ヒーリングっど♥プリキュア 〜医神と地球の戦士〜 作:ゆぐゆぐ
突然だが、我が家にはレピオスという名のアオダイショウを飼っている。
その名の由来はギリシャ神話の医療の神、アスクレピオスから。
蛇自体、神の使いと呼ばれているのもそうなのだが、アオダイショウはそのトップらしい。何処かの市内ではそのアルビノは信仰の対象として置かれているそうだ。アスクレピオスが脳裏に浮かんで適当に名付けたのだが、その名はちょうどそいつに合ったらしい。
「こんにちは、平光せ……あれ」
と、そんなどうでも良い話は置いといて、そのレピオスを連れて動物病院の診察室へ入ると、今日は見慣れた先客が二名いらっしゃるようで。
「飛鳥くん……?って、ふわぁ~、凄い綺麗な蛇さん!」
僕が手に持っている蛇籠を見るなり、レピオスの綺麗な鱗に魅了されたのか、こちらに寄ってくるのどか。
蛇好きなのかな、人差し指をくるくると回しながら籠越しに戯れてるらしい。対してレピオス氏は何やら警戒してるけども。
「……で、何でお前達はここに?」
「今朝からラテが急に元気がなくなったらしくて診て貰ってたの。慣れない環境で疲れたのかも……」
メガビョーゲンの場合は突発的に起こるからな、単純にストレスならすぐに治るだろう。
「あっくんの知り合いってことは……ひなたの同級生なんだ」
「先生その呼び方やめてくださいって言ってるじゃないですか何であいつの感染してるんですかうちの両親に診て貰った方がいいんじゃないですか?ねえ??」
「あーごめんごめん!最近ひなたが飛鳥くんの話題出すもんだからつい……」
僕の話題って……別にあいつの前でこれといったことはしてないぞ。
と、今の僕の威圧によってぽかんと口を開いて唖然としていたのどかとちゆがはっと我に返り、話を進める。
「……あ、えっと、今年から同じクラスで」
「私は最近引っ越して来たんです」
「そっか、騒がしい妹だけどよろしくね」
「こちらこそ……えっ、妹ってことはお兄さん!?」
「お父さんと見間違えたね……」
「「ご、ごめんなさい!」」
中2の妹と社会人の兄という年の離れた兄妹というのも今時珍しい。漫画やドラマではたまに存在するが、現実ではそうそういないだろう。
「お兄!お兄!!お兄!!」
「ん"ん"っっ!!??」
背後から闘牛にタックルされたような衝撃を受けて吹っ飛ばされる。
顔面が床に叩きつけられたものの、すぐに立ち上がろうとはするがぶつかった時の腰の痛みの方が強く、それでもゆっくりと老人のように立ち上がる。
「あーごめんごめん!!」
「ひなたちゃん!?」
「お前、出掛けたんじゃ……」
「あ、そうそう。ねえ見て見て!喋る猫発見!!!」
「「え"え"っっ!!??」」
ひなたが抱えていた喋る猫というのは、ニャトランのことだった。
何処で道草食っていたかは分からないが、とにかく僕達以外の人間にバレてしまったことに驚きを隠せないでいた。
「喋る猫?聞き間違えたんじゃないの?」
「それはない、絶対喋っt……っ!?」
「そ、そう。聞き間違い!」
「ひ、ひなたちゃん!私、喉乾いちゃったな~隣のカフェにでも行きたいな~」
ひなたの性格上、このままでは他の人に広められてしまうと思ったのか、ちゆは言葉を発させないほどに彼女の口を塞ぎ、のどかは誤魔化すように別の場所へと連行するという連携プレイを魅せ、
「「し、失礼しま~す!!」」
そのまま早足で診察室を出て行った。
「あ、飛鳥くん大丈夫かい?」
「これくらいのタックルは慣れてます……」
本当は慣れているわけないし、経験したことも稀なのでめちゃくちゃ痛い。とはいえ、大丈夫かと言われて重傷でもない限りは問題ないと答えるしかなかった。
「ふわぁ~美味しい~~」
それからのどか達は本当に近くのカフェまで連行していたそうで、名称は忘れたがひなたの命名した、彼女のお姉さん特製のミックスジュースを美味しそうに飲んでいた。
「でねでね、さっき拾った猫なんだけど~」
「気のせいよ!猫は喋らない!!」
「ちょっ、ちゆちー怖い~~」
「ちゆちー……」
今年から同じクラスになってまだ仲が良いとは言えないのに勝手にあだ名をつけられ困惑するちゆ。
その気持ちは充分に分かる。僕に限っては入学して間もない頃にあだ名をつけられたのだから。
「ご、誤魔化せそうにないラビ……」
「しょうがねえ、行くか」
今までごろんと寝転がっているラテの隣で隠れていた小動物達が囲って作戦会議のような話し合いをしていたところ、その内のニャトランが何か覚悟を決めると、テーブルの上へと飛び上がって僕らの前へ顔を出した。
「俺の名前はニャトラン!四人とも初めまして!」
「ほら喋った!」
いや、そんな「あたしの目に狂いはなかった」みたいにドヤられてもなあ。
既に知っていることを同年代に意気揚々に言われた時どういう反応をすれば良いのか僕にはよく分からない。へーすげーなあって適当に流しても大丈夫だろうか。
「あたしはひなた。ねえ、ニャトランはどうして喋れるの?」
「それが分からないんだ。生まれた時から俺だけ喋れてさ」
「そうなんだ~、すごーい!」
(これで……)
(良かったのかしら……)
(呼吸、楽しい)
と、思ったより事が上手くいっていることに困惑する一同。
だからと言ってそのまま横入りする訳にもいかず、ただ黙って場を眺めることしか出来ないでいた。
「なあひなた、俺の事は他の人には秘密にしてくれよな」
「もちろんだよ!てか最初からそのつもりだし」
「……は?」
……え待って、こいつの言っていることが良くわからない。
「だって見世物になったら可哀想じゃん?」
「お兄!お兄!!って言いながら見せびらかそうとしてた奴の言うことかよ……」
「あ、あれはさ、見世物になる前に保護するーとか迷子ならお家探すーとかお兄に相談するーとかなんて色々考えてたら慌てちゃって……!」
どの考えを選択しても先生に相談する道に辿り着かないかそれ。
「ひなたちゃんって優しんだね」
「ふぇっ!?いやいや、あたしなんて全然!」
優しいとかというより、ただどんくさいだけじゃないのか……?
「そういやお前、クラスの奴と出かけるんじゃなかったのか?」
「大丈夫大丈夫、え、何?あっくんてばあたしの事心配してくれて……んの」
こいつの場合、別の意味で心配なんだが。
そう言おうとした途端、ひなたの動きがピタッと凍り付いたように止まる。
表情も無のまま止まっているので、彼女のスマホをチラッと拝見させてもらう……。
『時間とっくに過ぎてるよ!ひなた、待ってるから連絡頂戴!!』
「あああああぁぁぁぁぁ~~~~~!!!!!」
────ー
「何処にいるんだろ~……」
「今何処にいるのか連絡つかないの?」
「うん、さっきから掛けてるけど全然繋がらない……」
隣町から然程距離はないものの、今いる建物は市内でもかなり大きいショッピングモールだ。
もう待たずに先に施設内を回っているとなると、見つけるのは難しいだろう。大体、二時間も待たせるというのが劇的なんだが。
「はぁ……やばぁ、またやっちゃった……」
「またって?」
「あたし、目の前のことでいっぱいになって、すぐ他の事忘れちゃうんだよね~……」
だからと言って誰かと出掛けることなんて忘れるか普通……。
身の回りに相当大変な事態が起こったなら気持ちは分かるが、それでも予定は忘れないと思う。
「任せとけよ」
「ニャトラン……?」
「ひなたは俺を助けたから遅れたって、ちゃんと伝えといてやるからさ」
「ありがと~、優しい~……」
目についたことに夢中になって他の事を後回しにするような奴はある意味放っておけないからな、
「待って、説明は私達がするから」
「そうだね。とりあえず二人を探そ?私達も一緒に話すから。大丈夫だよ、ひなたちゃん」
「みんな……ありがと!」
それから数分、あちこちを探し回ったものの事が上手く行かず。
相手方もこちらを探し回っているのだろうか、単純にまだ気づいていないのか、やはりこのショッピングモールが馬鹿みたいに広い上に、休日で人が多いせいで見つけるのが難しい。
「……くちゅん!」
「こんな時にか……」
ラテの具合が悪くなったということは、もちろんメガビョーゲンが現れたということ。道理で下の階でざわついてるかと思ったら……。
「よし、俺と飛鳥でひなたを遠ざける!」
ひなたのフードの中に隠れていたニャトランが顔を出してのどか達に伝える。
賢明な判断だ。ひなたの性格上、怪物に立ち向かおうとする二人を見過ごすことは出来ないだろうが……ゴリ押しするしかない。
「……ん、どしたの?」
「手分けして探そう。その方が効率良い」
中々見つけられずに落ち込んでいるひなたの袖を掴んで誘導する。
「なあ飛鳥、ひなた!あっちの方行こうぜ、俺の勘はよく当たるんだ!」
「ホント!?ありがとニャトラン!」
ニャトランがのどか達とは別の方向で走ると、速攻で後を追っていった。
すんなり遠ざけれたのは良かったけど……同行する僕まで遠ざけようとするな。
向こうで暴れまわってるメガビョーゲンから逃げる人混みに飲まれながら、なんとかひなた達と合流する。
いつも出現する地帯より解放感がない敷地内で、あちこちに爆破音が響き渡ったりして非常に危険な中、ひなたは困惑しながらその光景を眺めていた。
「なにボケッとしてる。逃げた方がいいだろうが」
「え……?あ、うん!」
ボケっと眺めている彼女の肩を軽く叩くとハッと思い出したように我に返り、再び人の波に流れるように進んでいく。
「「「あ──ーっっっ!!!」」」
そうしかけた刹那、今まで探していた友人達とばったり出会ってしまう。
普通こんなタイミングで再会するのかよとは思うが、メガビョーゲンから無事に逃れることが出来たのは一安心だ。
「どうしたの、何があったの!?」
「分かんない!何か急に怪物が……」
「この前学校に出た奴かも……!二人共、早く逃げよ!」
「うん……あ、のどかっちとちゆちー!」
メガビョーゲンの暴走はもうすぐそこまで拡大してきているので早く逃げなきゃと告げた矢先に、ひなたが僕にとって余計なことを思い出してしまう。
「え、花寺さん達もいるの?」
「じゃあさっきすれ違ったのって本人……?」
「やばくない?怪物がいる方に行っちゃったけど……」
「嘘……!」
のどか達がプリキュアだという事を誰にも知られてはいけないのだから、このまま行かせる訳にはいかないのだが、どう言い訳すればいいか……。
「べ、別のルートで逃げたんじゃないのか……?」
「で、でも放っておけないよ!」
「あ、ちょっ、ひなた危ないって!」
「後から追っかける!三人は先に逃げてて!」
「あの馬鹿……!」
「え、ちょ、あっくんまで!?」
流石にこんな適当な言い訳じゃ聞く耳持たずか。ったく、これだから脳筋は嫌いなんだよ……!
こうなりゃ全力で止めるしかない。来た道を全力疾走で戻るひなたを、僕は必死で追いかけていく。
「なあ飛鳥、もしかしたらなんだけどよ」
そんな何も喋れない程に全速力で駆け抜ける人間の隣で、ニャトランが真剣な顔で話しかけてくる。
「なんか今、俺の心にキュンときたかもしれねえんだ」
心がキュンときたということは、あのちびうさやぺギ小僧のようにパートナーになる意思表示のようなものだ。つまり、今目の前で放っておけない友達を追っかけてる人物とパートナーになるかもしれないという事だが……
「……え、マジ?」
……先日のフラグが回収されたような気がして、思わず足を止めてしまった。
飛鳥くんがひなたちゃんに脳筋とかいう酷い言葉を吐いてますが、作者はひなたちゃんが嫌いという訳ではないですからね!?てかそうだったらいつぞやの前書きにスパークル可愛い過ぎて死ぬなんて書かないし