく予定を空けておくように』

 

『……分かりました』

 

珍しく父に促された約束の当日。

帰りのホームルーム終了のチャイムと同時に担任の挨拶が終わり、生徒それぞれが部活或いは下校へと教室を後にする。部活に所属していない僕は無論、下校組の後に続いて行く。

 

「ちゆちーはこれから部活?」

 

「ううん。今日は朝練だけ」

 

「お、じゃあじゃあ、皆で夢ポート行かない?セール始まったんだよね~!」

 

「ごめん。私と飛鳥くん、今日約束があるんだ」

 

ひなたの誘いに、のどかは申し訳なさそうに渋々断る。

僕も賛同するように、小さく頷いた。

 

「それで今朝からソワソワしていたのね。けれど、飛鳥と一緒でなんて珍しいわね」

 

「なになに?もしかしてデート?」

 

「違う。父さんの病院に来賓する人が、前にのどかが世話になった人らしくてな」

 

「うん。だから2人で会いに行くの」

 

そんな会話をしながら4人揃って学校を後にした時、校門の向こうから緑色の服を着た中年の男性が大きく手を振ってこちらを呼んでいた。

 

「おーい、のどかちゃーん」

 

「蜂須賀先生!」

 

「え、のどかっちまさか……」

 

「馬鹿。普通に考えてあの人が以前世話になった先生だろ」

 

父から話を聞いただけで具体的にどんな人なのかは分かっていないが、少なくとも彼がそうであることは確かだ。

 

あらぬ方向に誤解したひなたに呆れつつ、一度場所をカフェへと移動してゆっくり話すことにする。

いつもは平光アニマルクリニック付近にワゴン車が置かれているのだが、今日は見晴らしの良い展望台付近へと出張していた。

 

「まとまった休みが取れることになってね。元気になったのどかちゃんの顔を見てみたくなった時に、タイミング良く神医先生にこの町を紹介してもらったのさ」

 

「そうでしたか。父がいつもお世話になってます」

 

「お世話になっているのはこっちの方だよ、飛鳥君。君のことはご両親やのどかちゃんから聞いているよ」

 

のどかとはこの町に引っ越してからも、手紙を通じてやり取りを続けていたそうだ。

それにしても、のどかはともかく両親からも僕のことを聞いていると言っていたが、一体何を話したのだろう。父に至っては皆目見当がつかない。

 

「のどかちゃんと同居しているバックパッカーのアスミさん。沢泉旅館のお嬢さんのちゆさんに、いつも元気で明るいひなたさん。君達のことものどかちゃんのお友達として良く聞いているよ」

 

「……何かあたしだけ雑じゃない?」

 

「他に語ることがないんだろ。アニマルクリニックにしろカフェにしろ、お前は関わってないしな」

 

「何それ、あたしには取り柄がないみたいじゃん!あるでしょ!?オシャレとか恋バナとかっ!」

 

「ワン!ワン!」

 

恋バナが取り柄とは何だ、などと思っていると、ラテが突然アスミの腕をこじ開けて芝生の方へ走り出した。

いつまでも僕達が真面目な話を続けているものだから、ジッとしていられなくなったのだろうか。

 

「ラテ、お待ちください!」

 

「もう、追いかけっこしたいの?」

 

ラテの軽快な足取りに誘われるように、のどかやアスミ、そこにひなたも混ざって笑いながら駆け出す。

そんなのどかの姿が感慨深いのか、蜂須賀先生は目を細めて眺めていた。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

 

 

 

「どうしたダルイゼン。我はお前に進化しろと命じたはずだ」

 

ダルイゼンは、ついにキングビョーゲンにより窮地に立たされていた。

シンドイーネ、グアイワルと進化を続けていった中、未だにその力を躊躇っているのがキングビョーゲンにとって気に喰わないようだ。

 

「怖気づいたか?」

 

「そういうわけじゃ……」

 

「ならば分かっているな?更なる力を得るのだ、ダルイゼン」

 

期待しているぞ、などと最後に言葉を付け足してから姿を消したわけだが、つまり早くしろ、と催促を促しただけのこと。

自分のペースでやらせてもらえないことをやや煩わしく思うも仕方ないと頷き、手に持っていたメガパーツに視線を送る。

 

「別にキングビョーゲンの為じゃない。これは俺の為だ」

 

覚悟を決めたダルイゼンはメガパーツを胸元に押し当て、体内に取り込む。

 

「ぐ、うぅっ──うああああぁっ!」

 

耐えられん苦しみによる悲痛でけたたましい叫びが、ビョーゲンキングダムに響き渡った。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

太陽が沈み切った時間帯。

約束通り、旅館沢泉へ足を運び、食事会に参加することにした。

参加者は予定通り神医家と花寺家と蜂須賀先生に加え、ついでにアスミもこの輪に入っている。

 

「仲間外れにならずに美味い物を食べれて良かったな」

 

「のどかの家族なのですから当然です」

 

料理の美味さで機嫌がいいのか、誇り気にそう言い放つアスミに一応な、と釘を刺すような言い方でツッコミを入れる。

それなりに年月が経っているおかげで、自分自身が居候の身であることを忘れていそうだ。精霊として生まれたばかりの身だから忘れているのも無理ないと言われれば一理あるが。

ちなみにラテはラビリンと共にちゆが預かっている。ポポロンは手早く部屋に閉じ込めておいたので、この場にはいない。

 

こうして食事と談笑は進み、いつの間にか食後のデザートにまで時間は過ぎ去っていた。

 

「んん~お腹いっぱいなのに食べれちゃう!どうしよ~!」

 

食事中の時も食後の今も人一倍満足気に食べるのどかの姿を、この場の全員がジッと見つめる。

 

「うん?なあに?」

 

「のどかちゃん、本当に元気になったんだなって思ってね」

 

「うん!私ね、今とーっても生きてるって感じ!」

 

「蜂須賀先生。改めて、本当にありがとうございました」

 

のどかの両親は蜂須賀先生に向き直り、感謝の気持ちとして一礼する。

 

「い、いえ、僕は何も……」

 

「先生が根気よく見てくださったから、のどかは今元気でいられるんです」

 

「本来はこちらからお礼に伺わなきゃいけないところをわざわざお越しいただき、神医先生方にもこういった場を設けて下さって。皆さん、本当にありがとうございます」

 

今度は僕の両親に向けた、のどかのご両親の再度の一礼。

対して、父さんは何も言葉を発さずに会釈で返し、母さんは「いえいえ~」と手を振って応えた。

 

「提示させていただいたこの日が蜂須賀先生が休暇を取られていたという、本当にタイミングが良かったまでですから」

 

「……あの、実は今日休暇じゃないんです」

 

「と言いますと?」

 

「僕、病院を辞めました」

 

「え?」

 

一同は困惑を隠せなかった。

新たな事実を理解するには衝撃的な内容であった。

 

「それはまた、どうして?」

 

「何と言うか……のどかちゃんの病気に関しては、最後まで分からず終いで。僕は医者でありながら結局、何もできませんでした」

 

「それは──」

 

それは違う、とのどかは身を乗り出してまで蜂須賀先生の吐いた言葉を否定しようとしたが、一度引っ込めてしまう。

残酷にもその判断は間違ってはいない。お手当て絡みの僕達の事情は、無関係の他人に口外してはならないのだ。

だが、それでも──。

 

「それで、あまりに自分の無力さを痛感しまして──」

 

「違うよ!」

 

だからと言って、蜂須賀先生が何もできなかった、無力だったなんてことを肯定したくもない。それだけは否定することを譲らなかった。

 

「私、先生がいたから、先生が励ましてくれたから頑張れたのに!」

 

「ありがとう。でもね、励ますだけなら医者じゃなくても出来る。ご家族は勿論、飛鳥君やアスミさんのようなお友達でも出来ると思うんだ。だからね──」

 

「違う……違うの!待ってて、私聞いてくる!」

 

「なっ……!」

 

そうしてのどかは唐突に立ち上がり、足早に部屋を出て行ってしまった。

恐らく、ちゆの元にいるラビリン達に真実を話してしまっていいか聞き出そうとしているのかもしれない。

蜂須賀先生のマイナスな言葉の数々を少しずつ払拭するために──。

 

「……すみません。僕も一度席を離れます」

 

「ちょっと、飛鳥まで!?」

 

のどかの後に続くようにして、僕も早々とこの部屋を出てちゆの部屋へと向かう。

 

「ラビリン!ビョーゲンズのこと、蜂須賀先生に話しちゃダメかな?」

 

「どういうこと?」

 

「先生、何も出来なかったって思ってるの!ビョーゲンズのせいでどうしようもなかったのに、それで先生がお医者さん辞めちゃうなんて、そんなの……そんなのダメだよ!」

 

のどかの言葉を部屋の扉の前で静かに聞く。

ラビリンはぺギタンと顔を見合い、素直にのどかの頼みを受け入れた方がいいのか悩んでいる様子だった。

 

「お願いラビリン……先生は何も悪くないって私、伝えたい……!」

 

「事情は分かったラビ。でも、テアティーヌ様に相談しないとラビリン達じゃ決められないラビ」

 

「そんな……」

 

「それもそうだが、仮に正直に話したところで簡単に受け入れてくれないと思うぞ」

 

「飛鳥くん……!」

 

頃合いを見計らって、僕も焦るのどかに意見を出す。

 

「蜂須賀先生は医療の現場で働いてきた人だ。そんな人に、病の元凶はビョーゲンズという未知の存在だった。だから医者にはどうしようもなかったと話して納得してもらおうにも、内容があまりに非現実的すぎる」

 

目に見える症状、検査結果、治療の根拠──そういったものを積み重ねて、患者の命と向き合っていく。それが医師という仕事。父さんも蜂須賀先生も、それを長い間続けてきた。

だからこそ、"病の元凶が異世界の存在だった"なんて、医師としての理屈で納得してくれるとは到底思えないと、僕は主張する。

 

「それはそうかも、だけど……!」

 

それでも諦めたくないと、のどかの声はついに震えていた。

怒りでも悲しみでもなく、どうしようもない無力感に押し潰されそうな、切実な想いだった。

 

「やはりここにいたのですね、のどか。蜂須賀先生が呼んでいますよ」

 

すると、アスミが部屋の前で立ち止まり、のどかに声をかける。

改めて会話する機会を貰ったとはいえ、当ののどかは変わらず浮かない顔をしている。

まるで、心の中に言葉にならない葛藤を抱えているようだった。

 

 




いつもご愛読ありがとうございます。
明日、もう1話更新を予定していますので、引き続きよろしくお願いします。

ここまでご拝読いただきありがとうございました。
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